インタビュー

2020年1月20日、譲渡成立

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

永野設備工業株式会社 代表取締役の永野祥司氏は、同社を開業してから約20年、住宅設備工事を主とした企画から設計・施工まで一貫して行う技術を強みに、幅広い分野で事業を展開しています。また、住設ECの草分け的存在としても知られ、現在は「住設ドットコム」など6サイトを運営しています。

当初はIPOを実現するための選択肢の一つとしてM&Aを検討していましたが、物流事業を手掛ける堀内商事株式会社と運命的な出会いを果たし、2020年1月、M&Aの成約に至ります。今は理想的だと思える譲渡先も、当初は「なぜ異業種の物流会社と?」という驚きからスタートしたと語ります。堀内商事とのM&Aを進める中で見えてきた新たな未来とは?

永野設備工業の永野氏と、堀内商事の代表取締役社長である堀内正行氏にお話を伺いました。

「自分にしかできないことを」YouTubeでEC事業を拡大

永野設備工業様の事業について教えてください。

永野氏:当社は2000年の開業以来、大阪・岸和田での住宅設備工事を主に、これまで介護事業、リフォーム事業など、お客様のより良い暮らしの提供を目指して事業を広げてまいりました。

2002年にはEC事業部を立ち上げて「住設ドットコム」などのECサイト運営にも注力し、住宅設備機器の販売のみならず取り付け・取り替え工事まで行うサービスも展開しています。また、競合他社との差別化として「自分にしかできないことをやろう」と考えて2019年に『水道職人!ながちゃんねる』というYouTubeチャンネルを開設しました。こうした取り組みのおかげで、EC事業を年商11億円以上の規模にまで成長させることができ、将来的にはIPOを実現したいと考えるようになりました。

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M&Aを検討された理由を教えてください。

永野氏:IPOを目指す中で、内部統制の仕組みづくりなど自社単独で実現するには難しい課題がいくつかあり、その課題を解決するための選択肢の一つとしてM&Aを検討しました。

事業の面でも、今後はBtoCだけでなくBtoBにも広く展開したいと思っており、力を貸してくれるお相手を探していました。この業界では仕入れ・施工・販売の3つをすべて押さえられれば強い。しかし、仕入れ・施工はできても、在庫管理拠点の確保ができず、販売網を広げることができないというのが当社の弱点で、なんとかしたいと考えていたんです。

M&Aを進めるうえで、不安な点はありましたか?

永野氏:本当に信頼できる譲渡先が見つかるかどうか、当社の従業員が受け入れてくれるかどうか・・・不安はたくさんありました。M&Aをすれば譲渡先のオーナー様とビジネスパートナーとして会社を共に支えていくわけですから、お相手によっては取り返しのつかない事態になってしまう可能性だってある。また、本当にいまM&Aが必要なのかという思いもありました。

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

厳しい時代を生き抜くための“武器”を求めて

そこで、FUNDBOOKがご提案した譲渡先が、堀内商事様でした。

(堀内商事株式会社 堀内 正行氏)

堀内氏:当社は1968年に父が設立し2009年に私が2代目として代表取締役社長に就任しました。運送会社からスタートし、現在は幅広く物流事業を手がけています。また、15年ほど前に住宅建材に特化して物流と商社機能を掛け合わせた独自のサービス「HMDS(ホリウチマテリアルデリバリーシステム)」を始めました。

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なぜ、M&Aを検討されたのでしょうか?

堀内氏:人口減少が進み、住まいに関わる物流業界は今後ますます経営が厳しくなると予想されます。そのような中で自社の競争力を高め、成長し続けていくためには、いま以上にお客様のニーズに応えていける会社にならなくてはなりません。大手に負けずに生き抜いていくためには、中小企業ならではのきめ細やかなサービスを提供していくことが重要です。そのようなサービスを一緒に作り上げていける会社を見つけるのがM&Aの目的でした。

HMDSは、建築現場との間で発生する煩雑な発注業務やスケジュール管理業務などをワンストップで請け負う住宅資材一貫物流サービスですが、お客様から多数のご要望をいただいていた施工の技術が当社にはありませんでした。しかし、自社で施工部隊を立ち上げるのは時間と労力の面で難しく、大きな課題となっていました。

もう1つの課題がITの強化です。5年ほど前からようやくIT化に着手したのですが、システムエンジニアが1人しかおらず、ITに強い人材の採用に注力する必要がありました。

こうした課題に対して、以前から社内でも「M&Aを考えてはどうか」という声はあったんです。ただ、具体的にどうすればいいのか見当もつかず。そこへ今回のM&Aの話が飛び込んできたので、これはもう願ったり叶ったりだということで、役員も快く背中を押してくれました。

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理想のマッチングは「なぜ?」から始まった

堀内様は、担当アドバイザーに「永野社長と直接話をさせてほしい」とお申し出になったそうですね。

堀内氏:はい。永野設備工業は設計から施工まで一貫した高い技術を持ち、EC事業分野では優秀なエンジニアの方が多数在籍していらっしゃる。運命なのではと思うぐらい、衝撃的な出会いでした。しかし、今回のM&Aで譲受候補として手を挙げた企業のうち、当社だけがまったくの異業種だとお聞きしたんです。確かに同業であればM&Aもスムーズかもしれません。しかし、永野設備工業と当社のM&Aが実現すれば双方が飛躍的に成長できるという確信があったので、私の考えや当社のビジョン、理念などをお会いして説明させてほしいとラブコールを送りました。出資比率51%をご提案したのも、共に歩みたいという想いがあったからです。

永野様について、堀内様はどのような印象を持たれましたか?

堀内氏:お会いしてすぐに「この人と一緒にやっていきたい!」と思いました。事業に対する姿勢が、とにかくまっすぐで真面目。技術者という立場から会社を興された方なので、お客様に対してどのようなサービスを提供すればいいのかご自身の経験からよく理解されていらっしゃいます。社内にもそうした永野社長の感覚、スピリッツが浸透していて、だからこそお客様の信頼を勝ち得ているんだなと感じました。

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堀内商事や堀内様について、永野様はどのような印象を持たれましたか?

永野氏:最初に堀内商事を紹介されたときは、正直びっくりしました。同業もしくはIT企業や建築会社、建設会社などを紹介されるだろうと予想していましたから「なぜ物流会社?」と。このような提案をしてくれるのは、fundbookだけではないでしょうか。

しかし、堀内社長とお話をさせていただいて、すぐに決心がつきました。当社の経営理念は「お客様の喜びを通じて幸せなチームを作る」、堀内商事の経営理念は「携わるすべての人の幸せのために」。お客様や従業員だけでなく、関係するすべての人を幸せにするという理念が奇しくも一緒で、何か運命めいたものを感じましたね。地域も同じなので、会社の雰囲気もよく似ているなと親近感が湧きましたし、話せば話すほど、お互いの良いところを活かせるマッチングだと確信しました。

また、堀内社長は、将来の目標をしっかり見据えて一本芯が通っている方だと思いました。「これをやりたい」と真剣に熱く夢を語る堀内社長が大好きで、その姿を見て「私もついていこう!」という気持ちになります。

約20年会社を経営する中で、どうしても売り上げを優先してしまうときがありました。しかし、堀内社長と出会って、利益を超えた大きなビジョンを思い描けるようになった気がします。最終的に堀内商事を選んだ決め手は社長の人柄と言えるでしょうね。

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

そうして2020年1月にM&Aが成約しました。その後、会社や事業にはどのような変化がありましたか?

永野氏:いまはどのようなシナジーを生み出せるか色々と探っている段階です。堀内社長と当社の従業員の顔合わせも済み、これからが本番といったところですね。M&Aは実際に走り出してみなければ分からないことも多いですが、当初は想定していなかったシナジーにも期待でき「ああ、思った通りの会社だ。一緒になってよかった」と改めて感じています。堀内商事にはM&A経験がある役員の方もいて、何かと心配りをしてくださるのも助かっています。

従業員同士の交流も盛んに行われていて、互いに尊重し合う非常に良いチームができそうです。お互いの営業所を利用して工事や配送の拠点を増やすことができますし、これからもグループになることのメリットを最大限に活用していきたいと思います。

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

M&Aは過去を譲り渡すのではなく、将来の成長を託すもの

永野設備工業株式会社
代表取締役 永野 祥司 氏

このように変化の激しい時代の中で、私たち経営者は自社の成長のチャンスを決して逃してはなりません。例えば自身でセミナーなどに通って勉強して新規事業を立ち上げるというのも方法の一つですが、M&Aは成長スピードが圧倒的に違います。

自らの仕事に誇りを持ち、会社を支えてきた経営者にとって、第三者に会社を譲り渡すことはとても大きな決断です。しかし、将来を見据えて事業を継続的に成長させていくためには、あらゆる選択肢の中で最善の方法を選ぶ必要があります。M&Aは過去を譲り渡すものではなく、将来の成長を託すもの。譲受側・譲渡側という立場を超えて、私たちのように共に未来の成長を叶えるためのM&Aが今後増えていくのではないでしょうか。

これからの時代、どのような業種の企業であっても競争力をつけるためには多様性を持つべきです。M&Aによって良いパートナーと出会い、互いの強みを活かし合うことで新しい価値を生み出していく。そうすれば自社だけでは思い描けなかった高みへと、スピード感を持ってたどり着くことができるはずです。

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

M&Aは「共に」というビジョンが重要

堀内商事株式会社
代表取締役 堀内 正行 氏

様々なM&Aのかたちがあると思いますが、今回のM&Aは、当社と永野設備工業にとって互いに掲げる目標への近道であったと思います。私もこのM&Aが実現したことによって、当初思い描いていた目標のその先まで捉えることができるようになりました。

物流業界も今後さらに競争が激しくなっていきます。そのような環境で成長を実現するためには、サービスに強みを持ち、競合と差別化をしていく必要があります。永野設備工業は、まさに当社が求めていた高い技術を持つ会社でした。しかし、専門的な技術や知識が必要となる住宅設備工事業を未経験の我々が経営していくのはとても難しい。もとより経営権を譲り受けるという思いはまったくなく、永野社長と力を合わせて事業を行っていくからこそ伸びるチャンスがあると考えていました。

これからの時代のM&Aは、どちらがトップに立つというものではなく、対等な立場で手をたずさえて共に進み、双方が大きく成長していくことを目指すものになるのではないでしょうか。夢を実現可能な目標に切り替える手段として、M&Aはさらに広く活用されていくと思います。

住設企業と物流企業、異業種M&Aが生み出す可能性

想像を超えたマッチングが、実現可能な未来を創る

永野様と初めてご面談をした際、永野設備工業は住宅設備専門ECサイト「住設ドットコム」を中心に業容を拡大し、将来的にはIPOも視野に入れていると伺いました。ただ、単独での事業拡大には限界があるとも感じておられ、ご面談を重ねていく中で共に成長できるパートナーとのM&Aを選択されるに至りました。

このM&Aによって、堀内商事は仕入から物流、施工まで一気通貫のサービス提供が可能となりました。運送業界において唯一無二の存在を目指したいという、堀内様の熱意のこもったプレゼンが深く印象に残っています。

当社のM&Aプラットフォームを通して従来のM&A仲介では想像され得ない異業種のマッチングが実現し、それぞれの弱みを補い、強みを伸ばしあう理想的なM&Aとなりました。しかし、このM&Aが成功した一番の理由は、両社がいずれも「幸せ」を経営理念として掲げていたことではないでしょうか。従業員様やそのご家族、事業に関わるすべての方の幸せを実現したいというお二人の想いが、こうしてM&Aのご成約という形で結ばれたのだと思います。

永野様、堀内様の目指す未来が実現することを心から楽しみにしております。

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