インタビュー

2026年8月14日

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

2025年3月3日、譲渡成立

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

東京都世田谷区に本社を置く株式会社平山電機は、1957年に創業した老舗の電気設備工事会社です。お客様や利用者の将来性を親身に考えた設計と、確かな技術で安心して使える施工が評価され、民間工事から国や自治体の公共工事まで豊富な実績を有しています。

父の後を継いだ2代目社長の平山豊和氏は、先代からの「お客様のためを一番に」の教えを大切にしつつ、自分なりの考えと行動で仕事の幅を広げ、会社の成長を推し進めてきました。

60代を迎え、後継者不在のなかで将来を考え始めた平山氏はM&Aに向けて始動。「まだ早い」と思いながらのスタートでしたが、間もなくして「このご縁を逃したくない」と思える出会いが訪れます。その方こそ、株式会社セイキョウの代表取締役・鈴木孝昌氏でした。“人”や“つながり”を大事にする考え方にお互いが感銘を受け、経営者同士、会った初日から意気投合したそうです。

2025年3月にM&Aが成約。それから約1年が経った両者に、M&A成約までの経緯や現在の両社のお取り組み、そして今後の展望などを伺いました。

(※鈴木氏はM&A成約後に平山電機の代表取締役会長を兼任)

新卒2年目の若さで家業に戻り、不安の中でも奮闘してきた

平山電機様の事業内容や強みをお教えください。

平山氏:当社は、私の父が1957年に創業した電気設備工事会社です。20年ほど前までは民間の仕事がほぼ100%で、住宅やマンションなどの工事を手掛けていたのですが、現在は約7割を官公庁の仕事が占めており、新築物件よりも官公庁の改修工事に関わる案件が大半となっています。

強みは、とにかくチャレンジし続けていることです。従業員にもよく「チャレンジなくして未来はない」と言っているのですが、ずっと同じことばかりしているままでは、やはり先が萎んでいってしまいます。やったことのない仕事にも臆することなく挑戦し、経験と実績を重ねてきた結果、今に至れていると思っています。

平山様が平山電機様に入社されるまでの経緯をお聞かせください。

平山氏:父からはずっと「家の仕事を手伝わないと、大学に行く資金も出さない」と言われていたので、少しずつ手伝っていました。

ところが、大学生になると部活や趣味にお金がかかるようになり、私は郵便局で深夜のアルバイトを始めたのですが、それに父が「うち以外でアルバイトをするな」と激怒して、私は家を追い出されまして。何か家に帰ってこられるようなアルバイトをしようと思い、設備関係の会社でアルバイトを始めました。

そこは零細企業でありながら、アルバイトの給与もすごく良かったですし、私自身もこの頃に電気設備工事関連の資格を一通り取得したので、そのまま新卒で入社させてもらいました。

入社してすぐに大手企業へと出向になったのですが、その出向先での仕事がものすごく面白くて、「私はこの仕事がやりたかったんだな」と心から思えました。

出向先では非常に優秀な方のもとでたくさん学ばせていただき、毎日生き生きと仕事をしていたものですから、だんだんと親も「もう(家業に)帰ってこないんじゃないか」なんて言い始めていました。

そんなある時に、父が倒れてしまったんです。だからといって、私はまだ社会人1年目です。すぐに会社を辞めて家業に戻れるほどの経験は積めておらず、就職先の社長も「戻るのは簡単だけど、無理な考えはせずにとりあえずここにいなさい」と言ってくださったので、もうしばらく在籍させてもらうことにしました。ただ、家には一番お金がかかる時期の兄弟がいたので、1年後には家業に戻ったのですが、戻って何ができるのか、不安は大きかったです。

まだ若く、不安の大きいなかで家業に戻られたのですね。新卒で入社した会社で積んだ経験は、家業で生かされましたか?

平山氏:すごく役立ちました。私は学生時代、図面を描く授業はとても苦手だったので、図面を描く仕事は絶対にやらないと思っていたのに、出向先で「仕事が面白い」と感じているうちに、描けるようになっていたんです。これが後にすごく助けになりました。

営業の仕方も知らないまま家業に戻って、営業先に「仕事をください」とストレートに言ってもまったく仕事がもらえない日々が続いていましたが、茶飲み話ができる関係が作れるようになると、「じゃあ、これをお願いしようか」と、徐々に仕事がもらえるようになったんです。すると、「彼、図面はよく描けるんだよ」と話が広まっていき、その繰り返しで仕事が増えていきました。

家業に戻った当初は、親が苦労して積み立ててきた資金を削りながらなんとか事業を続けられていたほどの状態でしたが、営業先の社長や電気工事工業組合の先輩方が助けてくださったおかげで、軌道に乗せられました。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A
株式会社平山電機 平山豊和氏

同業者とのつながりを力に、チャレンジを続けて仕事の幅を拡大

平山様が会社を引き継いで代表に就任したのはいつ頃ですか?

平山氏:23歳で家業に戻った10年ほど後の1988年に有限会社平山電機へと法人化し、同時期に私が代表に就任しました。

創業社長だった父は、「会合や組合などには行かない」「電気屋の下請け仕事は絶対しない」というポリシーを持ち続けていて、私にも何度もそう言っていたのですが、私は20代の頃から黙って会合に行っていたんです。行ってみると、皆さんがすごく面倒を見てくださりました。

特に、バブル景気が始まった頃は仕事が忙しくてどうしようもないのに、人件費も材料費も高騰して、人材がなかなか集まらずに困るわけです。人を集めるには値段を上げて賃金を上げるしかありませんが、値段交渉のやり方が分からないので、見よう見まねで交渉したところで取引を打ち切られてしまって。それを組合の先輩に相談すると、「うちの仕事をしにおいで」と言ってくださった方もいて、すごく助けられました。

同業の組合の先輩方とのつながりが、平山電機様の成長を後押ししてくださったのですね。

平山氏:本当にその通りです。最初は住宅工事しかやったことのなかった当社が、皆さんのおかげで、鉄筋コンクリート造りのマンション等の大きな仕事もできるようになりました。

次第に、先輩方から「ゆくゆくは官公庁の仕事もやってみないといけない」と助言を受けるようになり、試しにやってみたら最初は大赤字だったんです。でも、その一歩がなければ、今のような官公庁の仕事が強みと言える状況にはなれていませんでした。それに、普通なら5年は修業をしないと官公庁の仕事など到底もらえなかった当時、家業に戻って間もない私を先輩方が立ててくださって仕事がもらえたんです。周囲の見る目も変わってきて、もっとスムーズに物事が進むようになりました。

あの時お世話になった先輩方への恩を返す気持ちで、今も新たな仕事に一生懸命チャレンジしています。

平山様は会社を経営する上で、どういったことを意識してきましたか?

平山氏:先代から大事にしてきたことですが、やはりお客様のためを一番に考えることです。ご要望を汲み取る際にも、雑談も交えて色々と対話をする中で、「これを望んでいるんじゃないか」と察してご提案するなど、模索しながらお客様対応の形を確立してきました。

後継者不在に直面し、周囲の経営者の状況も見てM&Aへ動き始める

セイキョウ様の事業内容や強みをお聞かせください。

鈴木氏:当社は1970年に茨城県日立市で「セイキョウ電気工事」の名称で創業しました。その名の通り、祖業は電気工事業です。主に日立グループさんの工場内の電気工事を手掛けていましたが、お客様からの「こういうことはできないか?」というご相談やご要望にお応えしているうちに、ハイセーフキュービクルの製造や天井クレーンの設置・保守、空調設備、機械設備など、事業がどんどん多岐にわたっていきました。

お客様が何で困っているのか、納期、品質、コストなど、要因はシチュエーションによって異なりますが、ニーズに沿ってスピーディーに対応しているところに、当社の強みがあると思います。遅かれ早かれ結局やることになるのなら、稟議に時間をかけるよりも早く動こうという姿勢を大事にしています。

様々なニーズに迅速かつ柔軟に応えられる姿勢が、セイキョウ様の成長の秘訣なのですね。

鈴木氏:時が経つにつれて、迅速性と柔軟性をどんどん重視するようになってきました。製造業が今より盛んだった時代は、特別何かしなくとも次々と仕事をいただけていたと思います。ですが、今は“お客様から選ばれる企業”にならなければいけません。

加えて、どういう企業が“選ばれる”のかというと、昔は「貴社の仕事だけを請けています」と言えば印象が良かったと思いますが、今は逆に「うちからの仕事がなくても経営は大丈夫そう=この企業は安心」と、お客様の選ぶ意識も変化しています。そんな中で、当社も旧態依然のままで現状維持しようとするのではなく、新しいことにも果敢に取り組んでいかないといけないなと、15年ほど前からそう心掛けるようになりました。

その結果、「当社ではこんなことも、あんなこともできます」という話がいろんな場でできるようになり、そこから取引が始まったり、お客様がお客様を紹介してくれたりするような良い状況が作られてきました。

セイキョウ様がM&Aに動き出した背景をお教えいただけますか?

鈴木氏:M&Aも、お客様のご要望にお応えしたことが一つのきっかけとなりました。

当社がネットワーク構築を支援している東京都内のお客様から、都内にセイキョウのオフィスを出せないかと相談を受け、2024年に東京オフィスを構えました。最初はお客様との打ち合わせがあるときのためだけのオフィスでしたが、せっかくものづくりの現場の知識があるので、東京オフィスを生かして、あまり大手の設備工事業者が手掛けないような町の工場の案件を、元請けで一から支援したいと考え始めたんです。そこで、東京オフィス用にキュービクルの改修工事に特化したサイトを作り、運営を開始しました。

ただ、私たちも毎回日立市から都内に来るのも大変なので、それなら協力会社を探そうと、そう言っていた矢先にfundbookさんから平山電機さんの紹介を受けたんです。これも一つのご縁かもしれないと思い、M&Aを真剣に考え始めました。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A
株式会社セイキョウ 鈴木孝昌氏

一方の平山様は、どういった経緯でM&Aを考え始めましたか?

平山氏:後継者不在が大きな理由でした。従業員にも一度声を掛けたことがありましたが、やはり経営の引き継ぎは負担が大きいと本人も感じたようで、以降、従業員承継は選択肢から外していました。

そんなときに、数年前の組合の集まりで、行政からM&Aに詳しい方が話をしに来ていたことを思い出したんです。「M&Aはまだ早い」と思いつつも、自分があと何年仕事をできるかと考えた上で、ある程度のゴールは決めておこうと考えるようになりました。

組合でも、お世話になってきた先輩の中に会社を畳んだ方もいれば、社内に立派なご子息がいながらも、まだ社長を引き継げていない会社など、色々なケースを目の当たりにしています。ましてや、後輩の中にM&Aへ動き始めた人もいて、なおさら自分もどこかの時点で決めないといけないなと。そう考えているときにfundbookさんと出会い、まずは「良いお相手が見つかれば」くらいの気持ちで始動しました。

平山様はどのような企業をM&Aのお相手に希望していましたか?

平山氏:やはり“人”に対する方向性に共感できることを重視しました。会社というのは当然、利益を追求していかなければいけませんが、いろんな方に支えられ、学んできた私にとっては、人を大切にすることを一番に考えています。“人”とは、お客様や従業員、先輩方など、お世話になった全ての人を指します。そのスタンスと合致する企業と出会えればと思っていました。

セイキョウ様を紹介された時、平山様はどのようなお気持ちになりましたか?

平山氏:まず資料を拝見した時点で、「絶対に会ってみるべきだ」という印象を持ちました。

当社としては将来に向けてもっとチャレンジをしていかないといけませんし、その精神は大事にしていますが、確証も何もないところからチャレンジするのはかなり無謀です。でも、セイキョウさんは私や当社にはない能力を持っているような気がして、もし一緒に何かに取り組めたら、無謀に思えたことが宝物に変わるかもしれないと感じたのです。それで、会ってお話がしたいとお願いしました。

「絶対にこの縁を逃したくない」と思えた、会社にエネルギーをくれる出会い

面談で実際にご対面して、お互いの印象や面談の雰囲気はいかがでしたか?

鈴木氏:平山電機さんからは平山社長と奥様が出席されたのですが、お二人とすごく波長が合ったと言いますか、初めてお会いしたとは思えないほどの親近感を覚えました。私の周囲でも、感覚が合わない会社同士でM&Aをして、結果うまくいっていないケースをいくつか見てきたので、会って話したときの直感は大事にしたいと思っていました。上下関係ではなく、お互いがお互いを尊重し合える関係が作れないと、M&Aをしたところで両社ともに良いことなんてありませんから。

それに、平山社長も私も、家業を良くしていこうと奮闘してきた者同士です。対話の最中からも、経営者の思いや苦悩を分かち合える方だと感じ、「平山電機さんとだったら、一緒にやっていきたい」と初回の面談から思えました。

平山氏:私も、「これからが楽しめそうだ」と思いました。鈴木会長のような方と出会えることはもうないと会った瞬間に分かったので、このご縁は絶対に逃したらいけないなと。セイキョウさんが本当に人を大切にされている会社だとよく分かりましたし、特に、鈴木会長のお客様や従業員に対するお話がすごく心に響いたんです。

どんなお話か、ぜひお聞かせいただきたいです。

平山氏:例えば、お客様から依頼が来たとき、忙しくてどうしようもないときは断ることも一つの手ですが、断ってしまうと縁がなくなってしまいかねません。だから依頼は受けるものの、協力してくれる周りの従業員への声の掛け方が大事だというお話をしてくださって、それがとても面白く感じました。

鈴木氏:私は「できない理由より、できる方法を考える」を基本的な考え方として持っています。やはり人というのは「できない」と言ってしまうと、もうその時点で勝手に思考が停止してしまうものです。ただ、「どこかにできる方法はないか?」と考えると、意外と解決方法があったりするものです。

仕事も同じで、「この案件、できる?」と相談すると「絶対無理です」と言われるようなことも、「この案件、もう取っちゃった」と言うと、できる方法を考えるほうに意識が向いていきます。そうして知恵や工夫を凝らして経験を積んでいくと、仕事の幅も広がりますし、お客様も「あの時、セイキョウさんに助けてもらったから」と、また当社を頼ってくださるようになります。誰もが断りそうな面倒な仕事や小さな仕事も、できる方法を考えて対応していくと、その先でお客様の別の部署や取引先へも“人”のつながりで広がっていき、新たなお客様との出会いに発展していくんです。

私は、変な利害関係だけでしか付き合わない、動かないというスタンスが苦手で、そうではなく、社内外でちゃんと良い人間関係を作っていると、自然と仕事にもつながっていったという、そんな話をさせてもらいました。

平山様がセイキョウ様とのM&Aを希望した一番の決め手は何でしたか?

平山氏:やはり、鈴木会長のお人柄です。数字を細かく見ながら利益を追求することは経営者としてとても大事なのですが、そればかりに囚われると社内の雰囲気が悪くなってしまいます。会社を維持していくためにはエネルギーが必要で、そのエネルギーを与えてくださる方と出会えたらと考えていたところで、人との向き合い方を大事にしている鈴木会長に巡り合えたのですから、「一緒にやっていきたい」という思いしかありませんでした。

M&Aを進めている最中で、大変だったことはありましたか?

平山氏:ちょうど建設許可証の更新の年だったので、年度末の業務多忙な時期と重なりながらも、更新期間に間に合うようにM&Aのプロセスも並行して進めたことです。少しでもタイミングがずれると、成約が2カ月、3カ月と後ろ倒しになる可能性すらあったので、どれだけ忙しくても止めずに進めることだけを優先して走り切りました。

もともとは2025年2月下旬の成約を考えていたのですが、建設許可証の更新もあって3月上旬になったものの、それでもたった1週間の遅れにとどまったのは鈴木会長のおかげです。都内の行政書士を紹介してくださるなど、スムーズに進めるために色々と動いてくださって、面談からわずか3カ月で無事、成約に至りました。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

両社の連携で業務効率化を実現し、従業員のやる気も一層高まる

多忙な時期を乗り越えて、M&Aが成約できた際の平山様のお気持ちはいかがでしたか?

平山氏:うれしい気持ちが第一にありました。あとは、M&Aを実施して会社がいかに良くなっていくか、それをこれから証明していかないといけないなと、改めて身の引き締まる思いでした。

平山電機様の従業員の皆様には、セイキョウ様とのM&Aについていつ頃お伝えしましたか?

平山氏:当社で専務を務めている弟と、パートで勤務している姉には、M&Aを進めている最中から伝えていました。家業だからといって反対されることもなく、肯定的に受け止めてくれました。

従業員にはM&A成約の直前で伝えたのですが、前々から「何か新しい動きがありそうだな」と少しは察していたと思います。セイキョウさんとのM&Aを正式に伝えた時は、まずどういう経緯でこの決断をしたのかを説明しました。そして、「私がどうしても鈴木会長と一緒にやっていきたいと思う気持ちは、鈴木会長に会ってみればよく分かるから」と話し、成約の1~2日後に早速、鈴木会長と皆との懇親の場を設けさせていただきました。

鈴木様には、平山電機様の従業員の皆様はどのように映りましたか?

鈴木氏:平山社長を見ていて、きっと従業員の皆さんも良い方ばかりなんだろうなと思っていましたが、本当にその通りでした。皆さんそれぞれに資格を持っていながら、日々勉強もされていらっしゃいます。それもこれも、技術畑で鍛錬を積まれてきた平山社長だからこそ、従業員全員が成長できる体制が築けているのだと感じました。

皆さんとお会いして、M&A後もこのままの平山電機さんで大丈夫だと確信を持てました。

セイキョウ様は今回が初めてのM&Aでしたが、企業を譲受するお立場として何か心構えをしたことはありますか?

鈴木氏:初めてなこともあり、PMI(M&A成約後に実行される経営統合プロセス)についての本をたくさん読みました。ただ、企業同士のM&Aとはいえ、結局のところ相手は人ですから、全てがマニュアル通りに当てはまるものでもないと思っていました。なので、譲受するにあたって特別に何か気構えることはなく、あくまでも「仲間が増えた」という捉え方をしています。

やはり、会社ごとに歴史や創業の経緯も異なるので、企業文化を統一しようとするのは相当難しいものです。平山電機さんのこれまでの文化のまま、良いところを伸ばしていっていただければいいと思いますし、仮に当社が今後またM&Aで譲受するご縁があったとしても、「十人十色」の基本的な考えは変わらないと思います。

それに、平山電機さんに心配なところは一切ないので、こちらから経営に介入する考えもまったくなく、社長も社名も変えていません。はたから見ると、M&Aで何が変わったのか分からないかもしれませんが、一緒になって効率化や改善を図れるところは一緒に取り組んでいきましょうと、お互いがそういうスタンスでいるので、成約後から良いスタートがきれていると思っています。

M&A成約から1年超が経ちましたが(取材時)、両社様でどのようなお取り組みが始まっていますか?

鈴木氏:第1弾として、仕入れやバックオフィス業務の効率化に着手しています。平山電機さんの仕入れの一部を当社にまとめて、後から平山電機さんに請求を回すようにしたことで、トータルの仕入れコストが抑えられました。また、システムを共用化して、業務負担の軽減にもつなげています。売上を伸ばすのは大変ですが、同じ仕事をしていても、コストが下げられれば利益率はおのずと改善していきますから。

M&Aは成約までの過程より、一緒になった後が大事です。売上や規模の拡大はそう簡単なことではないにしても、「今できることはまずやりましょう」と取り組めたので、初年度としてはそれなりに良かったと思っています。できるところから始めて、徐々に第2弾、第3弾へと進めていければと考えています。

M&A成約後に、平山電機様の社内の雰囲気は変わりましたか?

平山氏:今まで以上にやる気が増しているなと感じます。鈴木会長に鼓舞されると、受け取る皆の気持ちも違うのか、いろんなアイデアが出てきては、小さな課題が一つ一つ解決につながっています。

鈴木氏:具体例を挙げると、倉庫の整理整頓は一気に進みました。当社も同じなのですが、倉庫はすぐに散らかってしまいやすく、在庫がある資材を追加購入してしまうなど、無駄な支出の原因となりがちです。

平山電機さんの従業員の方が自ら整理整頓の方法を提案・実践されて、来るたびに倉庫が片付いていく様子が目に見えて分かりました。倉庫が整理整頓されると効率も上がりますし、一番は自分たちが仕事をしやすくなるので、すごく良いお取り組みだと思います。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

人との縁をこれからも大切に、次世代に向けて更なる成長を目指す

今後はどういったお取り組みや協業を進めていきたいと考えていますか?

平山氏:当社は公共の仕事がメインのため、パンフレット等の用意がなかったのですが、せっかくならそういった自社紹介ができる資料も作っていこうと話をしているところです。

鈴木氏:営業だけでなく採用の面でも、「世田谷区にこういう会社がある」という認知を広げられるといいと思いますから。

それと、当社の東京オフィスで請けるキュービクルに特化した工事は、今後全て平山電機さんにお願いするつもりで考えており、すでに見積もりなどには平山社長が現地に同行していただいています。ほかにも、平山電機さんが茨城県まで来て仕事を手伝ってくださる案件もあり、当社としてはすごく助かっているので、お互いに協力できる関係性をより強固にしていきたいと考えています。

お互いの業種はほぼ同じですが、平山電機さんは公共の仕事に強く、当社は民間の仕事をメインとしているので、ジャンルの違う両社がそれぞれの長所を存分に発揮しながら、ともに成長し合っていければと思っています。

平山電機様の今後の目標をお教えください。

平山氏:これまでの当社は、マネージメントが一番の課題となっていました。一方のセイキョウさんは、グローバル人材もたくさん活躍されているほど育成力やマネージメント力がありますし、何と言っても私は鈴木会長の人材に対するお話がとても好きで、いつも感心しながら勉強させていただいています。鈴木会長に指導を仰ぎながら、当社のマネージメント力も強化していきたいです。

今の世の中は、コロナ禍や中東情勢など、大きな変化が次々と訪れているため、この業界も需要の不安定さが増していますが、潜在需要はものすごくあります。求められたときにしっかりとした仕事でお応えできるように、組織づくりをしておかなければいけません。従業員の皆にも継続してスキルを身につけてもらいながら、仕事の成長が「楽しい」と思える職場や組織にしていくことが、一つの大きな目標です。

平山電機は住宅工事の仕事から始まり、やがて東京都の仕事をしたいという夢が叶い、令和になってからは国の仕事も引き受けられるようになりました。全ては“人”を通じて与えられたチャンスを掴んできた結果です。鈴木会長が人との縁を大事にされているように、私も当社の従業員ももっと人の輪を広げて、次のステップへ上がっていきたいと思っています。

最後に、平山様ご自身の抱負もぜひお聞かせいただきたく思います。

平山氏:お客様あっての商売なので、従業員一人一人にお客様のご要望にしっかり応えられる人材へと、より成長していってもらいたいと思っています。そのために、私がこれまで社長業と現場の仕事の両方で蓄えてきたノウハウを、従業員に全て伝えていく考えです。例えば入札する際なら、専門ソフトでさえ察知が難しいくらいの入札の波を「勘」で感じ取ってもらえるように、そういった仕事のコツもしっかりと引き継いでいきたいです。

いつまでも私が取締役でいるわけにはいかないとは思っているので、なるべく早い段階から人材と後継者の育成に努め、鈴木会長に見ていただいている中で代替わりをしなければならないと思っています。会社を次の世代につなぎ、さらなる成長を目指すのは、今までお世話になったお一人お一人と、このようなご縁を与えてくださった鈴木会長の恩義に報いるためです。将来私が役員を退いた後も、鈴木会長が許す限り、平山電機の皆を強力にサポートしていければと考えています。

鈴木氏:M&A成約の時点では、一旦3年間は平山社長に代表を継続していただくことに決まりましたが、3年後の平山社長はまだ68歳です。当社には大手企業を定年退職した後に、その年齢から再就職して、10年、20年と活躍している方もたくさんいます。彼らを見ていると、仕事ができるかできないかは年齢で判断するものではないなと、つくづく感じさせられます。

それに、私としては創業家が会社にいると、何かと良いことが多いと思うのです。もし体力的に厳しくなったなら、取締役でなくとも顧問や相談役としてサポートしていただく形もいいと思いますし、勤務形態も臨機応変に対応することは十分可能だと思います。平山社長を必要としている場所があるので、まだまだ活躍し続けていただきたいです。

経営者によっては「家業を譲渡するなんてもったいない」と考える人もいます。平山社長もすごく悩んだと思いますが、従業員や周囲の方々のことを思った末に、M&Aを英断されました。私も同じく家業を継いだ身として、すごく勇気が要るものだっただろうと想像します。だからこそ、今まで通り平山社長のいる平山電機さんのまま、培った文化を生かしてさらに成長していってほしいと願っています。

平山氏:ありがたい限りです。やはり会社が発展すればすごく面白いですし、従業員の皆にも、自分が頑張った分だけ着実に成果が上がって、「面白い」とより一層感じてもらえるようになればいいなと思っています。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

お互いを大事にし合えるか、スタンスや相性を見極めて進めるべき

株式会社平山電機
代表取締役 平山 豊和氏

私の周りでも、次世代を継ぐ人がいないという、以前の私と同じ境遇に立たされている経営者は多い印象です。事業を辞めること自体は簡単かもしれませんが、従業員がいるのなら、その人たちはどうするのか、しっかり考えたうえで最善の選択をするのが経営者の責務です。

ただ、当然ながら「M&Aをしさえすればいい」と容易に結論付けていいわけでもありません。実際に私の同業者でも、M&Aで譲受した企業の経営者が退職すると、そこの従業員の8割ほどが退職したケースがあったのも事実です。M&Aをする場合は、譲受・譲渡の双方とも、お互いのスタンスが合うかどうか、そしてお互いを大事にし合えるのか、そういった相性を慎重に見極めて進めていくべきだと思います。

会社にとって、利益の追求はもちろん重要です。しかし、あまりにも殺伐としてしまうと、会社が面白くなくなってしまいます。「面白さ」は、会社が伸びていくための大事な要素です。ありがたいことに当社は、今まで以上に高いレベルで「面白さ」を一緒に追求していけるお相手と出会えました。あのタイミングでM&Aに向けて動き出し、セイキョウさんと出会えて本当に良かったと、今とても感謝の気持ちでいっぱいです。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

企業は社会貢献が最大の使命。従業員や社会のためになるM&Aを

株式会社セイキョウ
代表取締役 鈴木 孝昌氏

AIがどんどん発達している時代ですが、会社で働く人やマネージメントをする人は、これから先も大事であることに変わりありません。M&Aで会社の体制や待遇が予期せぬ方向に変わってしまうと、従業員の離職につながりかねず、いい技術や経験を持った人の損失は社会における大きなロスにもなってしまいます。会社は利益の追求も大事ですが、仕事を通じていかに社会に貢献するかが最大の使命です。M&Aを検討する場合は、経営者はその視点を忘れずに、従業員や社会のためになる手段としてうまく活用していくことが大事だと思います。

当社の地元では、経営者の年齢を理由に突然事業を畳んだ会社が、ここ数年でも2~3社ありました。従業員は優れた技術を持った職人さんばかりだったので、「私がもう少し早くM&Aの知識を持っていれば、当社で譲受して、皆さんが同じ環境で安心して勤め続けられたのに」と、私が後悔したほど残念でなりませんでした。

一方では、数年前にM&Aを実施したものの、譲渡側と譲受側の考え方が嚙み合わずに悩んでいる企業の相談を受けたこともあります。経営者によっていろんな考え方があるうえ、それぞれの会社が育んできた文化は大事なので、お互いを尊重し合って仕事ができないと、結果的に従業員が一番不運な目に遭うことになると痛感しました。

少子高齢化で後継者不在の中小企業は増えていますが、個性豊かな中小企業がたくさんあるからこそ、日本の社会や経済は支えられていると思います。中小企業がM&Aをより上手に活用できる社会になっていくことを期待しています。

「この人とどうしても一緒にやりたい」。人との縁を重んじる社長が選んだM&A

担当アドバイザー コメント

この度、東京都世田谷区で電気設備工事業を営む株式会社平山電機様と、茨城県日立市を拠点に設備工事業を展開される株式会社セイキョウ様とのM&Aをご支援させていただきました。
本件は後継者不在という経営課題をきっかけに始まりました。具体的にマッチングを進めるにあたり、「何を一番大事にされるか」といお相手様に求める事項の優先順位をお伺いした際に、即答で「人」とお答えになられたのを今でも鮮明に覚えております。企業規模や条件ではなく、「誰と未来をつくるのか」「誰に会社をつなぐか」という“人”の部分でした。
実際に初めてお顔合わせをするトップ面談では、経営に対する考え方や従業員への想い、お客様との向き合い方など、互いの価値観に深く共感され、初対面とは思えないほど自然な対話が生まれておりました。
特に平山代表は、「この人と一緒に会社を未来へつないでいきたい」というお気持ちを何度も口にされ、鈴木代表も「仲間が増える」という考えのもと、これまで築かれてきた企業文化や歴史を尊重する姿勢を貫かれていました。条件面だけでは決して実現できない、信頼と人柄が結び付けたご縁であったと感じています。

本件を通じて、M&Aは会社を譲る・譲り受けるための手段ではなく、「人」と「想い」を未来へ承継するための選択肢であることを改めて実感いたしました。両社様がこれまで大切にされてきた企業文化を受け継ぎながら、さらなる発展を遂げられることを、担当アドバイザーとして心より願っております。

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