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2023/10/18

三角合併とは?実施される場面や事例、メリット・デメリットをわかりやすく解説

三角合併とは?実施される場面や事例、メリット・デメリットをわかりやすく解説

M&Aにはさまざまな手法があり、三角合併もその1つです。三角合併は2007年に解禁された手法ですが、実は詳細をよく理解していない経営者もいるかもしれません。

M&Aは、自社の状況に合わせて適切な手法で実施する必要があるため、三角合併に関する知識を理解しておくことで、より適切な判断を下せる場合があります。

本記事では、三角合併の基本的な意味や実施される場面、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説する他、代表的な事例も紹介します。M&Aを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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三角合併をわかりやすく解説

M&Aで最も活用される手法の1つは株式譲渡ですが、その他にも事業譲渡や株式交換、合併など、さまざまな手法があります。

三角合併もM&Aの手法の1つです。この手法は、会社法における合併等対価の柔軟化を図る目的で、2007年に解禁されました。まずは、三角合併の概要や導入された背景、通常の合併との違いを解説します。

三角合併は子会社を通じて吸収合併する手法

M&Aで用いられる手法の1つに吸収合併があります。吸収合併では、原則として存続会社が消滅会社の株主に対価を支払いますが、対価の種類に会社法上の制限はありません。

三角合併では、合併時の対価として、存続会社の親会社の株式を消滅会社の株主に交付します。つまり、三角合併を行うことで、存続会社の親会社は子会社を通じて別の会社を吸収合併することが可能になります。

三角合併は国内企業同士のM&Aでも行うことが可能ですが、主にクロスボーダーM&Aで用いられるケースが多いです。

クロスボーダーM&Aに関する詳しい説明は下記記事をご覧ください。
▷関連記事:クロスボーダーM&Aとは?目的・メリット・成功のポイントや事例

三角合併が導入された背景

三角合併の導入前も、国内企業間では、合併(新設合併・吸収合併)や株式交換などによる会社の買収が可能でした。一方で、外国法人とのクロスボーダーM&Aは、リーガルリスクにより手続きが困難でした。

海外からの直接投資は、新技術や経営革新をもたらし、雇用機会の増加にもつながります。そこで、当時の日本政府は、海外から日本への直接投資を拡大するため、法改正に乗り出します。

このような背景のもと、2006年に施行された新会社法には、三角合併の解禁が盛り込まれました。

しかし、外資による日本企業の買収リスクを懸念して、M&A環境の整備と買収防衛策の導入期間を確保するために、三角合併を含む対価の柔軟化は1年後の2007年に施行されました。

三角合併では、存続会社の親会社に国籍の規定はなく、解禁後は外国企業が日本で子会社を設立して、吸収合併を行うことが可能です。

吸収合併と三角合併の違い

一般的に、日本国内の企業間で行われる合併は、新設合併と吸収合併に分類されます。三角合併と従来の合併との大きな違いは、消滅会社の株主が受け取る対価です。下記の表は、新設合併・吸収合併・三角合併の違いをまとめたものです。

合併の種類対価合併後の消滅会社(株主)の立ち位置
新設合併新設した合併会社の株式新設した合併会社の株主
吸収合併存続会社の株式存続会社の株主
三角合併存続会社の親会社の株式存続会社の親会社の株主

例えば、2社間で実施される吸収合併では、存続会社の株式を消滅会社の株主に交付します(※)。

一方、三角合併は存続会社の株式を対価とするのではなく、存続会社の親会社の株式を対価として消滅会社に交付します。

会社法では、原則として子会社が親会社の株式を取得することを禁止しています。しかし、三角合併においては、子会社が合併の対価として親会社の株式を取得することが認められているため、このような図式が成り立つのです。

※存続会社と消滅会社が締結する合併契約の中で対価を規定すれば、株式以外を対価とすることもできます。

三角合併が実施される場面

三角合併が実施される主な場面は、大きく次の2つに分けられます。

・外国企業が日本国内の企業を完全子会社化する場合
・合併後に存続するのが非上場企業、消滅するのが上場企業の場合

それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。

外国企業が日本国内の企業を完全子会社化する場合

三角合併は、外国企業が日本国内の企業を完全子会社化する時に用いられます。

外国企業が日本国内の企業を完全子会社化するためには、対象企業の株主から個別に株式を買い取る方法がありますが、対象企業に複数の株主がいる場合の個別買取は、現実的に困難を極めます。

また、外国企業による子会社化はリーガルリスクが高いため、株式交換による子会社化も難しいでしょう。

しかし、三角合併を活用すれば、外国企業は日本国内に設立した子会社を通じて国内企業を吸収合併し、完全子会社化することが可能です。

合併後に存続するのが非上場企業、消滅するのが上場企業の場合

日本国内の企業間の吸収合併では、存続会社が非上場企業で消滅会社が上場企業の場合があります。このような場合に、三角合併が活用されることがあります。

例えば、消滅会社(上場企業)がA社、存続会社(非上場企業)がB社、B社の親会社(上場企業)がC社とした場合を考えてみましょう。

吸収合併では、A社(消滅会社)の株主が対価として受け取るのはB社(存続会社)の株式ですが、非上場会社の株式のため、流動性が低下します。つまり、現金化が難しくなるため、A社の株主は不利益を被る可能性が高くなります。

もちろん、C社(B社の親会社)がA社を吸収合併することも可能ですが、A社とB社が同業種など、B社とのシナジー効果のほうが高い場合も考えられるでしょう。

こういった状況で三角合併を採用すれば、A社は上場企業であるC社の株式を受け取れるため、株式の流動性を維持でき、B社はシナジー効果が期待できるA社を吸収合併、C社は子会社の価値が向上するため、三者にとってメリットが生まれます。

三角合併のメリット

三角合併とは?実施される場面や事例、メリット・デメリットをわかりやすく解説

三角合併を実施するメリットには、主に以下の3点が挙げられます。

・外国企業は現金不要で国内企業を子会社化できる
・存続会社を100%子会社としたまま消滅会社の支配権を得られる
・税制上の優遇がある

それぞれ解説します。

外国企業は現金不要で国内企業を子会社化できる

外国企業にとっては、現金不要で国内企業を子会社化できる点が最大のメリットです。

現金を使わずに子会社化する場合、国内企業間の取引では一般的な合併や株式交換などでも三角合併と同等の目的を達成できますが、外国企業の場合は、リーガルリスクの観点から三角合併を活用するしかありません。

存続会社を100%子会社としたまま消滅会社の支配権を得られる

日本国内の企業間で三角合併を行うメリットの1つは、存続会社である子会社の支配権を維持したまま、消滅会社の子会社化が可能な点です。

例えば、消滅会社をA社、100%子会社である存続会社をB社、B社の親会社をC社として、C社がB社を通してA社を吸収合併する場合を考えてみましょう。

吸収合併では、B社(存続会社)の株式をA社(消滅会社)の株主に対価として譲渡します。その結果、C社(B社の親会社)から見ると、B社の支配権が100%維持されないことになります。

C社がB社を100%子会社に戻すためには、合併後にB社の株主に対して株式交換を行い、C社の株主に変えなければいけないため、2度手間が生じてしまいます。

一方、三角合併では、事前にB社(存続会社)がC社(B社の親会社)の株式を仕込むことが例外的に認められているため、手間を軽減してA社(消滅会社)を完全子会社化することが可能です。

税制上の優遇がある

三角合併のメリットには、税制上の優遇も挙げられます。

従来の税制では、直接完全親会社が交付する株式のみ譲渡損益の繰延が認められており、間接完全親法人が交付する株式については、株式譲渡損益が発生していました。

しかし、2019年の税制改正により、間接完全親法人が交付する株式についても適格合併の要件を満たせば、消滅会社の株主は譲渡損益の繰延が行えるようになっています。

三角合併のデメリット

三角合併にはメリットがある反面、デメリットもあります。
ここでは、三角合併の主なデメリットを紹介します。

訴訟のリスクがある

三角合併では、合併後の状況次第で、既存株主から訴訟を起こされるリスクがあります。

例えば、「ダイムラー(独)」と「クライスラー(米)」の合併では、合併後もコントロールと組織の問題が解決されず、合併から数年後には株価が低迷しました。

その結果、合併の際に十分な説明がなされていなかったことを理由に、いくつかの投資家グループから損害賠償を請求されています。

経営や市場への影響

会社法では原則として、子会社による親会社の株式取得を禁止していますが、三角合併においては認められています。

ただし、子会社が親会社の株式を取得するため、一時的とはいえ市場のパワーバランスに影響を与えるリスクがあります。

また、株式の取得方法によっては意図せず法律に抵触してしまう場合も考えられ、それによってブランドを毀損して経営に影響を与える可能性もあります。

このようなリスクを回避するためにも、三角合併を行う際は、専門家の意見を聞きながら慎重に取り組む必要があります。

三角合併を実施する際の注意点

三角合併を実施する際は、注意しなければならない点が3つあります。

・敵対的買収には使えない
・存続する子会社が親会社の株式を取得できる
・端数株式の処理が発生する場合がある

三角合併を検討している経営者は、主な注意点を把握しておきましょう。

敵対的買収には使えない

敵対的買収とは、買収する側の企業が買収対象企業の取締役会の同意を得ずに、TOBにより株式の買い付けを行うことです。

三角合併の導入は、友好的な提携を促す制度として解禁されているので、敵対的買収の手段としては利用できません。

三角合併では、消滅会社の株主に存続会社の親会社の株式を対価として交付します。三角合併を成立させるためには、存続会社と消滅会社の間で同意が必要になるため、敵対的買収には使えません。
▷関連記事:敵対的買収とは?仕組みやメリット・デメリット、事例や防衛策を解説

存続する子会社が親会社の株式を取得できる

会社法では、「子会社は、その親会社である株式会社の株式を取得してはならい」とされていますが、三角合併では、子会社が親会社の株式を取得できます。

子会社が親会社の株式を取得する方法には、以下が挙げられます。

・親会社の株式を市場で大量に購入する
・親会社に対して増資をして株式を取得する

ただし、いずれの方法も簡単ではないため、実施する際は専門家への相談が不可欠です。

端数株式の処理が発生する場合がある

合併対価の割り当てに関しては、消滅会社の株主に交付する株式に端数が出る場合が考えられます。その場合、存続会社による買い取りまたは競売によって、端数に相当する金銭の交付が可能です。

ただし、存続会社の親会社の株式が合併対価である三角合併の場合は、端数処理の手続きが取れません。そのため、存続会社は、対価として親会社の株式と端数相当の現金で支払う必要がある点に注意が必要です。

三角合併の代表的な3つの事例

三角合併のイメージを掴むためには、実際の事例を確認することも大切です。
ここでは、三角合併の代表的な事例を3つ紹介するので、参考にしてください。

オリックス証券によるジェット証券の買収

2009年、ネット証券ビジネスを主力としてさまざまなサービスを提供しているオリックス証券は、同領域の黎明期からユニークなサービスを提供するジェット証券との合併を発表しました。

合併方式は、オリックス証券が親会社のオリックス株を取得し、ジェット証券の株主に割り当てる三角合併です。

この合併によって、安定した経営基盤を持つオリックス証券にジェット証券の企画力が加わることで、さらなる経営基盤の強化と顧客満足の向上が期待されています。

シティグループ・ジャパン・ホールディングスによる日興コーディアルグループの買収

2007年、米シティグループはシティグループ・ジャパン・ホールディングスを通じて、日興コーディアルグループを完全子会社化することを発表しました。米シティグループの株式を対価とした株式交換によるもので、日本で初の外国企業による三角合併の事例です。

米シティグループは、日興コーディアルグループの完全子会社化を通じた事業統合の取り組み推進や強化を目的としていました。一方の日興コーディアルグループは、証券取引等監視委員会から不正会計を指摘されて処分を受けていたため、三角合併による提携強化策で、毀損したブランド価値の再構築を図ることを目的としています。

GCAホールディングスと米投資銀行サヴィアンによる経営統合

2007年、GCAホールディングスと米投資銀行サヴィアンは、経営統合を発表しました。両社は共同で株式移転を行うことで、新たに持株会社GCAサヴィアングループを設立しています。

この事例では、GCAが米国に子会社を構えるのではなく、米サヴィアンが日本に親会社を持つことによって、日本の会社法の下で三角合併を実現しました。

前段階として、株式移転の主体となる親会社を米サヴィアンが日本に設立し、その際に米サヴィアンの既存株主が持ち株を現物出資することで、親会社の株主になりました。この親会社が株式移転の主体になり、既存株主は新持株会社の株式を受け取りました。

なお、GCAはこの統合により、クロスボーダーM&Aに対応できる体制を確立しました。

まとめ

三角合併は、2007年より解禁されたM&Aの手法の1つです。従来の合併では、消滅会社に対して存続会社の株式を対価として交付するのが一般的でしたが、三角合併では存続会社の親会社の株式を交付します。

三角合併は主にクロスボーダーM&Aで活用されることが多いですが、日本国内の企業間におけるM&Aでもメリットがあります。

ただし、訴訟のリスクや市場への影響などデメリットがある他、実施する際は注意点もあるため、三角合併をするのであれば、専門家と相談しながら進める必要があるでしょう。

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