株式移転 法務 手続き

経営や事業運営の効率化を図るため、「株式移転」が行われることがあります。株式移転を検討する場合にどのような流れで進めればいいか、実際に行う際にスムーズに進められるようにあらかじめ把握しておくことが重要です。ここでは、「株式移転の意味はわかっているが、手続きや流れに不安がある」「株式移転で注意するべきポイントについて知りたい」といったことを解消するため、株式移転の手続きについて分かりやすく解説していきます。

本記事では株式移転に伴い新設される会社を完全親会社、完全親会社に株式を交付し子会社化する会社を完全子会社とします。

▷関連記事:株式移転とは?手続きからメリット、株式交換との違いまで基礎知識を解説

株式移転と株式交換の違い

株式移転と似た手法に「株式交換」という手続きがあります。株式移転と株式交換の大きな違いとしては、株式移転では「新設する親会社へ子会社株式を移転する」のに対して、株式交換では「子会社株式を承継する親会社は既に設立済みの会社」でなくてはなりません。株式移転と株式交換は呼称は似ていますが、スキームが異なるので注意が必要です。

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株式移転の手続き

株式移転の手続きの流れは、以下のようになります。

1.株式移転計画の作成
2.事前開示書類の備置
3.株主総会の承認
4.債権者保護手続き・株式買取請求・新株予約権買取請求手続き
5.登記・事後書類の備置・株式移転無効の訴え

それぞれの手続きの内容を解説していきます。

1.株式移転計画の作成

株式移転を始めるにあたり、まずは計画を作成します。株式移転計画で定める内容は以下の通りです(法定記載事項)。

  • 株式移転・株式交換の条件
    完全子会社となる会社の株主がその株式と引き換えに完全親会社となる会社から何を交付されるかに関する定め
  • 完全親会社の組織・体制
    ・完全親会社の定款の規定、設立時取締役その他の役員などの氏名
    ・完全親会社となる会社が株式移転に際し株式を発行する場合には、資本金・準備金の額に関する事項

株式移転に要する手続きがスムーズに遂行できるように、無理のないスケジュールと計画を立てましょう。

2.事前開示書類の備置

株式移転計画書の作成が完了したら、事前開示書類を作成し、登記簿に記載されている所在地である本店に備置*1します。事前開示書類には以下の事項の記載が必要です。

  • 株式移転計画書に記載した内容
  • 完全子会社化予定の会社の株主に割り当てる株式、新株予約権や社債など相当性に関する事項
  • 相手方当事会社の計算書類などの内容
  • 直近の年度末以降に発生した重要事項
  • 株式移転に異議申し立てが可能な債権者に対する、完全親会社の債務履行見込みの内容
  • 事前開示書類の作成後、株式移転の効力発生日までに上記内容に変更があった場合は、その内容

事前開示書類は、書面もしくは電磁的記録(データ)で備置します。また事前開示書類は、承認決議を行う株主総会の2週間前、または株式買取請求にかかる株主への通知または公告、新株予約権買取請求にかかる通知または公告、債権者異議手続の通知または催告のいずれか早い日から起算して6ヶ月間は備置する必要があります。

*1備置:書類などを備え置くこと

3.株主総会の承認

事前開示書類を本店に備置したのち、その後開催する子会社化予定会社の株主総会において、特別決議による株式移転の承認を得る必要があります。 その際、通常の株式とは権利内容が異なる「種類株式」を発行している場合は、それぞれの種類株主総会の特別決議も必要となります。

4.債権者保護手続き・株式買取請求・新株予約権買取請求手続き

子会社化予定会社の債権者のうち、株式移転によって影響を受ける債権者に対して債権者保護手続きをとります。債権者保護手続きとして1ヶ月以上の請求期間を設けたうえ、期間内にその旨を債権者ごとに個別に催告し、さらに国が発行する機関誌である官報への公告を行います。

また買取請求があった場合、請求に対応する必要があります。買取請求が出来るのは、反対株主と議決権を行使できない株主、完全子会社となる会社の新株予約権者です。

反対株主とは、株式移転を承認する特別決議の前に会社に対して異議申し立ての通知を行い、株主総会においても反対を表明した子会社化予定会社の株主を指します。

ただし、新株予約権者が買取請求ができるのは下記のどちらかに該当する場合です。

  • 完全親会社から交付される新株予約権の内容などが元来その権利内容として定められていた承継条件に合致しない新株予約権者
  • 新株予約権の内容として株式移転の際にそれに変わる完全親会社の新株予約権が交付される旨が定められておりながら、その取扱いがされない新株予約権者

なお、株式買取請求を求める反対株主で株主総会において議決権を行使できる株主は、総会に先だって株式移転に反対する旨を会社に通知し、かつ、総会において反対しなければなりません。しかし、新株予約権者には、この事前の反対の通知をする義務はありません。

完全子会社は株式移転が効力を生ずる20日前までに買取請求の対象となる株式の株主、及び新株予約権者に対し、株式移転をする旨を通知し公告しなければなりません。通知を受け買取請求をする株主と新株予約権者は、株式移転の効力が発生する20日前から効力発生の前日までに買取請求を実施します。

5.登記・事後書類の備置・株式移転無効の訴え

株式移転の効力発生日は、完全親会社となる新設会社が設立登記された日付となります。効力発生後、親会社と子会社は共同して作成した事後書類を本店へ備置します。事後書類には、以下の事項の記載が必要です。

  • 株式移転の効力発生日
  • 株式移転によって完全親会社が取得した完全子会社の株式総数
  • 債権者保護・債権者異議手続きおよび新株予約権者、反対株主からの買取請求の経過
  • 株式移転に関する重要事項など

事後書類を本店へ備置する期間は、効力発生日から6ヶ月間です。また親会社、子会社の株主、役員などからの株式移転無効の訴えについても、効力発生日から6ヶ月の間は提起が可能です。

法律上の株式移転手続きの注意点

株式移転は会社法や独占禁止法、金融商品取引法といった法律に従った手続きを取る必要があります。株式移転の手続きの注意点についても説明します。

会社法の注意点

まず株式移転は、会社法に沿った手続きを行わなければなりません。また、会社法の定めにより、会社法が施行される以前に設立された「特例有限会社」の場合は、株式移転ができないので注意しましょう。特例有限会社は株式移転を行う前に株式会社に移行する必要があります。

注意すべき独占禁止法と金融商品取引法

一定規模以上の株式移転を行う場合、独占禁止法に沿った手続きが必要になります。例えば、共同株式移転*2を行う際、いずれか1社の国内売上高合計額が200億円を超え、かつ他のいずれか1社の国内売上高合計額が50億円を超える場合は、公正取引委員会への届出が必要です。独占禁止法に抵触する可能性のある株式移転は特に注意が必要です。

また金融商品取引法においても、有価証券届出書または臨時報告書を内閣総理大臣に対して提出する必要が生じる場合があります。提出が必要になる例として、上場会社など継続開示会社が株式移転に含まれ、継続開示会社の株主であった者に継続開示会社以外の株式を対価として交付するような場合で、子会社化予定会社の株主が50名以上かつ、株式の発行額が1億円以上のケースなどがあります。これは、これまで有価証券届出書などで情報を開示されていた株主に対し、情報開示が行われない会社の株式を交付することは、情報開示の点から問題があるためです。

特例有限会社を含む株式移転の場合や、子会社化予定会社の規模が大きく独占禁止法や金融商品取引法に抵触する場合には、より注意を払う必要が生じます。

*2共同株式移転:2つ以上の会社が、その発行済株式のすべてを新たに設立する会社に取得させる組織再編の行為

まとめ

株式移転は債権者保護など複雑な手続きを踏みます。また手続きが法律に則しているか、十分に注意しながら進める必要があります。さらに場合によっては、独占禁止法、金融商品取引法に従った手続きが必要であるかも確認しましょう。

これから行おうとする株式移転について疑問が残る場合は、司法書士や弁護士といった専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めることをおすすめします。