よくわかるM&A

2023/10/02

上場企業におけるM&Aの現状は?買収の戦略や注意点、最新事例

上場企業におけるM&Aの現状は?買収の戦略や注意点、最新事例

上場企業の成長戦略の一環として、近年多くのM&Aが実施されています。ある企業は自社の生き残りをかけ、ある企業では自社のさらなる発展を目指して、その目的はさまざまです。

実際にM&Aを実施するに至らなくとも、多くの上場企業でM&Aは検討されています。刻々と変化するビジネス環境の中で、顧客や人材、商品やサービスなどの経営資源を確保することは、多くの上場企業にとって重要な課題であるためです。

本記事では、上場企業におけるM&Aの現状から買収戦略、M&A実施の際の注意点を解説します。上場企業によるM&Aの最新事例も紹介しているため、ぜひご一読ください。

【無料資料】
上場企業に負けない 「高成長型企業」をつくる資金調達メソッド
資料
会社が成長している今、「次の打ち手」にお悩みではありませんか?
本資料では自社をさらに成長させるために必要な資金力をアップする方法や、M&Aの最適なタイミングを解説しています。

・縮小する日本経済市場を生き抜くために必要な戦略とは?
・まず必要な資金力を増強させる仕組み
・成長企業のM&A事例4選

M&Aをご検討の方はもちろん、自社をもっと成長させたい方やIPOをご検討の方にもお役立ていただける資料ですので、ぜひご一読ください。
1分で入力完了!

上場企業におけるM&Aの現状について

上場企業におけるM&A件数は2008年のリーマンショックによる経済不況から一時下落していましたが、近年は増加傾向にあります。現在もその傾向は継続しており、2021年の国内上場企業におけるM&A件数はリーマンショック以降最高水準に回復しました。

M&Aの内訳としては、In-In型、すなわち国内企業同士のM&Aが多い点が特徴です。国内企業が海外企業を買収するIn-Out型、海外企業が国内企業を買収するOut-In型は、In-In型と比較すると少ない傾向にあります。また、劇場型の敵対的買収は少しずつではありますが増加傾向です。

上場企業でM&Aが増加する背景には、人材や顧客、技術などを効率的に獲得したいという企業の考えが反映しています。1から新規事業を立ち上げるためには多くの時間や労力が必要です。また、失敗するリスクもあります。M&Aにより既に事業を展開する企業を買収することで、時間や労力を節約し、リスクを軽減することが可能です。

上場企業がM&Aを実施する際の買収戦略

M&Aを実施する上場企業は、各企業の状況や目的、必要性に合わせ、さまざまな買収戦略を策定しM&Aを行っています。ここでは、数ある買収戦略から共通する要素をピックアップし、5つの類型により買収戦略を解説します。

競合企業の買収

1つ目に紹介するのは「競合企業の買収」です。これは、同じ業種・同じ業態であり、生産している商品やサービス、事業を展開する市場や顧客が共通する企業を買収することで、事業の拡大や売上高の増加を図る買収戦略です。

同じ業種・業態の企業であれば、譲受企業はスケールメリットを得やすく、シェア拡大による競争力強化を図れ、M&Aによるシナジー効果が期待できます。また、業態が似ているため、間接部門の統合によるコスト削減も実施しやすくなります。

ただし、これまでライバル企業として競争してきたため、譲渡企業およびその従業員の心理的抵抗が生じやすいデメリットもあります。

競合企業の買収

1つ目に紹介するのは「競合企業の買収」です。これは、同じ業種・同じ業態であり、生産している商品やサービス、事業を展開する市場や顧客が共通する企業を買収することで、事業の拡大や売上高の増加を図る買収戦略です。

同じ業種・業態の企業であれば、譲受企業はスケールメリットを得やすく、シェア拡大による競争力強化を図れ、M&Aによるシナジー効果が期待できます。また、業態が似ているため、間接部門の統合によるコスト削減も実施しやすくなります。

ただし、これまでライバル企業として競争してきたため、譲渡企業およびその従業員の心理的抵抗が生じやすいデメリットもあります。

サプライチェーンにおける垂直統合

2つ目は、「サプライチェーンにおける垂直統合」です。こちらは、サプライチェーンにおける川上の企業(原材料や商品の仕入れ先やメーカーなど)または川下の企業(卸売や小売など)を買収することにより、バリューチューンの強化や商品・サービスの競争優位性の向上を狙う戦略です。

垂直統合の戦略では原材料から製造、販売まで一貫した体制を構築できるため、生産の安定化、コストの削減などのメリットがあります。ただし、市場競争がなくなってしまうことによるインセンティブの低下といったデメリットもあるため、メリットとデメリットを把握したうえでの判断が重要です。

商品やサービスなどラインナップの拡充戦略

3つ目は、「商品やサービスなどラインナップの拡充戦略」です。自社の顧客層にニーズがあり、機能面や価格面で自社と異なる商品・サービス持つ企業を買収することで、自社商品やサービスのラインナップを拡充する戦略です。

日本たばこ産業株式会社による露たばこ会社JSC Donskoy Tabakからのたばこ事業譲受はその一例です。

ラインナップ拡大戦略では、M&Aにおけるシナジー効果の中でもクロスセリング(関連商品の勧奨による売上増)の効果が期待できます。ただし、十分なマーケティングを行わないと、顧客と商品・サービスを上手くマッチングできず、見込んだシナジー効果を得られない可能性もあります。

規模拡大のための同業買収

4つ目は、「規模拡大のための同業買収」です。異なるシェアエリア、顧客を持つ同業他社を買収することにより、規模拡大によるスケールメリットを狙う戦略となります。自社よりも比較的小規模な同業他社を短期間で買収する「ロールアップ戦略」もこの戦略の1つです。

規模拡大戦略はシェア拡大による売上増が見込める他、販売経路の共有による販売シナジー、工場や機械の共有による生産シナジーが期待できます。異なる業種、異なる商品やサービスへの拡大と比較すると、得られるシナジーを計算しやすい戦略です。

新規事業開拓

5つ目は、「新規事業開拓」です。自社と異なる事業を展開する企業を買収し、経営の多角化や事業ポートフォリオの転換を目指す戦略となります。異業種の事業を1から開拓するには膨大な時間と労力を要するため、M&Aにより企業を買収し、比較的短期間で新規事業を立ち上げる方策です。

既存事業の属する市場が拡大期を過ぎ、安定期あるいは衰退期に差し掛かった場合、企業の将来的な収益性には不安が残ります。そこで、経営の多角化による多分野でのブランド戦略、事業ポートフォリオにおける新規事業の追加により、新たな成長を目指す狙いがあります。

新規事業開拓では新たなビジネスチャンスが見込まれる反面、同業の買収と比較するとシナジー効果を計算しづらく、M&Aが失敗する可能性もあるため、慎重に判断しましょう。

上場企業におけるM&Aの注意点

M&Aにおける買収戦略は企業にスケールメリットやシナジー効果をもたらす可能性を持つ一方で、投入したコストに見合うリターンが得られない場合もあります。M&Aを成功させるためには、どのような点に配慮すればよいのでしょうか。
以下では、上場企業におけるM&Aの注意点を解説します。

目的を明確にする

M&Aを実行させるために重要な点は、「M&Aの目的を明確にする」ことです。M&Aの目的が不明確であったり、M&Aをすること自体が目的化したりする場合、期待するM&Aの効果が得られないケースがあります。

自社が置かれる環境や状況をしっかりと分析し、「サプライチェーンを確立する」や「事業規模を拡大する」などM&Aを実施する目的を明確にしましょう。そして、目的に合った譲渡企業を選定し、適切なスキームを選択することが重要です。

リスクの存在に配慮する

M&Aを検討する際には、スケールメリットやシナジー効果などメリットの部分だけでなく、リスクの存在にも十分に配慮してください。例えば、株式譲渡をスキームに選択した場合、権利義務とともに負債も承継するため、簿外債務や偶発債務などのリスクがあります。

M&Aでは、上記以外にも法務・財務・税務などさまざまな面でリスクが存在します。M&Aを検討する段階からリスクを洗い出し、対処することが重要です。また、M&Aを進める中でデューディリジェンスを実施し、成約前にリスクを把握する必要があります。

専門家の活用を検討する

M&Aが関する分野は多岐にわたるため、法務・財務・税務など多方面での専門的な知識が必要です。自社の法務チームや財務チームのみで対処するには限界があります。

そのため、M&A仲介会社や会計士、税理士などの専門家の活用も1つの手段です。M&Aの経験豊富な専門家の活用により、複雑な実務のサポートを受けられる他、リスクを軽減しつつスムーズなM&Aの進行が可能になるかもしれません。

上場企業におけるM&Aの最新事例

上場企業におけるM&Aは、現在でも多数の業種・業態で活発に行われています。ここでは、上場企業が実施するM&Aの最新事例を紹介します。

クエストによるシステム開発・運用保守業務提供のエヌ・ケイ買収事例

2022年3月18日、システム開発・保守やインフラサービス事業を展開する株式会社クエストが、システム開発・運用保守業務を提供する株式会社エヌ・ケイの発行済株式の取得と、簡易株式交換による完全子会社化を実施したことを発表しました。

クエストは中期経営計画として、事業構造や産業ポートフォリオの変革などを策定しています。エヌ・ケイの半導体分野でのビジネス系ソリューションやエンジニアリング系ソリューション、ヘルスケア・メディカル分野のサービス提供実績を取り込むことにより、中期経営計画を実現する構えです。

エルテスによるSES事業提供のGLOLING買収事例

2022年3月18日、デジタルリスクマネジメント事業を展開する株式会社エルテスは、SES(システムエンジニアリングサービス)事業を提供する株式会社GloLingの全株式を取得し、完全子会社とすることを取締役会にて決議しました。

エルテスは、金融・物流・行政・通信など幅広いシステム開発支援を行うGloLingを子会社化することにより、エンジニアの拡充やソリューション開発の内製化を進め、同社の収益向上を狙っています。

ソラストによる認可保育所運営「なないろ」の買収事例

2022年3月8日、介護事業や医療関連受託事業を営む株式会社ソラストは、東京都を中心に認可保育所などを運営する株式会社なないろの株式を取得し、子会社化することを取締役会で決議しました。

ソラストは東京都を中心に認可保育所などを47ヵ所運営する企業です。同じく東京都を中心に19ヵ所の認可保育所などを運営するなないろの買収を介して、保育事業の拡大やグループ内のシナジーを図り、自社がさらに成長することを目的としています。

太平洋セメントによる米MARTIN MARIETTA社のセメント事業資産等の買収事例

2022年3月1日、セメント事業や資源事業、環境事業を展開する太平洋セメント株式会社は、連結子会社であるCalPortland Companyを介し、米Martin Marietta社のセメント事業資産等の一部を買収することで合意に達したことを発表しました。

米国のセメント市場の需要は、住宅不足による民間需要やインフラ投資法案可決によるインフラ需要などから、今後も継続的に増加すると想定されています。太平洋セメントは今回の買収により、米国のセメント市場における需要を取り込む狙いです。

ハマキョウレックスによる中神運送の買収事例

2022年2月28日、物流センター事業や貨物自動車運送業を展開する株式会社ハマキョウレックスが、国産青果物輸送や輸入青果物輸送を展開する中神運送株式会社と、発行済株式を100%取得する株式譲渡契約を締結しました。

ハマキョウレックスはアパレル・食品・医薬品・医薬機器を中心に物流・運送事業を展開しています。国産青果物輸送や輸入青果物輸送のノウハウを持つ中神運送を買収することにより、高いシナジー効果を創出することを目的としています。

まとめ

上場企業におけるM&A件数は、2021年時点でリーマンショック以降最高水準にあります。各企業ではそれぞれの置かれた環境や状況に合わせ、さまざまな買収戦略のもとにM&Aを実施しています。具体的には、今回紹介したサプライチェーンにおける垂直統合や規模拡大のための同業買収などです。

M&Aでの買収戦略策定には、法務・財務・税務など専門的な知識が欠かせません。企業のM&Aにはさまざまな手法があり、手法ごとに関連する法律や会計手続きは異なるためです。

もし、M&Aで不明な点がある場合は、M&A仲介会社など専門家への相談をおすすめします。fundbookでは、豊富なM&A実績と高い専門性を誇るM&Aアドバイザーチームが、5年後、10年後を見据えたM&A戦略を提案します。この機会に、ぜひ弊社までご相談ください。

fundbookのサービスはこちら(自社の譲渡を希望の方向け)

fundbookのサービスはこちら(他社の譲受を希望の方向け)

    【無料ダウンロード】自社の企業価値を知りたい方へ

    企業価値100億円の条件

    企業価値100億円の条件 30の事例とロジック解説

    本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。
    このような方におすすめです。

    自社の企業価値がいくらなのか知りたい
    ・企業価値の算出ロジックを正しく理解したい
    ・これからIPOやM&Aを検討するための参考にしたい

    は必須項目です。

    貴社名

    売上規模

    貴社サイトURLもしくは本社所在地をご入力ください

    お名前

    フリガナ

    役職

    自社の株式保有

    電話番号(ハイフンなし)

    メールアドレス

    自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談

    相談料、着手金、企業価値算定無料、
    お気軽にお問い合わせください

    他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認

    fundbookが厳選した
    優良譲渡M&A案件が検索できます

    M&A・事業承継のご相談は
    お電話でも受け付けております

    TEL 0120-880-880 受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)
    M&A案件一覧を見る 譲渡に関するご相談