税理士事務所のM&A

日本税理士会連合会の調査によると、全国の税理士の数は77,800人に上り、その数は年々増加傾向にあります。その一方で、2014年時点で税理士の半数以上を60代以上が占めており、事務所の代表の高齢化と後継者不足に直面しています。また、税理士事務所のおもな顧客である中小企業は、年々減少傾向にあります。

歯科 M&A

税理士事務所の業界は今、戦略的に行動を起こさなければ生き残れない熾烈な競争時代に突入しています。そこで、世代交代をスムーズに行い、生き残りをかけた一手として、税理士事務所のM&Aが活発に行われています。

税理士事務所におけるM&A活用のメリット

税理士事務所がM&Aを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。整理をすると、以下のようになります。

譲渡企業のメリット

・代表の高齢化や後継者不足の問題を解決し、スムーズに世代交代ができる

・経営の安定した大手グループの傘下に入ることで職員の雇用を確保でき、場合によってはさらに良い待遇で働ける

・大手税理士法人の傘下に入ることで、顧問先に不安を抱かせることなく、安心して契約を継続してもらえる

・譲渡代金が入ることで、代表は創業者利潤が得られ、引退後の生活資金に当てることができる

・代表は早期リタイアすることも可能

譲受企業のメリット

・実績のある税理士事務所を譲り受けることで、新規の顧問先を獲得することができる

・これまで進出していなかったエリアに拠点を持つことで、事業を拡大することができる

・優秀な人材を一度に獲得することで、きめ細やかな幅広いサービスを提供できる

・短期間で営業拠点を増やすことができる

・年々複雑化している税理士業務を、さまざまなスキルやノウハウを持った人材を確保してフォローできる

M&Aを実施する際に注意したいこと

税理士事務所のM&Aを成功させるためには、以下のような注意点もあります。

譲渡企業の注意点

・税理士業は、一定の顧問先と長期契約を結ぶ変化の少ない業態が多く、独自のスタイルや社風を持つため、M&Aでは譲渡企業・譲受企業双方の理解が大切

・税理士事務所のM&Aは売り手市場だが、沈静化するという見方もあり、M&Aを検討するならできるだけ早くから検討したい

譲受企業の注意点

・譲渡企業は職員の雇用の確保を重視するため、職場環境や労働条件の変更で優秀な人材が退職する可能性もある

・顧問先や時代のニーズに積極的に対応してきた事務所と、従来通りのやり方を続けてきた事務所に二極化しているため、所属している税理士のスキルに差がある

税理士事務所業界のM&A動向

M&Aは、業界の特徴や社会情勢によって交渉の仕方も変わってきます。ここでは、税理士事務所業界におけるM&Aの動向についてご紹介します。

安定経営が裏目に

税理士事務所では、顧問先と長期契約を結ぶことが多く、安定した経営が見込まれてきました。しかし、長年勤めてきた代表が高齢となり、いざ引退しようと考えても後継者がおらず、職員にも有資格者がいないため引き継ぐこともできず、やがて廃業の危機にさらされるというケースが非常に多くなっています。

そのため、比較的小規模な税理士事務所が、積極的に事業拡大を行う税理士法人の傘下に入ったり、小規模事務所同士が統合して規模を拡大したりするM&Aの形態が目立っています。

独自に事業を承継できるのは恵まれたケース!?

税理士事務所の事業承継で後継者がいるのは、恵まれたケースです。例えば、A事務所では所内で唯一の有資格者だった代表が還暦を迎えたことを機に、事務所の経営を譲りたいと考えました。

その際、たまたま親族でかつてこの事務所で修行し、独立したB事務所の若手の代表がいました。やる気にあふれているものの、まだ顧問先が少なかったことから、双方で事業承継を検討。A事務所の職員はそのまま継続して雇用が確保され、代表もそのまま数年事務所に残ることで、業務も代表の交代もスムーズに進めることができたといいます。

しかし、このように適任の後継者に恵まれることはなかなかないのが士業の世界です。税理士事務所の事業承継では、M&Aによる第三者への承継を早い段階で検討することで、譲渡企業の経営者は対応が遅れないよう注意することも重要です。

税理士事務所におけるM&Aをお考えなら

税理士数の増加と業界内の競争激化がめざましい税理士業界では、税理士事務所同士が統合して法人化する動きが活発となっています。ビジネス界のグローバル化によって複雑化する税務に対応するためにも、国際会計基準や多様な先端産業分野に精通した人材を確保できる組織力が求められます。

今後も税理士事務所はM&Aが繰り返されていくと見られています。税理士業界のM&Aが売り手市場である今のうちから、いかに自社にとって最適な譲受企業を見つけることができるかが勝負といえるでしょう。