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2023/10/03

医療M&Aを成功に導く「セカンドオピニオン」の活用

医療M&Aを成功に導く「セカンドオピニオン」の活用

医療行為においては、患者さんが納得できる治療法を選択するための、セカンドオピニオンの活用が広まっています。それと同様に、M&Aにおいても、近年、セカンドオピニオンの活用が急速に広まっています。本記事では、M&Aにおける「セカンドオピニオン」とはどのようなもので、どんな場合に活用すべきなのかをご紹介します。

医療M&Aにおけるセカンドオピニオンとは

医療M&Aにおいては、一般的にM&A仲介会社などのアドバイザーのサポートを受けながらプロセスが進められていきます。その進行の中で、売り手の医療経営者に、「本当にこの買い手でいいのだろうか」、「譲渡価額は妥当なのだろうか」「この譲渡スキームでいいのだろうか」といった疑問が生じることがあります。サポートを受けているアドバイザーの見解だけでは、その疑問が解消しないような場合に、依頼しているアドバイザー以外のM&A仲介会社などに意見を聞く、「セカンドオピニオン」の活用が検討されます。
なお、これはM&Aアドバイザリーに関する二重契約にあたるのでないかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、セカンドオピニオンはあくまで「意見」を求めるものであり、他のアドバイザーに仲介業務を依頼するものではないので、それにはあたりません。逆にいうと、先のアドバイザーとの仲介契約を解除しなければ、二重に仲介を依頼することは、通常はできないものと理解してください。

なぜM&Aにおいてセカンドオピニオンが必要となるのか?

では、なぜM&Aの専門家に支援を依頼しているにも関わらず、セカンドオピニオンが必要となることがあるのでしょうか。

この背景として、次のような理由が考えられます。

▼本意ではないM&A支援契約を交わしてしまった

近年、後継者不足などを背景に我が国の中小企業のM&A件数は、右肩上がりで増えています。

医療M&Aを成功に導く「セカンドオピニオン」の活用

M&A市場が活況を呈する中、M&A仲介会社やアドバイザーなどM&Aの支援に携わる人も増え続けています。

しかし、あまりにも急増しているため、中には自分の利益を優先するあまり顧客に拙速な契約締結を迫り、後日顧客とトラブルになるような例も見受けられます。

M&A支援業者と信頼関係を築けないうちに、押し切られるように契約をしてしまった結果、支援業者のいうことが完全には信用できず、セカンドオピニオンを活用する例が近年増えているようです。これは、中小企業M&A全般の話ですが、医療施設のM&Aについてもその件数は増加傾向にあり、同様の事態が生じているケースも見受けられます。

▼売り手と買い手の経験値や情報量の格差

M&Aにおいては、契約内容や譲渡価額の算出など、数多くの検討事項が出てきます。そのような場面で、自分の立場が一方的に不利にならないよう、適切な対応を取れるかどうかは、ひとえに経験値の高低に左右されます。一般的に、M&Aの売り手は、過去にM&A経験がないケースが多いのに対し、買い手は過去にM&Aを何度も経験しているというケースが少なくありません。このように、売り手と買い手の経験値に大きな乖離がある場合は、互いにFAなどの助言者がいたとしても、どうしても経験値の差、また経験に基づく情報の差から、交渉の主導権を買い手に握られてしまうことが多くなります。もちろん、経験値が豊富なアドバイザーがいれば、その情報ギャップを補うことができますが、専門性が求められる医療M&Aにおいては、経験豊富なアドバイザー自体があまり存在していません。このような場合に、医療業界にくわしく、かつ公平中立な第三者のM&A専門家にセカンドオピニオンを求めることで、過度に売り手に不利な状況を回避することが期待できます。

▼金融機関などがアドバイスする場合の限界

M&Aに関して、メインバンクをはじめとした金融機関に相談するケースもよくあります。金融機関は、都市銀行であれば全国規模の、地方銀行や信用金庫・信用組合であればその地域の顧客基盤を有しており、その顧客基盤を生かして買い手候補に関する情報を集めてくれます。

しかしながら、金融機関が紹介できる買い手候補は、基本的にその金融機関と取引関係がある先に限られており、この点で必ずしも売り手の要望にベストマッチな買い手候補を紹介できるとは限りません。このような場合に、他に買い手候補がないのかどうか、セカンドオピニオンのためにM&A仲介会社などに相談に訪れるというケースも多くあります。

▼行政もM&Aのセカンドオピニオンを推奨している

M&Aが中小企業においても一般的になっている現在、行政サイドもセカンドオピニオンの重要性を説いています。たとえば、経済産業省/中小企業庁が作成している「中小M&Aガイドライン」の中でも、M&Aの当事者に対し、支援内容に関するセカンドオピニオンを推奨しています。また、M&A支援業者に対しても、M&A当事者のセカンドオピニオンを“許容”するよう要請しています。そのため、現在では、M&A支援業者も通常は、第三者へのセカンドオピニオンを認めています。

どんなケースでセカンドオピニオンを求めるべきか?

医療M&Aにおいて、セカンドオピニオンを求めるべきケース、内容について確認しましょう。セカンドオピニオンを求めるにあたっては、M&Aにおいて売り手経営者にとって譲れない要望の「軸」を、改めて整理することが大切です。要望の軸が整理できたら、それらについて文書化した「フォーマット」のようなものを作成しておくと、買い手候補の絞り込みの際や、その後の交渉の際に大変役立ちます。フォーマットには、以下のような項目を、優先順位をつけながら、具体的に記載しておきます。

・希望する買い手のイメージ(大手グループか、新進気鋭の若手医師か、など)

・希望するM&Aのスキーム(法人譲渡か、事業譲渡か、など)

・希望する譲渡価額

・従業員の雇用、処遇

・自身の継続勤務期間やその場合の報酬(一定期間は継続勤務したいのかは、すぐ退職したいのか、など)

・医療施設の建て替え計画

・人材の採用計画

など

これらの事項について、売り手経営者の考えと、買い手候補の要望、あるいは仲介会社の見解とに乖離がある場合には、セカンドオピニオンを検討するとよいでしょう。たとえば、以下のようなケースがあります。

▼ケース1:希望する買い手イメージの相違

M&Aの売り手となる医療経営者は、通常、どのような人(法人)に買い手となって欲しいか、漠然とでも希望を持っています。たとえば、従業員の雇用継続を最優先にしたいため大きな医療法人に買い手となってほしい、あるいは、蓄えは十分にあるので譲渡価額は低くてもいいから地域医療に長く貢献できる若手医師に買い手となってもらいたい、などの買い手イメージを持つ場合に、それに合致した買い手候補が提示されるかといったことです。

▼ケース2:M&Aのスキームの選定が適切なのかわからない

医療施設のM&Aの場合、その医療施設の形態によってとり得るスキームが異なってきます。そして、当然のことながらスキームによって必要な法的手続きや会計、税務面の取り扱いなども異なってきます。たとえば、「持分あり医療法人」でいえば、一般的には、出資持分の「譲渡」と経営権の承継(経営陣の交代)をあわせて実施するスキームが用いられますが、買い手によっては、出資持分の譲渡ではなく、法人からの「払い戻し」を希望することがあります。払い戻しスキームの場合、買い手が直接資金を拠出する必要がないというメリットがある一方、売り手には「みなし配当」課税がなされることとなり、通常は出資持分の譲渡スキームに比べて、売り手の課税上は、不利となります。このように、提案を受けたスキームが妥当なのかといった観点で、M&A専門家にセカンドオピニオンを求めることも有意義といえるでしょう。

▼ケース3:譲渡価額が折り合わない

売り手の医療経営者が希望する譲渡価額と、買い手の提示する、またはM&A仲介会社の算出した想定譲渡価額に乖離があるというのも、セカンドオピニオンが求められる典型的なケースです。たとえば、契約したM&A仲介会社の算出したバリュエーション(事業価値評価)の結果を基にした想定譲渡価額が、自身の希望額よりも低額であり納得がいかない、のれん代(営業権)を適切に考慮していないのではないかといったような不満です。このような場合には、一度別のM&A専門家の見解を聞いてみてもよいでしょう。

▼ケース4:安心して引退を迎えられるか不安である

M&Aの成立後、業務の引き継ぎなどがあるため、売り手の医療経営者が、数か月から1年程度の一定期間は継続勤務することが一般的です。しかしここで、一定期間経過後、確実に引退できるのかが、医療施設のM&Aで論点となることがよくあります。

たとえば、1年以内に後任理事を見つけるという約束でM&A契約を結んだ場合に、買い手の採用力が弱ければ、いつまでも後任の理事を採用できず、売り手経営者が辞めるに辞められないケースもあります。理事を勤めるのは医師でなければならないという、医療施設特有の事情があるためです。買い手候補に対してそのような危惧を感じる場合に、他に選択肢がないか、セカンドオピニオンを求めることも有益でしょう。

医療M&Aのセカンドオピニオンは、どの段階で求めるべきか

セカンドオピニオンは、基本的には医療経営者が進行中のM&Aで不安を感じたときに実施されるものです。一般的には、次のようなタイミングでセカンドオピニオンを検討されるケースが多いでしょう。

・買い手候補の提示を受けたが、納得のいく買い手候補がいない

・提示されたバリュエーション(事業価値評価)の結果に納得がいかない

・M&A支援業者と契約をしたが、担当アドバイザーの態度や能力に疑問がある

・デューディリジェンスで指摘された点について納得がいかない

など

ただし、最終契約が目前に迫っている状況でセカンドオピニオンを実施するのはあまりお勧めできません。なぜなら、その局面では、これまでの紆余曲折や法務や税務面の検討を踏まえたスキームの判断理由などを、セカンドオピニオンの相談相手に詳細に説明する必要があり、一般的にM&Aに不慣れな医療経営者がこの説明を行うのは困難と考えられるためです。また、仮にセカンドオピニオンが得られたとしても、その時点から大きな軌道修正をすることは困難な場合が多いでしょう。軌道修正しやすいという意味では、基本合意を締結する前に実施するほうが妥当だといえます。

秘密保持契約との関係について

M&Aのセカンドオピニオンを求めるにあたり、すでにM&Aのアドバイザリーを依頼しているM&A専門家との間で交わしている「秘密保持契約」に抵触するのではないか、気になる方がいるかもしれません。しかし、M&A仲介会社などの秘密保持契約の多くは、セカンドオピニオンを求める別の専門家との間で秘密保持契約が締結されていれば、開示しても構わないと規定されていることが一般的です。このため、適切な手続きをとってセカンドオピニオンを求めることは、通常問題ない行為であり、M&A経験に乏しい売り手の医療経営者などは、むしろ積極的に活用すべきといえるでしょう。

医療M&Aのセカンドオピニオンはだれに求めるべきか

M&A支援業者の中には、セカンドオピニオンを正式なサービスメニューとして提供している会社もあります。

また現在では、M&Aに関するセカンドオピニオン専門の会社も登場してきています。このように選択肢は増えていますが、医療施設のM&Aに関するセカンドオピニオンを依頼する場合には留意点があります。一般に、M&Aの支援業務は“当該業界での経験”がモノをいう世界であり、依頼する会社(および担当者)に十分な支援経験があるのかが、適切な助言を受けるにあたり、大変重要になってきます。

特に医療業界は、一般の事業会社にはない医療法の制約など特殊な論点も多いため、医療業界のM&Aにどの程度携わってきたかをよく確認し、十分な経験を有する業者にセカンドオピニオンを求めましょう。可能であれば複数の支援業者からセカンドオピニオンを求めるのも悪くありません。その場合、当然、ある程度の費用はかかりますが、M&Aでの譲渡費用からみればわずかな金額であり、積極的に活用を検討したいところです。

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