自社を譲渡したい方まずはM&Aアドバイザーに無料相談
相談料、着手金、企業価値算定無料、
お気軽にお問い合わせください
他社を譲受したい方まずはM&A案件情報を確認
fundbookが厳選した
優良譲渡M&A案件が検索できます
愛知県名古屋市で生まれ育った小池嘉一氏。大学進学で上京し、証券会社への就職が決まった後に、父が地元で工作機械の周辺機器メーカーを起業したと知らされました。社名は、コイケエンジニアリングアンドサービス株式会社。創業以来、技術と品質が評価され、堅調な業績を誇っています。
いずれは地元に帰ろうと考えていた小池氏は、20代で証券会社を退職し、同時にコイケエンジニアリングアンドサービスに入社。2009年に父から経営を引き継ぎ、社長に就任しました。そして50代に入った頃、「このまま社長として終わるのではなく、何か新しいことを始めたい」という思いが湧き、M&Aを検討。事業の継続と、会社を必要としてくれるお客様のことを考えたうえでの判断でした。
モータ製造を行う株式会社FEWと出会い、お互いの事業や業界に対する熱心さに感銘を受け、2023年10月にM&Aが成約。小池氏は2年間、社長を続ける予定です。ニッチな領域でのものづくりを得意とする両社がM&Aに至った経緯や、ともに描く未来とは――。小池氏とFEW代表取締役の仲下正一氏に、お話を伺いました。
小池氏:当社は、私の父が創業した1990年から、液面計やオイルスキマー、フィルターといった工作機械に取り付ける周辺機器の開発・製造・販売を手掛けています。特許取得の技術があったこともあり、小さなマーケットながらも他社がどこも参入してこなかったため、34年間ずっと値下げすることなく、市場を独占した状態で事業を続けてこられました。
「生産現場の満足を得ること」をコンセプトに、当社製品はこれまで、大手自動車メーカーなど数々の名だたる企業の生産現場で導入していただきました。昔は製品に付いている電話番号を見て問い合わせてくださるお客様も多くいたほどで、ネットがない時代も商品自体が当社を宣伝してくれて、順調に販売先を拡大してこられたと思っています。
仲下氏:当社は1920年の創業以来、モータ製造一筋に取り組んできた会社です。モータというのはすでに成熟製品で、性能で圧倒的な差別化を図ることは難しいですが、多くのメーカーが大量生産かつ自動化を進めることで競争力を高めようとする傾向にあります。その中で、当社は大量生産型ではなく、「1台だけ欲しい」という要望や、個社別の細かなカスタマイズニーズにも長年応え続け、結果的にモータ業界内でも競争の少ない領域で、あまり下請けのようにならないニッチなポジションを確立してきました。
そのため、お客様の業種も多岐にわたっており、業種ごとに需要の増減があっても当社の業績は毎年バランスが取れているので、景気に対する耐性は強い方だと思います。自分たちで狙ってそうなったわけではありませんでしたが、今では他社がやりたがらないような「ニッチさ」が長所となっています。
小池氏:私が大学4年生のときに父が当社を立ち上げたのですが、それまで起業することはまったく知らされておらず、創業時には私もすでに証券会社への就職が決まっていたんです。大学卒業後はそのまま就職し、新規開拓などの営業を担当していました。そうして3年8カ月が経った1994年に証券会社を退社し、1995年にコイケエンジニアリングアンドサービスに入社しました。
私は一人っ子なので、就職する前からいずれは地元に帰ろうと考えていましたし、父が47歳のときに創業した会社なので、継いでほしいと直接言われてはいないものの、きっと誰かに継いでほしいだろうと思っていました。なので、自ら会社を継ぐことを決めたのです。
小池氏:子どもの頃からプラモデルをたくさん作っていたほど、もともと何かを作ることが好きでしたし、車にもすごく興味があったので、メーカーに移る抵抗感はなかったです。ただ、業界や事業を知らないと何もできないので、入社後しばらくはお客様企業に関連する展示会をほぼ全て見に行きました。そうして日々経験を積みながら、1998年に取締役に就任し、2009年に父から社長を引き継ぎました。
小池氏:大々的にビジョンを掲げているわけでもなく、本当に好きにやってきたと言うほかないんです。
仲下氏:小池さんご自身からはなかなか仰らないと思いますが、一緒にお客様と話す機会が増えてすごく実感するのが、小池さんはものすごい敏腕セールスマンなんです。いろんなタイプのお客様がいらっしゃるなかで、それぞれの企業と非常に良い関係を構築されています。そこにはやはり、持って生まれた資質と、社長としての責任感があるんだろうなと。私も金融の営業出身なので、「こういう営業ができたらな」と羨ましく思うほど、稀有な存在です。小池さんだからこそ、お客様からの信頼が厚いのだと思います。
小池氏:この仕事はすごく好きで性に合っているのですが、仕事では何の後悔もないくらい大抵のことをやってきました。それに、自分の子どもたちが独り立ちしてきたタイミングも重なったことで、私自身も「このまま社長を続けてキャリアを終えるのではなく、思い切って何か新たな挑戦をしようか」と考え始め、なんとなく55歳頃に当社の社長から引退しようと思ったんです。最初は2021年にM&Aの検討を始め、譲渡先を探そうとしたのですが、ちょうどコロナ禍の真っただ中で例年よりも業績が振るわず、そのときは経済情勢が回復するまで待とうという判断になりました。
そして2023年にfundbookさんから最初のコンタクトをいただき、再度動き始めることになったんです。ただ、会社や自分が困っているわけでもなく、無理して今すぐM&Aをする必要もないと思っていたので、「良いお相手が見つかればM&Aしようかな」程度の動き出しでしたね。
小池氏:実は、会社を経営している私の知人が昨年M&Aをして、上場企業のグループに入ったのですが、その人がもし後悔するようなことがあれば考え直そうと思っていました。その人はM&A後も引退せずに社長を続けており、辛そうな様子もなかったので、「じゃあ、私もM&Aに向けて動いてもいいよね」と。それが気持ちを後押しする大きな要因でした。
また、父にはM&Aをふと思い立った2021年から話をしていたのですが、そのときから止められることは一切ありませんでした。本心では私の子どもに継いでほしそうでしたが、無理に継いでもらう時代でもないですし、子どもたちもそれぞれ自分の道を進んでいるので、理解してくれていたのだと思います。
仲下氏:私は2020年に当社に入社し代表に就任したのですが、中小企業の代表を務めるのは2社目で、以前も100名規模の会社で、なおかつ事業の「ニッチさ」で共通する機械メーカーでした。中小企業の中核に入って経営していると、中小企業は本当に力が分散しているということをものすごく感じます。まず、人材が不足していて、事業の中核を担う人がわずかしかいません。そうはいっても世の中全体的に採用が難しくなっていて、専門性が問われるような時代です。ほかの従業員も自分の仕事で精一杯で、採用活動も思うようにはできません。
その状況下で将来の日本のものづくりを俯瞰すると、やむを得ずやめていく事業者ばかりになるのではないかと懸念されるのですが、私はその様子を本当に見たくないと思っているんです。後継者がいても事業が継続できないほどの難しさになっていますから、経営はプロの経営者などに集約して、ものづくりの事業はそこに専念できるような環境を作ることがベストなのではないかと。企業同士がグループの中で協業し合い、お互いの持つ人的リソースや経営資源を共有することで、中小企業のものづくりを維持し、発展させたいという考えが、今回のM&Aの検討につながりました。
小池氏:当社の健全な経営とお客様との良好なお付き合いを続けてもらえるなら、違う業界の企業でもまったく構わないという考えでした。また、会社の体制は大幅に変えてもいいかもしれないと思っていましたが、今の当社のスタンスを気に入ってくれているお客様や従業員のことを考えると、全てが変わると厳しいだろうと思ったので、今までの雰囲気も大事にしていただける企業であれば、という希望がありました。
仲下氏:一つは、当社のモータ事業でもできないことはたくさんあるので、お互いの不足を補い合えるようなM&Aをしたいと考えており、これは今後も引き続き機会を伺いたいと思っています。
もう一つはやはり、参入障壁が低い事業ではなく、「ニッチ+ものづくり」であることにこだわりたいと思っていました。ニッチな事業を行う企業でも、後継者不在など様々な悩みを持たれているなかで、当社と一緒に解決できる企業であれば、モータ製造に限らず手を組みたいなという考えがありました。
仲下氏:当社の総務部長がfundbookさんと連絡を取っていたなかでコイケエンジニアリングアンドサービスさんのお話が舞い込み、私も資料を見させてもらったのですが、とても業績が良く、自己資本も厚い会社でいらっしゃるので、最初は高嶺の花のように感じて、一旦は横に置いていました。しかし、1~2週間後にどうしてもまた気になった私は再度資料を手に取り、まるでコイケエンジニアリングアンドサービスさんの収益力に背中を押されたかのように、お会いしたい意向を伝えました。いろんな偶然が重なり、良い出会いにつながったと思っています。
小池氏:最初にお会いする前から、fundbookのアドバイザーさんに「仲下さんはとても前向きな人ですよ」と聞いていたのですが、実際にお会いすると本当にポジティブで、当社や業界への熱心な思いがとても強く伝わってきました。先ほど仲下さんが話していた、中小企業のものづくりに対する考えにも、「よくそんなことまで考えられて、すごい人だな」と思うばかりでした。
仲下氏:小池さんはとても真面目な方で、なおかつ純粋に車への関心が強く、事業や仕事にも一生懸命向き合ってこられたのだろうという印象でした。小池さんだからこそ、これだけ実績のある企業でいられるのだなと感じ、お会いしてよりいっそうM&Aを実現したいという熱意が高まりました。コイケエンジニアリングアンドサービスさんとのM&Aには、ほかにも挙手していた企業が数社ありましたが、当社からの誠心誠意の気持ちが伝えられるよう、アドバイザーさんと一緒に色々と工夫して頑張ってきましたね。
小池氏:やはり、仲下さんですね。また、お会いした総務部長や製造部長の印象もとても良く、安心して決断することができました。現に成約後も当社と密にコミュニケーションをとってくださっているので、すごくありがたい限りです。FEWさんから熱意を伝えていただいた当社ですが、こちらこそFEWさんで良かったと思っています。
小池氏:まずは、ほっとしましたね。また、成約後も2年間は社長を続けることになりましたので、「これから大変だな」という思いもあります。今後は自分だけが経営する会社ではなくなるので、今までとは違う緊張感を持ったと言いますか、改めて身が引き締まる思いになりました。
仲下氏:小池さんに代わる人を探すことは至難の業ですので、2年間、コイケエンジニアリングアンドサービスさんの経営を続けていただくよう、当社からお願いしました。引き続き、お力をお貸しいただければと思っています。
仲下氏:お互いに従業員がいるので、やはり「人の融合」を大事にしたいと思っています。従業員の立場からすると、どういう志でM&Aに至り、M&Aによって企業が変わるか変わらないかということ以前に、安心して働ける会社でいられるかが重要です。
コイケエンジニアリングアンドサービスさんには「今まで通りにやってください」という姿勢のもと、総務部長や製造部長がメインとなってコミュニケーションを深めながら、従業員の皆さんに安心・安定を提供していきたいと思っています。
小池氏:製品を安定的に仕入れていただけそうな企業の新規開拓を今も続けており、実際に数社との話が進みつつあるので、あと1年半のうちに取引を開始し、今後の良好なお付き合いにつながる関係性を構築しておきたいと思っています。
仲下氏:まずはお互いの持つパイプを生かして、それぞれに取引先や提案先の幅を広げていきたいと思っています。当社にとって工作機メーカーのフィールドはほぼ初めてといえますが、小池さんと一緒にお取引先を訪問していると、工作機械にもふんだんにモータが使われていることがよく分かりました。小池さんの築かれてきた事業やお取引先との関係性から次のヒントを得て、当社も仲間入りできればと願っています。
工作機メーカーでは、各社とも自社の特徴を出すために相当な腐心をされていらっしゃいます。グループとして各社の課題に寄り添えるよう、ざっくばらんに会話ができるような関係を構築していきたいですね。
小池氏:工作機メーカーには勢いのある企業がたくさんありますし、若い経営者への世代交代も進んでいるので、エネルギーもすごく感じられます。そういった企業との対話は今後の楽しみでもありますから、一緒に取引先との関係を深めていきたいですね。
コイケエンジニアリングアンドサービス株式会社 取締役社長
小池 嘉一氏
私の周りの経営者にも、自分の子どもに会社を継いでもらう人と、そうではない人の両方がいますが、子どもが承継しない場合、社内にも後継者がいないという意見でほぼ共通しています。上場や清算などの方法が考えられますが、上場は一定のハードルがありますし、清算をするとせっかく良好なお付き合いをしてくださっていたお客様に、迷惑をかけてしまうことになります。そう考えると、M&Aが最善の選択肢となる企業もきっと少なくないのではないでしょうか。
また、本当はすごく付加価値の高い仕事をしているにもかかわらず、自分たちがそれに気づいてないがゆえに、安く提供してしまっている企業も多く見受けられます。やり方を少し変えれば利益が上がるのに、自力でなんとかしようとしても難しいようであれば、企業同士が手を組んで変革させることも一つの手です。
独自の技術や価値の高い仕事が、後継者不在や利益が少ないために世の中から消えていっても、何も良いことはありません。簡単に会社をたたもうとするのではなく、M&Aも視野に入れておいてほしいと思っています。
株式会社FEW 代表取締役
仲下 正一氏
当社も事業を展開するなかで、「優秀な人材を採用したい」「若返りたい」など、いろんなニーズを持っていますが、なかなか働き手が見つからないことが悩みとなっています。しかし、一方では後継者不在などの様々な理由で、従業員がいるにもかかわらず、廃業を選ぶ企業もあります。
私たちからすると、働いている人はすごく貴重な存在であり、“人”の問題が最大のリスクになり得ると捉えています。なので、働く人たちがより付加価値の高い事業に就けるような社会を作らないといけないと強く思っているのですが、今はものすごくミスマッチや分散をしてしまっている状況です。企業としては、「この事業の付加価値を高めよう」「付加価値の高い事業を作り出そう」という意識と、そこに人材を投入するという考えを持たなければいけません。
その点では、M&Aは現状の社会を変えていくうえで有効かつ絶対的に必要な手段になっているものと考えられます。M&Aで各社の持つ事業基盤や技能・技術を進化させたり、事業をリストラクチャリングして成長分野に集中したり、経営者はそういったリーダーシップの発揮を本当にやらなくてはならない時代に突入していると思っています。
相談料、着手金、企業価値算定無料、
お気軽にお問い合わせください
fundbookが厳選した
優良譲渡M&A案件が検索できます
担当アドバイザー コメント
本件では、大手工作機械メーカー向けにニッチ製品を製造するコイケエンジニアリングアンドサービス様と、国内大手メーカー向けにモータを製造販売するFEW様のM&Aをご支援させていただきました。
小池社長とは2023年2月に最初にご面談の機会を頂戴し、M&Aについてのお考えを伺っておりました。社長として会社・従業員さんのことを深く正しく端々まで理解されている社長という印象であり、M&Aによって会社発展ができるお相手像もクリアであったように思います。
仲下社長とは2023年6月にご面談をさせていただきました。従来から中小企業M&Aに対するお考えや、ニッチ産業企業を集める構想などを描いておられ、本件についても前向きに検討いただいていたことが印象的でした。特に、コイケエンジニアリングアンドサービス様の会社経営方針を踏襲した上で、会社業績を伸ばしていきたいというお考えがおありだった印象です。
両社が最初にご面談をした時点から今日まで変わらず円滑なコミュニケーションを取られている事も伺っており、製品分野の違いからの顧客共有などを含め両社ともに発展の期待ができるものと感じております。今後の両社の更なる飛躍とご発展を心より応援させていただいております。