M&Aは身の回りに溢れている

一日の始まりを想像してみてください。朝起きて、歯を磨き、シャワーを浴びる、ご飯を食べる。服を着替えたあとは、学校や会社にいく人もいれば家で過ごす人もいるでしょう。あなたはどんな日常を想像しましたか?

当然ですが、私たちが普段使用しているものは、誰かが提供してくれたサービスです。全員の生活をより豊かにするために多くの会社がサービスの向上に努めており、私たちはその恩恵を受けていますが、実は人口減少による働き手不足により、2017年には約3万社も廃業していることをご存知でしょうか。また昨今のグローバル化の影響を受け、現在多くの企業が業界再編の波に飲まれているため、このままではさらに廃業が加速する危険性があります。そんな、人口減少及び事業の多角化の必要に迫られている企業の多くが実施している経営手段がM&Aです。

M&Aとは

M&AとはMergers & Acquisitionsの略で、企業同士が合併・買収する行為を指します。誰もがご存知の大企業がM&Aを行った、というニュースを聞いたことのある方も少なくないはずです。しかしながら蓋を開けてみれば、大小はあれど、実に多くの企業がM&Aを行っているのです。

本記事では、M&Aを身近に感じていただくために、数多くのM&AをサポートしてきたM&Aアドバイザー監修のもと、生活に欠かせない「衣・食・住」にまつわるサービスを提供している企業のM&A事例10選を紹介いたします。これを読み終わったあとには、「M&Aって大々的なものかとおもっていたけど、こんなに多くの企業が行っているのか」と思っていただけるでしょう。

 
目次
【衣】国民におしゃれを提供する企業2選
【食】あなたの食事を支える企業2選
【住】暮らしの当たり前をサポートする企業3選
専門家からのコメント

今回話を聞いたM&Aアドバイザー


FUNDBOOK M&Aアドバイザー 田中 哲

田中 哲

株式会社FUNDBOOK
営業戦略本部ヴァイスプレジデント

2008年に株式会社三井住友銀行へ入社。投資銀行部門にて金融債権の流動化業務に携わった後、上場企業から中堅規模の法人営業に従事。2015年に株式会社日本M&Aセンターに入社し、提携している金融機関との協業におけるスキームを主として、譲渡企業側のアドバイザーとしてさまざまなM&A事業や業務に携わる。2015年の入社メンバーでは売上1位となる。2017年11月に株式会社FUNDBOOKへ入社、現在に至る。

【衣】国民におしゃれを提供する企業2選

1.【ユニクロ・GU】株式会社ファーストリテイリング

株式会社ファーストリテイリングは「ユニクロ」を運営している国内最大手のアパレル会社です。「ユニクロ」のセカンドラインである「GU」も若年層を中心に圧倒的な認知度を誇っていますが、そんなファーストリテイリング社も世界的なシェアの拡大を図るために、M&Aを実施しています。

同社はM&Aに対して数年間で3,000~4,000億円を投資し、自社ブランドの海外販路を獲得していく動きを見せています。具体的には「Theory」「COMPTOIR DES COTONNIERS 」「J BRAND」などを買収しており、世界的な販売店舗数の増加だけでなく、新たなデザイン、機能性を備えた商品を開発中とのことです。

参考URL:M&A strategy – Fast Retailing

2.【ZOZOTOWN】株式会社ZOZO

株式会社ファーストリテイリングがM&Aで販売店舗の拡大を図っているのに対し、「ZOZOTOWN」で知られる株式会社ZOZOはすこし異なる目的でM&Aを行っています。ZOZO社はアプリを使用したECファッションモールを展開しています。そのため、インターネット上の使いやすさが購買の意思決定に寄与します。そこでZOZO社はアプリの動作を安定させ、より高い顧客体験を生み出すために、アプリ開発のノウハウを持った電子書店を運営している会社を子会社化した過去があります。

また、インターネット上で数百社の中から好みの衣服をコーディネートできるファッションメディアの運営会社も子会社化しており、さらなる技術力の向上を図っています。同社の代表取締役CEOである前澤友作氏は「市場規模の拡大のためにプライベートブランドを推進していく」と宣言しており、今後も必要に応じて積極的なM&Aを行うと予想されます。

参考URL:スタートトゥデイ、ファッションメディア「IQON」などを手がけるVASILY社を完全子会社化
参考URL:会社沿革 – 株式会社スタートトゥデイ

【食】あなたの食事を支える企業 2選

1.【ファミリーマート】ユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社

ユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社は「ファミリーマート」を運営している会社です。コンビニエンスストア業界において競合には「セブンイレブン」、「ローソン」などがあり、同社は業界3番手でした。2016年9月、業界4番手の「サンクス」の運営会社サークルKサンクスを吸収合併することで「ローソン」を抜き業界2番手になりました。現在は「サンクス」の強みを取り入れるとともに、「サンクス」の屋号を「ファミリーマート」に変換していくことで、さらなる認知度向上と、独自性を持った商品を提供していくようです。

参考URL:株式会社ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス株式会社との吸収合併契約締結および株式会社ファミリーマートと株式会社サークルKサンクスとの吸収分割契約締結並びに商号の変更に関するお知らせ

2.【AEON】イオン株式会社

国内スーパー最大手のイオン株式会社は、1970年ごろから総合スーパー事業を中心とした小売販売を行っていました。現在ではサービス・専門店事業、総合金融事業など幅広い事業領域でビジネスを行っています。

スーパー業界は1990年代のコンビニエンスストアの台頭により、売上が減少し続けていました。そこでイオン社は「ウエルシア薬局」を運営している、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングス株式会社を子会社化するなど、利用者との接点を増やすことで総合的な売上改善を図ってきました。現在では下がり続けた売上が8.4兆円までに回復し、再び業績を伸ばし続けている真っ最中です。今後も収益力をあげるために、プライベートブランドの商品を拡充していき、小売業界でのイオングループの存在感を更に強めていくことが予想されます。

参考URL:イオングループ 2020年に向けて

【住】暮らしの当たり前をサポートする企業 3選

1.【無印良品】株式会社良品計画

株式会社良品計画は「無印良品」を運営している会社です。「無印良品」は1980年、株式会社西友のプライベートブランドとして生まれましたが、その9年後、西友の完全子会社である良品計画社が設立されました。現在は「無印良品」事業を譲り受ける形で独立し、会社としての価値観がマッチする企業を、国内外問わず子会社化しており、2017年にはオリジナルデザインの家具を提供している株式会社イデーを吸収合併しました。

現在は「MUJI」ブランドでカフェや小型店舗の展開を推進しています。「MUJI」ブランド拡大のために、ホテルや住宅、生鮮食品の分野で良品計画社の理念に合致する企業は必要に応じて積極的に買収していくかもしれません。

参考URL:子会社(株式会社イデー)の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

2.【ニトリ】株式会社ニトリホールディングス

「”お、ねだん以上。”の価値を。」のキャッチフレーズで知られる家具販売店「ニトリ」を運営している株式会社ニトリホールディングスですが、同社はホテル事業など、家具販売以外の事業も手がけています。

その中でも不動産事業の拡大のために、2017年7月に株式会社カチタスと資本提携を行いました。カチタス社は北海道から沖縄までの日本全国の123店舗で中古住宅の販売をしている会社で、それにより一気に販売網を拡大しています。今後ニトリ社はM&Aを用いて、既存の家具販売事業に加え、さらに住宅販売事業に注力していくようです。

参考URL:株式会社ニトリホールディングスとの資本・業務提携に関するお知らせ

3.【ビックカメラ】株式会社ビックカメラ

株式会社ビックカメラは電化製品の販売を行っている会社です。2012年5月に株式会社コジマを買収し、業界2位の売上規模になりました。しかし、AmazonをはじめとしたECショップに顧客が取られた影響もあり家電業界の売上が低迷していました。この状況を打破するため、同社は2018年7月に株式会社エスケーサービスを子会社化しました。

エスケーサービス社は、大型家電の配送に強みをもっており、家電の配送だけでなく施工や管理も行っているため、家電が届いた後の設置フォローができます。ECショップでは行うことのできない、販売後のアフターケアサービスを用いて差別化を図っています。

参考URL:簡易株式交換による株式会社エスケーサービスの完全子会社化
に関するお知らせ

【番外編】スマートフォン・通信企業 厳選2選

現代を生きる私たちの生活に欠かせないのは衣食住だけではありません。今やスマートフォンも生活において非常に大きな役割を担っています。そこで番外編としてスマートフォン、アプリで離れた人とのコミュニケーションを支える会社のM&Aの事例を紹介していきます。

1.【LINE】LINE株式会社

LINE株式会社はメッセンジャーアプリの「LINE」を中心とした、インターネット上のプラットフォーム事業を行っています。同社は前述のアプリ以外にも、動画や音楽、ゲームなどのコンテンツ事業や決済サービスなど、様々な事業を展開しています。

「LINE」は生活領域をプラットフォーム化するために、2016年10月、webで出前を注文できる「出前館」の運営会社、夢の街創造委員会株式会社と業務提携しました。今後も日常生活の利便性をより高めるために、自社での事業開発だけでなくM&Aによる事業買収が行われる可能性が高いでしょう。

参考URL:夢の街創造委員会株式会社 企業情報>沿革
参考URL:【LINE】事業戦略発表会「LINE CONFERENCE 2017」を開催

2.【au】KDDI株式会社

KDDI株式会社は3大キャリアの一つ「au」の運営会社です。携帯電話事業以外にも音楽コンテンツや生命保険事業などを幅広く手がけています。同社は、2017年11月に英会話学校を運営する株式会社イーオンを買収しました。携帯のキャリア会社として生活を支えている「au」ですが、事業領域の拡大のために、ICTサービスと英会話教室のノウハウを組み合わせ、英語の学習者に本業の通信分野での利便性を提供し、「au」のサービス満足度を高めることを狙っているようです。

参考URL:イーオンホールディングスの株主異動について

【専門家によるコメント】

実は皆さんが思われる以上にM&Aは身近なものです。
今回取り上げている事例はB to Cの企業が中心となっていますが、これらの企業は日々お客様に接し続けているからこそユーザーのニーズに敏感になり、常に最高のサービスを提供する必要があります。
 
しかしながら、昨今の情報社会ではトレンドの変化速度が上がっており、自社内で戦略をたてるだけでは追いつききれない実状があります。このような問題を解決するためにM&Aがあるのです。
アパレル業界ではECサイトを中心に展開している会社が実店舗を買収したり、飲食業界では「すき家」を運営しているゼンショーホールディングスが食品スーパーの運営会社を子会社化したりと、対象企業は非常に横断的です。
 
M&Aの後もお互いの社名に変更のあるところはそれほど多くないため、なかなか気づくことはないですが、私たちの生活を支えているモノ、そして企業は、M&Aを含めた数多くの戦略により日々サービスの向上を図っているのです。

 

今まではM&Aと聞くとなかなか難しく私たちの生活に結びついていないイメージがあったかもしれませんが、本記事を通じて少し身近に感じていただけたのではないでしょうか。次にM&Aという言葉を聞いたときには、私たちの生活にどのような影響が出てくるのか注目してみると面白いかもしれません。