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2023/09/26

事業承継における2025年問題とは?事例や対策、活用できる国の支援策を紹介

事業承継における2025年問題とは?事例や対策、活用できる国の支援策を紹介

高齢化率のさらなる高まりにより、超高齢社会に突入する日本。2025年にその状況が特に顕在化すると予想されていることから、「2025年問題」として取り沙汰されています。事業承継においても例外ではなく、経営者の高齢化や後継者不在による廃業が問題となっています。

本記事では、2025年問題の概要や事業承継に与える影響、後継者不在で廃業となった企業の事例や廃業を回避するための対策を解説します。円滑な事業承継に向けた国の支援策もあわせて紹介するため、事業承継の参考にお役立てください。

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2025年問題とは?

2025年問題とは、西暦2025年以降に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、超高齢社会を迎えることで生じるさまざまな問題のことです。

第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代の方は、現在約800万人にのぼっています。団塊の世代の方々が後期高齢者になる2025年以降、後期高齢者人口は約2,200万人に達すると試算されています。現在の日本の人口が約1億2,000万人ですから、国民のうち4~5人に1人が後期高齢者となるわけです。

2025年問題の影響により、社会保障費の増大や医療・介護資源の不足、現役世代の負担増や雇用の問題など、さまざまな問題が発生すると予想されています。

2025年問題が事業承継に与える影響

それでは、2025年問題は事業承継にどのような影響を与えるのでしょうか。中小企業庁が作成した資料「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、2025年問題は事業承継に以下のような影響を与えると想定されています。

・経営者の高齢化と後継者不在による廃業

・約22兆円と予想されるGDPの損失

・約650万人に上る雇用喪失

以下でそれぞれの内容をご紹介します。

●経営者の高齢化と後継者不在による廃業

事業承継においても、経営者の高齢化は深刻な問題です。中小企業庁の資料によれば、2025年までに約245万人の中小企業・小規模事業者の経営者が70歳に達すると予想されています。

●約22兆円と予想されるGDPの損失

廃業に伴い懸念される問題が、GDPの損失です。中小企業庁の試算によると、中小企業・小規模事業者の廃業増によるGDPへの影響は約22兆円にのぼると予想されており、大きな経済的損失が生じることとなります。

実際、2021年に全国で休廃業・解散した企業は44,377件を記録しました(東京商工リサーチ調べ)。休廃業・解散した企業のうち当期損益が黒字であった企業は56.5%となっており、稼ぐ力があるにもかかわらず休廃業する企業の多さが目立っています。

●約650万人に上る雇用喪失

企業が廃業すれば、それだけ雇用の受け皿はなくなります。中小企業庁の試算による雇用喪失は約650万人です。雇用が失われると、労働者の持っていた技術やノウハウも失われ、国内の大切な経営資源が減少していきます。このようなことから、事業承継を円滑の進行と、企業における早急な世代交代の進展が求められています。

2025年問題など後継者不在で廃業に追い込まれた中小企業の事例

2025年問題を含め、近年では後継者不在で廃業に追い込まれる中小企業が増えています。ここでは、後継者不在で廃業となった2つの企業の事例をご紹介します。

●岡野工業の事例

2018年、東京都墨田区にあった岡野工業が廃業しました。原因は後継者の不在です。経営者の岡野社長は廃業当時85歳の高齢で2人のご息女がいましたが、2人とも会社を継ぐ意思はなく後継者を確保できませんでした。岡野工業は中小企業庁の「元気なモノ作り中小企業300社」に選ばれるほどの技術力のある中小企業でありながら、経営者の高齢化と後継者不在により廃業を選択することとなりました。

●琉球泡盛酒造所・千代泉酒造所の事例

2018年、沖縄県宮古島市平良狩俣にあった琉球泡盛酒造所・千代泉酒造所が廃業しました。千代泉酒造所では2013年に経営者が亡くなったあと、事業を引き継ぐ後継者がなく休業状態に陥ります。経営者の親族や同じ宮古島の酒造所など事業の承継先を探しましたが承継先が見つからず、廃業に至りました。千代泉は戦後まもなくから醸造が開始され、地元住民に愛された泡盛でしたが今では幻の泡盛となっています。

2025年問題における事業承継対策は?

2025年問題の影響による廃業増を抑えるためには、経営者が高齢化した企業での円滑な事業承継が求められています。ここでは、事業の引継ぎへ向けた具体的な対策を説明します。

●早めに事業承継に着手する

事業承継では、後継者探しや自社株購入の資金対策、承継手法の選択などさまざまな課題があるため、早めの着手が大切です。

例えば、後継者が不在の場合は、まずは親族や従業員の中から適切な後継者を探さなければなりません。後継者が見つかったあとは、経営理念やノウハウ、人脈の引継ぎなど育成期間が必要となります。その他にも、自社株や事業用資産をどのように承継するかなど、多くのプロセスが存在します。したがって、早い段階で事業承継計画を策定し、計画的に進めていくことが重要です。

●国の支援策を積極的に活用する

国は目前に迫る2025年問題の影響を考慮し、事業承継に関する多くの支援策を実施しています。具体的には、事業承継・引継ぎ支援センターや事業承継・引継ぎ補助金、遺留分に関する民法の特例や事業承継税制などの税制措置などです。各支援策を積極的に活用すると、事業承継でわからない部分の相談や事業承継にかかる資金負担の軽減などが見込め、より円滑な事業承継の進行が期待できます。

●M&Aによる事業承継を検討する

もし、親族や役員、従業員などの中から後継者が見つからない場合は、M&Aによる第三者承継を検討してみましょう。M&Aによる事業承継で従業員が解雇されないか不安を感じる経営者の方も多くいらっしゃいますが、M&A後の事業承継でも約8割のケースで雇用が維持されている調査結果も報告されています(東京商工リサーチ調べ)。

実際に、中小企業におけるM&A件数は右肩上がりです。「探しても後継者がなかなか見つからない」企業にとって、M&Aによる第三者承継は有力な選択肢となっています。

●専門家に相談する

事業承継やM&Aでは、後継者探しや承継先の選択、事業用資産や自社株式の承継など多くのプロセスを踏みます。税務・財務・法務などの専門的な知識が必要となる場面も多くなります。このような事業承継のさまざまなプロセスには、専門家の持つ専門的な知識と豊富な経験が有用です。

例えば、後継者が会社の引継ぎに不安を感じている場合にも、経験豊富な専門家のアドバイスやサポートがあれば、事業承継への理解が深まり、不安を解消して事業承継に前向きとなれるケースもあるでしょう。

また、事業承継では相続税の支払いや自社株式の買い取りなどで多額の資金が必要となる場面がありますが、資金面に精通した専門家に相談することで、解決の糸口が見えるケースもあります。事業承継で悩みを抱えたときは、事業承継やM&Aの専門家への相談をおすすめします。

2025年問題を背景にした中小企業庁の事業承継への取り組み

先述のとおり、国は2025年問題などを背景に、さまざまな事業承継への取り組みを実施しています。例えば、以下のような取り組みです。

・事業承継・引継ぎ補助金

・事業承継・引継ぎ支援センター

・遺留分に関する民法の特例・所在不明株主に関する会社法の特例

・事業承継ファンド

・経営資源集約化税制

・登録免許税・不動産取得税の特例

・事業承継ガイドライン

各取り組みの概要を以下で紹介します。円滑な事業承継の参考にお役立てください。

●事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに新たな取り組みをする中小企業者、事業統合のために経営資源の引継ぎをする中小企業者などをサポートする制度です。補助金の活用には要件を満たし審査を通過する必要がありますが、返済の必要のない資金が得られます。補助金はM&A時に専門家に相談する費用や承継後の設備投資費用などに活用できます。

●事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、全国47都道府県に設置されている事業承継の公的な相談窓口です。親族への事業承継、従業員や第三者への事業承継など、さまざまな事業承継について総合的な支援が受けられます。

また、事業承継・引継ぎ支援センターは「後継者人材バンク」事業も取り扱っており、創業を目指す起業家と後継者が見つからない企業の橋渡し的な役割も担っています。後継者がなかなか見つからず、M&Aを検討している経営者の方にも適した相談先です。

●遺留分に関する民法の特例・所在不明株主に関する会社法の特例

遺留分に関する民法の特例とは、自社株式や事業用資産を後継者に集約して承継したい場合に有用な特例制度です。この特例を活用すると、遺留分に関する各種合意が可能となります。

所在不明株主に関する会社法の特例とは、所在がわからない株主への手続き時間を5年から1年へと短縮できる制度です。会社法では所在不明株主の持つ株式の競売や売却に「5年」の期間を設けていますが、この特例の活用により、「1年」への短縮が認められます。

●事業承継ファンド

事業承継ファンドとは、事業承継に関する投資を行っているファンドのことです。中小企業基盤整備機構ではファンド出資事業を実施しており、民間機関と共同して投資ファンドを組成し、資金調達や経営支援などを行っています。事業承継ファンドを活用すると、MBOを含む事業承継も可能となります。

●経営資源集約化税制

経営資源集約化税制とは、経営力向上計画に基づいてM&Aを実施することにより、設備投資減税(中小企業経営強化税制)や準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)を活用できる制度です。後継者不在でM&Aを行う際に、設備投資の10%の税額控除や投資額の70%以下の金額の準備金積立などが可能となります。活用には、経営力向上計画の認定が必要です。

●登録免許税・不動産取得税の特例

登録免許税・不動産取得税の特例とは、M&Aによる事業承継などで不動産の権利移転が生じる際に、登録免許税や不動産取得税を軽減する特例措置です。例えば、不動産における所有権移転の登記(分割による移転)の場合、通常の税率は2.0%ですが、経営力向上計画の認定を受けて本特例が適用された場合、0.4%に軽減されます。なお、特例の適用には適用対象や適用期間、対象資産などの要件を満たす必要があります。

●事業承継ガイドライン

事業承継ガイドラインは、事業承継の方法や考え方、指針など事業承継についてまとめられたガイドラインです。事業承継に関するさまざまな知識や情報がまとめられており、事業承継の進め方の参考となります。

その他、中小企業庁のサイトでは「事業承継マニュアル」や「中小M&Aガイドライン」、「中小M&Aハンドブック」など、各種ガイドライン・マニュアルが掲載されているので、ぜひ有効活用してみてください。

まとめ

2025年問題は、事業承継においても喫緊の課題です。約245万人の経営者の方が2025年までに70歳に達すると予測されており、多くの方が事業承継の問題に直面すると予想されています。

事業承継では後継者探しや自社株式・事業用資産の引継ぎなど、多くのプロセスを要します。そのため、円滑な事業承継のためには、早期の着手が大切です。国も事業承継の必要性を考慮してさまざまな支援策を打ち出しているので、自社の状況に応じて柔軟に活用しましょう。

ただし、実際に事業承継を進める中ではさまざまな課題が生じます。もし、事業承継でわからない点がある場合は、専門家への相談も重要な選択肢の一つです。fundbookでは、専門性のある知識と豊富な経験を持つアドバイザーが、適切な事業承継・M&Aの進行をサポートします。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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