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2023/10/04

LBOとは?手法・MBOとの違い・メリット・事例

LBOとは?手法・MBOとの違い・メリット・事例

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?

LBO(Leveraged Buyout)とは、譲渡企業の資産や今後期待されるキャッシュフローを担保として、譲受企業が金融機関などから資金調達をして買収する方法です。

特徴として、融資の担保として譲渡企業の資産やキャッシュフローを用いることが挙げられます。そのため、譲受企業が借金を自ら返済するのではなく、譲渡企業の持つ資産や、将来の収益を返済の原資とします。LBOは少ない自己資金で買収に必要な資金を確保する目的で行われます。

借入金の返済は譲渡企業が行うため、少ない自己資金でも買収ができるわけです。

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LBOの仕組み・流れ

続いてLBOの仕組みと流れを解説します。

現在のLBOの手法を編み出したのは、バイアウトファンド大手のKKRの創業者ジェローム・コールバーグとよばれており、そのビジネスモデルは意欲ある少数株主に会社の所有権を集中させ、企業価値を高めるものでした。

LBOでは、譲渡企業の経営陣と財務スキルを有する投資家を組み合わせることで企業価値を高めることができます。

1)特別目的会社(SPC)の設立

SPC(Special Purpose Company)は、金融機関や法人が限定された目的のために設立する法人のことを指します。会社の保有する債権や不動産を流動化するための受け皿として活用されることも多いですが、M&Aにおいては特定の使用目的のある資産を保有するための受け皿として機能させるために設立されます。

LBOの買収資金の調達は、設立されたSPCが行い、譲受企業はSPCに出資する形を取ります。

・関連記事:SPC(特別目的会社)とは?M&AにおいてSPCを導入するメリット・デメリット

2)投資ファンドや金融機関から資金調達

設立されたSPCは、投資ファンドからや銀行などの金融機関からM&Aの買収資金を資金調達します。SPCは返済に充てられる資産を保有していないため、譲渡企業の資産や将来のキャッシュフローなどを担保とします。

金融機関は融資を行う際に譲渡企業の返済能力を確認するため、譲受企業は将来的なキャッシュフローや資産に高い価値が見込める企業を譲渡企業の候補として、LBOを検討することが一般的です。

3)SPCが譲渡企業を買収する

SPCは投資ファンドや金融機関からの融資資金を使用し、譲渡企業を買収します。一般的には、SPCは100%の株式取得を目指します。

そのため、株式の売却に応じなかった少数株主を排除するスクイーズアウト(強制取得手続き)を行うことがあります。スクイーズアウトの方法としては、主に株式等売渡請求を用いた手法、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換の活用が考えられます。

買収完了後、SPCは親会社、譲渡企業は子会社となります。

・関連記事:スクイーズアウトとは?手法やメリット、手続きの流れ

4)SPCと譲渡企業を合併する

SPCと譲渡企業が合併を行い、ひとつの企業になります。この場合、SPCが消滅会社、譲渡企業が存続会社となります。

SPCと合併した譲渡企業は、SPCの持つ借入金を引き継ぎ、融資を受けた金融機関などに徐々に返済していきます。

LBOのメリット・デメリット

LBOとは?手法・MBOとの違い・メリット・事例

続いてLBOのメリットとデメリットについて解説します。

・LBOのメリット

LBOのメリットとしては以下が挙げられます。

  • ・少ない自己資本で買収が可能
  • ・調達資金の返済リスクが少ない

少ない自己資本で買収が可能

最も大きなメリットとして、少ない自己資本で企業買収を行うことができる点が挙げられます。

LBOの資金は、譲渡企業の事業内容や今後の経営計画にもとづいて金融機関から借り入れ、最終的には譲渡企業の負債となるため、資金調達は比較的問題になりにくいといえます。

調達資金の返済リスクが少ない

LBOを行う際に、譲受企業は買収を実施するためにSPCを設立します。前述の通り、買収資金の調達はこのSPCが行うため、そこに出資する譲受企業は調達資金の返済義務を負いません。

つまり、銀行などの金融機関からの融資は自社としては負わないノンリコースローン(非遡及型融資)のため、譲受企業のリスクは出資金部分のみという限定された状態で買収を行うことができます。

このように負担する法的責任や信用力への影響、ファイナンス契約上の制約を限定することができるため、レバレッジ効果により投資効率を向上させることができます。

・LBOのデメリット

対してLBOのデメリットは以下が挙げられます。

  • ・見込んだシナジーを得られない場合がある
  • ・金利コストが高い
  • ・有利子負債の増加

見込んだシナジーを得られない場合がある

LBO後に譲渡企業との統合が上手く行かなかった場合などは、譲受企業が期待したシナジーの獲得ができず、結果としてLBOの目的を達成できないこともあります。

金利コストが高い

LBOは一般的に借入金額が大きく、期間も5年程度の借入となることから、借入の金利が高くなるというデメリットがあります。しかし、負債は最終的に譲渡企業に移転するため、譲渡企業が注意すべき点であるともいえます。

有利子負債の増加

有利子負債の増加に伴い、損益面では税引き後の金利分、キャッシュフローでは返済額分の負担が増加します。その余力がない企業の場合、企業の安全性や健全性に支障が出ることがあります。

LBOとMBO・EBOの違い

LBO(Leveraged Buyout)と似た手法にMBO(Management Buyout)とEBO(Employee Buyout)があります。

ここではLBOとMBO・EBOの違いについて触れていきます。

・MBO(Management Buyout)とは

MBOとは企業の「経営陣」が投資ファンドや金融機関から資金調達を行い、既存の株主から株式を買取って自社の事業部門を取得し、経営権を得る行為を指します。

MBOは様々な場面で使用されますが、主なケースとしては「経営陣が銀行や投資ファンドからの融資・出資によって資金調達を行い、自社の事業部門を取得し独立した経営権を取得する」などが挙げられます

・関連記事:MBO(マネジメント・バイアウト)とは?目的やメリット、導入の流れなどをわかりやすく解説

・EBO(Employee Buyout)とは

EBOとは企業の「従業員」が株式を取得し経営権を得る方法を指し、経営者から従業員への社内承継を行う場合などに活用されます。

ただしEBOにおいては、従業員側が株式を取得するだけの資金を用意することができるかという課題があります。

これについては近年、金融機関の融資以外にも、ファンドなどからの投資によりEBOを実施というケースも増えてきました。

・関連記事:EBOとは?各バイアウトとの違いや目的、メリットなど押さえておきたい基礎知識

・LBOとMBO・EBOの違い

LBOとMBO、EBOの違いは買収する側が自社内か、他社などの第三者かという点が異なります。

MBOは経営者が参画するLBOで、EBOは従業員が参画するLBOであり、それぞれLBOの形態の1つです。

前述の様に「MBO」は経営陣が自社の株式を買い取ることを指し、「EBO」は従業員が自社の株式を買い取ることを指します。MBOは経営者が参画するLBOで、EBOは従業員が参画するLBOであり、それぞれLBOの形態の1つです。

MBOやEBOでは経営者や従業員が自社株を取得して、自社の経営権を得るために行われます。また、その際には買収を行うための資金が必要となり、銀行や投資ファンドからの融資・出資によって資金調達を行います。

MBO、EBOの場合、主に経営権の移動による経営の効率化を目的に行われます。自社株の買い取りを投資ファンドの融資をもとに行うため、譲渡後における自社の経営陣と投資ファンドの意思決定権が強化され、迅速な意思決定を行うことができます。あわせて、市場から自社株を購入するため、市場に出回る株式数が減少します。

自社株買いは、既に株を持っている株主から株式を買い戻す行為です。自社株買いをした結果取得した自己株式については、純資産のマイナス項目として計上されます。そのため、貸借対照表では、自社株の購入は純資産の部の株主資本のマイナスとして計上されます。

したがって、資本金・資本剰余金・利益剰余金の合計から自己株式を控除した金額が株主資本となります。そして、株主資本にその他有価証券評価差額金などのその他包括利益を加えた金額が自己資本*1となります。

その結果、当期純利益を自己資本で割って計算する自己資本利益率(ROE)*2などの財務指標が改善に向かうなど、資本効率の向上を図ることができます。

*1自己資本:返済の必要がない会社の資金。出資者から調達した資本金と、内部留保(剰余金)から構成される。

*2自己資本利益率(ROE):株主からの出資金を効率的に使えているかがわかる指標。当期純利益 ÷ 自己資本(出資金や利益の蓄積などの合計)× 100で求められる。

PEファンドとは

PEファンドとは非上場会社の株式に投資し、利益を出して投資家に還元するファンドを指します。

PEファンドの目的は、非上場会社を上場させて株式を市場に売り出すことや、株式の価値を高め、別の会社に取得費より高く売却することです。また、PEファンドにはベンチャーキャピタルをはじめ複数の種類があります。

投資家から集めた資金をもとに、成熟した企業の過半数の株式を取得して経営に関与し、株式価値を向上させた後に株式の売却によって利益を得て、投資家に利益を還元する目的で、主に買収を行うバイアウト型とよばれるPEファンドによってLBOは実施されます。

そのため、内部留保が多く自己資本比率が高い企業や、有利子負債が少ない、事業環境が安定している企業は、業績、キャッシュフローともに安定的でLBOの対象になりやすい企業であるといえます。

また、PEファンドが積極的にLBOを行う理由の1つにレバレッジ効果が挙げられます。レバレッジ効果とは、レバレッジ(=てこ)の作用になぞらえて、少額の投資資金で、大きなリターンが期待できることを指します。

LBOでは、少ない資金に投資ファンドや金融機関からの大幅な借入金を使用して買収を行うため、レバレッジ効果が享受できます。

このレバレッジ効果を利用すると自己資金では対応不可能な規模の買収が可能になり、対象企業の企業価値変動に対して大きな損益が発生するため、投資効率が向上します。

LBOの事例

LBOを行って成功した事例、失敗した事例をそれぞれ紹介します。

・LBOの成功事例

リップルウッド・ホールディングスによる日本テレコム株式会社の買収(約2,600億円)(2003年10月)

アメリカの大手総合情報サービス会社、Bloomberg社の発表によると、2003年10月に、アメリカの投資会社Ripplewood Holdings LLC(リップルウッド・ホールディングス)は、イギリスのVodafone Group Plc(ボーダフォン・グループ)傘下の日本テレコム株式会社の固定電話部門をLBOの手法を用いて、総額2,613億円で買収しました。

自社の経営陣を送り込み事業の立て直しを図り、事業拡大が期待できるデータ通信分野を中心に日本の通信市場に参入することが目的でした。

譲渡側の日本テレコムは、LBOによって固定電話部門を切り離し、ボーダフォンの経営に注力することで、携帯電話事業の強化を図りました。

翌年2014年7月、リップルウッドは約2,600億円で買収した日本テレコムを約3,400億円でソフトバンク株式会社に売却しています。

リップルウッドは日本において、このLBOで5件目のM&Aでした。リップルウッドは破綻寸前で一時的に国有化された旧日本長期信用銀行(現新生銀行)や、日本コロンビア(現コロンビアミュージックエンターテイメント)への投資実績があります。

旧日本長期信用銀行は、不動産融資に注力していたため、バブル崩壊と共に財政が悪化し、国有化されました。当時の政府がこの銀行を再生する企業を求めた際に、リップルウッドが名乗り出ました。経営不振で債務超過であった日本コロンビアなどと同じく、リップルウッドは経営不振に陥っている事業の立て直しを目的にM&Aを行っています。

ソフトバンク株式会社によるボーダフォン株式会社の買収(1兆7,500億円)(2006年11月)

2006年に1兆7,500億円でソフトバンク株式会社がVodafone Group Plc(ボーダフォン・グループ)の日本法人、ボーダフォン株式会社を買収しました。調達した資金は1兆円に昇り、有利子負債も大きな金額となりました。

ソフトバンクはボーダフォンの日本法人の設備を利用して携帯電話市場に進出しました。買収によって携帯事業への新規参入を計画していたソフトバンクにとって、既に成熟している2Gや3Gのインフラ、サービス、ブランドを手に入れることは迅速な事業展開の大きな足掛かりとなりました。

また、当時の携帯電話業界は、FMC(Fixed Mobile Convergence)4の流れが加速していた時期で、既にADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)5やFTTH(Fiber To The Home)*6事業で一定の成果を挙げていたソフトバンクにとっては業界の動向を掴んでいたともいえます。

一方のボーダフォンは、携帯電話事業が不調に見舞われ、2007年の3月期の業績見通しを下方修正するとともに、不振が続く海外事業を手放すことも検討していると報じられている最中でした。

携帯事業会社は、顧客との契約機関が比較的長く一定の収益が見込めるため、LBOに向いていたといえるでしょう。

*4FMC:固定電話と移動体通信の融合の意味。携帯電話を家の中で固定電話の子機として使用したり、社内で内線電話として使用するような、携帯電話と固定通信を融合させた通信サービスのことを指します。

*5ADSL:一般家庭にある電話回線(アナログ)を使ってインターネットに接続する高速・大容量通信サービスを指します。

*6FTTH:離れた場所に光を届ける伝送路である、光ファイバーを活用した通信手段を指します。また、光回線とも呼ばれます。

・LBOの失敗事例

ダイセンホールディングス株式会社と大手ゼネコンの株式会社さとうベネックのLBO

2012年、ダイセンホールディングス株式会社がSBIキャピタル株式会社から借入を行い、株式会社さとうべネックを対象にLBOを行いました。しかし、譲渡企業のさとうべネックは、移転された借入金を返済することができず、黒字倒産しました。倒産時の総負債額は44億2,985万円でした。

2006年8月に金融機関に債務免除を要請する経営状況になったさとうべネックは、整理回収機構*7である、投資ファンドNCP(ネクスト・キャピタル・パートナーズ)傘下で再建を進めていました。11月6月期には売上高103億円、経常利益2億円、実質無借金で現預金20億円を保有する状態で、倒産からはほど遠い財政状態でした。

倒産の主な理由は、資金の流出による資金繰りの急激な悪化といわれています。ダイセンは、買収の返済資金をさとうべネックに求め、その結果買収からわずか8ヶ月後に経営破綻しました。譲渡企業に負債が移転するLBOのリスクが表面化した事例のひとつといえます。

*7整理回収機構:不良債権の回収を業務とする株式会社のこと。

まとめ

LBOは少ない自己資本で買収を行うことができます。また、SPCに出資する金額のみ負うという限定されたリスクも大きなメリットです。

しかし、買収の対象となる譲渡企業のキャッシュフローを生み出す事業を担保に金融機関から借入を行うなど、複雑な点も含んでいるため、不明点がある際はM&Aの専門家に相談して、疑問点を解消しましょう。

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