インタビュー

2019年4月15日、譲渡成立

二足のわらじで10年、家業を守った社長の決断

二足のわらじで10年、家業を守った社長の決断
  • 譲渡企業
    山昭運輸株式会社
    設立年月日
    1971年
    事業内容
    一般貨物自動車運送事業
    URL
    http://www.yamasho-unyu.co.jp/
  • 譲受企業
    徳三運輸倉庫株式会社
    設立年月日
    1984年
    事業内容
    一般貨物自動車運送事業、倉庫業、産業廃棄物収集運搬業 等
    URL
    http://www.tokusan-unyu.jp/

山昭運輸株式会社代表取締役の山本明彦氏は、一部上場企業に勤めながら家業の経営を引き継ぎました。しかし、景気や業界環境の変化によって資金繰りが厳しくなり、明るい将来像が描けずにいたそうです。

そんな折、税理士からの提案でM&Aの検討を始め、抱えていた不安を一つひとつ解消させながら、2019年4月、兼子グループの徳三運輸倉庫株式会社への株式譲渡を行いました。その後は同社とのパートナーシップのもと、顧客の新規開拓や業務の効率化、不足していたドライバーの採用などを通じて業績が改善し、明るい兆しが見られています。M&A成約までの経緯を、山昭運輸の山本氏と、徳三運輸倉庫の兼子卓三社長に伺いました。

従業員の生活を第一に考え、M&Aを検討

山昭運輸様の事業や、山本社長がどのように関わられてきたかについて教えてください。

山本氏:父がトラック1台から始めた運送業を、1971年に会社組織に改めたのが山昭運輸です。横浜港で主に海上コンテナ輸送を行い、最盛期にはトラック15台ほどを有していました。私自身は米国の大学を卒業し、帰国後に一部上場の総合物流会社へ入社しました。そこで携わったのは家業とは異なる航空貨物輸送の仕事で、2018年に定年退職するまでの多くの期間を、海外で支店長として勤めています。ただ、直近の10年ほどは、山昭運輸を切り盛りしていた母が亡くなったため、同社の経営を引き継ぎ、サラリーマンと社長という“二足のわらじ”を履いてきました。

長年続いた家業をいきなり終わらせるわけにもいかず、何より、苦楽をともにしてきた従業員がおりますので、その生活を守らねばならないという使命感でこれまでなんとかやってきました。

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サラリーマンと社長業の両立は、なかなか困難なことのように思われます。

山本氏:先代の時代にも専務として経営に携わっていたので、そう難しくはないだろうといった気持ちが正直ありました。しかし、私一人の肩に全ての従業員の生活がかかっているという重圧は桁違いでしたね。

また、山昭運輸は、景気や業界環境の変化による影響も大きく受けていました。たとえば、2007年の自動車NOx・PM法改正によって排出ガス規制が厳しくなったため、銀行から多額の借入を行い、当時10数台あったトラックを全て入れ替えています。その負債は重石として、私の代になっても経営を圧迫し続け、苦労を見かねた税理士を通じて、fundbookにご相談することとなりました。

それが、2018年の初めですね。M&Aに対する印象はいかがでしたか?

山本氏:M&Aは海外では頻繁に行われていて、私も海外駐在時代によく見聞きしたものです。一方、日本ではまだ一般的でなく、お客様からどう見られるかが気になりました。ただ、fundbookの提案が、当社の状況をきっちりと踏まえた現実味のある内容だったので、話を進めてもらうことにしたのです。

ただし、この時点ではM&Aのほかに、廃業も選択肢としてありました。私自身、子どもがいないため、後継者問題はいずれ直面するもの。このまま私が経営できるのは年齢を考えれば、あと5年10年というところでしょう。それまでの間に、うまく後を引き継いでくださる経営者が現れてくれればM&Aは有望な選択肢になりますし、そうでなければ廃業についても考えておかねばならない、という状況でした。

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縁を感じたきっかけは、「番地まで同じ」だった住所

M&Aの検討を進める際に、大切にされたのはどういったことでしょうか。

山本氏:従業員がそのまま仕事を続けられる形で、会社を存続していただくこと。それから、「山昭運輸」の名を残していただくことですね。2018年10月より相手探しを始め、十数社の候補先から3社とお会いしました。その中でも特に、徳三運輸倉庫の兼子社長には、山昭運輸を安心して託すことのできるような本気度や気概が感じられたのです。

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徳三運輸倉庫様のこれまでの歩みを教えてください。

(徳三運輸倉庫株式会社 兼子 卓三氏)

兼子氏:当社は1984年に静岡県清水市で創業以来、「人を大切に、物を大切に」を基本理念として、運送や倉庫管理、労働者派遣などの事業を行ってきました。兼子グループとしては、関東・中部地方を中心として全国各地に拠点を拡大していますが、これらの多くはM&Aによるものです。最初のM&Aはもう25年も前のこと。いずれの場合も、その会社の文化や歴史、従業員の方々の雰囲気を見させていただき、ご縁を感じられれば話を進めてきました。

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山昭運輸様とのM&Aを決めた理由は?

兼子氏:今回、山昭運輸とのご縁を感じたのは、兼子グループの中核企業である株式会社兼子の横浜工場と、番地まで住所が同じだったからです。fundbookから紹介されたとき、「横浜市中区新山下」という住所がパッと目に飛び込んできて、運命的なものを感じました。当社は、主力事業である古紙取引の一部を輸出していますが、その運送業務はこれまで外部に委託していました。横浜港で山昭運輸が培われてきたものを引き継ぐことができれば、それを内製化できるのではないかと考え、M&Aの検討を始めたのです。

最初の面談で、お互いの印象はどのようなものでしたか?

兼子氏:山本社長は、紳士的な方でとても好印象でした。経歴を伺ったところ海外駐在が長いとのことで、合点がいきましたね。譲受させていただく立場としては、譲渡企業の事業内容や財務状況とともに、経営者の考えや人柄も大切です。実際にM&Aを進めるかを決める、大事なポイントだと思います。

山本氏:私も、直接お会いした時の直感を重視していました。兼子社長は、グループのトップとして多くの企業を束ねる優れた経営者でありながら、フレンドリーで、気安くお話しができる方。従業員一人ひとりに対しても誠実に向き合っておられ、この方なら安心して託すことができると思えました。

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M&A成約から半年で過去最高の売上高を達成

M&A成約に至るまでのfundbookの対応は

山本氏:初めてのM&Aでしたから、どうしても不安が先立ちました。ですが、fundbookのアドバイザーの方が、何度も電話や面談でフォローしてくださったので、その都度小さな不安が解消され、大きな安心につながりました。また、山昭運輸が存続し、発展していくためのM&Aというのを頭では分かっていても、会社を手放すといったネガティブなイメージにとらわれ少しセンチメンタルになってしまう時期がありました。そのようなときも本質に目を向けられるよう、しっかりと言葉をかけてもらえたことで、前向きにM&Aを進めることができたと感謝しています。

兼子氏:アドバイザーの方が細やかに対応し、数々の微調整などの手間を惜しまず、山昭運輸と当社の双方が心から納得できるところまで導いてくれました。M&A仲介会社としての手腕やノウハウといったものを肌で感じましたね。

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成約から半年が経ちました。会社や事業にはどのような変化がありましたか?

兼子氏:山昭運輸には、30年以上勤務されてきた方が多数おられます。皆さんが愛社精神や仕事に対するプライドをお持ちであり、また、港湾運送の仕事においては私どもよりも遥かに大先輩なわけです。それに対して居丈高に、一方的にこちらのやり方を押しつけても上手くいくはずがありません。変えるのではなく、足りなかった部分を補うというつもりで、一緒にやってきています。

山本氏:山昭運輸らしい、良い部分を残したまま、うまく肉付けをしていただいており感謝しています。安全対策や教育プログラムの強化、点呼システムの導入やタコメーターのデジタル化など、あらゆる面での見直しを通じて運行効率も向上しています。そうした改善の取り組みが実って、この10月には過去最高の1車両当たり売上高を達成することができました。

1971年創業以来の売上高というと、目覚しい成果ですね。

兼子氏:山昭運輸の従来のお客様にも変わらずお取引いただいていますし、私どものリサイクル事業にも関わっていただくことで運送業務の隙間時間を埋め、1台のトラックがフル稼働できるようにしています。そうしたトータルの結果でしょう。

山本氏:採用方法も工夫し、若手のドライバー採用がうまくいき始めています。人が増えればトラックも増やせますし、大変良い循環ができていると思います。また、11月には株式会社兼子の横浜工場と事務所を統合しました。着々と新たな組織体制が構築されていますし、これまで以上に一丸となって成長していきたいですね。

二足のわらじで10年、家業を守った社長の決断

「どう見られるか」は、余計な心配

山昭運輸株式会社
代表取締役 山本明彦 氏

経営を見直す、あるいは立て直すうえで、M&Aという手法に対して「怖い」と思われるのは当然です。関連法規も含め、門外漢には分からないことだらけですから。私もfundbookという、密度濃く、的確にアドバイスしてくださる存在なしには、とても踏み出せなかったですし、やり遂げることもできなかったと思っています。

また、多くの経営者が危惧するのが、顧客や取引先、地域からの反応でしょう。当初は悲観的に見られるのではと、私も不安でした。ですが、お得意様へご報告した際に意外にも「それは良かった」「これで安心だね」というポジティブな声が多く、選択は間違っていなかったのだと感じました。現在も「山昭運輸」の名は続いており、ドライバーやトラックも増えていることで、M&Aの成果を実感しています。今後さらにM&Aのポジティブな面が認知され、多くの経営者がネガティブなイメージではなく、「M&Aによって得られること」を第一に考えられるようになると良いですね。

二足のわらじで10年、家業を守った社長の決断

M&Aは想定以上の事業拡大につながる選択肢

徳三運輸倉庫株式会社
代表取締役社長 兼子卓三 氏

譲受企業にとってM&Aは、事業をゼロから立ち上げるリスクを回避し、素晴らしい会社の歴史やノウハウ、即戦力の人材を得ることができる好適な手段。特に昨今はどの分野においても優れた人材の採用が困難ですから、山昭運輸のように熟練した従業員の多い企業を譲り受ける機会は貴重です。もちろん譲渡を考えられる経営者には、それぞれの経緯や複雑な思いもあることでしょう。しかし、双方のシナジーを発揮することでさらなる事業拡大につなげられるM&Aは、譲渡企業にとっても有意義な選択肢になるのではないでしょうか。

今回のM&Aでは当社として初めて、専門のM&A仲介会社に依頼させていただきました。条件の微調整においては驚くほど細やかに、納得のいく進め方をしてくださいました。今後は、山本社長や、全ての従業員とともに、皆が夢を持って大きく成長できる会社にしていきたいと思います。

二足のわらじで10年、家業を守った社長の決断

歴史ある企業の「魅力」は、社会に残すべき財産

(担当アドバイザーのコメント)

山本社長と初めてお会いしたのは2018年5月です。

当時はまだ大手企業に勤務されながら、家業である山昭運輸の経営を担っていらっしゃる頃で、長年の負債に悩まされ、将来への危機感と不安を感じられていた中でのご相談でした。

課題が山積みで思い切った経営判断ができない八方塞がりの状況に、廃業も考えていると苦しい胸の内を打ち明けてくださったとき、なんとしても良いお相手を見つけ、この会社を残したいと決意したのを覚えています。

山昭運輸様は業歴50年以上の歴史があり、横浜という好立地。地元の人脈も広く、とても魅力的な企業です。お相手は早期に見つかると確信していました。M&Aを進めていく過程でさまざまな問題に直面し、状況を打開することが困難な時期もありましたが、一つひとつ、山本社長とともに考え乗り越えてきたことを、今では懐かしく思います。

ご成約から半年が経ちますが、徳三運輸倉庫様という素晴らしいパートナーを得て、これまで以上に従業員の方々が生き生きと働いていらっしゃることを感じました。本件にお力添えできたことを大変嬉しく感じております。

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