昨今、アパレル業界ではファストファッションの台頭によって、「安いのに高品質でオシャレ」な衣料品が脚光を浴び、多くの人に支持されるようになりました。また、EC専業ブランドも登場し、インターネットでショッピングを楽しむ方も多いのではないかと思います。

上述の通り近年のアパレル業界では、より品質や価格などにおいて競争力のある商品を提供することが求められています。そのため、新たに資金やノウハウを得たり、新しいアプローチを経営戦略として取り入れるために、アパレル業界ではM&Aが積極的に行われています。

本記事ではアパレル業界の定義や現状を説明したうえで、アパレル業界で行われたM&Aの事例についてご紹介していきます。


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アパレル業界とは?最新の業界動向を紹介

アパレル(apparel)は、衣服の意味です。つまり、アパレル業界とは衣料品のデザイン、製造、販売、物流などに携わるアパレル企業によって構成されています。

経済産業省の発表によると、2018年の日本国内のアパレル市場規模はバブル期の15兆円から10兆円に減少した一方で、供給量は20億点から40億点程度とほぼ倍増しています。この背景には、衣料品の購入単価および輸入単価が、1991年を基準に6割前後の水準に下がったことがあります。消費者がより割安な商品を求める傾向にある中、その低価格な商品を生み出す企業の戦略にSPA(specialty store retailer of private label apparel)というビジネスモデルがあります。

SPAとは、アメリカのアパレル業界最大手であるGAPが自社の独自のビジネスモデルを指して使った言葉です。日本語では製造小売と訳されることもあります。

日本においても近年「UNIQLO」のように、企画、デザイン、製造、販売までを一貫して手掛けるSPAを行うアパレル企業が増えています。

最新の流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料品を短いサイクルで生産・販売することを目的として、SPAモデルは国内外問わず多くのアパレルブランドに採用されています。SPAは自社内で一貫生産を行うため、コストを抑えることができるのです。世界のアパレル業界の売り上げを見ると、高級ブランドではなく、ZARAやH&Mなどのファストファッションが上位を占めています。

一方で、アパレル業界ではEC市場が拡大しています。経済産業省によると、衣類・服飾雑貨などのEC市場は2017年に1.65兆円、前年比7.6%の増加となり、EC化率は11%を超えました。今後もEC市場規模の拡大が予測されます。

アパレル業界のM&Aの動向・特徴

アパレル業界ではファストファッションブランドに対抗するため、ブランド力強化、事業規模の拡大を目的としたM&Aが多く行われています。また、市場規模の縮小などの影響もあり、収益を伸ばすためや海外進出を図るため、海外の企業を譲り受けるケースが増加しています。

▷関連記事:M&Aによるブランド強化 ブランドを譲受けるM&Aが盛んな背景とブランドの価値

また先述の通り、近年アパレル業界ではファストファッションが定着し、ECの市場規模が拡大しています。そのような状況の中で、大手のアパレル企業による、素材の調達から生産、物流、店頭での販売までのサプライチェーンの構築、ECや海外展開などの事業規模の拡大に向けた販路の強化が行われています。

そのため、アプリ開発等によるWebでの販路拡大や、ICT技術やAI技術の活用による業務のデジタル化、顧客データの管理などを行うために、資金力やノウハウを持つ大手企業や異業種の企業の傘下に入るケースが増えています。

▷関連記事:国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件

業界大手によるM&A事例4選

1.株式会社ファーストリテイングによるJ Brand Holdings,LLCの譲り受け

引用元:https://www.fastretailing.com/jp/

株式会社ファーストリテイリングは、2012年12月に米国を拠点にプレミアム・デニムを中心に展開するコンテンポラリーブランド*1のJ Brand Holdings,LLC(以下、J Brand Holdings)を子会社化しました。

ファーストリテイリングは、「UNIQLO」「GU」などのファッションブランドを展開する国内アパレル業界最大手の企業で、世界のアパレル業界においても売り上げ第3位を誇る企業です。カジュアルブランドとして2000年から10年代にかけて爆発的な成長を遂げ、グループの店舗数においては2000年の433店舗から2018年には3539店舗と、およそ8倍に増加しました。

2001年からは海外に進出し、世界各国に「UNIQLO」と「GU」を出店。また、M&Aを行うことにより事業の多角化を図っています。

一方のJ Brand Holdingsは、米国ロサンゼルスに本社を置き、メンズ、ウィメンズのプレミアム・デニムを中心に展開しています。2011年12月期の売上高は約124百万ドル(約100億円)でした。独自のデニム素材を開発し、「ミニマルで洗練されたデザイン、美しいシルエット、フィット感の良さ」により高い支持を得ています。

ファーストリテイリングはJ Brand Holdingsを子会社化することで、アフォーダブルラグジュアリー*2分野でブランドポートフォリオを拡大し、グループブランドのデニム商品の開発を強化する見込みです。

*1 コンテンポラリーブランド:服飾分野の中のジャンルの一つで、高級デザイナーブランドのような「特別な時に着る服」とは異なり、現代的な感覚を持つ人たちが「毎日着る服」という位置づけ

*2 アフォーダブルラグジュアリー:高級感を保ちながらも、ラグジュアリーブランドよりも安い価格帯のブランドのこと

2.株式会社パルによる株式会社ナイスクラップの完全子会社化

引用元:http://www.palgroup.co.jp/

株式会社パルと株式会社ナイスクラップは、2015年6月1日を効力発生日として、パルを株式交換完全親会社、ナイスクラップを株式交換完全子会社とする株式交換を行いました。

パルグループは「Kastane」や「mystic」などの10代、20代の若い世代に人気のブランドを始め、「3COINS」や「ASOKO」などの雑貨領域にも進出し、幅広い事業展開を行っている企業です。全国に900店舗以上を構え、2006年8月には東京証券取引市場第一部に上場しました。

ナイスクラップは、「お客様と満足と感動を共有します」を合言葉に「one after another NICECLAUP」をはじめとする複数ブランドを展開しています。

ナイスクラップはパルグループの子会社となることで、パルグループの持つ経営資源を最大化し、機動的な経営判断を行うことができる経営体制を構築するとともに、パルグループとして事業連携と競争力の強化を図り、 より安定的に企業価値の向上に取り組んでいく見込みです。

▷関連記事:株式交換とは?メリットから株式交換比率、株価の変動と注意点までを徹底解説

3.株式会社オンワードホールディングスによるティアクラッセ株式会社の株式取得

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株式会社オンワードホールディングスは、2016年4月に株式会社ユニットコムが保有するティアクラッセ株式会社の全株式を取得しました。

オンワードホールディングスは1927年に「樫山商店」として創業し、国内外108社(2018年2月時点)で構成されています。「23区」や「JOSEPH」「組曲」を始めとする40ブランド以上を展開し、アパレル業界売り上げ第4位(2018年時点)の企業です。

ティアクラッセは、「大人の上品服」をコンセプトに、30代以上の女性をターゲットにしたオリジナルブランド「Tiaclasse(ティアクラッセ)」を軸としたECサイトの運営および企画、販売を行っています。ティアクラッセはネット通販最大手の「楽天市場」にも出店しており、「楽天SHOP OF THE MONTH」や「楽天SHOP OF THE WEEK」を合計5回受賞しています。

オンワードホールディングスは、公式通販サイト「オンワード・クローゼット」と連携して、顧客の相互送客や商品開発での協業などを行います。また、30代以上の女性に向けてオンワードホールディングスのリアル店舗を活用したTiaclasse(ティアクラッセ)の情報発信や広告宣伝活動の実施などを行い、サイトへの誘引を強化する狙いがあります。

▷関連記事:株式取得の意味とは?M&Aにおけるメリットから事業譲渡との範囲や契約の違いまで解説

4.株式会社アダストリアによるVelvet社の子会社化

引用元:http://www.adastria.co.jp/

株式会社アダストリアは、2017年4月に米国子会社であるAdastria USA, Inc.を通じて米アパレルのVelvet, LLC(以下、VV社)の全株式を取得し、子会社化しました。

アダストリアは「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」や「ニコアンド(niko and…)」「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」などのブランドを展開し、暮らしを取り巻くさまざまなアイテムをファッションを軸に提供している企業です。

VV社は1997年にアメリカで創業された企業です。米国のコンテンポラリーアパレル市場において「Velvet by Graham and Spencer」のブランド名で知られています。

アダストリアは、香港・台湾・中国・韓国といったアジアの国々を中心に自社ブランドを海外展開しています。今回の子会社化により、アダストリアはVV社に資金・ノウハウを注入することでVV社を成長させると同時に、米国でのブランドビジネスのノウハウ・ナレッジの獲得を見込んでいます。米国のアパレル市場の成長を見込み、市場として本格化させる見込みです。

2019年のアパレル業界のM&A事例3選

1.株式会社アングローバルによる株式会社アンドワンダーの子会社化

引用元:https://www.anglobal.co.jp/

株式会社アングローバルは、2019年1月に株式会社アンドワンダーの全株式を取得し、子会社化しました。

アングローバルは国内アパレル業界大手の株式会社TSIホールディングスの子会社です。「ライフスタイルをデザインする会社」として「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」や「エムエイチエル(MHL)」などのブランドを展開しています。

アンドワンダーは、2011年の春夏に池内啓太と森美穂子のデザインデュオによりスタートした日本発のアウトドアブランド「and wander」を展開しています。国内外から高い評価を受けており、現在では国内に100件、海外に40件の卸先を開拓しています。(2019年1月時点)

アングローバルは、EC、海外展開において市場競争力の強化を見込んでいます。一方でアンドワンダーはアングローバルのインフラを活用することで、生産管理やECなどの環境整備を図ります。

2.株式会社ニッセンによる株式会社マロンスタイルの子会社化

引用元:http://www.nissen-hd.co.jp/

株式会社ニッセンは、2019年2月に株式会社マロンスタイル株式を取得し、子会社化しました。

ニッセンの親会社である株式会社ニッセンホールディングスは、2016年11月にセブン&アイ・ホールディングスの完全子会社となって以降、固定費削減とビジネスモデルの再構築を主軸に業績を回復しています。また、現在取り組み中の経営再建計画に基づき、通販事業の早期黒字化および将来成長に向けたビジネスモデルの再構築をしています。

マロンスタイルはネット通販事業のほか、アパレルネット通販での商品企画コンサルティング事業やOEM事業などを手掛ける企業です。20代〜30代の女性向けにLL~5Lサイズの商品を販売する女性専用通販サイト「clette」の運営も行っています。

ニッセンが展開している大きいサイズのウィメンズアパレルブランド「スマイルランド」の主要顧客が40代であるため、今回のマロンスタイルの子会社化により若年層の集客を図ります。

3.株式会社オンワードホールディングスによる株式会社大和の子会社化

引用元:https://www.onward-hd.co.jp/

株式会社オンワードホールディングスは、2019年3月1日に株式会社大和の全株式を取得しました。

大和は1940年に創業し、ギフト商品の企画から買い付け、カタログ編集、物流までをワンストップで手掛けています。2017年11月からはオンワードホールディングスのECグルメサイト「オンワード・マルシェ(ONWARD MARCHE)」のギフトカタログの制作も請け負っています。

オンワードホールディングスは、ギフトという新しい事業領域が加わることで、提案の幅を広げ、更なる顧客満足度の向上を図ります。また、大和が取引する全国の百貨店や有名ブライダル企業での営業活動、自社のECなどのデジタルプラットフォームの活用などのシナジー効果を見込んでいます。

▷関連記事:譲渡企業側こそ意識しよう。企業選定で欠かせないポイント「シナジー効果」とは

異業種によるアパレル業界の企業のM&A事例2選

ニトリがアパレル業界に参入を発表するなど、近年、異業種の企業がアパレル業界に参入するケースが増えています。異業種がアパレル業界に参入した事例を紹介します。

1.三井物産株式会社による株式会社ビギホールディングスの子会社化

引用元:https://www.mitsui.com/jp/

三井物産株式会社とMSD企業投資会社(以下、MSD社)が運営するMSD第一号投資事業有限責任組合(MSDファンド)は、2018年1月に株式会社ビギホールディングス(以下、ビギHD)の全株式を取得し、完全子会社化しました。

三井物産は、「リテール・サービス」を「強みを発揮できる新な成長分野」の一つとしています。特にファッション・繊維事業では「販売・マーケティング事業」に注力し、消費者との接点を拡充しています。

ビギHDは1970年に創業し、「yoshie inaba」「Men’s Bigi」「converse」「Papas」などの日本を代表するブランドを展開しています。三井物産とはアパレル製品のOEMやブランドライセンスを通じて過去30年以上にわたる取引があり、強固な信頼関係を構築してきました。

今後、三井物産はビギHD社のノウハウや知見を活かして企画・販売のプラットフォームの機能を強化し、より柔軟な対応を可能とするブランドポートフォリオの形成を目指しています。またMSD社が有する投資事業会社としての幅広いノウハウや知見と共に、三井物産が強みとするブランドマーケティング、グローバルなネットワークをフルに活用し、新たなブランドの導入、ECや海外展開などの成長市場に向けた販路強化を戦略的に加速していく見込みです。

MSD社は、2015年9月に三井物産、株式会社三井住友銀行、株式会社日本政策投資銀行が共同で設立した投資事業会社です。MSD社が有する幅広いネットワークや知見を活用し、次の発展フェーズまでの成長を支援していています。

2.株式会社ヤギによる有限会社アタッチメントの子会社化

引用元:https://www.yaginet.co.jp/index.html

繊維専門商社の株式会社ヤギは、2017年6月に有限会社アタッチメントの全株式を取得し、子会社化しました。

ヤギは、大阪に拠点を置いた繊維専門の商社です。2017年5月に、2020年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「SPARKS 2020」を掲げており、グループの強みを活かせる事業領域の拡充を進めています。

アタッチメント(ATTACHMENT)は、日本のファッションブランドで、紳士服・婦人服のデザイン・製造販売を主力事業とするアパレル会社です。卸に加えて、代官山や銀座の複合商業施設「GINZA SIX」に直営店を運営しています。

アタッチメントのデザイナーである熊谷和幸氏は、素材生地を作っている地域を訪れて素材を選んでいることでも知られています。また、自身の名前をブランド名にした「KAZUYUKI KUMAGAI(カズユキクマガイ)」は、2008年にパリコレクションにも進出しています。

ヤギは、アタッチメントが有する海外でも認知されているブランド力やテキスタイル素材の高い開発力、販売チャネルの活用による繊維二次製品部門の事業基盤強化とブランドビジネスの推進を図る狙いです。

また、ヤギはアタッチメントの他にも、織物・ニット用素材加工メーカーの山弥織物株式会社を子会社化しています。山弥織物でモノ作りのプロセスを学ぶ社員研修を行い、アタッチメントが監修したバッグ「クラムシェル(CRAMSHELL)」の発売を行うなど、M&Aによる相乗効果が表れています。

まとめ

近年、アパレル業界では多様化する消費者ニーズを満たす、品質の高い製品を低価格で提供するファストファッションが大きなシェアを獲得しています。またIT化が進んだことにより、アパレル業界における全商取引のうち、ECサイトなどの電子取引されているものは全体の11.54%となっており、ECでの販売も定着しています。

今後、アパレル業界はさらに消費者の利便性を向上させるようなサービスで、ニーズを具現化するような新しい商品を提供することが求められます。

そのため、さらに企業の独自性を強めるためにM&Aを活用し、事業を多様化していく企業が増えていくでしょう。競争力のある商品の提供のためにもM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

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