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2023/10/02

事業承継での借入金対策とは?経営者保証に関する新たな保証制度とともに解説

事業承継での借入金対策とは?経営者保証に関する新たな保証制度とともに解説

事業承継における借入金

借入金とは借用証書などにより返済義務が生じる金銭のことで、いわゆる負債のことです。事業承継では、基本的に借入金も負の資産として後継者に引き継がれます。これは、事業を子どもや親族へ承継する親族内承継、従業員や役員に承継する親族外承継、M&Aにより社外の人に承継する第三者承継のいずれの場合でも同様です。

また、金融機関から資金を借り入れる際に経営者が個人で連帯保証をしている場合は、事業承継をしても前の経営者がただちに連帯保証から外れるわけではありません。そのため、事業承継を行う際は、経営者の連帯保証への対策も必要となります。

なお、経営者の方が個人事業主の場合は、借入金は経営者個人の名義で借り入れていることが多く、後継者への承継は選択が可能です。

いずれにせよ多くの借入金がある状態での事業承継は、事業承継後の経営に影響を与えます。したがって、事前の対策が重要です。

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事業承継の際に検討すべき借入金対策

事業承継の際にできる借入金対策にはいくつかの方法があります。
ここでは、ケースに合わせて7つの対策をご紹介します。

・経営を改善し借入金を減らす
・債務の相続を金融機関と相談する
・生命保険を活用する
・DES(デット・エクイティ・スワップ)を活用する
・暦年贈与を活用する
・債務免除をする
・役員の給与を減額する

それぞれの具体的な内容を項目ごとに見ていきましょう。

▷経営を改善し借入金を減らす

後継者の負担を軽くするためには、経営を改善し、借入金を減らす必要があります。
まずは、自社の経営状況や経営課題を洗い出し、自社の現況の見える化を行いましょう。そのうえで、事業承継に向けた経営改善を行い、借入金の圧縮や資金繰りの改善を実施します。
経営の改善は借入金の圧縮だけでなく、事業承継を契機とした事業の発展にも有効です。

▷債務の相続を金融機関と相談する

事業承継を相続で行う場合、借入金(債務)の相続には注意が必要です。
相続では被相続人が負担していた債務が、後継者を含む相続人に法定相続分の割合により相続されてしまうためです。たとえ遺産分割協議で借入金を後継者に相続すると取り決めた場合でも、債権者である金融機関とは別の交渉が必要となります。
したがって、金融機関と事前に相談し、事業を承継する後継者以外の相続人の債務について相談する必要があります。

▷生命保険を活用する

事業承継の借入金対策として、生命保険の活用は有効な手段の1つです。
例えば、現経営者を被保険者とし、会社もしくは後継者を受取人にしておくと、経営者が死亡した際に保険金を受け取れます。受け取った保険金を、借入金の圧縮や資金繰りの改善などに充てることが可能です。
また、保険金は相続税上の非課税枠があるため、事業承継における相続税対策となります。
さらに、保険金は原則として遺産分割の対象とならない側面も持っているので、後継者が事業に必要な資金を確保することにも有用です。

なお、生命保険は長期間の契約が必要な場合もあることから、計画的な活用が重要となります。生命保険を活用する際は、契約者や被保険者、保険金の受け取り方法を含め、生命保険会社と早めに相談しておきましょう。

▷DES(デット・エクイティ・スワップ)を活用する

会社の財務状況の改善には、DES(デット・エクイティ・スワップ)と呼ばれる手法もあります。
DESとは、債権者の金銭債権を債務者の株式に振り替えることです。有利子負債が「株式」という資本に置き換わるため、財務状況が改善される効果があります。会社に借入金が多く残っている状況は、後継者にとって大きな負担です。DESを活用して借入金を株式に振り替えておくと、会社の負債が抑えられ、後継者の負担を軽減できます。

ただし、これらを行うには当然ながら両者の合意が必要になります。また、株式に転換するということは債権者が株主になり、資本金が増加することにもなるため、必ずしも負担を軽減できるとは限りません。
事前にアドバイザーや弁護士などの専門家との検討を重ねた上で運用しましょう。

▷暦年贈与を活用する

暦年贈与は、役員借入金を軽減する際に有効な制度です。
役員借入金は経営者などの役員が会社に貸し付けた金銭のことで、経営者の個人資金を会社の運転資金に充てる際によく活用されています。役員借入金は銀行など金融機関からの借入金と違い、利息や返済期限を柔軟に設定できるため、運転資金の少ない中小企業や開業資金の原資として便利に活用できます。

ただし、役員借入金は経営者から見れば会社への貸付金(債権)となる性質のものです。事業承継の際は相続税の対象となるので、事前に軽減しておくことが重要です。
そこで暦年贈与の制度を活用し、経営者(役員)が債務分を年間110万円ずつ後継者へ贈与をしていくと、贈与税の基礎控除額内に収まるため、贈与税の負担なく借入金を軽減できます。
ただし、計画的贈与とみなされれば相続税対象となりますのでご注意ください。

▷債務免除をする

債務免除もまた、役員借入金を軽減する際に有効な方法です。
この方法では債権者である役員が債務免除を行い、会社の借入金を減らします。

ただし、債務免除を行うと会社側では債務免除益が計上され、法人税の対象となるため注意してください。債務免除は、会社が赤字の状態で繰越欠損が多いときなどに行うと、法人税への影響を抑えつつ実施することができるでしょう。
なお、債務免除を行った結果、株価が上昇して他の株主に利益が生じた場合には「みなし贈与」が適用される恐れがあります。そのため、株価の上昇にも配慮が必要です。

▷関連記事:みなし配当とは?計算方法や税務処理、特例などわかりやすく解説

▷役員の給与を減額する

借入金の軽減には、経営者などの役員報酬を減額し、その分を借入金の返済に充てる方法もあります。
減額された分、会社の財務状況が改善し、事業承継後の経営の安定に寄与する方法です。経営者などの役員は報酬が減額することになりますが、報酬が減額された分、自身の社会保険料や所得税の負担は軽減されます。

事業承継の借入金対策に活用したい制度

事業承継の借入金対策に活用したい制度

事業承継に際しては、借入金とともに、経営者保証が問題となっています。
経営者保証とは、中小企業が銀行などの金融機関から資金を借り入れる際に、経営者個人が会社の連帯保証人となることです。経営者保証があると、会社が倒産した場合などに、経営者は会社の代わりに借入金の返済を迫られます。

国は上記のような状況を鑑み、「経営者保証に関するガイドライン」の特例の適用を開始しました。
「経営者保証に関するガイドライン」の特例により、金融機関は原則として、前経営者と後継者の両者からの経営者保証を求めないよう指針が示されています。ガイドラインに法的な拘束力はありませんが、経営者保証の解除を後押しするルールとなっています。

また、事業承継時の経営者保証解除に向けた以下のような支援を開始しています。

・事業承継特別保証制度
・経営承継借換関連保証制度

それぞれの制度を以下で詳しく紹介します。

▷事業承継特別保証制度

事業承継特別保証制度は、一定の要件のもと、事業承継時に経営者保証を不要とする信用保証制度です。
経営者保証のある既存の借入金を本保証制度により借り換えることも可能なため、既存の借入金の経営者保証解除にも利用できます。さらに、経営者保証コーディネーターによる「経営者保証に関するガイドライン」の充足状況の確認や支援を受けた場合には、保証料率が大幅に軽減されるメリットがあります。
事業承継特別保証制度を利用する際は、申込み資格や申込み方法、補償限度額などの要件があるため、事前に確認しておきましょう。

また、事業承継特別保証制度の申込みには以下の資料が必要です。
・信用保証協会所定の申込資料
・財務要件等確認書
・借換債務等確認書(既往借入金を借り換える場合)
・他行借換依頼書兼確認書(既往借入金を借り換える場合で、申込金融機関以外からの借入金を含む場合)
・事業承継時判断材料チェックシート(経営者保証コーディネーターに確認を受け、上記の信用保証料率の適用を受ける場合)

「申込み資格に適用するか」など申込みでわからない部分があるときは、お住いの地域の信用保証協会や与信取引のある金融機関にご相談ください。

▷経営承継借換関連保証制度

経営承継借換関連保証制度は、既存の経営者保証のある借入金を、経営保証不要の融資に借り換えることのできる保証制度です。
事業承継特別保証制度と同様に、経営者保証コーディネーターの確認を受けることで、保証料率が大幅に軽減されます。事業承継特別保証制度との違いは、経営承継借換関連保証制度では対象者が「経営承継円滑化法第12条第1項第1号ニの規定による経済産業大臣の認定を受けた中小企業者」となっており、経営産業大臣の認定を必要とする点です。
また、対象資金は「経営の承継に必要な資金のうち、認定日から経営承継日までの借換資金」であり、新規の資金の借り入れは想定されていません。

なお、経営承継借換関連保証制度を申込む際は以下の書類の提出が必要です。
都道府県知事の認定書の写し(申請書・認定申請の提出書類の写しを含む)財務要件等確認書借換債務等確認書他行借換依頼書兼確認書(必要に応じ)事業承継時判断材料チェックシート申込みなどで不明な点がある場合は、事業承継特別保証制度と同様にお住いの地域の信用保証協会や与信取引のある金融機関にご相談ください。

まとめ

会社の借入金は、事業承継の際に負の資産として後継者に引き継がれます。
事業を運営していく中で、多くの経営者の方が銀行などの金融機関から借入を行なっているでしょう。

ただし、多額の借入金は後継者の経営の安定に影響を与えるため、なんらかの対策をうつことが重要です。 借入金への対策には、「経営改善し借入金を圧縮する」「生命保険を活用する」などの方法があります。対策には期間を要するものもあるため、早めの準備が大切です。
また、借入に際して連帯保証を設定している場合は、事業承継特別保証制度や経営承継借換関連保証制度を活用すると、経営者保証を解除できるケースがあります。

もし、事業承継での借入金を含め、事業承継の進行やM&Aによる第三者承継のやり方などわからない点がある場合は、一度fundbook までご相談ください。
事業承継やM&Aの経験が豊富で専門的な知識を持つアドバイザーが、事業承継やM&Aの進行をサポートいたします。

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