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レジのPOSシステムが国内で普及し始める以前から、POS事業に携わってこられた勝山徹氏は、1991年に株式会社日本システムプロジェクトを設立。常に時代のニーズを捉えた事業を展開し、現在はセルフオーダーシステムや「配膳ロボット」など、飲食店のホール業務に役立つシステムが国内外の多くの飲食店で導入されています。
様々なアイデアを商品化してきた勝山氏ですが、多くのベンチャー企業が登場する中で、「自分の経営で本当にいいのか?」と悩まれた時期があったと言います。加えて、コロナ禍では非接触を実現する商品の受注が増加したものの、これから不確実性が高まる時代ではパートナー企業が必要だと考えるようになり、2020年頃からM&Aを本格的に検討し始めました。
その後、「寿司ロボット」「ご飯盛り付けロボット」など、飲食店の厨房での省人化・省力化サービスで業界をリードする鈴茂器工株式会社と出会い、2021年10月にM&Aが成約。飲食店のホールと厨房が連携する包括的な業務効率化サービスや、フードテック技術を活用した新規事業に向けて、両社の協力はすでに始まっています。
勝山氏と鈴茂器工執行役員の秋田一徳氏に、M&A成約までの経緯や両社様のシナジー、そして目指す未来についてお話を伺いました。
勝山氏:私は以前勤めていた会社で、レジのPOSシステムを手掛ける事業部に所属していました。店舗にPOSを導入し、運用していただくサービスでしたが、あるとき会社がM&Aによって別の会社のグループになり、POS事業部も統合されることになったのです。新しい事業部には3年ほどいましたが、これまでのサービス形態や考え方に相違を感じ、独立する形で1991年に日本システムプロジェクトを設立しました。
勝山氏:一番は「継続」です。やはり、会社を経営するからには黒字を維持しなければいけないと考えていました。POSを導入する業界は、スーパーマーケットやドラッグストアなどの物販を手掛けるリテール業と、飲食店などのサービス業の大きく2つに分けられます。リテール業は資本力のあるナショナルチェーンに個店が淘汰されている一方、サービス業は今なお個店が健在といえます。加えて、飲食店の場合はチェーン店であっても個々の店舗がPOSを発注しているように、リテール業ほど本部と連携する必要がない。こうした市場の変化と業界の特性を見極めて、提供するサービスを全て飲食店向けに切り替えて事業を継続してきました。
秋田氏:当社は1961年に創業し、製菓機械の開発・販売を手掛けていたのですが、当社の創業者である鈴木喜作が、日本の減反政策に憤慨し、日本の米の消費量を拡大していきたいという思いに駆られて、1981年にお寿司のシャリ玉を作る「寿司ロボット」の1号機を開発しました。それ以降、「海苔巻きロボット」や「ご飯盛り付けロボット」などさまざまな米飯加工機械を開発し、40年にわたって飲食業界を支援してきました。例えば、一皿100円台の回転寿司店がこれほど多く展開できる裏で、店舗の省人化・省力化ができる当社の機械の貢献度は大きかったと自負しています。特にここ数年は、省人化・省力化のニーズが非常に高まっていると感じています。飲食店のオペレーションやコストをより効率化させていくには、一つの業務を手助けする機械をパーツごとに導入するだけでは限界があります。厨房、ホール、発注業務など、店舗を包括的に最適化するための施策が大きなニーズであり、課題になっていると考えています。
勝山氏:今から5~6年前に遡りますが、さまざまなベンチャー企業が登場し、新しい考え方や違った世界が出てくる中で、「自分の経営で本当にいいのか?今まで通りに製品を作って売るままでいいのか?」と悩んだことがありました。そうしているうちにコロナ禍になってしまい、飲食店が大打撃を受けたのです。「配膳ロボット」やセルフオーダーシステムなど、非接触を実現する製品が注目を集めたため受注は来るものの、製造のサプライチェーンが止まっているゆえに納品が遅れる日々。そのときに、この難局を1社で乗り切ろうとするより、やはり一緒に協力できるパートナーがいれば「三本の矢」のように強固になれるのではないだろうか。同時に、当社の継続のために経営を第三者に任せたほうがよいのではないだろうかと考え、本格的にM&Aを検討するようになりました。
秋田氏:きっかけは大きく2つあります。まず、先ほどお話したような飲食店が抱える課題の解決に向けて一緒に取り組める会社を探していたこと。そして、2019年11月に発表した中期経営計画で、米飯に関する事業を一つの柱としながらも、当社の経営資源を活かし、他社と協力して新たな領域に製品や事業を広げていくと掲げたことです。今までは厨房で使う製品だけを提供してきたため、消費者と接するホール向けの製品やサービスを持っていませんでした。それならば、ホールの領域に強い会社と手を組み、飲食店の業務効率化を一貫してサポートできる事業を作りたい。そう考えていた時、fundbookからご連絡をいただきました。
勝山氏:fundbookからは、20社もの譲渡先候補が提案されました。検討するにはさすがに多すぎましたね。M&Aは会社同士の長い付き合いが始まる重要な転機になると思ったので、そこは正直に伝えました。そして、当社に合う1社として紹介されたのが、鈴茂器工さんでした。鈴茂器工さんは業界でも有名なのでもちろん知っていましたし、厨房向けの製品を展開されているのでシナジーもありそうだと思い、話を進めさせていただくことにしたんです。ただ、鈴茂器工さんの存在は知っていても、どういう考えを持たれている会社なのかも分かりませんし、当社や社員が今後どうなっていくのかという心配もありました。なので、お会いするまで不安も大きかったですね。その一方で、鈴茂器工さんは全国や海外にも広く事業展開されていますし、当社と同じようなお客様がいらっしゃるので、営業面や将来性に対して社員も安心できるのではないかという期待も持っていました。
秋田氏:当社にとっては、自社内の理解を得るまでに時間を要したことが大変でしたね。M&Aの最大の目的は、連結グループの売り上げや利益を今すぐ積み上げることではなく、鈴茂器工グループの一番の強みと財産である販路やネットワークを活かして、お客様の役に立つ新たなサービスを創造することです。しかし、それらを他の会社と共に一緒に作り上げていくのは、簡単にできるものではありません。加えて、厨房向けの製品を販売する当社にとって、ホールは「飛び地」のようなイメージ。なので、社員全員がこのM&Aをすんなり理解できなかったのではないかな、と思います。ただ、日本システムプロジェクトさんは時代の変化に合わせたサービスを提供する柔軟性や、新しいものを取り入れていくスピードと推進力を持たれています。そうした魅力も合わせて、両社で得られるであろうシナジーを、社内で繰り返し何度も説明をし、進めてきました。
勝山氏:「ほっとした」という気持ちが第一にありました。それは、経営者が背負う重い荷物を下ろしたからという意味ではありません。今まではずっと自分が会社を引っ張ってきましたが、これからは鈴茂器工さんと一緒に経営をしていく形になるので、外からの視点も持てるようになるのではないかと。「自分の経営でいいのか」と悩んでいた時期から一変し、今ではいろいろな方面から自社を見られるようになったことに安堵しています。
勝山氏:以前からM&Aに向けて動いていると伝えていたため、鈴茂器工さんとM&Aを決めたと発表した際も、特に驚いていた様子はありませんでした。もちろん、どういう会社なのか詳しく分かるまでは不安もあったのではないかと思いますが、成約から半年もすると、皆から「良かった」という反応が出てくるようになりました。
秋田氏:弊社ではこれまで、お客様である飲食店の皆様に寄り添っているという自負はあったものの、「寿司ロボット」や「ご飯盛り付けロボット」を販売しているだけでは、店舗全体のニーズに十分応えることができないと感じる場面が多々ありました。その中で日本システムプロジェクトさんと手を組んだことで、社員の中にも「お客様の支援に向けて新たな一歩が踏み出せる」という期待が高まったと感じています。
勝山氏:成約直後の経営会議で、鈴茂器工さんから「会社にはビジョンが必要」と伝えられました。しかし、これまでの私は営業戦略や商品戦略のような実務的な考えに重点を置いてきたので、最初はビジョンの必要性に疑問を持っていました。ところがその後、いろいろな人と話したり、書籍を読んだりする中で、会社にとってビジョンがどれだけ重要なのかが少しずつ分かるようになってきたのです。先ほど、会社を経営する上で「継続」を重視してきたと話しましたが、継続することは会社そのものの目的ではありません。会社の目的は社会における存在意義を確立していくことであり、そこに向かっていくためには、会社の方向性や目指す姿を明確にしたビジョンが不可欠だと気付きました。また、経営者として会社を継続させようとしても、ビジョンがなければ長期戦略が描けません。これまでは「来期の利益をどうするか」を考えてばかりでしたが、5年先、10年先を見据える考え方を鈴茂器工さんから教えていただき、本当に良かったと思っています。
PURPOSE:豊かで多様な食生活を世界の人々が享受できる社会の実現 VISION:食の「おいしい」や「温かい」を世界の人々へ MISSION:全てのお客様をシステムで元気にしよう!
秋田氏:このビジョンは、鈴茂器工でも掲げているものです。当社も日本システムプロジェクトさんも、飲食店などの事業者が直接のお客様なので、BtoB企業ではあります。ただ、その先には最終消費者であるお客様がいます。BtoBtoC企業だという認識をしっかりと持ち、最終的に消費者の皆様にも「おいしい」「温かい」を届けていきたい。そして、「温かい」は物理的な温かさだけでなく、心の豊かさも届けていきたいという考えのもと、このビジョンを策定しました。「手軽で、誰でも、いつでも、どこでも、おいしく、安全に食べられる世界を作っていく」ことが存在意義だと考え、このように明文化しています。
勝山氏:当社は3~4年前から「セルフ」「キャッシュレス」「ロボット」「AI」に注力してきました。特にコロナ禍では、非接触を実現するセルフオーダーやセルフレジのシステムが多く導入され、配膳ロボットも多くの注目を集めました。その恩恵もあり、2022年2月期は過去最高益を記録しました。今後も、こうした製品は飲食店の必需品になっていくと思うので、引き続き時代に合わせた開発・改善に力を入れていきたいと考えています。また、飲食業界は人手不足が慢性的な課題となっています。特にコロナ禍の営業自粛や時短営業などで拍車がかかり、離職率が15%に達したという調査も目にしました。コロナ禍が落ち着いたとしても、離職した人が必ず飲食業界に戻ってくるとは言い切れません。人手が減れば、システムやロボットの需要はこれまでになく高まるので、常に時代のニーズを汲み取ったサービスの展開を心掛けていきたいと思っています。
秋田氏:勝山様がおっしゃる通り、飲食店の皆様は以前までと次元が違うほどに人手不足なので、私たちもオペレーションの省人化・省力化を、これまでと違うレベルで考えなければなりません。並行して、お客様が私たちの持つサービスや機器、ネットワークを通じて、よりよい食の体験が向上できる仕組みを構築し、食の産業を豊かにしていきたいと考えています。日本システムプロジェクトさんと当社は、ホールと厨房向けにサービスを提供していますが、飲食店のバリューチェーンの流れを広く捉えたサービスなど、ご提案できることはもっと多くあるのではないかと思っています。
勝山氏:鈴茂器工さんはフードテックの分野でさまざまな研究をされているので、それらを当社の製品に応用して、新たな概念や仕組みを作ろうと構想しています。例えばタブレット注文だと、単なる注文でも、パーソナライズ化やエンターテインメント性などの“使いやすさの先”を追求すればUX(製品・サービスを通じて得られる顧客体験)も向上し、お店での体験をより楽しんでいただけるようになるのではないでしょうか。
秋田氏:当社にとって、これまで提供している商品とお客様は少し遠い存在でした。ただ、日本システムプロジェクトさんはセルフオーダーシステムなど、お客様との直接的なタッチポイントを持たれているので、より近いところでUI/UXの新しい体験をどう提供していこうかと考えられるようになりました。
勝山氏:ほかにも、今、両社で需要予測に取り組んでいます。需要予測の精度が上がれば、仕入れや機械の稼働、スタッフの配置など様々な点で無駄なく効率化できるようになるので、特に注力する研究の一つになっていますね。
秋田氏:こうした新しいプロジェクトは、勝山様からのアイデアもあれば、お客様からの要望から始まることもあります。実際に「日本システムプロジェクトさんと鈴茂器工さんが一緒になったんだから、ぜひ組み合わせて提案してほしい」などの声も多く寄せられています。ニーズがあるということは、そこがお客様にとっての課題や悩みでもある証拠です。両社の連携がお客様にとっての価値につながっていくと日々実感しているので、今後ますます協力関係を深めていきたいと考えています。
勝山氏:もちろんです。これまでのようにシステムや製品を単体で提供するだけでなく、例えばセルフオーダーシステムと厨房の「ご飯盛り付けロボット」を連動させるなど、飲食店のオペレーションをトータルで支援できるようなパッケージも提供したい、といった話をしています。海外には日本の何倍もの市場がありますから、これからがとても楽しみです。
秋田氏:食文化が普及するには、手頃な価格でおいしいものを安心して食べていただける文化を醸成させる必要がある。そのため、省人化オペレーションは大前提として考えなければいけません。加えて、人の手間を削減したコストを食材などの原価に反映できるようになれば、よりおいしい食事が手軽に食べられるようになります。省人化オペレーションはこういった好循環も生み出すため、食文化を広げる大事な要素であると言えます。海外のお客様にも、日本の食文化を広く楽しんでいただくためのサービス開発に、両社で励んでいきたいですね。
秋田氏:まさに、これからです。先を見据えていろいろな考えを巡らせることは重要ですが、いきなり目標に到達できるものではありません。まずはベースや全体図をしっかり作ること。今の私たちはそのフェーズにあると思います。ベースを固めた上で、日本システムプロジェクトさんとともに着実な成長を実現していきたいです。
勝山氏:例えば、セルフオーダーシステム一つをとっても、システム自体は当社以外にもさまざまな会社で製造・販売されています。その中で業界1位を目指すためには、差別化やインパクトが必要です。すでに鈴茂器工さんとは新しいアイデアを出し合ったり、お互いの技術を組み合わせる構想を立てていますが、両社が協力することで目標や可能性がより広がっていくものと確信しています。
株式会社日本システムプロジェクト
取締役会長 勝山 徹氏
企業の歴史や、従業員の将来などを考えると、事業承継はそう簡単な話ではありません。ましてM&Aの場合、相手の会社の考え方など分からないことも多く、不安も大きいものです。なので、M&Aの仲介は単なるマッチングビジネスとは全く違う、責任重大な職務だと私は考えています。当然、先々を明確に見通すことは難しいですが、それでも「この会社とならこういう画が描ける」という点まで踏み込んだ提案を仲介会社がしてくれることで、M&Aの一歩が踏み出せると実感しました。
今、M&A仲介の事業者が非常に増えてきている中で、譲渡・譲受する当事者も見極めが必要になってきています。やはり、M&Aは成約してからがスタートですから。fundbookにもぜひ、私たちの今後を見守ってほしいと思います。
鈴茂器工株式会社
執行役員 企画本部長 秋田 一徳氏
企業がある方向を目指していく上で、事業上のシナジーや経営資源の補完など、さまざまな目的でM&Aを活用する事例は今後も増えていくと思います。その中で今後は、単純に規模の拡大や売り上げ・利益の積み上げを第一に考えるよりも、「その先にどんなものを一緒に作り上げていくか」がより重視される世の中になっていくのではないでしょうか。なぜなら、コロナ禍や国際情勢に見られるように、あらゆる面で不確実性が増しており、今後も想定外の事態が起きる可能性は十分考えられるからです。何かが起こると物流が停滞したり、原材料が届かなかったりと、様々な影響が出ます。つまり、思うようにいかないことが、今後さらに起き得るということです。
数年後の目標を数値で表すことは必要ですが、不確実な世の中で数年後を完全に見通すことはほぼ不可能です。M&Aにおいても数字だけを見て判断するのではなく、「両社がどのような志を持ち、何を目指して一緒に取り組んでいくか」を、お互いに意識しながら進めていくことが重要になると思っています。
相談料、着手金、企業価値算定無料、
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担当アドバイザー コメント
本件は外食業界の在り方を更に推し進めるインパクトの大きいM&Aだと思います。
40年以上、日本の代表的な主食である米を配膳する形にひたすら向き合って洗練し続けてきた譲受企業。時代のニーズに向き合い、幾度と取り扱い商材をシフトしてきた譲渡企業。
アフターコロナを見据えたこのタイミングで、厨房に強みを持つ譲受企業と、ホールと会計に強みを持つ譲渡企業のタッグは誰もがワクワクする提携ではないかと思います。
本件マッチング時では多くの譲渡先候補を勝山社長へ提案しました。
しかし、かなり早い段階から「鈴茂器工さんがいいでしょ!事業シナジーが面白そうだ!」という意見を頂いていました。
結果としては勝山社長の「読み」通りだったように思います。
いずれにしても今後が更に楽しみなご両社です!
私たちfundbookは今後もsuccess for allの信念のもと、シナジーの高いM&Aを目指して参ります。