業界毎の事例

2023/10/03

医療経営者のアーリーリタイア、セミリタイアという選択肢

医療経営者のアーリーリタイア、セミリタイアという選択肢

以前は、医療施設の第三者承継(M&Aによる譲渡など)が検討される状況はある程度限られていました。経営者の高齢化や健康問題により執務が難しくなった場合で、かつ後継者が親族内にも自院内にも見つからないときや、なんらかの事情で経営の継続が困難になった場合などです。これらはいわば、消極的選択としての第三者承継といえるかもしれません。

もちろん、現在でもそういった理由によりM&Aが選択される場合もあります。しかし、近年では以前とは異なるタイプの理由による選択も増えています。
たとえば、自院の将来を展望したとき、大手病院のグループに入ることでよりよい医療が提供できると考えられるために、というケースもあります。また、医療経営者が自分の将来を展望したときに、経営者を続ける道以外の進路をとりたいために、早期の第三者承継を選択するケースもあります。
伝統的な第三者承継の選択との比較でいえば、ポジティブ志向のM&Aだといえるでしょう。

このように、前向きで積極的な志向性で第三者承継を選択する動きは、少し前から中小企業経営者全般に見られるようになっている傾向であり、それが医療経営にも及んできたものだとも考えられます。
本記事では、特に医療経営者のライフコースの展望、セカンドライフの選択といった観点から、積極的な第三者承継の意義、およびその際の注意点などについて、解説していきます。

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主体的にセカンドライフを選択するためのM&A譲渡

「人生80年時代」といわれたのは昔となり、いまや「人生100年時代」です。働ける期間という点から見ると50歳代後半になって、ようやく折り返し地点だともいえるでしょう。その前後も含めた40代後半から60代前半くらいまでの時期において、今後のライフコースを展望し、視野を広げて、自分らしい生き方や働き方を求めてライフシフトを図る人が増えています。

医療経営者においても、それは同様です。i

▼経営の重責から解放されて、医師として職務を追求する

1つの選択肢が、経営者としてではなく、医師としてのやりがいや、働きやすさを重視するというセカンドステージのあり方です。
医療経営者としての立場であれば、自分の仕事のうち半分、あるいはそれ以上は「経営者」の仕事になります。経営者として、自院の経営、多くのスタッフの雇用や地域医療への貢献を考えていく仕事は、もちろん高い意義を持つものではありますが、その分、責任も重いハードワークとなります。そのため、時には医療経営者の心身への負担も過重になりがちです。
あるいは、本来目指していた「医師として患者さんの命や健康を直接守る」ことの現場からある程度離れざるを得ないジレンマを感じることもあるでしょう。
そこで、一定の年齢、あるいは一定の医療施設の規模に達した段階で、経営の仕事はそれを専門としている他者にまかせて、自分は医師としての仕事に専念するという選択肢があります。
たとえば、自院をM&Aにより譲渡して、経営者の座からは降りて、一医師としてそのまま自院で、あるいは他院で、勤務医として働くという方法です。
譲渡の際に、自院の状況にもよりますが、一般的には相応の対価が得られるため、将来にわたる生活面での心配は不要となります。そこで、週に2日、3日など、望ましい仕事量で医師として長く働き続けるということが可能になります。

経営者+医師としての重責と過重な仕事から解放され、自分の無理のない範囲で、医師として医療貢献する道を選ぶ元医療経営者は増えています。

▼イグジットによるアーリーリタイア

一般的に、創業社長が、その会社や事業を売却することにより、創業者利益を得ることは「イグジット」と呼ばれます。医療施設においても、それと同様の考え方をする医療経営者もいます。自ら医療施設を開業あるいは買収し、優良な経営を続けることで、その施設の価値を十分に高め、それから売却するという考え方です。通常、優良な経営を続けていれば、その医療施設の価値は高くなり、より高い価額での売却が可能になります。

そうして十分な売却対価を得て、40代あるいは50代で完全に仕事からリタイアして、セカンドライフを楽しんでいる元医療経営者もいます。たとえば、趣味の旅行やゴルフ三昧の生活を楽しむ人もいれば、家族で海外のリゾート地などに移住して現地で富豪として暮らす人もいます。
先に見た、仕事量を調整しながら医師を続けるタイプの方とは少し違いますが、どちらのタイプの元医療経営者も、主体的にセカンドライフのあり方を選んでいるという点が共通しています。

▼医師としての経験を活かしながらの起業

オンライン診療システム、医師向けコミュニティーサイトなどのITサービスなどの分野で、医師が起業する例が少しずつ増えてきています。株式会社メドレーやメドピア株式会社のように上場企業となった例もあります。

今後は、比較的若い世代の医療施設経営者が、早期にM&Aイグジットをして得た資金と、医師としての知識・経験を活かしながら、医療施設経営とは別の事業領域にチャレンジすることを選ばれる方も現れるかもしれません。

自院を評価する目線には要注意

以上見たように、医療経営者が、自身と自院の将来を考え、M&Aをポジティブに捉えて主体的に選択することは、まったく悪いことではありません。

ただし、その検討をする際、注意しなければならない点があります。それは、「自院の価値(譲渡価額)」をどの程度に見積もるのか」という価値評価の点です。

現在、医療施設M&Aにおいては、時価で評価した純資産に営業権を加えて算出する評価方法が通常とられます。その際、営業権については、業績、診療科、病床機能、地域性などにより、一定の「相場」とも呼べる基準があります。

譲り受けをする買い手の立場になって考えてみると、買い手も事業の一環として譲り受けをする以上、高すぎる値段では買うことができないのは自明です。

ところが、積極的M&Aを選択する医療施設は経営成績も優秀な場合が多く、まさにそうであるがゆえに、自院に対して高すぎる評価目線を持ってしまう経営者がよくいるのです。

また、「ベッド1床◯◯万円」のような昔の医療施設のM&Aでいわれていた“神話”のような評価目線をいまだに信じていることから、高すぎる評価になってしまう場合もあります。しかし、現在の病院M&Aにおいては、上記に述べたような理論に基づいて譲渡価額が算定されるため、「ベッド1床◯◯万円」のような形で譲渡価額が決められる、まずありえません。

理由はともあれ、医療経営者が自院に対して相場を大きく超えた評価をしてしまうことは、最終的に良くない結果を生むことが多いのです。

譲渡対価だけではなく、譲渡タイミングも重要

もちろん、自院をいくらで譲渡するのかは、最終的には経営者が決めることです。
また、現在の経営状態が良好で、かつ、経営者が比較的若い方である場合は、さほど売り急ぐ必要がない場合もあります。すると、「自分はこの水準以下では絶対に売りたくないので、この水準で譲り受けてくれる買い手が現れるまでじっくり待てばいい」と考えるケースがよく見られます。それはそれで、間違っていない考え方です。

しかし、医療業界全体としての成長性は、長いスパンで見ると不透明な要素が多いことも事実です。いうまでもなく、総医療費・診療報酬削減、患者数の減少などがあるためです。その状況下で、単に5年、6年と待ってみても、現在より高い水準で売れる可能性は、一般的には低いと思われます。いまの時点で「高すぎる」と思われる場合、将来になればなるほど、ますます「高すぎる」ことになりかねないのです。
いつまで経っても適切な買い手とのマッチングが成立せず、結果的に医療経営者のライフステージの中でのベストな譲渡タイミングを逃してしまった、となっては元も子もありません。譲渡対価は非常に重要な要素ではありますが、そればかりにとらわれて、タイミングという要素を軽視しないように注意が必要です。
とはいえ、なんでかんでも早く売ることが良いかといえば、それも当然不適切です。
つまり、M&Aの検討・準備を進めるにあたっては、自院の評価と、経営者の将来設計、そして医療業界全体の動向を踏まえた上で、最適なタイミングを考えることがポイントとなるのです。

大きな医療法人が買い手、小さな診療所が売り手とは限らない

医療施設のM&Aと聞くと、大手医療法人グループが「買い手」となり、小さな医療法人や、個人経営の診療所などを買収するイメージが、まず思い浮かぶかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限らない点にも留意してください。

小さな診療所でも、収益性の高い経営を続け、資金力や融資の調達力に余力があれば、自院よりも大きな他診療所や病院を買収することは十分ありえます。

前半で「経営の重責から解放されて、医師として職務を追求する」というコースを見ました。それとは逆の方向で、小さな診療所で診療を自分だけでおこなっている院長が、医療法人を買収して理事長となり、医療行為よりも経営の仕事を中心にシフトしていく……、これも医療経営者の選択肢の1つでしょう。

このように、医療経営者がセカンドライフを構想し選択していく上で、M&Aによる第三者承継は、さまざまな可能性をもたらしてくれる手段となるのです。

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