会社 たたむ

「会社をたたむ」という選択肢を検討している経営者は、相当数いるはずです。債務超過でこれ以上会社を続けられないような場合は、他に選択肢がないことも多く、会社を終わらせざるを得ません。しかし、現在それなりに会社が回っている場合、本当に会社をたたむのが良いのか、悩むことは多いでしょう。

本記事では、会社をたたむタイミング、手続き、費用、事前に検討すべきポイントなどの、特に疑問を覚えやすいポイントについて、簡単に理解することができるように解説します。自分の会社を、最終的にどうするのか悩んでいる経営者は参考にしてください。

この記事を執筆した専門家

会社 たたむ
弁護士 大山 滋郎

弁護士(日本・ニューヨーク州)。弁護士法人横浜パートナー法律事務所代表を務める。企業内法務、外資系法律事務所、および現職において、各種の合弁・M&A・会社清算などを経験。会社実務を踏まえた法的アドバイスに定評がある。

会社をたたむとは?タイミングをあわせて解説

会社をたたむタイミングは?

会社をたたむタイミングとしては、以下のものが考えられます。

  • 事業承継をしなければならないが事業承継をしないと選択したタイミング
  • 経営者が体を壊したタイミング
  • 売上の状況が思わしくないため、赤字が膨らむ前のタイミング
  • リタイア(退職)のタイミング

これらのタイミングは経営者それぞれですが、人生の区切りや事業の区切りなどをタイミングにする経営者は多いようです。弁護士などに相談し「いつごろたたんだらいいか」を決定する経営者もいます。いずれの場合も、会社をたたむときの費用や他の選択肢との比較をして、慎重に決める必要があります。

会社 たたむ

会社をたたむ手続きの流れや費用は?

それでは、会社をたたむ際に必要な手続きの流れや、費用について検討してみましょう。

会社をたたむために必要な手続きとしては、以下になります。

まずは、取締役会及び株主総会において、会社をたたむことを決議します。それを受けて会社の解散の登記を行います。なお、多くの会社が解散の登記までしておいて、後はそのままにしておくという手法をとることもあります。これは、解散の登記後の手続きが難しい一方、解散登記までしておけば、事実上会社をたたんだということにできるためです。

解散後に会社の債権債務関係をきれいにするには、公告・財産整理の手続きなどが必要となります。これらをしっかり行わないと、最後の清算結了の登記ができないことになります。最後に、清算結了の登記まで完了して会社を法的にたたむことが完了します。

なお、個人事業主・自営業者の場合は廃業届を税務署に提出することで、比較的簡単に事業をたたむことは可能です。もちろん、これらの手続きは会社の場合も必要となります。

会社をたたむための費用はどのくらい必要か

会社をたたむための費用ですが、設立した会社を解散・清算するのにかかる費用としては、おおよそ以下のようなものがあります。

  • 解散登記費用:3万円
  • 清算人の選任登記費用:9千円
  • 官報公告の掲載費用:一行3,524 円(税込) 解散の公告には約3万5千円(10行分)かかります。
  • 清算結了の登記費用:2千円

合計で約7〜10万円程度となりますが、この登記を司法書士に依頼すれば、当然そのための費用もかかります。また、弁護士や税理士に解散に至る手続きを頼む場合、さらに費用がかかることになります。

会社をたたむための費用については、単に会社をたたむだけでなく、従業員の対応などどこまで専門家に依頼するかによっても変わってくることになります。会社をたたむ際に従業員の対応や税金、債務、資産の整理などを依頼すると、追加で費用が発生する可能性があるわけです。

なお、会社をたたむ際に一番大きな費用は、在庫や生産設備などがある場合にそれらを処分するための費用です。事務所を借りていた場合には、設備を撤去して退去するための費用も相当かかります。従業員への退職金などの費用も必要となります。それらの費用に比べれば、会社をたたむときの手続き費用はそれほど大きくないともいえます。

会社 たたむ

会社をたたむ前に検討したい3つのポイント

最後に会社をたたむ前に検討すべき3つのポイントを解説します。会社をたたむことは労力的にも金銭的にもかなりの負担がかかります。それだけにも、会社をたたむ以外の方法がないかもよく検討する必要があります。

会社をたたまずお休みする「会社休眠」という方法もある

一定期間だけ会社を休みたいという場合は、会社をたたまずお休みする「会社休眠」という方法もあります。会社休眠というのは、一定期間会社の業務を停止することです。そのためには、税務署などの役所への届出が必要になります。

一方、たとえ会社を休眠しても、株式会社などでは役員の変更登記などは必要になります。変更登記をしないと、代表者のところに過料の制裁が発生することもありますので注意が必要です。

また、登記しないで長期間過ぎると、当区所が会社を強制的に解散させること(「みなし解散」といいます)もあるので、注意が必要です。

会社をたたむことを迷っている場合はM&Aという事業承継法も検討を

会社をたたむことを考えたときには、誰かに会社を引継いでもらえないか(いわゆるM&A)を検討した方が良いでしょう。日本では近年、M&Aが会社の承継方法としてよく使われるようになっており、政府や自治体、金融機関なども後押ししています。これは、M&Aに大きなメリットがあるためです。

会社をたたむ場合、それまでは貸借対照表上「資産」と考えられていた在庫や生産設備、備品などが、お金を出して処分する必要のある「負債」に変化することはよくあります。それを考えると、これらを引取ってもらえるM&Aはとてもメリットがある方法といえます。

さらに、たとえ在庫や生産設備などが個別で譲渡できたとしても、それは売上などをあげるものの一部が譲渡できた状態に過ぎません。もし可能なら、全体を引取ってもらえるM&Aを追求してみることもあるということです。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと手続きの流れ

お金の工面方法・従業員の退職金・伝え方も検討しておく必要がある

会社をたたむ場合、専門家に依頼すると数十万円(会社の規模によっては100万円以上)の費用を見込む必要があります。先に見積もりを取得し、お金の算段をつけることが必要となります。

さらに、従業員の退職金としても、まとまったお金が必要になることもあります。従業員へ会社をたたむことを伝える場合も、早く伝え過ぎると取引先に社員の口から検討の事実が伝わってしまう可能性があります。タイミングや伝え方には十分な注意が必要です。

まとめ

会社をたたむことが本当に妥当なのかは、十分に検討する必要があります。会社を止めることにより、それまでは貸借対照表上「資産」とされていたものが「負債」に変わってしまうからです。ただ、他に方策がない場合には、どのタイミングで会社をたたむのか十分に検討し、決断した段階で計画的に動く必要があります。

現実に会社をたたむことと、法的に会社をたたむことは別のことですから、それぞれ早期に専門家に相談することが必要です。また、多くの会社の場合は、最後まで会社を引取ってもらう方策を考えた方が良いことは間違いありません。