経営・ビジネス

2023/10/03

ストックオプションとは?メリットやデメリット、発行までの手順を紹介

ストックオプションとは?メリットやデメリット、発行までの手順を紹介

ストックオプションとは、会社が金額や取得期間を設定した株式の購入権利を個人に付与する制度です。ストックオプションを付与された人は、会社の業績向上による株価上昇がモチベーションアップに繋がり、従業員の士気が高まります。

そこで本記事では、ストックオプションの概要やメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。発行手順や活用時の注意点も併せて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ストックオプションとは

ストックオプションとは、企業側が金額や取得期間を設定した「株式」を個人が購入できる権利を指します。個人については以下の人が対象です。
・従業員
・取締役
・入社予定の人
・会社に関連する外部の人
(アドバイザー・弁護士・投資家 など) 

ストックオプションの一例を挙げましょう。

《企業》 → 1株500円に設定した株式を、1,000株獲得できる権利を個人に与える
《個人》 → 1株が3,000円になった時点で売却する

個人は、1株あたり3,000円から500円を引いた差額分の2,500円を得られます。
1,000株すべてを売れば、250万円の報酬です。

このように、ストックオプションは個人の士気を高める効果があるため、企業戦略としても用いられます。ストックオプションの付与には「無償」と「有償」があり、個人は「売買時には税金がかかる」点を念頭に置きましょう。「無償付与=給与取得」として扱われるため、受け取った個人には最大55%の税金の支払いが課されます。

報酬額の半分以上も税金に取られる状況を改善するために、現在では税の優遇制度もあるので活用しましょう。税金対象の範囲を減らせる制度については後述で詳しく説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

ストックオプションの種類

ストックオプションの手法は、主に以下の3種類です。

・通常型(無償付与)
・株式報酬型(無償付与)
・有償

それぞれの特徴についてみていきましょう。

通常型ストックオプション(無償付与)

通常型ストックオプションでは、事前設定した株式価額よりも株価が上昇したタイミングで、付与の権利を行使します。一般的に用いられる手法であり、売却した個人は事前設定価額よりも多くの報酬を得られるメリットがあるのです。

通常型ストックオプションを用いた取引は税制適格に該当するため、受取時にかかる税金を減らせる可能性があります。本来ならば「無償付与 = 給与」とみなされ、受け取っただけで税金がかかるのが通例です。

しかし、条件を満たせば株式売却時のみにかかる税金の支払いで済みます。
税の負担軽減は個人に大きなメリットとなるので、今後、通常型ストックオプションを活用する企業が増えるでしょう。

株式報酬型ストックオプション(無償)

権利行使価額を低く設定し、購入時と売却時の利益をほぼ同等にした方法が「株式報酬型ストックオプション」。行使価額を低めに設定することから「1円ストックオプション」との別名もあります。

株式型ストックオプションでの取引時には「税金がかかる回数が2回」という点に注意しましょう。

・受取時
・売却時

株式型ストックオプションは「税制非適格」となるため、税の優遇措置がありません。
一方で「株価1円」のように価額を低めに設定しているので、市場株価が低くても比較的行使がスムーズになるメリットもあります。

有償ストックオプション

有償ストックオプションは無償付与とは違い、個人が株式を購入しなければなりません。

株価が上がった際も発行時と同じ金額で購入できるメリットがある一方で、購入資金が必要というデメリットもあります。有償ストックオプションでも、個人に対して税金の支払いが発生します。

理由としては、購入株式は金融商品扱いになり、譲渡課税が課されるからです。さらに、個人だけでなく企業側にも注意点があります。

有償ストックオプションの利用は、新株を発行する必要があるため、発行資金を用意しなければなりません。資金繰りをしてから導入できると、企業成長が傾くリスクを減らせるでしょう。

新株予約権との違いについて

ストックオプションと勘違いしやすい用語に「新株予約権」があります。
新株予約権とは、個人が会社により価額を指定された株式の取得を、事前に予約できる権利のこと。

ストックオプションと新株予約権の違いは、以下のとおりです。
・新株予約権・・・株式を取得する個人に制限がない
・ストックオプション・・・株式を取得する個人を限定している

2つの大きな違いは、株式取得できる個人を「限定しているか否か」です。
新株予約権の一種に、ストックオプションが位置づけられていると考えましょう。

ストックオプションのメリット

ここからは、ストックオプションのメリットについてご紹介します。

・優れた人材を確保できる
・従業員のモチベーション向上につながる

それぞれ詳しくみていきましょう。

優れた人材を確保できる

優れた人材を確保するために、ストックオプションは有効な手段といえます。「企業が成長した場合、成功報酬がある」ことを説明すれば、好条件から優秀な人材を集めやすくなるのです。

・新規採用の面接のとき
・外部からのアドバイザーを受け入れるとき
・投資家を勧誘したいとき

上記のタイミングでストップオプションを提示すると、スムーズに人材を確保できるでしょう。

また、ストックオプションの行使後「一定の年数は退職できない」といった条件を付けられるため、早期退職者も防げます。ストックオプションは、優秀な人材の確保と流出を防ぐという2つの利点を併せ持った仕組みといえるでしょう。

従業員のモチベーション向上につながる

ストックオプションは、従業員や取締役といった個人の意欲向上も期待できます。
「通常型ストックオプション」は、株価が上がらなければ報酬をもらえないので、従業員は業績を上げなければなりません。

会社の株価が上がれば、個人が手にできる報酬額も比例して大きくなります。
そのため、従業員は業務に対するモチベーションが上がり、取締役も事業計画に対する熱量が上がるでしょう。
従業員全体の士気が高まることは、会社にとって成長のチャンスといえます。

ストックオプションのデメリット

ストックオプションには、メリットだけでなくデメリットもあります。

・人材の早期退職が懸念される
・既存株主の持つ株式価値が薄れる

デメリットまで考慮できると、導入時に上手く活用できる可能性が高くなるのでぜひ参考にしてみてください。

人材の早期退職が懸念される

ストックオプションは、一度利益を獲得した人にとって魅力がなくなるというデメリットがあります。権利を行使した人材の退職を防ぐためにも、ベスティング条項を事前に決めることが重要となるでしょう。べスティング条項とは「企業上場後、一定の期間が経ってから権利を行使できる」といったストックオプションにおける条項です。

たとえば「上場の5年後に権利を行使する」と条件を決めるとしましょう。
報酬を得たい場合、従業員は5年の間会社に残る必要があります。

ほかにもべスティング条項には、権利行使の株数を数回に分けることで、すべての株式売却が完了する期間を伸ばす方法もあります。ストックオプションを導入する際は、早期退職のリスクを考慮した対策が必要です。

既存株主の持つ株式価値が薄れる

ストックオプションの発行数を考慮しないと、既存株主の持つ株式価値が薄れる恐れがあります。
ストックオプションは、発行数に上限が決められていません。そのため、大量に発行した分を従業員や取締役に付与すると、以下のリスクが発生しかねないのです。

・既存の株主が保有している株価の価値の下落
・上場後の株価の下落

ストックオプションでの発行株式数は「全株式の10%程度」を意識すると、リスクの軽減につながるでしょう。

ストックオプションと相性のよい企業

「ストックオプションと相性のよい企業」があります。

・上場を目指す新興企業
・上場企業

通常型ストックオプションは、設定前の価額よりも株価が上昇した時点で権利が行使されるとお伝えしました。

これから株式上場を目指す企業であれば、株価上昇額の振れ幅が大きいため、報酬額も多くなるでしょう。上場後の株価上昇をアピールできれば、優秀な人材集めができるでしょう。

すでに上場している企業も、ストックオプションの活用で従業員のモチベーションを高められます。

ストックオプションの税制優遇措置とは

ストックオプションは、株式の購入と売買を行うため、取引には以下の税金がかかります。

・給与所得(購入時)
・譲渡所得(売却時)

しかし、一定の条件をすべて満たせば「購入時にかかる給与所得を免除することが可能」です。
税制優遇措置を受ける条件については、租税特別措置法第29条の2で規定されており、以下の7つを満たす必要があります。

発行価額無償であること
付与対象者会社およびその子会社の取締役・執行役・使用人
権利行使期間ストックオプションを付与されてから、2~10年後の8年間で購入しなければならない
権利行使価額自社株購入時の価額は、新株予約権にかかる契約時の時価以上で設定する
譲渡禁止規定第三者への譲渡の禁止
権利行使限度額年間の権利行使価額を合計1,200万円以下にする
保管委託権利行使で取得した株式の保管先を決めておく
参考:[租税特別措置法第29条の2]

付与対象者に関しては、令和元年7月に社外の高度人材にまで適用範囲を拡大することが決まりました。
条件の内容が更新される可能性もあるため、常に新しい情報を確認しましょう。

ストックオプションの発行手順

上場企業が、従業員と取締役に対してストックオプションを行う際の発行手順についてご紹介します。
具体的な手順は、以下のとおりです。

1.財務局・証券取引所に事前確認する
2.株主総会にて役員報酬決議を行う
3.募集事項の決定
4.募集事項の通知・公告(割当日の2週間前まで)
5.ストックオプションの申込・割当
6.新株予約権原簿の作成
7.登記

「3.募集事項の決定」では、以下の項目を決めます。

1.募集する新株予約権の内容と数量
2.公正発行/有利発行
3.払込金額の算定方法
4.割当日
5.払込期日

これらの募集事項は、公開会社と非公開会社によって内容が異なり、会社法にて細かく定義されています。公開会社であれば取締役会の決議に加え、割当日の2週間前までに株主に対して募集事項の通知が必要です。

ストックオプション導入時の注意点

会社側がストックオプションを導入する際は、下記の2点に注意しましょう。

・株式の持分比率を10%程度にする
・付与基準を明確にする

大量のストックオプションの行使が行われた場合、既存株の価値が薄まるデメリットがあります。
利用する株式を全体の10%程度にとどめると、既存株にかかるリスクを減らせるでしょう。大量発行は上場時の審査で不利益になる可能性もあるため、発行しすぎないことが大切です。

また、ストックオプションを取り入れる場合は、付与基準を明確に定めましょう。勤続年数や会社への貢献度など、第三者が見ても納得できる指標を定めなければ、付与されない従業員との不公平が生じます。従業員の反感を買わないためにも、上述の2点には十分に注意しましょう。

まとめ

今回は、ストックオプションの概要やメリット・デメリットについて解説しました。ストックオプションは、優秀な人材を確保できる取り組みとして、上場企業や上場を目指す企業で活用されています。
上手く活用できれば、従業員のモチベーションが上がり、さらなる企業成長を期待できるでしょう。
自社の成長を支える手段にストックオプションがあると、企業戦略の幅が広がるはずです。

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