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LPガスや灯油の販売、住設工事などを手掛ける株式会社よしや商店は、愛知県弥富市で長きにわたり、地域に根ざした商売を続けています。2014年に父から代表を引き継いだ久保良史郎氏は、積極的に全国の同業者と悩みや情報を共有しながら、「今までとは違うガス会社」の姿を追い求めてきました。
よしや商店の転機となったのは、LPガス卸大手の株式会社サイサンと中部電力ミライズ株式会社による株式会社エネワンでんきの設立です。会社の成長を見据える久保氏は、真っ先にエネワンでんきとのM&Aに名乗り出ました。「電力会社のグループ企業になりたい」という久保氏の強い想いが実り、2023年12月にM&Aが成約。早速、顧客数は拡大している状況です。
電力会社とのM&Aを望んだ理由やM&Aの経緯、今後の展望などについて、久保氏にお話を伺いました。
久保氏:当社はLPガスを中心とした燃料販売と、それに付随する住設機器の取り付けや工事を主な事業としています。
強みはまず、地域密着であること。そして、ガスだけでなく灯油を販売していたり、従業員に電気工事士がいたり、さらには水道工事も手がけているなど、基本的にほぼ全ての家のトラブルに対応できることです。
久保氏:「よしや商店」の名称では1958年の創業なのですが、手元に残っている一番古い資料によると、明治後期頃には旅館を営んでいたとの記録がありました。この辺りは昭和初期まで宿場町に指定されていて、当時は宿泊客への食事で手作りの豆腐も提供していたそうです。豆腐作りには燃料が必要で、その燃料を近所の方々に販売し始めたのが、今の事業の始まりになったと聞いています。時代とともに薪から炭、LPガスへと商材が変わりながらも、燃料を通じて長い間地域の暮らしを支えてきました。今も弥富市内が一番のお客さまエリアとなっています。
久保氏:高校卒業後に建築系の学校に進学し、社会人になってからは大手建設会社などで7~8年ほど勤務しました。ただ、建築・建設系と言っても、今のよしや商店の住設とはあまり関連がない仕事だったんです。
その後、縁があってスノーボード店や携帯電話ショップなど、当時流行し始めていた商売を自身で営む経験も積んできました。サラリーマン時代はバブルで景気が良かったですし、自身の商売もそのときの時流に乗っていて、どの仕事も楽しかったです。
久保氏:もともと、「いずれはよしや商店を継がないといけない」という考えは持っていました。自分で商売をする経験も積んだことだし、30歳手前で家業に戻ろうと決め、1998年によしや商店に入社しました。当社が株式会社化したのも、ちょうどその頃です。
あるとき、代表を務めていた父が体調を崩してしまい、2014年に父から引き継ぐ形で私が代表に就任しました。
久保氏:ガス業界は独特のルールが長く続いているような、昔から変わらない業界だったんです。例えば、器具を売るためのチラシを作って配布したときに、他店のお客さまの家にもチラシが入ってしまうと、他店からルール破りだと思われかねないような世界でした。競争が起こらないような仕組みになっているのだと思いますが、ほかの業界からすると、違和感があるのではないかと思います。
この商売に身を置き、だんだんと業界の実態を知るうちに、「この業界は、従来のルールに則って新しいことに挑戦しない傾向が強い」と感じた私は、代表になったときから「今までとは違うガス会社になりたい」と思って経営を続けてきました。
久保氏:まずは周りの状況や情報が知りたいと考えていた頃、思いがけず愛知県LPガス協会から「青年部の委員になって会議に出ないか」と呼んでいただき、地区の委員として出席するようになりました。こういった会議は大体、毎年決まった時期に同じようなテーマで決めごとをしたり、近況報告したりすると思いますが、誰も意見を言わないなかで、私は思いきって自分の意見を発してみたんです。すると、当時の会長と専務理事から「そうやって意見を言ってくれる人を待っていた!」と声がかかり、青年委員長とブロック長を任せてもらって全国会議にも出席するようになりました。
全国会議に参加するようになってかれこれ10年以上になりますが、この活動を通じて全国各地のガス会社のルールややり方、悩みをよく知れたことは良かったと思っています。特に関東では昔からのルールに縛られない完全自由商売になってきた時期で、その流れはいつか当社の地域にも来るのだろうなと。
また、中部6県のブロックからも、同世代で同じ境遇の人たちが青年委員の代表として出席していて、その方々とも常に情報や悩みを共有しながら、ガス会社の新たなあり方を模索してきました。
久保氏:はい。特に人口減少の問題は、まだ人口を保っている弥富市にいながらも他人事ではないと思いました。2040年には日本の人口がピーク時の半分ほどになるとの試算も出ていますが、圧倒的なスピードで過疎化が進む地域の同業他社の中には、私が最初にお会いした頃に比べてお客さまの数がすでに半分近くにまで減っている企業もあります。
仮に毎年5%ずつお客さま数が減少すると、10年後には半数になってしまう。じゃあ、エリアを広げて減った分を補えるかと言うと、外には別の同業他社がいるわけで、結局は今のお客さま数でどれだけ耐え凌げるかになってしまう――。いろんなことが分かってくるうちに、当社も今後単独で経営を続けていくのではなく、いつかはM&Aで他社と連携しなければならないなと思うようになりました。
久保氏:昔から変わらなかったLPガス業界に、電力会社という新たなプレイヤーが現れたことです。これは、私が理想に思っていたことが実際に起こった瞬間でした。私は電力会社の業界参入を早い段階で知ることができ、縁があればグループに入りたいとすぐに思いましたね。
当社がM&Aをする理由は、私が引退したいからだとか、会社が業績不振で救いの手を求めたとかではなく、会社をさらに大きくさせていくためです。大手電力会社とグループになるM&Aは、よしや商店の成長に向けてまさに思い描いていた理想の形でした。その後fundbookさんと出会い、「こういうM&Aができれば」と希望を伝え、実現に向けてサポートしてもらうことになりました。
久保氏:やはり人口減少と温暖化対策によるガス使用量の減少が進むなかで、ガス会社同士がM&Aをして対抗策を講じる場合には、支店や営業所の統廃合と人員削減が行われ、コストカットや効率化を図っていくのだろうという懸念があったからです。とりわけ、当社のエリアにも既存の販売網を持っているような大手ガス会社とのM&Aであれば、支店としてのよしや商店は要らなくなってしまうのではないかと、そんな不安が拭いきれませんでした。M&Aの最低条件として、何としても従業員の安定した雇用は確保したいと思っていましたから。
一方で、電力会社にとってのLPガス事業は新たな挑戦となり、これから営業所や人材を揃えていかなければならない領域です。そこで私たちが仲間になれば、よしや商店は存続し、従業員も仕事を続けられ、私も活躍し続けられる未来が想像できたのです。
2022年にサイサンさんと中部電力ミライズさんが合弁会社「エネワンでんき」を設立されたのを見て、できれば一番乗りでグループに入りたいと早々に動き始めました。
久保氏:実は、2019年頃に、全国LPガス協会の会合で協会の担当者が「サイサンさんは業界でも異彩を放つ会社だ。きっとトップになるから」と、川本武彦社長に直接挨拶をさせていただく機会を設けてくださったことがありました。その通り、サイサンさんの姿勢や取り組みから、LPガス業界に新しい風を吹き込ませる存在だという印象を強く受けました。また、サイサンさんとM&Aをした企業のその後を見ても、良い方向に進んでいそうな様子から「M&Aのやり方が違うのだろうな」と、以前から注目していたんです。
そのサイサンさんがまさにこの地区の中部電力ミライズさんと合弁会社を設立したとなると、当社としてはこれ以上ないベストな条件なので、エネワンでんきさんとM&Aをしたいと手を挙げました。どちらかというと、譲渡側の当社から「攻めのM&A」をした形ですね。
久保氏:私の中ではどうしてもサイサンさんと中部電力ミライズさんが設立した“電力会社”とグループになりたいという強い想いがあったので、エネワンでんきさんとのM&Aを前提にfundbookさんから交渉してもらいました。
すると2か月後に先方からも、「エネワンでんき社とM&Aをしましょう」という返事をいただけたのです。もし悩む期間がもっと長ければ、M&Aに対する私の意欲は消極的になっていたかもしれません。はっきりと回答がいただけたときはすごく安堵しました。
久保氏:エネワンでんきさんとのM&Aにおいては、サイサンさんと中部電力さん両社が関わることになるため、色々な取り決めや手続きなどが必要であったことが少し大変だったように思います。ですが、なるべく早く進められるようfundbookさんも各社の間に立って尽力してくださり、サイサンさんとの初回面談からわずか5カ月後にエネワンでんきさんとのM&Aが成約できました。
実際にM&Aを経験してみると、難しいことは色々あるなと実感しました。ましてや譲渡する側は人生で何度も経験するものではないので、fundbookさんというM&A仲介のプロにしっかり関与してもらいながら進められてよかったと思います。
久保氏:当初から望んでいた形でのM&Aが実現できたので、率直に「やったな!」と思いました。それに、もし成約が1年後、2年後になっていれば状況はかなり変わってしまっていたと思うので、早い時期にグループになれた安心感は大きかったです。今は、会社の「縮小を止める」ではなく、「成長を加速させる」ことに日々奔走しています。
久保氏:M&Aが成約してからは、急激に変化したのではなく、グループとして融合していけるよう、スマートに移行できていると思います。まず、サイサンさんから1名が当社の共同代表として出向してくださり、私一人で切り盛りしていた経営業務の負担がとても軽くなりました。従業員もM&Aをしたことに強く賛同してくれていて、退職した人は1人もいません。さらに、グループに入ったことで、エネワンでんきさんの商品をご案内できるようになり、実際に仕事もお客さまも増えています。中部電力さんがバックアップしている電気を販売するということなので、お客さまも当社も安心感は断然大きいと思うんです。これまでと同じLPガスの販売にしても信頼度はより一層高まり、お客さまの増加につながっていると思います。
久保氏:色々と聞かれることが増えましたね。周りの同業者には私と同じ世代の人が多く、親の介護と会社の経営を必死の思いで両立させている人もたくさんいます。私の場合は両親とも介護を必要とせずに人生を全うできたので、そういった苦労はなかったものの、同業者の誰しもが将来の不安や、会社を衰退させたくない気持ちを持っていることは共通していると思います。悩んでいる人の相談には精一杯答えていきたいですし、私の経験がどこかの企業を成長に導く手がかりになれば嬉しい限りです。
久保氏:LPガスは比較的高齢世帯のお客さまが多く、人口減少の影響をまともに受けやすい業種です。そのなかで今後、ガスと電気の両方が商売の柱となれば、新規顧客開拓の可能性はより広がるだろうと期待しています。
また、ガスは夏と冬とで仕事量に4倍の差があるため、繁忙期の冬だけに合わせて人材を確保するわけにもいかず、一方でプロパンガスの配送はマンパワーでしかできないので、加速する人手不足も業界の大きな課題となっています。その点、電力会社とグループになったことで、夏は電力関連の仕事ができたり、冬はグループで人員を補完し合ったりできるという期待も大きいです。
電力会社とM&AをしたLPガス販売店は全国的にもまだ珍しいですが、M&A後の1年目から経営状況が良くなっていると実感しているので、グループとしての融合をさらに進めていき、業界にインパクトを与える取り組み事例を着々と作っていきたいと思っています。
久保氏:今、エネワンでんきグループはLPガスの顧客数1万件を目指しており、目標達成に大きく貢献することがよしや商店としての目標にもなっています。当社のお客さまを引き続き増やしていくだけでなく、今度は当社がM&Aで譲受する立場となり、一緒に成長したい同業社たちを仲間に迎え入れていきたい考えです。
エネワンでんきグループの一員になれたからには、一緒にグループを大きくしたいですし、それがよしや商店にとってもプラスになるはずです。「よしや商店は良い同業社を仲間に連れてきてくれる」と、一目置かれるような働きがしたいですね。
久保氏:昔からの信頼もそうですし、何よりもよしや商店が成長していることが最大の安心材料になると思います。「うちはエネワンでんきグループだから、調子いいよ」と。その事実が一番説得力を持ちますよね。
当社が成長していれば、いつかは「私も仲間に入れてほしい!」といった声が、同業者の間から自然と出てくるときが来ると思うんです。そんな状況を、近い将来作っていきたいなと。仲間を引き入れる立場になって、仕事がますます面白くなりました。やる気のある同業者の皆さんがもっと良い未来を見られるように、当社が成功事例となって仲間を増やしていき、皆で成長できるエネワンでんきへと、グループの力もより強くしていきたいと考えています。
株式会社よしや商店
代表取締役 久保 良史郎氏
これから先、エネルギー業界における事業者同士の統廃合はますます増えていくことでしょう。言葉ではそれも一括りにM&Aと呼ばれますが、本来なら「統廃合のためのM&A」ではなく、「成長戦略としてのM&A」であるべきだと私は考えています。
エネルギー業界では、人口減少等によってすでに苦労を強いられている販売店が少なくないですし、自分の子どもに継がせて同じ苦労を背負わせたくないと思う経営者の気持ちもよく分かります。ただ、それだけが理由で行うM&Aは、まるで会社の片付けにM&Aを利用しているような、消極的な考え方になってしまっているのではないかと思うのです。
今までのエネルギー業界は、どちらかというと成長に向けたM&Aのほうが少なかった気がしていますが、今後は譲受・譲渡企業の双方が伸びるような、成長に向かうM&Aが少しずつ増えていけばと期待しています。
相談料、着手金、企業価値算定無料、
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担当アドバイザー コメント
本件では、中部地区でのLPガス商圏拡大の戦略を掲げるエネワンでんき様と、弥富地域の優良店であるよしや商店様のM&A成立となりました。
両社の親和性も高く、今後の商圏拡大に向けて、最良の提携に至ったと考えております。
よしや商店様はM&A成立後も堅調に規模の拡大が進んでおり、両者の更なる発展に期待しております。