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2023/09/14

M&Aにおける配当金の基礎知識

M&Aにおける配当金の基礎知識

株式を保有していることで配当金を受け取った際やM&Aで株式を取得した場合は、会計処理や税務の面などで必要な手続きがあります。本記事では、M&Aにおける配当金や配当金を利用した節税対策について、押さえておきたい基礎知識を解説します。

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受取配当金の税務

受取配当金の益金不算入制度について

受取配当金の益金不算入とは、法人が内国法人から受けた配当については、会計上は収益として計上されるものの、税務上は出資割合に応じてその一部(ケースによっては最大で全額)につき、益金に算入されずに、課税所得の計算では控除されることを指します。

つまり、株式譲渡により得られた配当金は税務上、益金として算入しません。そのため、課税所得の計算としては控除となり、結果として節税することができます。

具体的な仕組みを説明すると、まず内国法人の場合、税法上、原則として配当の額の50%が益金の額に算入されません。

また、配当を受ける法人が配当を行う法人の発行株式総数の3分の1以上を6ヶ月以上、引き続き保有する場合には、配当の全額から負債利子の額を控除した金額が益金の額に算入されません。また、後述する配当計算期間を通じて株式を100%保有する完全支配関係にある場合には、配当の全額が益金の額に算入されません。

ただし、発行済株式総数の5%以下の割合しか保有していない場合には、配当額の20%のみが益金不算入となります。

また、外国法人についても、外国子会社益金不算入制度があり、日本の親会社が外国子会社から受ける配当は、その配当の95%が益金不算入となります。

該当する条件として、日本親会社が発行済み株式などの25%以上を保有していることと、その保有期間が配当の支払い義務が確定する日の6か月以上前から継続していることが挙げられます。

原則

前回の配当の基準日の翌日(例:X0年4月1日)から今回の配当の基準日までの期間(例:X1年3月31日)

特例

1.過去1年以内に配当の支払いがなかった場合
今回の配当の基準日の1年前の日の翌日(例:X0年4月1日)から今回の配当の基準日までの期間(例:X1年3月31日)

2.1年以上前に設立された法人からの初回配当の場合
今回の配当の基準日の1年前の日の翌日(例:X0年4月1日)から今回の配当の基準日までの期間(例:X1年3月31日)

3.1年以内に設立された法人からの初回配当の場合
設立の日から今回の配当の基準日までの期間(例:X1年3月31日)

4.発行法人から取得した株式の初回配当の場合
取得日から今回の配当の基準日までの期間(例:X1年3月31日)

M&Aで取得した100%子会社の場合の計算期間は、基本的に3月決算会社であれば、前年の4月1日から3月31日が配当計算期間となります。

ここで注意すべきは、期中にM&Aで取得した100%子会社の場合は、最初に迎える決算で配当が行われた場合、前述のように配当計算期間のすべての期間を継続して完全支配しているわけではないと判断されるため、受取配当金の全額は益金不算入とならない点です。この場合、保有状況に応じて配当金の一部のみが益金不算入となります。

益金不算入制度を利用する際は、上記のように持株比率の割合と計算期間がポイントになります。適切な納税をしつつできる限りの節税を行うためにも、これらの仕組みや割合、例外などについて把握することは大事です。

▷関連記事:TOB(株式公開買付)とは?友好的・敵対的TOBの意味や防衛策を解説
 

M&Aにおける配当金の基礎知識

みなし配当とは

みなし配当とは、剰余金の配当または分配などには該当しないものの、実質的に剰余金の配当と変わらないため、これを税法上の配当とみなして、受取配当などの益金不算入の規定の適用を受けることができる制度です。

具体的には、株主などである内国法人が合併や株式分配、自己株式の買付けなどによって金銭などの交付を受けた場合、金銭の額および金銭以外の資産の価額の合計額が交付元の株式または出資に対応する帳簿価額を超えるとき、その超過額はみなし配当になります。

このみなし配当については、株主が配当を受ける際に元々株式を保有している会社なのか、それとも組織再編によって別会社から受け取ったものなのか、またその際に適格要件を満たしているものなのか、など細かく条件が分かれているので、税務の知識がある専門家に相談するのが良いでしょう。

M&Aと配当金

株式譲渡における特別配当について

一般的に、特別配当とは企業の業績が極めて好調であった決算期に、特別という名目で一時的に上乗せされる配当を指します。

株式譲渡における特別配当は、先述した配当金の益金不算入の制度を用いた節税対策として使われます。

例えば完全子会社の譲渡では、事前配当無しとした場合、譲渡した株式の簿価と売却価額の差額が株式売却益となります。株式売却益は課税対象のため、その額に応じた税金が発生します。

これを事前配当ありとした場合、株式売却益から一定の割合を受取配当金とすることで、課税対象となっている株式売却益の額を減らし、支払わなくてはいけない税金の額を減らすことができるのです。

事前配当をすることで、譲渡側が受け取る金額は変わらないまま節税できることに加え、譲受側は事前に余剰現金を配当してもらうことで、用意するキャッシュが減る点がメリットになります。

また、完全子会社の譲渡だけでなく、TOB(公開買付)であってもこの方法は採用できます。実際に、2017年のHKホールディングス株式会社による日立工機株式会社のTOBの際は、日立工機および親会社である日立製作所との間で特別配当金の事前配当を行いました。

その際、1株あたりの評価額を1,450円と定め、特別配当の金額を1株あたり580円、株式買付価格を870円として公開買付を行いました。こうすることで、譲渡側が手にする金額が変わらないまま、課税対象となる金額を減らし、節税することに成功しました。

▷関連記事:株式譲渡とは?中小企業のM&Aで最も活用される手法のメリットや手続き、事前に確認しておくべき注意点を徹底解説

M&Aにおける配当金の基礎知識

配当金と節税対策

M&Aなどを通して得た配当金は、支払いの際に所定の税率により所得税などが課税されます。上場株式の配当金の場合は、所得税および復興特別所得税15.315%に住民税5%を足した20.315%となります。非上場株式の配当金の場合は、所得税と復興特別所得税を足した20.42%となります。

ただし、上場企業の株式の配当金は確定申告で総合課税または申告分離課税のどちらかを申告することで、配当控除または譲渡損失と損益通算や繰り越し控除の適用を受けることが可能です。非上場株式の配当金は総合課税となります。

総合課税とする場合、給与所得や不動産所得、その他の総合課税の対象となる所得を合算した総所得金額から、各種所得控除を差し引いた額に累進税率を適用して計算します。

申告分離課税とする場合、他の各種所得と分離した課税所得金額に一定の税率を適用して計算します。

所得税および復興特別所得税については、金額ごとに累進税率や配当控除率、差引税負担率が異なるのと、所得税についても金額ごとに所得割や配当控除率、差引負担税率が異なってきます。

そのまま課税されるよりも、確定申告をして総合課税または申告分離課税のどちらかを選ぶことで税金を抑えることができる場合があるので、配当金の節税については専門家に相談するといいでしょう。

▷関連記事:株式の譲渡益(売却益)の取得に関する税金の基礎知識

まとめ

受取配当金には益金不算入制度があり、上手く活用することでM&Aの際に節税できることがあります。M&Aではまとまった金銭が関係することもあり、それに伴って関わる税金の額も大きいため、節税はM&Aの成功においても大事なポイントになってきます。

具体的な配当金を利用した節税に関しては、M&Aの専門家に相談することをお勧めします。

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