経営・ビジネス

2023/09/29

非上場株式の配当還元法のメリットデメリットや計算方法について解説

非上場株式の配当還元法のメリットデメリットや計算方法について解説

「配当還元法」とは、どんな計算方法なのでしょうか?
この記事では、配当還元法のメリットやデメリットや計算方法について、解説していきます。

配当還元法について正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。

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配当還元法とは

配当還元法とは、配当金額(以下、配当)から株主価値(企業が将来どれだけの価値を生み出すのかを現在の価値で表した数字)を求める計算方法です。

英語では「Ⅾividend Discount Method」と表記します。配当還元法には、さまざまな計算方法があるので、後述します。

なお、「配当還元方式」という過去の2年間の配当金額を利率10%で還元して求める方法もあります。しかし、名前が似ていますが、「配当還元法」とは、別の計算方法です。

配当還元法は、非上場の株式の評価をするために使用します。

配当還元法のバリュエーション(企業価値評価)方法

配当還元法のバリュエーション(企業価値評価)方法には、以下の種類があります。

①実績配当還元法
②標準配当還元法
③国税庁配当還元法
④ゴードンモデル法

それぞれ順番に解説していきます。

①実績配当還元法
実績配当還元法とは、過去に出した配当に基づいて株主価値を評価する方法です。

②標準配当還元法
標準配当還元法とは、株主価値を評価したい企業が属する業種での配当の平均配当性向(企業が株主に払う配当の割合の平均)を元に株主価値を評価する方法です。

③国税庁配当還元法
国税庁配当還元法とは、財産評価基本通達(相続財産の評価基準について示したもの)を使った評価方法です。過去の配当額を10%の資本還元率で割って求めます。

④ゴードンモデル法
ゴードンモデル法とは、「企業の内部留保は再投資され、配当は増加する」と仮定して株主価値を評価する方法です。企業は、永遠に成長すると考えて計算します。

ゴードンモデル法の計算式は、以下のようになります。
1株当たりの配当÷(資本還元率‐投資利益率×内部留保率)=1株あたりの評価額

投資利益率とは、投下した資本に対する利益の割合のことです。
内部留保率とは、利益のうち配当に支払われなかった金額を表しています。

配当還元法の特徴と利用されるケース

それぞれの特徴と利用されるケースを解説します。

①実績配当還元法
②標準配当還元法
③国税庁配当還元法
④ゴードンモデル法

一度で理解する必要はありませんので、まずは全体像を掴んでください。

①実績配当還元法
実績配当還元法は、過去の配当を元に評価をするので、過去に配当を出した企業が利用します。逆に、配当を出したことがない企業は利用できません。

主に、非支配株主の間の株主価値評価に利用されます。

②標準配当還元法
標準配当還元法は、企業が属する業種から配当を予想するので、実際に企業が配当を出していなくても評価を行えます。

ただし、赤字で配当ができない企業の場合、計算は行えません。また、業種ごとの平均配当性向(企業が株主に支払う配当の平均)によって、株主価値評価が左右されます。

先ほどの実績配当還元法と同じく非支配株主間での株主価値評価を行う際に活用されます。

③国税庁配当還元法
国税庁配当還元法は、財産評価基本通達を使っているので、客観性があります。ただし、株の将来の価値は考慮していません。

相続や贈与の際に利用されます。

④ゴードンモデル法
ゴードンモデル法は、内部留保の再投資によって配当が増加すると仮定して株主価値評価をします。そのため、配当を出していない企業でも評価をしやすいです。

ただし、永遠に企業が成長すると予想しているので、成長率が低い企業の評価には不向きです。

逆に成長している企業には使いやすい方法です。

配当還元法のメリットとデメリット

配当還元法のメリットとデメリットを紹介します。それぞれを把握した上で活用しましょう。

配当還元法のメリット
配当還元方法のメリットは、以下の2点です。

・非支配株主間の株主価値評価に適している
・客観性がある

配当還元方法は、配当に着目しているので、非上場企業の非支配株主間の株主価値評価に適しているとされています。

また、配当還元方法は配当という客観的な数字を元に計算するため、恣意性が入りづらく評価金額が変わりづらいこともメリットです。

配当還元法のデメリット
逆に配当還元法のデメリットは、以下の通りです。

・計算方法によっては、配当政策に左右されやすい
・配当がない企業では計算ができない場合がある

配当に着目しているため、計算方法によっては、配当政策によって株主価値の評価が左右されます。たとえば、利益をあまり出していなくても、高額な配当を出している企業は株主価値が高くなります。逆に、利益を出していても、配当が少ない企業は株主価値が低く評価される場合もあります。


また、計算方法によっては、配当がない企業は、計算ができない場合があります。

配当還元法の計算例

配当還元法の計算例を紹介します。株式会社Aの株主価値を計算します。

株主資本コスト(資本を調達するためにかかった費用):10%

配当は以下の通りとし、3年後以降は配当が変わらないとします。

1年後400万円
2年後780万円
3年後1,188万円


1年ごとに配当の期待値を資本コストの10%(1.10)で割って、現在価値(将来のキャッシュフローの現在の価値)を求めます。

現在1年後2年後
363.64万円(400万円÷1.10)400万円
644.63万円(709.09万÷1.10)709.09万円(780万円÷1.10)780万円
892.56万円(981.82万円÷1.10)981.82万円(1,080万円÷1.10)1,080万円(1,188万円÷1.10)

株主価値は、表の一番左の金額の合計となります。

そのため、株式会社Aの株主価値は(400÷1.10)+(780÷1.10÷1.10)+(1,080÷1.10÷1.10)=約1,900.83万円となります

まとめ

配当還元法を使うことで、非上場株式であっても株主価値を求められます。

メリットとデメリットは、以下の通りです。

メリット
・非支配株主間の株主価値評価に適している
・客観性がある

デメリット
・計算方法によっては、配当政策に左右されやすい
・配当ができない企業では計算ができない場合がある

なお、企業の正確な価値を知りたい場合や企業の価値を上げたい場合は、M&Aアドバイザーを活用するのがおすすめです。

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