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古くは五街道の一つ日光街道の宿場町として栄え、今日においても陸上交通の要衝として人々や物資が盛んに行きかう栃木県小山市。市の中央を南北に流れる思川のほど近くに、この地で半世紀にわたって運送事業を営んできた株式会社南洲機興の事業所があります。
2018年9月、同社は全国規模のネットワークを有する磐栄グループの一員となりました。その背景にあったのは、会社の存続を願う経営者の想い。譲渡成立からおよそ半年。南洲機興の萩元雅彦社長と、磐栄ホールディングス株式会社の村田裕之会長にそれぞれお話を伺いました。
(株式会社南洲機興 萩元雅彦社長インタビュー)
萩元氏:当社は1964年、私の父が創業しました。父は鹿児島出身で、西郷隆盛にあやかって「南洲」を社名にしたようです。昔からこの地域では思川の治水工事が繰り返し行われ、80年代には東北新幹線の開通やつくば万博などもあって建設・運送業の需要がとても大きかったんです。そのような時の利を得て、父の代は業績も好調でした。
ところが、私が経営を引き継いだ2001年頃にはすでに需要は一段落し、さらに2008年のリーマンショックで地域の運送業者は軒並み苦しくなりました。当時、私がメンバーとして参加していた市のトラック業界青年会の会長は「これから十年先、ここに集まっているメンバーで残れる奴は何人もいないだろう」と語っていましたが、彼の会社も数年後に無くなってしまった。そうした状況を打開する手立てはないものかと、試行錯誤しながら経営を続けてきました。
萩元氏:あの頃は地銀の競争が激しく、どこの銀行も強気の貸し込みをしていました。そのため、この地域の経営者の間には「資金はなんとかなる」という雰囲気があったように思います。私は逆に、それが危険だと感じていましたので、むしろ借入の返済を優先していたんです。ただ、借金の返済だけでは根本的な経営改善には至らず、どうしたものかと悩んでいたときにfundbookからご連絡をいただきました。
萩元氏:父ならば、お断りしていたでしょうね。創業者というのは、自分の力で大事を成したいという強い気持ちを持っているものです。ただ二代目の私はそうではなく、従業員や取引先のために財務基盤を強くして永続可能な会社にしたいと考えてきました。ちょうど銀行のセミナーなどでM&Aの話を聞いていましたし、会社の存続が叶うならばどのような形でも構いませんでした。
それと、やはりアドバイザーの方の人柄があったと思います。話しぶりも知的でいやらしさがなく、「この人であれば」と最初から感じていました。実際にM&Aを進めていく際も本当にフットワークが軽く、タイミングよく次の打ち手を提案してくださった。とても頼りになる存在でしたね。
萩元氏:40社ほどの候補をご提案いただき、そのうち3社とお会いしました。相手の経営者とお会いする場は、私のこれまでの経営が評価される機会でもありますから、前日は緊張して眠れませんでしたよ。ただ、私はアドバイザーの方を信頼していましたから、悪いようにはならないだろうという気持ちもありました。磐栄ホールディングスの村田会長とお会いしたのは3社目のトップ面談です。取引先が磐栄グループだったので会長のことは伺っていましたが、非常にざっくばらんな方で真摯に向き合ってくださった。本当に良いご縁を結んでいただきました。
萩元氏:やっと肩の荷が降りたなと。父は会社を大きくしようと夢中で頑張ってきましたが、資金繰りに大変苦労していました。私はその姿を見ながら育ったものですから、財務基盤が弱いということに常に不安を感じていました。それが磐栄グループの一員になることで安心して仕事に取り組めるようになった。社長として継続勤務させてもらっていますが、モチベーションがまったく違います。グループの先輩方から色々とご指導いただき悩むことも多いですが、すベて前向きな悩みです。
萩元氏:会社の譲渡が決まってすぐに取引先に挨拶回りをしました。「さびしい」という声もありましたが、「よかったね」「全国展開している会社ですごいね」と多くの方が仰ってくださいました。従業員も最初は辞めてしまう人が出るんじゃないかと考えていましたが、全員が理解してくれて有り難かったですね。環境の面でも給与の面でも、より良い条件にしてあげられるよう確かな道筋をつけていきたいです。
萩元氏:これまで会社のためと信じて、設備や人材など様々なコストを削減してきました。それが結果として会社の筋肉を削ぎ落とし、かえって不健康になっていた。今は180度経営の考え方が違います。この半年でドライバーを新たに3名雇いましたし、6月には新しいトラックが入る予定です。磐栄グループはどんどん設備を入れ替えろという方針で、車両や燃料などの仕入れやコストの面でもグループ入りした恩恵はとても大きい。しっかりと採算をとれる会社に立て直し、ご恩に報いたいと思っています。
村田会長は「仕事の計画を立てて問題なく遂行しつつ、新たな仕事も自ら開拓する。それができて社長として一人前。しかし磐栄グループでは一流の社長を目指しなさい」と仰いました。まずは一人前の社長になることからですね。不確かな未来ではなく、明確な目標がある。本当に充実していますよ。
萩元氏:自分の力だけではどうにもならない会社存続の危機に直面したとき、従業員や取引先のことを第一に考えれば、M&Aが自然な選択なのだと私は思います。実際のところ、分かっているけれど分かりたくないという方も多いのではないでしょうか。ですから、まずは相談から始めてみてください。経営者の悩みはなかなか周りの人には話せません。それを打ち明けるだけでも心が軽くなるはずですから。
アドバイザーの方には本当にお世話になりました。M&Aの仲介会社も様々だと思いますが、fundbookは会社や従業員の将来を考えながら誠心誠意サポートしてくださいました。私にとってこのM&Aは人生で一番大変な経験でしたが、今、こうして笑顔でお話しできるのはアドバイザーの方の支えがあったからこそだと感謝しています。
(磐栄ホールディングス株式会社 村田裕之会長インタビュー)
村田氏:後継者不在の会社はこちらから経営者を送りますが、社名も変えませんし、従業員の方々には「今まで通りやってください」とお伝えしています。それぞれの会社には長年培われてきた文化や風土がありますので、もとの強みはそのままで弱いところを私たちがサポートするという考え方です。もちろん、一緒にやっていけるかどうかというのは、交渉の過程でしっかり確認していますよ。
村田氏:運送会社は社長の影響が大きいですから、社長の人柄は大切です。従業員の仕事に対する姿勢やコンプライアンスの面も、社長によって変わりますから。特に安全確保や事故防止のためにコンプライアンスを遵守するというのは、運送業の大前提です。どんなに業績が良くとも、残業代を払っていない、労働時間の管理ができていない会社と一緒にやっていくのは難しいですね。
村田氏:非常にしっかりされているという印象でした。社内も整理整頓が行き届いており、ドライバーの管理資料などもきちんと作られていた。萩元社長の人柄ですね。近くに当社のグループ会社がありましたし、これならシナジーを発揮できると感じました。経営は引き続き萩元社長にお任せしていますが、グループの一員として迎えたからには、磐栄運送を犠牲にしてでも良くしてあげたいという気持ちでいます。従業員の皆さんにも、M&Aをやってよかったと思っていただきたい。ですから、車両の入れ替えなど環境の整備をまずは進めていきます。
運送業界は多重下請け構造で、下請けを単に内製化するのが目的のM&Aも少なくありません。私はそうではなく、一緒に頑張っていく。2016年にホールディングス化し、磐栄運送と全てのグループ会社を横並びにしたのもそのためです。
村田氏:きっかけとなったのは、2011年の東日本大震災です。当時、磐栄運送はいわき市のみで事業を行っていました。幸い人的な被害こそなかったものの、自然災害によって会社の存続が危うくなるというリスクを強く感じたのです。加えて、地域の経済を支えるために皆で戦い、喜びを分かち合いたいという意識も高まりました。運送会社は全国に6万3,000社ほどありますが、大半が20名もいない零細です。業界の先行きは不透明で、競争ではなく、協調せねばやっていけない時代が来ています。
私たちは2014年10月に初めてM&Aを実施し、この5年間で30社ほどを譲り受けました。震災前は従業員130名、売上16億円だったのが、現在では従業員数も売上も10倍以上に成長しています。とはいえ、それは私の手柄ではなく、グループの皆が一体となってやってきた成果です。
村田氏:グループ会社の経営は、各社長に一任しています。初めて社長という立場になった者も少なくありませんが、会社を良くしていこう、皆で良くなっていこうと心の底から思っていると、従業員も必ずついてきてくれる。ドライバーには職人気質の方も多く、情に厚いんです。ひとたび「やるぞ!」となると、率先して新人を教育し、社内環境を整備しようとしてくれる。本当に私は支えられているなと感じます。磐栄グループに入ってよかったと言ってくれる方が多いので、それはとても嬉しいですね。経営者の端くれとして、私は従業員の喜ぶ顔が一番見たいんです。グループ各社の社長も同じ気持ちでしょう。
村田氏:この業界に入って26年。人々の日々の暮らしを支えているのだという自負を持って仕事をしてきました。ただ、運送業というのはなかなか日の目を見ず、報われないことも多い。近年、ヤマト運輸の値上げが話題になりましたが、下請けの小さな会社で同じことをするのは難しいですよね。それがこうして一同団結することによって、運賃の交渉ができるようになり、従業員にも還元できるようになりました。今後も積極的に組織を拡大し、グループとしての強みを生かしていくことで活路を開いていくつもりです。
また、事業の拡大とともに取り組んでいるのが、新たな領域へのチャレンジです。私たち運送業者はCO2を大量に発生させているという事実がありますから、環境保全を目的に太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー、野菜工場などのアグリビジネスなどを展開しています。現在も大型風車の建設計画を進めており、これは2025年に稼働予定です。また、北海道の酪農家とのパートナーシップによる新事業も考えています。
村田氏:磐栄グループは「従業員の幸せ」「お客様に喜んでいただくこと」「社会貢献」を経営の柱にしています。これまで数多くの経営者にお会いしておりますが、従業員の幸せを願わないという方はいらっしゃいません。運送業界全体が苦しい状況にあり、単独でやっていくのが困難な時代になってきました。このような時代だからこそ、経営者にとって一番大切なものは何なのかを、改めて考える必要があるのではないでしょうか。
ただ、M&Aは相手とのご縁。様々な不安があると思います。ですからアドバイザーの方との信頼関係が大切です。私も複数の仲介会社とお付き合いしておりますが、担当してくださる方との相性も大きな要素です。ビジネスだけを考えておられる方だと、やはり信用できなくなってしまう。その点、fundbookのアドバイザーの方は最後まで誠実に対応してくださり、お人柄も含めて信用するに足る方だと感じます。M&A成功の秘訣は、良いアドバイザーを見つけることなのかもしれませんね。
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M&Aは経営者の想いをつなぐ
(担当アドバイザーのコメント)
萩元社長と初めてお会いしたのは約1年前、2018年5月23日です。南洲機興様の応接スペースで簡単なご挨拶と情報交換をし、次回の面談を社長のご自宅で行うことを決めて30分ほどで面談を終えました。その時には、まさか4ヶ月後に成約式を開くことになるとは夢にも思いませんでした。
社長は当時、オーナー家の独自資本でバランスの良い経営を実現するために、借入を減らすことを優先されていました。借入を減らし設備投資を積極的に行わないという選択は、短期的に財務体質を改善するというメリットがあります。一方で将来の売上を得る力も失ってしまうというデメリットがあり、その点を非常に悩まれておりました。それから解決策を一緒に考えさせていただき、最終的には、会社の永続的な発展のため、従業員の皆様のため、そして社内にいる娘様のために、先代から引き継がれた会社のM&Aをご決断されました。
南洲機興様の素晴らしいところは、萩元社長の非常に真面目でかつ包容力のあるお人柄が、会社に浸透している点です。磐栄ホールディングスの村田会長も「運送会社は社長の人柄が表れる」と仰っていますが、南洲機興様はまさにその好例でしょう。
ご本人にとっては、目まぐるしく状況が変化し、心労が絶えない激動の4ヶ月間だったと思いますが、萩元社長、ご家族、従業員の皆様、そして南洲機興様の大きな転機にお力添えできたこと、大変嬉しく感じております。