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2023/09/26

M&Aにおけるコーポレートガバナンスの目的や強化方法、注意点を解説!

M&Aにおけるコーポレートガバナンスの目的や強化方法、注意点を解説!

コーポレートガバナンスは、日本語で「企業統治」を意味します。

M&A成立後のPMIにおいて、コーポレートガバナンスの統合、強化は重要な課題です。企業経営に欠かせない仕組みであるコーポレートガバナンスですが、言葉自体は知っているものの、仕組みや目的を正確に理解できていない方もいるのはないでしょうか。

本記事では、コーポレートガバナンスの意味や目的、M&Aにおけるコーポレートガバナンスの強化や注意点を解説します。コーポレートガバナンスの基本を理解し、M&Aの進行に活かしましょう。

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コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスとは、企業が自社を取り巻く環境を踏まえ、透明・公正かつ迅速な意思決定を行うための仕組みです。

企業には、株主や従業員、顧客や地域社会など、複数の存在が関わっています。もし、企業が不正や不祥事を行った場合、企業だけでなく、株主や従業員など企業に関わる存在への影響も計り知れません。実際、商品データの改ざんや粉飾決算、入札談合などの不祥事により、企業を取り巻くステークホルダーの利益が大きく損なわれた例も見受けられます。

企業が健全に成長し、ステークホルダーの利益が守られるためには、企業経営の透明性や公正性が欠かせません。このような要請から、2015年3月5日に金融庁と東京証券取引所が共同して「コーポレートガバナンス・コード」が策定されました。コーポレートガバナンス・コードには、コーポレートガバナンスを実現するための原則と指針が示されています。

コーポレートガバナンス・コードが策定された背景

コーポレートガバナンスが策定された背景には、企業の持続的な成長と株主価値の向上、そして透明性と公正性を担保するという目的があります。これは、グローバルな市場での競争を勝ち抜くための企業経営力を醸成することが狙いです。

コーポレートガバナンス・コードは2014年6月の日本再興戦略で策定が明示されたのち、有識者会議での議論が重ねられ、策定されています。

コーポレートガバナンスと内部統制の違い

内部統制とは、企業の経営者や従業員などの組織を対象に、コンプライアンスやリスクマネジメントに関するルールや監視体制を構築し、機能させることです。

内部統制が組織内部をコントロールする仕組みである一方、コーポレートガバナンスは、組織内部だけでなく株主や地域社会など、幅広いステークホルダーを対象とします。そのため、内部統制はコーポレートガバナンスに含まれる概念と捉えられています。

コーポレートガバナンスの目的と基本原則

コーポレートガバナンスの目的は、「コーポレートガバナンス・コード」の5つの基本原則に示されています。

・株主の権利・平等性の確保
・株主以外のステークホルダーとの適切な協働
・適切な情報開示と透明性の確保
・取締役会等の責務
・株主との対話

以下で、5つの基本原則の内容を解説します。

株主の権利・平等性の確保

コーポレートガバナンスの目的の1つは、株主の権利と株主間の実質的な平等性を確保することです。株主は企業の資本を提供する重要な存在です。株主が権利を円滑に行使できるよう、企業は適切な対応を図る必要があります。

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

企業は、経営者や取締役などの経営陣だけで活動しているわけではありません。従業員や顧客、債権者や地域社会なども、企業価値を向上させるために大切な役割を果たしています。

コーポレートガバナンスでは、このような株主以外のステークホルダーと適切に協働し、企業の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に取り入れていくことが求められます。

適切な情報開示と透明性の確保

コーポレートガバナンスの重要な目的は、企業の透明性や公正性を確保することです。そのため、企業は財務情報および非財務情報を法令に基づいて開示するとともに、主体的に情報提供を行う必要があります。投資家保護や市場からの信頼性確保の面でも、適切な情報開示は欠かせないポイントです。

取締役会等の責務

コーポレートガバナンスの実現には、取締役会のリーダーシップが欠かせません。企業の取締役会は「企業戦略の方向性の提示」や「リスクテイクを支える環境整備」の実施が求められます。同時に、経営陣の不正や不祥事を防ぐため、監査役や指名委員会など独立した機関を設置し、経営陣の監督を実効的に行うことも重要です。

株主との対話

「株主との対話」の原則は、日本版スチュワードシップ・コードの策定を受けたものです。株主総会だけでなく、日常的に株主と建設的な対話を持つことは、企業の持続的な成長に有益であると考えられています。

日本版スチュワードシップ・コードとは、「責任ある機関投資家」であるために金融庁が2014年2月に策定した諸原則で、英国の「スチュワードシップ・コード」を参考にして作られました。日本の上場株式に投資する国内外の機関投資家は、日本版スチュワードシップ・コードに定められた原則を遵守するよう求められています。

M&A後のコーポレートガバナンスの強化方法

M&A後の経営統合(PMI)では、コーポレートガバナンスの統合・強化が鍵を握ります。以下、強化の方向性を解説します。

責任や権限を明確にする

M&A後、譲渡企業の持つ責任や権限があいまいなまま、PMIが進められるケースが見受けられます。責任や権限の明確化は、M&A後のコーポレートガバナンス強化の第一歩です。譲受企業は、譲渡企業にどこまで責任や権限を渡すか、事前に検討しておきましょう。

透明性を確保する

コーポレートガバナンス強化のポイントは、透明性をどう確保するかということです。

例えば、役員人事と役員報酬を審議する指名報酬委員会を設置し、その構成員の過半数を社外取締役とする施策は、経営の透明性を確保する1つの手段になります。また、業績管理の指標にKGIだけでなくKPIを設定しておくと、原因を把握しやすくなり、透明性の確保につながります。

主体性を向上させる

譲受企業のみがコーポレートガバナンスの強化を主体的に行っても、十分な成果は得にくくなります。譲渡企業の経営陣や人材にも、プロジェクトチームに参加してもらうなどの施策を行いましょう。譲渡企業が主体的に参加できる仕組みづくりをすると、ガバナンス強化の進捗状況も把握しやすくなります。

価値観を共有する

ガバナンス強化に限らず、譲渡企業と譲受企業の間の価値観の共有はM&Aの成功に欠かせません。譲渡企業の経営者や従業員に譲受企業が考える経営の方向性を説明し、価値観を共有しておきましょう。人材基盤を強化するためにも、譲渡企業の関係者とコミュニケーションを図り、必要な場合は経営の方向性を見直すことも重要です。

人材の確保と育成の仕組みづくりをする

M&Aを行った際、譲受企業側が譲渡企業のどこに優秀な人材がいるのか把握できていないケースも多く見られます。コーポレートガバナンスを進める人材の確保のためには、より幅広い層の人材を把握し、育成する仕組みづくりが求められます。

M&A後のコーポレートガバナンスの注意点・ポイント

M&A成立後のコーポレートガバナンスの確立は、PMIを進めていくうえで重要な課題です。以下では、コーポレートガバナンスを確立する際の注意点やポイントを紹介します。

組織の風土や文化を正確に理解する

M&Aでは、組織風土や文化が異なる2つの企業が統合します。譲受企業と譲渡企業双方の経営層だけでなく、各部門・部署など幅広いレベルでのコミュニケーション・相互理解の意識が重要です。

意思決定のプロセスを明確にする

M&A後のPMIでは多種多様な意思決定が求められますが、そのプロセスが明確でないと譲渡企業に所属する人が不信感を抱く原因となり得ます。意思決定のプロセスは明確にし、場合によっては譲渡企業に一定の責任と権限の委譲する施策も検討しましょう。

統合戦略を共有する

M&A後の統合戦略が当事者間で共有されていない状況では、譲渡企業は納得して統合を進められず、コーポレートガバナンスを保つことは難しいでしょう。統合の進捗状況にあわせて譲渡企業の関係者と戦略を共有しておくと、譲渡企業側も統合のゴールが把握しやすくなります。

重要な人材の流出を防ぐ

M&A後は人事評価やキャリアアップの制度などが不透明になりやすいため、企業に不信感を抱いて人材が流出する可能性があります。M&A後は、速やかに「説明会を開催する」「個別面談を行う」などして、状況を説明しておきましょう。これにより譲渡側の従業員の不安や混乱を防止でき、人材流出の防止に役立ちます。

M&A後のコーポレートガバナンスの事例

M&A後のコーポレートガバナンスを具体的にイメージするには、先行事例にあたる方法が近道です。以下、3つの事例を紹介します。

オムロンの事例

オムロンのM&Aの特徴は、譲渡企業と各段階で議論を行い、自社の理念の浸透を図っている点です。PMIの戦略策定段階から譲渡企業と協働で行い、M&A成立後にもすみやかに譲渡企業の関係者に理念の説明を行っています。また、3年間の期間を設定し、詳細なPMIのスケジュールを立案しています。

サントリー食品インターナショナルの事例

サントリー食品インターナショナルは、アジア事業で合弁会社形態を採用しています。譲受企業側がイニシアチブの多くを握るのではなく、現場が主体的にガバナンスを行う仕組みです。譲渡企業の理念を理解したうえで、自社の経営理念を説明する共同経営を行っています。

日立製作所の事例

日立製作所のM&Aで特徴的な点は、国籍や性別にとらわれない人材の融合です。イタリアやイギリス、アメリカなど多くの国の企業を買収する過程で、グローバルな人材活用のデータベース作成やマネジメントの構築を行っています。

まとめ

株主やその他のステークホルダーとの協働や情報開示、透明性を確保するプロセスは、企業の持続的な成長のために欠かせません。コーポレートガバナンスは、ステークホルダーの利害を踏まえたうえで、企業を発展させる仕組みです。

また、M&A後のPMIでもガバナンスは重要な位置を示しています。譲渡企業と譲受企業双方でコミュニケーションを図り、価値観を共有することが大切です。fundbookでは、各業界に精通した専門チームが丁寧に対応し、士業専門家が最適な選択肢を提案します。M&Aでお困りの際は、ぜひfundbookまでご相談ください。

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