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2023/09/26

事業承継における不動産で知っておくべきこととは?対策や活用方法、事例や注意点

事業承継における不動産で知っておくべきこととは?対策や活用方法、事例や注意点

事業承継を検討している方の中には、不動産の取り扱いについて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

事業承継では後継者への経営の承継の他、資産の承継、ノウハウや技術などの知的資産の承継など、さまざまなものを承継しますが、中でも不動産を含む資産の承継はとても大切です。
事業承継の際の対策には、不動産の購入や各種税制度の活用などの方法があります。各対策を把握しておくと、事業承継の際に起こり得る税負担の問題や資金面の問題に対して、準備をすることができます。

本記事では、不動産を活用した事業承継対策や利用できる税制度、活用事例や注意点などを解説します。事業承継における不動産でお悩みの方はぜひ参考にしてください。

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事業承継における不動産について知っておくべきこと

不動産は、民法上では「土地及びその定着物は、不動産とする」(民法86条1項)と規定されています。例えば、会社や工場の敷地、敷地の上にある事業用の建物、賃貸用のアパートやマンションなどが不動産に該当します。
不動産と事業承継との関係では、いくつかの知っておきたいことがあります。
1つ目は、不動産を活用した事業承継対策です。事業承継では事業用の資産を承継しますが、資産の状況によっては、相続税や贈与税の負担が大きくなります。このとき、不動産を活用すると、相続税や贈与税の負担を軽減できる場合があります。
2つ目は、不動産を後継者へ引き継ぐ際の対策です。具体的には、不動産評価の見直しや小規模宅地等の特例の活用などがあります。事業承継に前後してこのような対策を打っておくと、事業承継での金銭的な負担を軽減し、より円滑に事業承継を進めることも可能となります。
その他にも、いくつかの活用できる優遇税制や制度、サービスなどがあります。事業承継の際は事前に承継する不動産を把握し、対策を打っておきましょう。

不動産を活用した事業承継対策

不動産を活用した事業承継対策や不動産を承継する際に活用できる制度には、以下のようなものがあります。

・不動産の購入
・不動産評価の見直し
・小規模宅地等の特例
・少額減価償却資産の特例
・中小企業投資促進税制
・生命保険の活用
・非課税財産の生前購入

それぞれの内容を以下で詳しくご紹介します。

不動産を活用した事業承継対策

▶︎不動産の購入

事業承継を実施する前に不動産を購入しておくと、自社株評価や所有財産評価額の引き下げに有効な場合があります。これは、土地の評価額は一般的に国税庁が発表している路線価を基準としますが、路線価は実勢価格の7~8割程度の価額であるためです。
例えば、1,000万円の実勢価格で土地を購入した場合、路線価での土地の評価は7~800万円程度となる場合があります。現金で1,000万円を保有しているよりも土地の評価額が減少し、自社株評価や所有財産評価額が減少する可能性があります。

▶︎不動産評価の見直し

不動産の承継に先立って、不動産評価の見直しをすると評価額が下がるケースがあります。
例えば、土地の形状がいびつであったり、土壌汚染が確認されたりした場合には、土地の評価額が下がるためです。土地の評価額が下がれば、自社株評価や所有財産評価額の引き下げにつながり、結果として税負担の軽減にも役立ちます。不動産評価の見直しは、多くの不動産を持つ経営者の方にとって検討する価値のある方法です。
なお、不動産評価の見直しには専門的な知識が必要なため、不動産業者や不動産鑑定士など専門的な知識を持つ方に依頼するとよいでしょう。

▶︎小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、一定の宅地等を相続する場合に、相続税の課税価格が一定割合減額される制度です。個人事業主の方で土地を承継する場合、会社の経営者の方で個人所有の土地を承継する場合に役立つ制度となっています。
相続税の減額割合は、宅地の用途で50%~80%の違いがあります。また、宅地などの利用区分に応じて限度面積が設定されています。

▶︎少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例とは、取得価額が30万円未満の減価償却資産を導入した際に、合計300万円までを経費として損金算入できる制度です。対象となる方は、青色申告書を提出しており、資本金または出資金の額が1億円以下の法人となっています(一部対象外あり)。
少額減価償却資産の特例は直接不動産と関係する制度ではありませんが、事務所や店舗などの不動産を購入した際の備品購入で活用すると、全体の納税額を抑えられるメリットがあります。また、設備投資を行って費用を増やすと、類似業種比準価額で株式を評価する際の株価評価額の引き下げにつながります。

▶︎中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制とは、機械装置などを取得した際に、取得価額の30%の特別償却か、7%の税額控除を選択適用できる制度です。対象となる方は、「中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合など)」、または従業員数が1,000人以下の個人事業主の方となります。
中小企業投資促進税制は少額減価償却資産の特例と同様に、不動産購入と同じくして実施する設備投資に伴う納税金額の軽減に活用できる制度です。対象設備は機械や装置の他、測定工具や検査工具、一定のソフトウェア、貨物自動車、内航船舶など多岐にわたるため、さまざまな設備投資に活用できます。
また、事業承継の前の設備投資は、会社の費用を増やし、自社株式の評価を下げることにつながります。事業承継における自社株評価対策となるとともに、事業承継後の事業拡大に寄与する方法です。

▶︎生命保険の活用

生命保険の活用は、不動産を事業承継する際の資金対策に有用な方法の1つです。例えば、会社や後継者を受取人とした生命保険に加入し、現在の経営者が被保険者となっておけば、経営者が亡くなったときに保険金を受け取ることができます。
受け取った資金は、不動産や株式を承継する際の税金支払い、株式取得の対価などの資金に活用可能です。不動産の相続で相続税が多額となる場合、不動産の一部を売却して相続税を支払う場合があります。
しかし、事業用で使用している不動産の場合、事業継続のために不動産を売却できないことも少なくありません。このとき、生命保険の保険金があれば、事業用の不動産を売却することなく対応することも可能です。

▶︎非課税財産の生前購入

事業承継の相続税対策として、非課税財産の生前購入という方法があります。非課税財産とは、財産のうち、社会政策的な観点から相続税の対象としない財産のことです。
具体的には、墓地やお墓などの日常礼拝をしているもの、宗教や学術など公益を目的とする事業に関するものなどがあります。現在の経営者が生前に墓地や墓石などを購入しておくと、事業承継で相続する際には非課税となり、現金で相続する場合と比較して相続税が軽減できる場合があります。

不動産を活用した事業承継対策の事例

次に、不動産を活用した事業承継対策や、事業承継での不動産の承継で適用を受けられる制度を活用した場合の仮想事例をご紹介します。
具体的にどのように活用できるのか、以下で詳しく見てみましょう。

▶︎事務所などの不動産を購入した事例

例えば、事業承継に先立って、新規エリアに新しい事務所用に土地と建物を購入した場合を考えてみましょう。土地と建物の購入に使用した現金や預貯金は、そのまま事業承継を行っていれば額面通りの金額で評価されます。
しかし、土地と建物に変えておくと、先述の評価上の仕組みにより、会社の保有資産評価を減額することができ、自社株評価額の減額につながります。
また、新しい事務所の開設に伴い、パソコンやオフィス用品、機械装置などを購入した場合には、適用の要件をクリアする必要はありますが、少額減価償却資産の特例や中小企業投資促進税制の適用により、税額を軽減することができます。設備投資は減価償却費などの費用を増やせるため、事業承継の際に株式の評価額を下げることにも有効です。

▶︎事業用の宅地を相続した事例

次に、経営者個人が所有している事業用の宅地を後継者へと相続するケースを考えてみます。経営者(被相続人)が事業用に使っていた土地は、条件を満たした場合、小規模宅地等の特例の適用対象となります。小規模宅地などの特例で事業承継と関係の深いものが、「特定事業用宅地等の特例」です。
「特定事業用宅地等」被相続人等の事業用に供されていた宅地等のことを指しており、この要件を満たし、亡くなった経営者が行っていた事業と同じ事業を申告期限まで継続していた場合は、限度面積400㎡まで、相続税評価額の80%を減額できます。
例えば、400㎡の土地でラーメン店を営んでいる飲食店経営者で、土地の相続税評価額が1億円、相続人が後継者である息子1人である場合に、特定事業用宅地等の特例を適用すると、次のような軽減措置が受けられます。
まず、もともとの土地の相続税評価額は1億円ですが、特定事業用宅地等の特例が適用された場合、相続税評価額1億円のうち80%の8,000万円が減額され、2,000万円に対して相続税がかかります。
ただし、相続税では課税遺産総額から3,600万円の金額が基礎控除されます。2,000万円はこの基礎控除額の枠内となるため、相続税の対象金額が0円となる計算です。小規模宅地などの特例は相続の際に相続人が住居や事業用の土地を失わないよう、配慮された特例制度です。事業承継でも活用できるケースがあるため、事前に要件を確認して活用してみましょう。

不動産を活用した事業承継対策の注意点

不動産を活用した事業承継対策の注意点

不動産を活用した事業承継対策はメリットのあるものですが、いくつかの注意点もあります。
以下でケースに合わせて紹介しているため、不動産を活用する際の参考にしてください。

▶︎不動産の価格が下落する恐れがある

不動産を活用した事業承継対策で注意したい点の1つ目は、購入した不動産の価格が大きく下落してしまった場合です。事業承継を前後して不動産の価格が下落してしまうと、不動産の購入により得られるメリットよりも、価格の下落による損失のほうが大きくなるケースがあります。
特に、事業承継対策として不動産を購入し、事業承継後に不動産の売却を考えている方は注意が必要です。事業承継対策として不動産を購入する場合には、価格の下落しにくい都市部の不動産を選択するなど、購入する不動産に配慮する必要があります。また、新規の事務所や店舗を購入するというように、本業に関係のある不動産も重要な選択肢の1つです。

▶︎不動産価格の急激な上昇にも注意

購入した不動産の価格は、価格の下落のみならず急激な上昇にも注意が必要です。
不動産の取得後3年以内に価格が急激に上昇した場合、事業承継で資産を相続する際に不利となる場合があるからです。
もし、不動産を購入した後に急激に価格が上昇すると、それだけ土地の評価額が上がり、相続税評価額も増えます。相続税評価額が上昇した分、支払うべき相続税の負担が増えてしまうことから、事業承継対策としては当初の目的を達成することができません。
そのため、事業承継対策として不動産を購入する場合には、その後に急激な上昇が見込める要因がないか調査し、慎重に見極める必要があります。

▶︎専門家のアドバイスが有用

先述のように、事業承継対策として購入する不動産には、その後の事業承継に影響が出ないよう、物件を吟味することが大切です。不動産の価格の推移や事業承継への影響は専門的な知識が必要なため、不動産会社や不動産鑑定士、税理士など専門家にアドバイスを受けつつ、適切な物件選びをおすすめします。
その他、小規模宅地等の特例などの制度の利用には要件を満たすことが重要です。また、事業承継のどのタイミングで対策をうち、事業承継に活用していくかは難しい部分があります。事業承継やM&Aの専門家や税務の専門家と適宜相談しておくと、思わぬリスクを防げます。

まとめ

今回は、事業承継と不動産について知っておくべきこと、さまざまな対策についてご紹介しました。
不動産の購入や不動産評価の見直し、小規模宅地等の特例、生命保険の活用など、不動産の活用やさまざまな制度の適用で、事業承継における税負担を軽減できる場合があります。
ただし、不動産の活用には価格の推移などいくつか注意すべき点があります。また、税制の適用には要件を満たす必要があり、各対策を行うタイミングも十分な考慮が必要です。
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