インタビュー

2024年7月29日、譲渡成立

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A
  • 譲渡企業
    株式会社三恵物流センター
    設立
    2001年
    事業内容
    一般貨物自動車運送業
  • 譲受企業
    白金運輸株式会社
    設立
    1974年
    事業内容
    倉庫業、一般貨物運送業
    URL
    https://www.srg.co.jp/

岐阜県羽島郡笠松町に拠点を置き、立地の利便性を生かした中距離輸送を手がけている株式会社三恵物流センター。父が創業した同社の3代目社長を務める船坂亨広氏は、従業員やお客さまから支持される運送会社を目指し、20年以上にわたり会社を率いてきました。そんな船坂氏がM&Aを考えた理由は、「船坂さんの後に誰が会社を指揮するのか」と不安を打ち明けた一人の従業員の言葉がずっと心に残っていたからだそうです。誰よりも従業員を大切に思う船坂氏らしい決断でした。

今いる従業員とお客さまを大事に思ってくださり、会社の発展にも繋がる企業とM&Aをしたい――。一切の妥協をせずに譲受企業を探し続けた結果、東北地方屈指の物流会社である白金運輸株式会社と出会い、2024年7月にM&Aが成約。「2024年問題」に向けてかねてから準備を進めてきた両社が手を取り合い、物流を途切れさせることなく人々の生活を守っていこうと、気持ちを一つにしています。

船坂氏と白金運輸の代表取締役社長・海鋒徹哉氏に、M&Aまでの経緯や今後の展望についてお話を伺いました。

父が創業した会社の3代目社長に就任。「三恵物流“が”いい」と思われるように励んできた

三恵物流センター様の事業内容や強みをお教えください。

船坂氏:当社は名古屋圏を中心に、山梨・長野方面から関西方面まで、200~250km圏内の中距離運行をメインとする運送業者です。岐阜県の笠松町に拠点があり、川を1本渡った先がすぐ愛知県で、高速道路のインターやバイパスにも近いため、運送業を手がけるうえで利便性の高い立地が一つの強みとなっています。

現在は貸切便が多くを占めますが、このほかにも大手路線会社の路線便や幹線輸送、倉庫での荷物の一時預かりなども行っています。

船坂様が三恵物流センター様に入社されるまでのご経歴をお聞かせいただけますか?

船坂氏:社会人になって最初に就職したのが、岐阜県に本社がある運送会社のエスラインギフです。当時は、いずれ三恵物流センターを継ぐと決めてはいませんでしたが、運送業を知らずして継ぐかどうかの判断もできないだろうと考え、エスラインギフに生涯を捧げるくらいの気持ちで入社しました。エスラインギフでは、本社のほかに埼玉県や東京都の支店でも勤務し、事務仕事から現場業務まで幅広く経験を積み重ねてきました。

そのうちにだんだんと三恵物流センターで自身の経験を生かしたいと考えるようになり、エスラインギフの新支店を立ち上げる仕事を全うした後、2001年3月末日に退社し、翌日の4月1日に三恵物流センターに入社しました。

三恵物流センター様に入社してから、大変だったことはありますか?

船坂氏:父が当社を創業したので、「社長の息子が来た」という目で見られるであろうことは自分でも十分に分かっていましたから、「やったことがない」「できない」などとは言っていられないなと、常に気を張っていました。誰かが運行に出られないときは、初めてのルートであっても私が率先して出ましたし、とにかく皆から認められるように、何でもできる人になろうという意識を強く持って業務にあたる毎日でした。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A
株式会社三恵物流センター 船坂亨広氏

船坂様が社長に就任された経緯をお教えください。

船坂氏:父の共同創業者が2代目社長を務めていたのですが、2014年頃に体調を崩され、やっと重い腰を上げて病院に行ったときには、もう肺がんがステージ4まで進行していたんです。それでも本人は平然とした様子で、私もそれを真に受けていたのですが、知り合いの医師からステージ4がどういう状態なのかを教えてもらい、そこで初めて事の重大さを理解しました。

そして2015年1月に組織体制を変更し、2代目社長が会長に、私が3代目社長に就任しました。それまでは数字を見て何かをするにも全て先代社長が判断しており、一方の私は日々の業務を回すことに全力を注いでいたので、経営者になって初めて細かく数字を見たときは「こんなに累積損失があるのか」と愕然としたことを覚えています。

社長に就任してからわずか2カ月後に、先代社長は逝去しました。引き継ぎ等もほぼできていなかったので、本当にドタバタした状態でのスタートでしたが、それでも「社長ってこんなもんなのかな」と、私自身あまり苦労だとは捉えていませんでした。

社長に就任されてから、経営するうえでどういったことを心がけてきましたか?

船坂氏:従業員やお客さまから、「三恵物流センター“で”いい」ではなく、「三恵物流センター“が”いい」と思われるような会社にしたいと、常日頃から皆に伝えてきました。

今「2024年問題」が注目されているように、ここ数年、特に運送会社は働き方改革に伴う大きな変化が求められており、実は当社も行政から指導を受けたことがありました。そのときは、もしかするとお客さまが離反するかもしれないと大きな不安がのしかかったのですが、お客さまが直接「うちはどこの運送会社でもいいわけじゃない。三恵物流センターさんがいいからオーダーをしている。だから心配せずに、これからもよろしくお願いします」と言ってくださったんです。私もドライバーも、その言葉がすごく嬉しかったですし、より一層「当社“が”いい」と積極的に選んでいただける会社になろうと、皆で心がけて事業を続けてきました。

運送業界を悩ませる「人手不足」。DX推進や人材確保が大きな課題に

白金運輸様の事業内容や強みをお教えください。

海鋒氏:当社も運送業や倉庫業などを手掛ける会社です。本社のある岩手県奥州市をはじめ、東北全域を面で捉えるように拠点を持っているほか、関東・中部・関西地域を含めた長距離の幹線輸送も手がけています。

私は東日本大震災の翌年に先代社長の父から代表を引き継いだのですが、震災を境に人手不足が一気に加速し、都市部から離れた地域での輸送力の確保が非常に難しくなりました。そうした経緯から、既存の貨物自動車運送事業に加えて、近年は鉄道や内航海運・外航海運の第二種貨物利用運送事業にも乗り出し、さらにはストック拠点としての倉庫も整備しながら、東北を中心に大都市間の輸送力強化も図っています。

両者様から「2024年問題」や人手不足の話題が上がりましたが、今の物流・運送業界が抱える課題について、改めてお話しいただけますか?

海鋒氏:ドライバーや倉庫作業員の募集をしてもなかなか応募が集まらない状況は、震災後からどんどん悪化し続ける一方です。今の従業員も65歳頃から徐々にリタイアしていくので、若い人にぜひ入ってほしいのですが、人口動態を見ても分かる通り本当に困難を極めています。おそらく、地方の中小企業はどこも人手不足が一番の問題となっているでしょう。国も様々な政策を講じているなかでもあるので、今がまさに物流業界が大きく変わろうとしている過渡期なのだと思います。

その中での課題としては、物流業界はデジタルなどの先端技術が使えない現場として長く続いてきてしまい、DXも思うように進められないことが挙げられます。様々な自動化のシステムがあるにもかかわらず、日本はパレットなども統一規格化がされていないため、ユーロ規格やUS規格が決まっている欧米より明らかに遅れてしまっています。欧米では数種類の規格をセンサーで判別してロボットに任せられている作業も、日本だけはまだ人が手積みをしていて、高い人件費がかかっているんです。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A
白金運輸株式会社 海鋒徹哉氏

船坂様は、どういったところに業界の課題を感じていますか?

船坂氏:私もやはり、人手不足が一番の課題だと感じています。免許制度の改正に伴い、トラックを運転するための条件が厳しくなったことも要因として大きいです。昔は普通免許があれば中型トラック(4tトラック)まで運転できましたが、今は2tトラックも運転できないため、高校卒業後の就職先としても難しくなってきています。

それに、免許制度改正前までは30代半ばで仕事を辞めた人が、次の仕事をじっくり探している間に一旦ドライバーになって生計を立てることも珍しくなく、人材確保は今ほど困難ではありませんでした。当社でもまったく違う職種から入社して、ここでドライバーデビューをした人も多くいれば、一時的に働くつもりが意外と居心地が良いと思ってくれて、そのまま働き続けて大型トラックのドライバーまでステップアップした人もいます。

ですが、今はもうドライバーになろうという強い意思と免許を持っている人でないと運送会社の門を叩かないので、ドライバー職を選ぶ人の数は大幅に減少しています。大手物流会社が募集をしてもほぼ反応がないほどの状態なので、中小企業にとっては人手不足がなおさら切実な課題となっています。

「自分の後を継ぐのは?」従業員の不安を払拭すべく、M&Aを検討

三恵物流センター様がM&Aを検討し始めた時期や理由をお聞かせください。

船坂氏:以前、10代で当社に入社したドライバーがいまして、その人は熱心に仕事をしながら成人式を迎え、結婚して家庭を持ち、家も建て――と、ライフステージをともにしてきたので、当然のように将来もずっとここで勤めてくれるのだろうと思っていました。ですが、あるとき彼は退職することになったんです。理由を聞くと、「船坂さんの後を継ぐ人がいない。誰が指揮を執るか分からない将来に不安を感じる」と。家族を養っていく立場として、転職できるうちに安定した会社に移ろうと考えたそうです。

まったくの他業種への転職であれば、私も「次の道で頑張れよ!」と送り出せたのですが、同じドライバー職として母体の大きな運送会社に転職してしまい、複雑な心境でした。その出来事から、若い従業員たちが不安を抱えながら勤めている状態なのだと身に染みて実感し、将来の不安を払拭していかなければいけないと考えたことが、M&Aを検討する大きなきっかけになりました。そうして2年ほど前から、fundbookさんとM&Aに向けた話を重ねてきました。

どのような企業をM&Aのお相手に希望していましたか?

船坂氏:経営する方のお人柄や会社の規模感はもちろん重視しました。また、大きく仕事内容を変えられたり、譲受企業の仕事をメインに行うよう要望されたりするのではなく、当社の既存の従業員、お客さま、仕事を大切に思っていただける企業と出会えれば嬉しいと考えていました。

船坂様がM&Aに向けて動き始めてから、大変だったことや不安を感じたことはありましたか?

船坂氏:M&Aは初めての経験で、なおかつ社内では一人で進めていましたが、分からないことは全てfundbookのアドバイザーさんに聞きながら事細かに教えていただいたので、一人で悩むことはまったくなく、大変だとか不安に感じることもありませんでした。

実は、白金運輸さんと出会う前にも数社がM&Aに手を挙げてくださり、あとは私が決断すればM&Aが成約するという段階まで進んだ企業もありました。ですが、自分の思いと若干違う将来が見えたことに少し引っ掛かりを覚えたため、そのときは申し訳なく思いつつも、相手探しから再度仕切り直しをさせていただいたんです。アドバイザーさんが自分の思いに寄り添って快く一から再スタートしてくださった結果、こうして白金運輸さんと出会えたので本当によかったと思っています。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

白金運輸様は、どういった経緯でM&Aを検討するようになったのでしょうか?

海鋒氏:拠点のネットワーク化を図るべく、10年ほど前にもM&Aを実施しました。その際、自社単独で行うより企業同士で協力するほうが、人や車両などといった経営資源の投入から稼働までがとても早く実現できると身をもって実感したんです。

当時の東京事務所はお取引先さまの1室を借りて運営していましたが、単に営業活動を行う事務所ではなく、物流の現場となる拠点を作りたいと考えていました。しかし、その頃もすでに人手不足は深刻で、建物とトラックを準備しても人がいなければ物流現場として稼働できないことが懸念点でした。そのときにちょうど1社とご縁があり、M&Aを実施したところ、圧倒的なスピードでネットワークを強化できたのです。

また、当社は輸送手段に鉄道や船舶も用いて人手不足に対応していると話しましたが、次はトラックが無人化される時代が来るわけです。将来的には拠点間を無人トラックが走る時代が来ることを予測し、引き続き拠点化を進めていこうと、今回のM&Aを検討するようになりました。

白金運輸様から見て、三恵物流センター様のどういったところに魅力や相乗効果を感じましたか?

海鋒氏:拠点化に関して、中部か大阪エリアを拡充したいという考えがあったなかで、fundbookさんから三恵物流センターさんを紹介していただきました。船坂社長が仰っていた通り、立地の有利性を存分に活用した運行をされていることに驚きましたし、近畿圏から北陸、関東へのアクセスという点でもすごく魅力を感じました。

また、三恵物流センターさんの本社からほど近い愛知県小牧市にグループ会社の営業所があり、そこでは特定のお客さまの仕事を引き受けているのですが、専属で運行するとなると、仕事に穴を開けないようほかの依頼を断らざるを得ないときも少なくありませんでした。ですが、本当はもっとトラックも仕事も増やして、依頼を断ることがないようにするに越したことはありません。もし三恵物流センターさんも同じ思いで、お互いに連携して繁忙期や休みを補完し合えれば、双方がとても良い形でスムーズに仕事を受けることができ、さらなる相乗効果が生み出せるのではないかと考えました。

決断の決め手は「人柄」。飾らない姿勢で伝わった両社の誠意

面談でのお互いの印象はいかがでしたか?

海鋒氏:船坂社長は第一印象からとてもまじめで誠実なお方だと思いましたし、今も一貫してその印象のままです。先ほど、働き方改革での指導を受けたとの話をされていましたが、こういったネガティブな情報は言いづらいだろうにもかかわらず、船坂社長から「こういう経緯があり、こういう改善をした」と、積極的に開示してくださったんです。

社会的にもこれだけ「2024年問題」が叫ばれているなか、コンプライアンスを徹底しなければ、次に生き残れる物流会社にはなれません。過去につまずいたことがあったとしても、大きく変化・改善したいという強い意思をお持ちだったからこそ今に至れているのでしょうし、逆に言えば、変化・改善したことは実績でもあります。それに、“これから”のほうがもっと重要です。

同じ運送会社として、過去の経験やプロセスから現在の状況も十分理解できたので、初回の面談から「船坂社長と一緒にやっていきたい」と思いました。

船坂氏:とてもありがたく思います。白金運輸さんとは海鋒社長をはじめ、経営陣3名との面談だったのですが、物腰柔らかで、自分のことよりほかの人のことを大切に考えられている印象を皆さんから受けました。それに、話していても3名とも意思を同じくされていることがよく分かり、会社として裏表がなく、安心できるなと。なので、私もぜひ一緒に手を組ませていただきたいと思いました。

海鋒氏:光栄です。初回の面談後も何度かお会いしてきたなかで、船坂社長が何よりも従業員の皆さまのことを大切に思っていらっしゃることがものすごく伝わってきました。当社としても、ネットワークの拡充に向けて両社で徐々に機能を融合させつつ、これまで通り既存の従業員、お客さま、仕事を大切にしていただきたいという意思で一致しました。

船坂様が白金運輸様とのM&Aを希望した一番の決め手は何でしたか?

船坂氏:やはり、お人柄です。従業員の不安を解消したいはずが、もし自分の心のどこかに「この方々と一緒にやっていけるだろうか?」という疑問があれば、従業員はもっと不安になってしまいます。今、自信を持って皆に「大丈夫」と言えるのも、一番はお人柄があってこそだと思っています。

また、当社としてはせっかく業務改善後の状況が軌道に乗ってきたところだったので、M&Aによる抜本的な変化は求めていませんでした。白金運輸さんは「今の仕事を継続しながら、相乗効果が生まれることは新しい取り組みとして協力していきましょう」というスタンスで対話してくださったので、安心して一緒になれるなと感じました。この先私が引退するときが来ても、残る従業員の皆が不幸になることはないだろうと確信し、白金運輸さんとのM&Aを決めました。

白金運輸様が、三恵物流センター様からM&Aのお相手として選んでいただくために意識されていたことはありますか?

海鋒氏:一緒のグループになってから方向性の違いが露呈するのはお互いが望まないことだと思うので、飾り立てることなく自然体でいることがベストだと考えていました。ただ、当社にとっても重要な経営判断だという誠意はぜひお伝えしたかったので、面談はいつも常務と取締役を含めた3名で臨ませていただきました。

今日改めて船坂社長のお話を伺い、当社の思いをしっかり受け取っていただけていたことに、とてもありがたく思うばかりです。

海鋒様は、企業をグループに迎え入れるお立場として心がけていらっしゃることはありますか?

海鋒氏:当社を創業した私の父の時代から、「○あなたよし ○わたしよし ○みんなよし」を経営理念としてきました。三恵物流センターさんと同じく、当社もお客さまと従業員を大切に考え、社会に貢献していくという意思をこの言葉に込めています。

船坂社長には三恵物流センターの皆さんの幸せをこれからも変わらず思い続けていただきたいですし、私も船坂社長を見習いながら、創業時の思いを忘れず、そして次の世代へも意思をつなげていけるよう、グループのリーダーとして皆さんと一緒に歩んでいきたいと考えています。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

これからも社長を続投。グループの一員として自社の強みを生かしていく

M&Aが成約したときの船坂様のお気持ちはいかがでしたか?

船坂氏:「決まったな」という気持ちはありましたが、「これが終わりではなく、ここから始まるんだ」という思いがすぐに浮かんできました。これまでは、三恵物流センター単体でどうするのかという考えだけでしたが、これからはグループの一員としてどうすれば最善なのかを考えながら頑張らないといけないなと、身が引き締まりましたね。

また、今後は何か新しいことができたり、当社単体では考えつかない方法を勉強できたりしそうだと思いましたし、管理する人材の教育などもぜひ吸収させていただきたいなと、色々な期待が膨らみました。

周囲からは「なぜ東北の会社と?」と聞かれたことがありますが、白金運輸さんは関東や関西などにも拠点があるので、そのネットワークの中に中部地方の当社が入ることに何のハンディキャップもないと思っています。それどころか、当社の強みである立地を生かして、グループの役に立っていきたいとやる気に満ちています。

従業員の皆様からは、白金運輸様とのM&A成約について、どういう反応が寄せられましたか?

船坂氏:40数名の従業員一人一人を自室に呼んで、言葉と資料で説明したのですが、ネガティブな反応は一切ありませんでした。それどころか、「うちにはメリットばかりですね」といったポジティブな声もたくさん寄せられました。

前々から会議の場などで、大きなお取引先さまがグループの傘下に入った具体例を挙げながら、「あれだけ大きな会社でも、こういう動き(M&A)をしていくことが生き残るためには必要なんだよね。皆も正直、私の後がどうなるか不安やろう?私が皆の不安を解消するように動いていくから、安心してほしい」と、雑談程度に話していました。なので、前もってM&Aに対するマイナスなイメージは払拭できていたものと思います。

また、これからも私が代表を続けていきますし、既存のお客さまの仕事を変わらず大切にしていくことも資料に明記して説明したので、心配の声は寄せられなかったのだろうと捉えています。

船坂様が三恵物流センター様の社長を続けていただけることに、白金運輸様はどういう思いをお持ちですか?

海鋒氏:船坂社長はまだまだお若いですし、当初から社長を継続することがM&Aの条件の一つとされていたことに、私は何の違和感もありませんでした。むしろ、続けていただいたほうがより良い形でスタートが切れるだろうと思っていたので、もし船坂社長の退任が条件だったら当社も悩んだはずです。組織のトップに立つ人は、能力だけでなく従業員を思いやる気持ちも非常に大事ですから、10年、20年と社長を続けていただきたいと思っています。

これから先、船坂社長の後継者となる人が、三恵物流センターさんの中で育成されるかもしれませんし、グループの中から逸材が見つかるかもしれません。ただ、今までどおり船坂社長が続けられてこそ、そういう“未来”が築き上げられると思うので、ぜひ私たちと一緒に未来を創っていただきたいと願っています。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

物流を途切れさせない。社会に貢献する運送会社を目指して

両社様がお互いの企業に期待することと、今後の展望をお聞かせください。

船坂氏:白金運輸さんは組織がしっかりしていらっしゃいますし、従業員の成長を後押しできる仕組みも確立されていらっしゃいます。一方当社は、皆で力を合わせて汗をかき、労い合うような、そんな昔から続く雰囲気も良いところの一つではありますが、従業員がステップアップできる仕組みも構築していきたく、白金運輸さんからぜひ勉強させていただければと思っています。

また、海鋒社長が業界の課題にDXを挙げられたように、当社の業務や管理方法も、効率化・省力化ができる場面がまだたくさんあると感じているので、良い方法を当社にも共有いただけると嬉しく思います。

海鋒氏:スケールメリットを生かせられることがグループ化の大きな目的の一つになると思うので、参考になるような仕組み等があればどんどん吸収していただき、良い会社作りをさらにグレードアップしていただきたいです。合わせて、当社にはトラック、鉄道、船舶という多様な輸送モードがありますので、三恵物流センターさんのサービスでも活用できるようにしていただければと思っています。

当社は「2024年問題」に向けて、複数のドライバーが各拠点で交代しながら、より短いリードタイムで効率よく長距離輸送を可能とする「リレー中継輸送」に、数年前から力を入れてきました。働き方改革関連法の施行で勤務間インターバルの時間が長くなってからは、一人のドライバーによって以前と同じリードタイムと運賃で長距離を運ぶことができなくなったからです。

長距離運行のドライバーがいなくなる将来が見えており、多くの運送会社が長距離輸送から撤退しているなか、当社グループはそこに切り込んでいます。三恵物流センターさんの立地は、日本海側の北陸から関西にもつながる重要な拠点であり、可能性は無限に広がっています。私たちと一緒に、徐々に新しい輸送便を作り上げていただけるとありがたいです。

今後、三恵物流センター様はグループにとって大事なハブのようなポジションになる可能性があるのですね。

海鋒氏:そうですね。以前は当社も「北陸や大阪に拠点があれば」などといろんな思いを巡らせていたのですが、それほど都合よく協力関係を結べる企業が見つかるわけではありません。運送会社のご縁を結ぶfundbookさんも、そこのニーズのマッチングにも常に尽力されていると思います。

三恵物流センターさんは立地の強みを生かし、岐阜からどこかに運送してから空で帰ってくるのではなく、帰り便にも荷物を積み、岐阜でインターバル時間をとってさらに出発するという、画期的な方法で運行しています。本州の端にいる当社には思いもつかなかった方法で、「本州の真ん中って強いな」と、目から鱗が落ちる思いでした。面談の段階から、「こうしたら面白そうですね」といった今後につながる話で盛り上がりましたね。

船坂氏:自社がどういう方法でどういう運行をしているかを紹介したときから、海鋒社長が「それならこういう連携ができそうだな」と感じ取られまして。前もってお互いが一つの同じビジョンを持ってお会いしたのではなくとも、最初の面談からすでにそういう話は始まっていました。

物流業界は様々な課題を抱えながらも、人々からのニーズは高まる一方にあります。その中で、グループとして社会にどのような貢献をしていきたいとお考えか、最後にお聞かせいただきたく思います。

海鋒氏:当社グループでも人が集中している東京からの案件が多いのですが、その分、ものを作ったり消費したりすることにおいて都市部と地方の間の格差が広がっているように感じています。しかし、ITが都市部と地方の情報格差を縮めてきたように、物流も場所による格差を埋めるためになくてはならない存在だと思うのです。

皆さんが日々食べているものも然り、例えば地方で新しい駅や施設を建てるときの資材まで、生産地からモノを運んでくる物流なしには何も成り立ちません。ところが、「2024年問題」により物流サービスの持続可能性が著しく低下し始めています。

日常の生活に物流は必要不可欠です。だからこそ、私たちが影響を与え得る地域の物流を途切れさせないことが、私たちの一番の社会貢献になると言えます。「継続性」「持続可能性」を重視しながら、積み込みから荷卸し作業まで、あらゆる業務を時代に合ったものに進化させ、地域を廃れさせないための物流を担っていきたいと思っています。

船坂氏:海鋒社長が仰る通り、運送業は物流インフラだけでなく、生活インフラの一翼も担うほどの存在ですので、今後も途切れることなく安定的にサービスを提供していきたいです。

一方では、社会的な重要性と隣り合わせるように、例えば事故などが起きたときには「トラックが」「運転手が」などとメディアで報じられるほど、非常に大きな責任や影響を持つ仕事であることも事実です。そのため、信用を保ち続けられる日々の行動も、社会貢献の一つになるだろうと思っています。

最後にもう一つ、運送会社として、そしてその経営者として、トラックドライバーの皆がもっと自分たちの仕事に誇りを持てるような状況を作っていきたいです。「ドライバーの仕事“で”いい」ではなく、「ドライバーの仕事“が”いい」と思って物流業を目指す人が増えれば、ひいては持続可能な物流の実現につながると考えるからです。今後は色々な場面で白金運輸さんと協力しながら、引き続き社会に貢献する運送会社を目指してまい進したいと思います。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

今後は小規模事業者間のM&Aニーズも高まっていくと予想

株式会社三恵物流センター
代表取締役 船坂 亨広氏

当社がM&Aを実施したことを、地元の中小企業で社長を務める友人たちに話すと、最初は「ほかの方法はなかったのか?」と驚かれたのですが、経緯や現状を説明するうちに、「M&Aも一つの選択肢だよね」と、考えが変わった様子でした。いずれ自分の子どもが会社を継ぐと想定しているものの強制したいとは思っておらず、継がなかった場合にはM&Aも手段として十分考え得ると思ったのだそうです。

私の地元には、規模こそ大きくなくとも都市部からの需要が常に高い優良な企業が様々あります。例えば、銘木店が後継者不在に悩んでいた場合、今の時代はハウスメーカーや建築会社とグループになって事業を存続する道が考えられ、お互いのノウハウと販売ルートを生かして、お客さまにもっと喜ばれる商品を展開することも可能になると思います。

これまでのM&Aは、大手企業が中小企業をグループ化するイメージが強かったと思いますが、今後は相乗効果が期待される小規模事業者同士によるM&Aのニーズも、ますます増えていくのではないかと想像しています。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

事業の存続が地域社会の生活を守ることに直結している

白金運輸株式会社
代表取締役社長 海鋒 徹哉氏

M&Aは譲渡企業と譲受企業のどちらにおいても、従業員の生活を守ることにつながりますし、従業員が守られるということは、技術やノウハウも未来につなげていけることになります。提供する商品・サービスが必要とされていたからこそ、そこに存在していたはずなので、自分の会社や店を大切に思ってくださる利用者がいるのであれば、そういった方々のためにも、事業を守っていっていただきたいと私は思っています。

私の住む地域は、田園風景の広がるのどかな良い場所です。しかし、後継者不在で中小企業がどんどん減って産業が縮小し続けており、さらにはコロナ禍で多くの飲食店が閉店しました。地方に行くほど、事業の存続が地域社会の生活を守ることに直結するのだと、切に感じています。

会社や店を閉じるという経営者の判断は、誰にも止められないものです。ただ、地域のコミュニティーに役立つ事業を続けていく手段の一つにM&Aがあり、そのこと自体が社会貢献になる可能性があると思うので、後継者不在などに悩む経営者も、ぜひとも事業を辞めることだけにとらわれないでほしいと願っています。

従業員が安心できる未来と、持続可能な物流の実現を目指すM&A

担当アドバイザー コメント

この度はご成約誠におめでとうございます。

船坂社長様と初めてお会いした当時は、まだまだM&A=選択肢の一つというご状況でしたので、そこから1年以上は業界の先行き、事業承継プラン、会社の経営課題等、本当に様々なテーマについて議論を重ねていきました。
ご面談ではご自身のことは二の次で、常に「従業員の幸せが一番」と熱心にお話されていたのをよく覚えております。

本格的にM&Aの検討を始めてからは、様々な企業様とご面談し、すぐに複数オファーを受けました。一方で、「従業員の幸せ」を満たすこと具体的にイメージできる企業様とはなかなか出会うことができず、事業承継の方向性を再考するか否かを検討し始めたタイミングで出会ったのが白金運輸様でした。

白金運輸様は、東北地方を中心に強い基盤を持つ総合物流企業様です。歴史や広範な物流ネットワークなど、お相手様としての前向きな要素は数多くありましたが、最終的な決め手は経営陣の穏やかなお人柄だったと感じます。M&Aはある意味成約してからが本番で、人対人の信頼関係が最も重要になりますが、初回のご面談で「従業員を幸せにしたい」という船坂社長の想いを受け入れ、共感し、実現させることを約束いただいた時に本件のご成約はきまっていたのかもしれません。

改めまして、今回の素晴らしいご縁を紡ぐお手伝いがことができたことを誇りに思います。
これから三恵物流センター様が白金運輸様というパートナーとともに共にさらに成長し、本件に関わる全ての方々が幸せな未来を歩めるよう、陰ながら応援しております。

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