インタビュー

2025年8月8日

家業を守るため、顧問税理士とともに選択した「M&Aという事業戦略」

家業を守るため、顧問税理士とともに選択した「M&Aという事業戦略」
  • 譲渡企業
    運送業A社
    事業内容
    運送会社
  • 譲受企業
    運送業B社
    事業内容
    運送会社

運送業を手掛けるA社は、創業以来数十年にわたり、親族で事業を受け継いできました。現在の代表取締役は、創業者の甥にあたる北野大介氏(仮名)が務めています。後継者不在に悩んでいた家族からの頼みで、勤めていた出版社でのエリートコースから一転し家業を継いだ北野氏。高い配送品質と良好な職場環境を誇る同社でも、運送業界を取り巻く課題などにより過去には経営危機に直面したことがありますが、北野氏の行動力と先を見据えた企業改革により、今では強い財務体質と堅調な業績を実現しています。

そんなA社が「事業戦略」として選択したのが、M&Aでした。北野氏が長年信頼を置く顧問税理士の森井哲也氏(仮名)がA社とfundbookをつなぎ、主要取引先で同じく運送業を行うB社とのM&Aが成約。A社は大手企業グループの一員となったのです。M&Aを戦略の一つと捉える北野氏の発想の原点や、今後の展望とは――。北野氏と森井氏にお話を伺いました。

予定外だった家業の承継。「倒産しにくい会社」を目指し自らの手で財務体質を強化

A社様の事業内容や強みをお教えください。

北野氏:当社は道路貨物運送業や運輸倉庫業を手掛けています。取り扱う商材の性質上、配送に関してはサービス料金の値下がりがなく、また、当社が拠点を置く地域一帯では競合がいないことが強みとなっています。

北野様のご経歴をお教えいただけますか?

北野氏:社会人になった当初、私は出版社に勤めていました。3年ほど経った頃、社内でいわば「エリートコース」である官庁担当の部署に異動が決まり、嬉しい報告ができると思い実家に連絡したところ、なんと「後継者がいないから、異動を断って帰って来てほしい」と言われてしまったのです。キャリアを積むために、最低でも10年はその部署に所属することになると伝えると、「それでは間に合わない」のだと。
当社の創業者は伯父で、私の父やいとこなども勤務する同族経営の運送会社でした。次の後継者候補も決まっていたため、私は当社を継がないものだと思っていたのですが、その後継者候補が突如継がないことになり、私を後継者にしようという話になったのだそうです。そうした経緯で28歳のときに地元へ戻り、当社に入社しました。

A社様に入社してからは、どういった仕事を手掛けてきましたか?

北野氏:最初は営業担当から始めましたが、中小企業である当社は、やはり大企業と比べて、経営状態においてまだまだ改善すべきところがあると私は見ていました。そこで、父に頼んで「経営企画」の部署を立ち上げ、その責任者を務めることにしました。
要するに、横断的に意見を言える部署です。「営業担当は業務に口を出すな」「財務会計はあなたの仕事ではない」など、そういった垣根を取り払うために、経営企画が必要と考えたのです。その後、すでに70代後半だった父に3年間、共同代表として並走してもらい、父が亡くなってからは私が単独で代表を務めてきました。

これまでの間、どういったことを意識して経営を続けてきましたか?

北野氏:「倒産しにくい会社をつくる」ことを一番重視してきました。そう意識してきたのも、実は入社2年目に当社が倒産の危機を迎えたことがあり、やはり財務体質の強化は大事だと身に染みて実感した経験があるからです。
当時、売り上げの6割を占めていた取引先が当社との取引を止めるという話になったのです。当社のサービスに問題があったというわけではなく、取引先の経営方針の変更によるものでした。私はどうにかして取引を継続していただけるよう、一度だけ名刺交換をしたことのある先方の常務のもとへ伺い、関係者全員を招集した会議の場を設けていただきました。いち中小企業の者が大企業の常務へ真っ向からお願いにあがるなんて、今振り返っても思いきった行動だったと思います。
事情を説明し、今後も高い配送クオリティーで貢献していくとプレゼンしたところ、その常務が話をまとめてくださり、取引の継続が決まったのです。このときは何とかピンチを切り抜けられましたが、この先どうなるのだろうと不安でいっぱいでした。

「倒産しにくい会社」にするために、どういった改善・改革をしたのでしょうか?

北野氏:強風が吹いてもすぐに倒れない体質の会社にしようと、資金を堅実に蓄える経営に舵を切りました。当時の自己資本比率は30%弱だったと思いますが、15年かけてコツコツと体質を改善した結果、今では60%を超えるほどになっています。

顧問税理士である森井様は、北野様の経営手腕をどのようにご覧になっていますか?

森井氏:運送業界はどちらかというと現場出身の創業者や経営者が多いと思いますが、北野社長はまったく別の出版業界の出身なだけあって、一般的な運送会社とは違う視点を持たれている方だなと、最初にお会いしたときから思っていました。自己資本比率を意識した経営と仰っていた通り、常に未来を見据えていらっしゃいますし、全てに目が行き届くマルチプレイヤーな社長だという印象です。
だからこそ、会社の業績もすごく安定していて、引き続き堅調に推移していくのだろうなと思っています。顧問としてもう15年ほどのお付き合いになりますが、本当にずっとそういう良いイメージしかありません。

家業を守るため、顧問税理士とともに選択した「M&Aという事業戦略」

値上げ交渉、人手不足、コスト高騰。簡単には解決できない課題が山積

今の運送業界は、どういった課題を抱えていると感じますか?

北野氏:一番の課題は、配送やサービスを含めて値上げが実現できていないことです。当社だけでなく、どこも同じ悩みを抱えていると聞きます。
現状の配送料は30年以上も据え置きにしていますが、資材費や仕入れ価格、人件費など様々な経費は高騰する一方で、各社が必死でやりくりしている状況です。当社も今は何とかやりくりできていますが、業界としてはこれからますます厳しくなるだろうと思います。

多くの運送会社が人手不足も課題に挙げていますが、A社様の状況はいかがでしょうか?

北野氏:今は適正な人数で運用できていますが、やはり採用に苦労する時代になったと感じます。当社は従業員の定着率がとても高く、一度入社していただければその後の待遇や環境には自信があるのですが、そもそも運送会社への入社を希望する人の数自体が減っている状況です。

森井様は色々な企業の顧問をされているなかで、特に運送業界ではどのような課題が深刻だと感じていますか?

森井氏:多くの企業が人材確保には苦労されています。働き方改革も慢性的な課題で、2024年問題という局面を迎える前からも、各社がずっと頭を悩ませていることに変わりありません。
また、北野社長が値上げの課題を仰ったように、下請法などの法整備はされているにしても、やはり中小企業が荷主さんに対して強気に交渉することは、現実的に難しい側面もあると思います。これは運送業に限らず、多くの業界で共通の課題だと言えるでしょう。会社存続の危機を乗り越えた北野社長のような「攻めの姿勢」を各社がとれるかというと、実際はそうでなく、値上げの実現よりも人件費等のコスト高だけが先に進んでいくのではないかと懸念しています。

お二人から伺った様々な課題が、M&Aの検討にもつながったのでしょうか?

北野氏:そうです。「M&Aも一つの事業戦略かもしれない」と考え、森井先生に相談して具体的な検討を開始しました。その頃から2024年問題でどう法制化が進むのか、業界内でも徐々に情報が広がりつつあったのですが、中小企業各社が対応していくにはかなり困難があるなと思いました。2024年問題への対応に多額の投資をすると、せっかく強化した財務体質が弱くなりかねませんから、それならば資金があるうちに次の戦略に向けて動こうと考えたんです。

親族で受け継いできたからこそ感じる、家族の「オーナー企業でなくなる不安」

創業から親族内で受け継がれてきたA社様ですが、次の承継も親族内で行うことは考えられましたか?

北野氏:その点も当社がM&Aを検討した大きな理由の一つで、まさに後継者不在の状態だったんです。子どもはいるものの他の業界で働いていますし、私が会社を継いだときですら厳しい環境だったのに、これからさらに厳しさを増すことは明らかなので、今「運送会社を継いでほしい」という思いにはなれませんでした。
後継者不在や運送業界を取り巻く厳しい環境を乗り越え、そして従業員も満足する最善の道筋を模索した結果、M&Aで大手企業と手を組ませていただくことが一番スマートではないかと行き着き、森井先生からfundbookさんを紹介していただきました。

森井氏:北野社長はもともと、M&Aや承継について高い知見をお持ちでした。オーナーや経営コンサルタント、税理士などが集まる団体の活動でも熱心に勉強されていて、同じ環境に置かれた方々から相談を受けるほど、詳しくなられているんです。

北野様は前々からM&Aを深く理解したうえでA社様の事業戦略として打ち立て、具体的な行動に移されたのですね。

北野氏:当社の創業は伯父ですが、私の家系で行ってきたビジネスは、祖父が鉄工所を始めたところから100年ほどの歴史があります。そこから色々な事業を手掛けてきて、運送は5つ目のビジネスになります。私も新たに不動産関連の事業を立ち上げていまして、それが6つ目になるわけです。
これまでの歴史でも、手掛けている業種の市場が成熟したタイミングでその事業を求めている方に譲渡し、そこで得た資金でまた次のビジネスを始める――という動きを100年間繰り返してきました。なので、私はM&A自体にネガティブな考えをまったく持っていませんでした。
もちろん、従業員の将来を第一に考えたベストな譲渡とすることは大前提です。そのうえで、この家系に生まれ育ち、オーナー経営者を経験した私一個人としては、「これまで苦労してきた分を資金に変えて、次の時代に役立つ事業の立ち上げに備えよう」という発想が自然と培われていたように思います。

北野様のM&Aへの意向に対して、ご家族はどう反応をされましたか?

北野氏:同族経営の場合、社長の思いだけでは動かせない場面が多々あり、M&Aにおいても家族の説得に苦労して断念してしまうパターンも多いと思います。私の場合も、経理を担当している妻の賛同が得られるか不安だったため、森井先生の力をお借りして説明に備えました。

森井氏:M&Aが成約する直前のタイミングで、北野社長と一緒に奥様に説明したんです。奥様に「M&A後の不安は何もない」と伝えるだけでは、かえって不安を煽るだけになってしまいますし、だからといって家業のまま継続したとしても、不安は払拭されないままです。いずれにしても「将来どうなるの?」という不安ですが、M&Aとなると、社長が50代にして創業家のオーナーではなくなってしまうようなものなので、その点で心配される気持ちも同世代としてものすごく理解できます。
大手企業のグループになるプラス面や、オーナーではなくなっても社長は社長のまま続けていけることを頭では分かっていても、やはり奥様にとっては変化することに対する漠然とした不安が大きかったようで、社長と3人でじっくりお話をさせていただきました。

親族で承継してきた企業の場合、オーナー企業でなくなるという変化にご家族が不安を示されることは少なくないのですね。

森井氏:そうだと思います。オーナー企業であれば、事業や経営の方針をオーナーが決定する以外にも、例えば経費の承認をするのもオーナーで、会社で導入するものの選定などもオーナーの意見が重視されますよね。なので、グループに参画すると、そういった自由が利かなくなるという懸念を持たれるでしょう。
また、当然ながら経済面の不安も非常に大きいと思います。北野社長の奥様も収入が減るのではないかと心配されていましたが、今後の資産管理に関しても先回りして準備をし、「大丈夫」という根拠を社長と私からしっかり伝えました。丁寧に説明していくうちに奥様も未来を描けるようになり、徐々に安心していかれた様子でした。

自らの意志で選んだ、取引先である大手グループとのM&A

北野様はどのような企業をM&Aのお相手に希望していましたか?

北野氏:まずは同業社であることに加え、これまでに話したような当社の経営のやり方や特色が似ている企業に出会えればと考えていました。そうすることで、M&A後の会社の成長や、両社のシナジー効果もより期待できると思ったからです。

複数の企業からお声が掛かったと思いますが、最終的にB社様とのM&Aを選ばれた決め手や経緯をお聞かせいただけますか?

北野氏:B社さんやその親会社とはとても長いお付き合いがありました。実のところ、M&Aに向けて動き出した数カ月後に、B社さんとは別の会社とある程度交渉が進んでいました。一般的にはM&Aを進めている途中で誰かに告知することはほぼないと思いますが、B社さんは大事なお取引先様だったので黙っておくことが私にはできず、「実は経営統合に向けて動いていますが、統合後もご迷惑はおかけしませんので、何卒ご承知おきください」と、一言入れておいたんです。すると、B社さんの親会社から「うちでA社さんを譲受できないだろうか?」というお話をいただきまして。
当社としてもできればB社さんのグループに入れていただきたいと思い、この件を森井先生とfundbookさんに改めて相談して、B社さんとのM&Aに向けて再度動き始めました。

森井氏:北野社長から「B社さんに言いました」と報告を受けたときは、fundbookさんも私も驚きましたが、大事なお取引先様なので、社長の思いは理解できました。
ただ、B社さんのほうは大手企業のグループであるため、当時交渉が進んでいた会社よりも良い条件が提示されるとは限らないことや、スケジュールが長期化する可能性があることが考えられます。そのことを社長と共有し、すでに交渉が進んでいる会社には返事を待ってもらいながら、B社さん側とのM&Aを進めることになりました。

北野氏:B社さんのグループとfundbookさんとの交渉が始まり、先方側の役員会や承認など諸々の過程を経て、3ヶ月後にようやく譲受の意思をご提示いただきました。私の希望が叶ったのも、fundbookさんが交渉してくれたおかげです。私のわがままを受け入れてB社さんとのM&Aを進めていただきつつ、交渉が進んでいたもう片方の会社にも、しばらく返事をお待ちいただくよう頼み込んでいただきました。うまくとりまとめていただいたfundbookさんには感謝しています。

森井氏:こうして良い結果に至れたのも、B社さん側も長いお付き合いの中で、北野社長へのリスペクトがあったからこそです。もしほかの会社が同じ状況をたどっていたら、B社さんとのお取引自体がなくなる可能性もあっただろうなと今でも思います。
それと、北野社長の英断を受け入れて、「B社さんとのM&Aを実現させよう」と、すぐに切り替わったfundbookさんの行動力も素晴らしかったと思います。

家業を守るため、顧問税理士とともに選択した「M&Aという事業戦略」

安心したのは自分だけじゃない。従業員や子どもからも上がる喜びの声

B社様とのM&Aが成約した際の北野様のお気持ちはいかがでしたか?

北野氏:多くの心配ごとや悩みから解放されて清々したような、安堵の思いでした。17年間の社長業を振り返ると、毎日が不安だらけでしたから。もう慌てることも不安に苛まれることもないと、気持ちに余裕ができました。
オーナー経営者だった頃は自分がトップですから、横を見ても誰もいないわけです。ところが、こうして経営統合すると、横を見ればたくさんの人がついてくれています。ずっと孤軍奮闘の日々だったので、組織のありがたさを改めて感じました。心理的にも「何かあれば、誰かに頼れる」という安心感を得られました。

オーナー経営者というのは、人に頼られることはあっても、ご自身は孤独の中で奮闘し続けているのですね。

北野氏:きっと皆さんが孤独を感じていると思います。従業員の前で弱音を吐くわけにはいきませんし、だからと言って家で弱音を漏らしても、家族の雰囲気が悪くなってしまう。常にエネルギーを放出するばかりで、なかなか充電もできません。同じような立場の人には、忙しい中で夜に歓楽街へ出向いている方々も多いと思いますが、それは充電のためであって、以前の私もそうすることでなんとか重圧に耐え忍ぼうとしていた一人でした。
ところが経営統合後は、日常生活でしっかり充電できるようになったので、夜の歓楽街には一切足が向いていません。当然、今でも業界の会合や懇親会には出ていますが、会が終わるとまっすぐ帰宅してしっかり休息をとっていますし、毎朝気持ちよく目覚められるようにもなりました。もう十数年も不安神経症のような状態で、まともに寝られたのは携帯電話が鳴る心配のないお正月だけでしたので。M&Aを機に心身ともに健康になったと、ものすごく感じています。

北野様の変化に、周りの方々も驚いているのではないでしょうか。

北野氏:そう思います。不思議なことに、こうして心境が変わってくると、例えば夜中や早朝の緊急連絡などの、おかしなことが起きなくなるんです。自分だけでなく周りも変わったようで、従業員を見ていても前より表情が穏やかになりました。私が穏やかになったこともあるでしょうし、もし私に何かあっても会社は存続していくので、その安心感は格段に違うのでしょう。

従業員の皆様はM&Aをしたことに対して、どのように受け止めていらっしゃいましたか?

北野氏:成約後に従業員へ開示したのですが、そのときから「よく決断されましたね」と、全員が好意的な反応を示していました。会社の存続を心配しなくてよくなったことや、雇用や待遇が保証されることなども説明したので、不安を訴える声はありませんでした。
従業員も業界の環境が厳しいことはきちんと認識していましたから、「この先、会社はどうなるのだろう」という不安は誰もが持っていたと思います。M&Aによって不安から解放されたので、皆喜んでいました。

森井氏:北野社長からしっかり説明があったことに加えて、お相手の企業がもともと馴染み深いお取引先様で、向こうの皆様の顔も知っているという安心感も大きかったでしょうね。

北野氏:本当にそう思います。従業員だけでなく、私の子どももM&Aをして安心できたと言っていました。子どもは子どもなりに「事業環境の厳しい業界で、孤軍奮闘で頑張る会社を継がないといけないのか」と、ずっと気掛かりだったようです。人の雇用を担う緊張感もありますから。M&A成約後、従業員からも「お子さんに継がせようとしていたら心苦しいなって、私たちも思っていました」と言われたほどです。
従業員にも子どもにも、ようやく「もう心配いらないよ」と、堂々と言えるようになりました。

自社の成長だけでなく、運送業界全体の課題解決にも貢献していく

B社様やグループとの、新しい取り組みや連携の構想が始まっていましたらお聞かせください。

北野氏:B社さんとの経営統合で得られるシナジーについて具体的な構想を膨らませ、それらを明文化した中期経営計画を、ちょうど先日グループへ提出したところです。例えば、「当社がB社さんのこの部分を補うことで生まれるB社さんの余力を、ほかの取引先様の仕事の拡大につなげる」などといった展開案を一緒に作りました。双方で連携して助け合う形を、今期から始めていきたいと考えています。

A社様の今後の目標や、グループに今後期待することもお聞かせいただけますか?

北野氏:日々の業務に追われていると、どうしてもベテラン従業員ばかりを管理職に引き上げるマネージメントになってしまいがちで、これまでは若手人材の育成になかなか取り組めていませんでした。なので、今は若手人材の役職を引き上げることを目標に、さっそく教育に取り掛かっています。
10年後には私も60歳を超えているので、それまでに今の若手が管理の機能を担えるスキルを身につけられるよう、私が培ってきたノウハウは全て伝えていきたいです。
グループには、業界の中でさらにシェアを広げてほしいと願っています。ただ、そのためにはやはり流通量の確保が必要です。モノを運ぶ機能が十分に発揮できなければ販売にもつながらないので、その面で当社も縁の下の力持ちとして、しっかり協力していきたいと思っています。

引き続き社長として会社を率いていく北野様。最後に、ご自身の今後の目標もお聞かせいただければと思います。

北野氏:当社の財務面では、営業利益率の向上を目指していきたいと考えています。
それともう一つ、グループ外の同業他社との共同配送の仕組みも構築して、流通網を効率化する計画を実現させたいです。同じ商材や同じ場所への配送を個々の運送会社がバラバラに行う現行のままの仕組みでは、人手や積載率などあらゆる面で非効率が生じてしまい、非常にもったいないです。「1台の車で1つの場所へ共同配送する形を組み立てましょう」と、すでに数社へ提案をしていますが、今後さらに多くの運送会社を巻き込み、業界を良くする流れを作っていきたいと思っています。
また、頻回配送も極力なくしていけるよう、グループや同業他社とともに取り組んでいきたいです。例えば医療関係の配送では旧態依然とした部分が多く残っており、「麻酔1本、すぐ持ってきて」という発注に応えている状況ですが、このままではこれからの時代の流通自体が成り立たなくなってしまいます。その意識を変えてもらうには、運送会社が共同で働きかけなければいけません。
緊急で必要な商材は私たちがお届けしますが、それ以外の小口配送の商材は営業所で保管しておき、配送先の誰かがどこかに出掛けたついでに立ち寄ってピックアップしていただいて、その分配送料を割引するなど、構想はたくさん浮かんでいます。運送会社の社長として、運送業界の課題を解決していく取り組みにも引き続き尽力していきます。

M&Aは躊躇しなくていい。変化への柔軟な対応が社長の役目

譲渡企業 A社
代表取締役 北野 大介氏(仮名)

市場がピークを越えそうな業種で不安を抱えている経営者がいらっしゃるならば、まったく躊躇することなくM&Aを検討していただいていいと、私は思っています。そのためにfundbookさんのようなM&A仲介会社が存在しているわけであり、私たち経営者も、これまでの実績や苦労してきた経験をちゃんと資金に変えて、次の新しい市場に向かっていくことが、多くの人々の幸せにつながると考えるからです。

いろんな経営本でも言われているように、「社長業は変化に対応すること」という理屈は分かっていても、人はどうしても現状が変わることを嫌がるもので、「あと10年は大丈夫だろう」などと、なかなか踏みきれずにいる経営者は少なくないと思います。しかし、自身や会社の現状は変わらなくとも、社会はどんどん変化しています。知らない間に手遅れになっていたという事態は、回避しないといけません。

変化に柔軟に対応することが社長の役目です。このことから目を背けずに、見極めと決断をすることが大事だと思います。

オーナー経営者が投資家視点に立つことで会社の選択肢は広がる

税理士法人
代表 森井 哲也氏(仮名)

中長期的に考えれば、M&Aは戦略の一つになると頭では分かっていながらも、会社と真剣に向き合えば向き合うほど、その一歩が踏み出せない経営者はたくさんいらっしゃると思います。税理士の立場から見ていると、M&Aを検討したくても、例えば健康上の理由など、誰もが「それなら仕方ないね」と思う大義名分がないと始動できないのだろうなと感じることがしばしばあります。

北野社長が以前、「従業員にとっては、今まで通りの給与と休みが確保されれば、オーナーは誰でもいいんだよ」と仰っていた通り、確かに会社に勤めるうえで、オーナーが誰であるかは最重要事項ではないでしょう。ですが、北野社長の責任感は強く、従業員の皆様やご家族の安心感を最優先されて、今回のM&Aを成し遂げられました。北野社長のストーリーは多くの経営者に希望を与え、課題解決の糸口になるのではないでしょうか。

もう一つ、M&Aをするか否かはさておき、中小企業のオーナー経営者の皆様には、まず「自社がM&Aで選ばれる立場だったら」という投資家の視点に立っていただくことをお勧めしたいです。そうすることで、ビジネスモデルや財務体質、従業員教育など、いろんな面がより良くなり、将来の選択肢もさらに広がっていくので、経営者の視点に凝り固まらず、時には目線と発想を変えてみてはどうかと思っています。

担当アドバイザー コメント

本件は、弊社アライアンスに加盟いただいている顧問税理士の方より相談があり、M&A成約までのご支援をさせていただきました。

当初より社長様のビジネスに対する考え方やお人柄が堅調な実績を裏付けているような印象を受けておりました。多くの企業様が名乗りを挙げられる中、長い取引関係のある企業様との提携を選択されたことも、今となれば非常に納得感があります。

現実的には取引先とのM&Aにおいては、条件交渉等において非常に慎重な対応が求められます。ヒヤヒヤする場面もありましたが、社長様と顧問税理士と弊社のスムーズな連携があってこそ、大変良いM&Aを実現することが出来たように思います。

今も社長様とお会いする場面で、社長様がお相手からの絶大な信頼のもとで更に精力的なお仕事をされている姿をお見掛けし、心から嬉しく思っています。また社長様が家族や日常の穏やかな日々をお話ししてくださるのですが、M&Aを経た社長様の変化を感じて感慨深い思いです。

まだまだ代表として継続的にお仕事に従事されますので、今後更なる成長軌道を描かれることは容易に想像できます。その機会創出に携わることが出来たことを有り難く思うと共に、その成長に弊社もしっかり貢献していこうと思っております。

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