業界毎の事例

2026年9月30日

設備工事(電気工事・空調設備)業界の動向とは?今後の課題や最新M&A事例を解説

設備工事(電気工事・空調設備)業界の動向とは?今後の課題や最新M&A事例を解説

設備工事(電気工事・空調設備)業界は、IoT化の推進や都市再開発などを背景に需要が拡大し、受注高も高水準を維持しています。一方で、深刻な人手不足や経営者の高齢化に伴う後継者不在といった課題に直面しており、事業承継やさらなる成長を目的としてM&Aを検討・実施する企業が増加しています。

本記事では、設備工事業界における最新の市場動向や今後の課題について詳しく解説します。

電気工事業・空調設備業それぞれの最新M&A事例もご紹介しますので、事業拡大や経営課題の解決に向けた参考にしてみてください。

▷関連記事:「M&Aとは?意味・メリット・流れ・手法・費用をやさしく解説【2026年版】」

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設備工事業とは

設備工事業は、電気や空調などの建築物に必要な設備工事を行う業種です。

電気や空調以外にも、給水・排水に関わる衛生工事業や、消火設備を管理する消防設備業があります。建設工事は、総合建築会社であるゼネコンが一括して請け負った後に、各設備工事業へ振り分ける「一式請負工事」が一般的です。

一式請負工事以外の設備工事業への依頼方法は、以下の2つです。

  • ・別途工事
  • ・コストオン工事

別途工事とは、クライアントがゼネコンと設備工事業者へ分割して工事を依頼する方法です。コストオン工事は、クライアントが事前に設備工事業者を決定し、費用を上乗せしてゼネコンに依頼する方法です。

電気や空調設備がなければ建築物として成り立たないので、建設業界において設備工事業は重要な位置付けです。

設備工事業界の動向

ここでは、設備工事業界の主である「電気工事業界」と「空調設備業界」の動向を解説します。

電気工事業界の動向

近年における電気工事業界の受注高は、高水準を保っています。

日本電設工業協会「電気工事業の受注調査」の2017年(平成29年)と2021年(令和3年)を比較すると、受注高は約820億円増えています。

日本電設工業協会「電気工事業の受注調査(年度別)(平成28年度~令和7年度)」によると、2016年(平成28年)を基準にすると受注高は約10%増加しています※。2020年(令和2年)はコロナ禍の影響で大きく減少しましたが、2022年(令和4年)以降は高水準で安定傾向にあります。

受注高が高水準を維持している背景には、IoT化の推進に加え、企業の設備投資の活発化や都市部の再開発、データセンターの新設・増設といった需要の拡大が挙げられます。電気設備や通信環境の整備ニーズは今後も継続が見込まれ、電気工事業のさらなる発展が期待できるでしょう。

※出典:電気工事業の受注調査(年度別)(平成28年度~令和7年度)

空調設備業界の動向

空調・給排水・衛生設備工事などを含む「管工事業」の市場は、近年拡大傾向にあります。国土交通省「建設工事施工統計調査」によると、2024年度の管工事業の完成工事高は10兆3,157億2,800万円となり、2023年度の10兆346億4,700万円から2.8%増加しました※。

また、電気工事業の受注高も近年増加傾向にあります。日本電設工業協会の調査によると、電気工事受注高は2020年度の約2兆7,146億円から2024年度には約3兆6,271億円まで増加しており、2024年度は前年度比8.5%増となっています。

※出典:国土交通省「建設工事施工統計調査」

設備工事業界の今後

現在、設備工事業界は「人手不足」と「経営者の高齢化・後継者不足」の2つの課題に直面しています。ここでは、設備工事業界の今後の動向を解説します。

人手不足

設備工事業界の動向で確認したとおり、今後は需要拡大が予想される一方で、業界内の人手不足が深刻な問題となっています。2025年における管工事業を含む建設業就業者数は478万人で、1997年のピーク時の約685万人から200万人近く減少しました。

総務省の『労働力調査』からわかるように、設備工事業界を含む建設業では55歳以上の高齢層が全体の3割以上(36.7%)を占め、依然として増加傾向にあります。一方、29歳以下の若年層は全体の1割強(11.7%)にとどまっており、深刻な若者不足が続いています。

労働環境の改善を行い、若者の働きやすい環境づくりが今後の課題と言えるでしょう。

出典:総務省 統計局「労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)平均結果の要約」

経営者の高齢化・後継者不足

今後の設備工事業は、経営者の高齢化が課題となります。

中小企業庁の資料では、中小企業の経営者年齢のピークが引退平均年齢である70歳を超える中、依然として多くの企業で「後継者未定」の状態が続いています。国土交通省の「建設業構造実態調査(2024年度)」によると、後継者不在率は電気工事業で46.7%、管工事業で48.2%に上り、2つの工事業で後継者不足が深刻な課題となっています。

出典:国土交通省「建設業構造実態調査(2024年度)」

設備工事業界内でのM&A

人材不足や後継者不在が原因で事業の先行き不安を抱える設備工事会社にとって、M&Aは有効な経営手段の1つとなり得ます。

M&Aにより、人材不足や後継者不在の解消以外に下記の効果が期待できます。

  • ・顧客の拡大
  • ・実施できる工事の種類拡大
  • ・雇用の確保

例えば、電気工事会社と空調工事会社がM&Aによって統合されれば、扱える工事の種類が増えます。工事の種類が増えたことで受注できる工事幅が広がり、雇用する人材の種類も増えるでしょう。その結果、人材を豊富に確保した上で工事の受注数が安定し、事業のさらなる躍進へつながります。

設備工事業界のM&A事例

ここからは、設備工事業界のうち、電気工事業界と空調設備業界に分けてM&A事例をご紹介します。

各事業のM&A事例を知ることで事業拡大の可能性を見出せるので、ぜひ参考にしてください。

電気工事業界のM&A事例

ここからは、電気工事業界のM&A事例を2つ紹介します。

大和ハウス工業による住友電設の完全子会社化

大和ハウス工業は2026年3月、電気設備工事大手で東証プライム上場の住友電設を完全子会社化しました。大和ハウス工業がTOB(株式公開買付)を実施する形で進められた本件は、年々高度化・大型化する電気設備工事の施工体制をグループ内に強固に組み込むことを目的としています。

住宅・建設業界最大手の大和ハウス工業が、電気設備工事の専門企業を傘下に収めることで、グループ全体の施工能力をさらに強化する狙いがあります。

きんでんによる北弘電社の買収

2025年4月、関西電力グループの大手総合設備工事会社であるきんでんが、北海道を地盤とする電気設備工事会社・北弘電社を買収しました。

この買収により、きんでんは北海道エリアにおける風力・太陽光などの再生可能エネルギー関連工事や、次世代インフラ工事の施工体制を一気に強化しています。地域展開と脱炭素化対応を同時に実現する戦略的なM&Aとして注目されています。

空調設備業界のM&A事例

ここからは、空調設備業界のM&A事例を2つ紹介します。

高砂熱学工業によるタイの設備関連会社3社の買収

高砂熱学工業によるタイの設備関連会社3社の買収は、2025年6月に実施されました。買い手は空調設備工事で国内首位のサブコンである高砂熱学工業で、売り手はタイ国内の設備関連・空調工事会社3社です。

東南アジア市場での事業拡大を狙い、現地の空調・衛生設備工事における足場を固めることが主な目的となっています。日系企業の現地工場進出への対応に加え、経済成長が著しいタイ国内での大型ビル空調案件をワンストップで受注できる体制の強化も図っています。

三機工業による邦英商興の買収

三機工業による邦英商興の買収は、2025年8月に実施されたM&A事例です。空調・建築設備を手がける大手サブコンの三機工業が、子会社を通じて愛知県名古屋市の廃棄物処理・管材関連会社である邦英商興の全株式を取得し、子会社化しました。

主力の空調・衛生設備工事ビジネスにおいて、近年需要が急増している環境配慮型ビル(脱炭素・廃棄物リサイクル)への提案力と施工体制を強化することが目的です。

まとめ

本記事では、設備工事(電気工事・空調設備)業界の動向や今後の課題、M&Aの事例について解説しました。

設備工事は建設工事に欠かせない事業であり、今後も建設需要が続く限り、市場の拡大が見込まれます。一方で、人材不足や後継者不足が深刻化しており、事業拡大や業績維持、事業承継を目的としたM&Aに取り組む中小企業が増えています。

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