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瀬戸内の穏やかな海に囲まれた香川県の小豆島は、日本のオリーブ発祥の地として広く知られ、映画『二十四の瞳』の撮影地にもなった自然溢れる島です。高松市からはフェリーで1時間ほど、現在およそ3万人が暮らしています。
今回のインタビューでは、この島で「調剤薬局げんきまん」を創業し、17年間経営されてきた平井先生と、2018年8月に「調剤薬局げんきまん」を譲り受けた株式会社あけぼの関西・森社長にお話を伺いました。
平井先生:私は大学を卒業後、病院の薬剤師として34年間勤めました。
病院に勤めていた頃は薬局長として、時流であった「病院薬剤師は病棟活動に力を入れ、外来患者の処方せんは院外へ」という院外処方の体制を、3年ほどかけて整えていきました。当院の院長をはじめ、医師、看護師、患者様まで多くの方々の協力を得て院外での処方せん発行に踏み切り、ほぼ全ての処方せんを院外処方に切り替えることに成功しました。
しかし当時、私はすでに57歳。病院としてさらに新しいチャレンジをしていくためには、PC作業などの近代的な業務技術が求められる時代になってきていました。これらの業務に慣れない私が上の立場にいると、皆の足を引っ張りそうで自信が持てませんでした。
念願だった院外処方を実現し、34年間病院で勉強させてもらったことを少しでも地域の方々の役に立てたいと思い、定年前に退職して薬局を開くことを決断したんです。その頃、私が住んでいる地区には、まだ薬局が1軒もありませんでした。
それから約1年間、病院勤務のかたわら開局の準備を進めました。退職する年度末の3月31日までほぼ休みなく働いて、退職から1ヶ月後には「調剤薬局げんきまん」を無事に開局することができました。
勤めていた病院の先生からは「病院の前で薬局を開いたらどう?」とも言っていただきました。ただ、私は商売としての薬局経営ではなく、お店に来てくださる患者様と向き合い、ゆっくりお薬の話をしたいとずっと思っていたので、自宅の近くで開くことに決めました。
お陰様で、これまで遠慮なく自分らしい薬局経営をさせてもらうことができたと感じています。
平井先生:患者様が喜んでくださることに、私自身も喜びを感じます。ですから、何をしたら患者様が喜んでくださるかということを一番に考えて経営をしてきました。
お店のことだけでなく、地域のケアマネージャーの人たちと関係を作り、なかなか病院や薬局へ来られない方へのサポートに注力してきました。
森社長:薬局の仕事はもちろん大変なのですが、「調剤薬局げんきまん」の皆さんは仕事を喜びに変えることが自然にできていますよね。仕事はしんどいけれども、患者様に喜んでいただけることが何より嬉しい。とても良い従業員が揃っている薬局だなと感じます。
平井先生:従業員とは、楽しみながら仕事することを心掛けてきました。自分らしい薬局をやるからには、働いてくれる皆とギスギスするような関係だけは嫌だなと思っていたんです。なので、それぞれが思ったことを発信できる、風通しの良い環境作りを心掛けてきました。
何か間違いが起きてもそれを誰にも言えないのは良くないことです。どんなことでもお互いに言い合って、一緒に解決することで良い店舗運営を行ってこられたと思っています。
森社長:先生も従業員の皆さんも、すごくお互いを尊敬し合っていますよね。それは、全員がこの仕事にプライドを持っているからこそなんだと思います。
この業界って、受け身で仕事をする人がすごく多いんです。でも「調剤薬局げんきまん」の皆さんは、能動的に先を読んで自ら行動する方ばかりなので、薬局を譲り受けた今もすごく助かっています。
それからもう一つ、このお店がとても素晴らしいのは、創業時から1人も従業員が辞めていないということです。世間で様々な業界の離職率が問題となっている中で、これは本当にすごいことだと思います。
平井先生:従業員には、私もこれまで本当に助けてもらってきたと感じています。独立したときは私も含めて3人。皆、病院時代の同僚からの紹介で、本当に人のご縁のおかげで今があると思っています。
創業当初の2人は、薬局の運営も医療事務もまったくの未経験でした。ただ、2人とも会計が得意で、経理は全部任せることができました。その後も従業員の皆が大変な努力をしてくれて、私の期待以上に大きく成長してくれました。今では島の他の薬局からも頼られるほどで、従業員を誇りに思っています。
平井先生:実は、薬局を誰かに譲れないかということは、2〜3年前からずっと考えていました。薬剤師の仕事は好きなのですが、年齢のこともありました。
息子からは「(薬剤師である)孫娘に継がせたら?」と言われましたが、島の病院で薬剤師として仕事を始めたばかりの孫に負担をかけたくありませんでした。まだ子育てもしている最中ですし、薬剤師をしながら経営をするのはとても難しいことです。本人にとっては、将来的に勤められる薬局があるという安心感があったかと思いますが、薬局の将来を今背負うことは重荷になるだろうと思っていました。
何か良い方法はないか、誰か継いでくれる人はいないか、と周りの人にも相談して、悩みながら引退の準備をしていました。廃業することも選択肢として頭の中にありましたね。
平井先生:これが都会であれば、急に薬局が無くなっても近くに他の薬局もありますし、そうでなくてもすぐに新しい薬局ができるでしょう。ただ、この島だとそうはいきません。「うちの患者様はどこに行けばいいのだろう。誰に相談すればいいのだろう。」というのが、まず頭に浮かびました。患者様にとって、自分の体のことを一番知ってくれている薬剤師の存在は貴重なんですよね。また、これまで一緒に働いてきた従業員のことを考えると、やはり薬局を存続させなければならないという使命感もありました。
ちょうどそのタイミングで、村上さんが電話をくださったのです。
村上:平井先生のように、薬局の経営者であると同時に、ご自身が管理薬剤師として現場で働かれている方は全国的に見てもとても多いです。仕事としての調剤業務については、薬剤師であれば誰にでも任せることはできますが、実際の経営を人に任せるのは難しい、とおっしゃる経営者がほとんどです。
森社長:通常の調剤業務のみならず、診療報酬改定の影響で、薬局として求められる業務は年々増えてきています。このまま負担が増えていくと好きな仕事すら嫌になってしまいかねない。大好きな薬剤師の仕事が嫌になってしまう前に、という理由で廃業をされるという話もよく聞きます。仕事を辞めたくて廃業を選ぶ、という方はあまりいらっしゃらないですね。
平井先生:ちょうど事業承継やM&Aのセミナーに行こうかと検討していたタイミングでした。ただ、開催場所が高松市内と少し離れていましたし、日々の薬局の仕事もありますから、なかなか時間を作れませんでした。そんなときに、ちょうど村上さんからお電話をいただきました。小豆島まで来てくださるということだったので、それであれば話を聞くだけ聞いてみようと一度お会いすることにしました。
平井先生:息子に「お母さんはすぐに騙されるから、俺が話を聞いてやる」と言われたこともあり、最初の面談のときから家族にも一緒に出てもらいました。最初は疑っていた息子とも、村上さんはすぐに意気投合し、家族皆とこのお話を進めてくれました。
森社長:ご家族全員で、真剣にM&Aのお話を考えていらっしゃいましたよね。
もう1つ、このM&Aがすごいスムーズに進んだのは、足を運ぶ中で村上さん自身も小豆島を好きになったからですよね。私が村上さんを島の虜にしてしまいました。(笑)
「私が小豆島で薬局をやりたいって気持ち、わかるでしょう?」って。
村上:平井先生のご子息様にはいつも港まで送り迎えをしていただき、森社長にも小豆島の色々なところに連れていっていただきました。1人で来たときにも、少しずつ島内を回ったりして。今ではもう島で行ったことのない場所は無いと思います。小豆島が本当に好きになりましたね。
森社長:私の祖父母がどちらも小豆島の人で、小さい頃からよく遊びに来ていました。昔から大好きな場所で、心のどこかでいつか小豆島と関わる仕事がしたいと思っていました。
自分の会社を持つようになったときに、疲れた従業員の慰労のために小豆島へ連れて来たことがありました。薬局って、ストレスも多い職場なんですよ。(笑)
島に着いてすぐに、従業員の皆が開放感に満ち溢れた顔になっていくのを見たとき、「やっぱり島の空気は違うんだなぁ」と強く感じたことを覚えています。小豆島ってすごく人が温かくて、島外の人を受け入れる気風があるんですね。皆が笑顔で、島全体が家族みたいなんです。
それからは毎年の新卒研修も小豆島で行うようになる等、仕事でも島に触れる機会が多くなりました。その頃から「仕事を通じて、私たちも島に貢献することができるんじゃないか」と具体的に考えるようになりました。
森社長:2017年の夏頃、村上さんと初めてお会いしたときに、「いつか小豆島に薬局を持って、小豆島の医療に貢献したい」と、ふと口にしたことがきっかけです。そのときは、いつか叶えたい漠然とした夢として語っていましたが、村上さんがその夢の実現を後押ししてくれたんです。
他のアドバイザーの方ともお話をする機会はありますが、仕事の話がメインです。ただ、このようなふとした話も、村上さんは聞き流さずに親身に聞いてくださり、すぐに動いてくれていました。
秋頃に「小豆島でご紹介できる薬局があります」という電話を受けて、思わず「まさか、嘘でしょ?」と言ってしまいました。そんな簡単なものじゃないよね、と。(笑)
些細な会話の中でしたが、私の小豆島への想いをちゃんと受け止めてくれて、一生懸命探してくれていたんです。そして、その想いを深く理解したうえで、平井先生にも伝えてくれたからこそ、今回のご縁があったのだと思います。
平井先生:患者様を何より大事にする、という点で私と森社長の考え方が近かったのが決め手ですが、森社長が小豆島に馴染みがあり、思い入れを持ってくださっていたことも安心材料の1つでした。経営者が若くて、リーダーシップのある女性である点も希望が持てました。
また、創業者としても、病院で働いている孫娘が将来的に薬局で働きたいとなったとき、帰ってくる場所を残してあげられることがすごく嬉しかったです。
村上:お二方に初めて会っていただいたとき、「森社長とであれば是非ご一緒したい」と最初からおっしゃっていましたね。お二方とも「患者様のために」というお気持ちがとても強くて、平井先生も森社長のような若い社長の会社が譲り受けることで、可能性が広がるといったお話もされていました。
森社長:私としては、夢に近づいていく一方で、自信をなくすこともありました。小豆島で薬局を持つということは、あくまで私の個人的な夢ではありましたが、会社としては、経営を左右する大きなチャレンジです。これまでのM&Aとは異なり、すごく怖かったです。
ですが平井先生のご家族と最初にお会いしたときに、息子さんが「森社長と一緒になれば、これまで実現できなかった薬局創りが実現できると思う」と言ってくれたことが、私の背中を押してくれました。
また薬局の従業員の皆様や島の方々とお会いする中で、こんな会社で本当に大丈夫なのかという声が1人くらい挙がっても不思議ではないのに、お会いする方すべてが「是非一緒にやって欲しい」と言ってくださって。今この機会に決断をしなければ、きっと自分の夢は一生実現できないと思い、決意を固めました。
皆さんの「一緒にやろう、一緒ならできる!」というお言葉のおかげです。私1人ではとても決断できませんでしたね。
平井先生:村上さんは、とても若いけれどしっかりされていて、色々なことを教えてくれました。いつ電話をかけてもすぐに出てくれて、何を聞いても丁寧に答えてくれます。私だけでなく、息子夫婦や孫とも頻繁にやり取りをしていただいて。
村上:ご子息様やお孫様から直接ご連絡いただくこともありました。すごく真剣にお考えになられていて、鋭いご質問も多かったですね。
今回のM&Aでは、平井先生、ご子息様ご夫妻、薬剤師であるお孫様と一緒に薬局の今後について考えさせていただきました。3世代にわたってM&Aのお話を進めさせていただいたのは、私の今までの経験の中で初めてでした。M&Aは会社や従業員の方々のみならず、オーナーのご家族の未来がかかっているということを改めて実感しました。
平井先生:仲介費用もありますし、譲渡先の会社と直接お話ししたほうが経済的にも良いのではと考えることもありました。ですが私は会計のことがあまり分からず、交渉も苦手です。譲渡した後に何か問題が発生してしまっては取り返しがつかないことで、従業員や患者様に迷惑をかけるわけにはいきません。人生をともに歩んできた薬局であり、関わる人も多いのでやはりそこはプロの方にお任せしようと思いました。家族とも意見が一致して、村上さんにお電話でそうお伝えしました。
村上:あのお電話は、私の記憶にとても強く残っています。大晦日の12月31日にM&Aを決断されたとご連絡くださいました。年の最後の最後までご家族の皆さんで話し合い、大事な決断をされ、それをすぐにお伝えいただいたことに、これまでにないほど強い責任感を抱いたことを覚えています。
平井先生:いくら信頼関係があったとしても、お金が関わる話はデリケートなことですし、やはり聞きにくいこともあります。譲渡後の関係を考えても、プロの方にしっかり入ってもらって良かったと今でも思います。
森社長:段階を踏んで話を進め、口約束ではなく、きちんと書面に残すことは双方にとって大事なことです。譲渡を選ばれる経営者にとって、(M&Aは)ほとんどの人が初めての経験ですし、精神的負担や労力がとてもかかるので、そこはプロの方にお任せするのが良いと思います。
森社長:村上さんとは決して付き合いが長いわけではないのですが、当社のことをとても勉強してくださっているんだなと感じています。実は私、村上さんからご紹介いただく面談の場で会社の説明をしたことが一度も無いんですよ。私がお会いする前に、会社の理念や特色、私の人柄まで全てお相手にお話しくださっていて、今回も私が話したことは本当に少なかったですね。
それに双方の細かいところまで調べてくれていて、私が話すときは私の側に、お相手がお話されるときは相手の側に立ってくださいます。だからこそ私も本音で話すことができるのだと思います。
私が具体案や決まった数字を持っていなくても、私が本当にやりたいことを真面目に聞いて、一緒に考えてくれることが助かっています。
村上:他の誰よりも貴社のことを勉強させていただいている自信はあります。私も森社長やあけぼの関西の皆様方が大好きですし、本心からお相手の薬局オーナーへお伝えしようと努めてきました。それが結果として、良いご縁談に結びついたことがすごく嬉しいですし、そのようなお言葉をいただけるのは本当に光栄なことです。
森社長:数多くの「会社を譲渡したい経営者」と「会社を譲り受けたい企業」があり、その中から「双方にとって良い」マッチングをしっかりと実現させているのがfundbookさんの良いところだと思います。
村上さんにおいては、どうして薬剤師に残っていただきたいか等、こちらの要望の細かな理由まで熟知し、お相手へ伝えてくれています。ですからお相手にお話しされる際にも、表面的なM&Aの話だけではなく、私の想いを代弁してくれているのだと思います。
平井先生:私にとっては「今まで通りで良い」というのが一番楽でした。今も薬剤師として勤務をしていますが、森社長と自分の考えが近いこともあって、仕事の姿勢や従業員との関係も以前と変わらない形で続けさせてもらっています。
普通は譲渡後のことで色々と不安を感じるのかもしれませんが、私はありませんでしたね。森社長は譲渡前から何回も何回も足を運んでくださり、私が分からないことを直接確認させていただけました。
森社長:M&Aでは「会社が乗っ取られた」と従業員に受け取られてしまうこともあると聞きます。こんなはずじゃなかった、と。その中で従業員の皆さんにも、そして平井先生のご家族にも温かく受け入れてもらえたことはとても嬉しいですね。弊社の従業員がお店に来ても温かく迎えてくれて、私もここに来るのがとても楽しみになっています。
地域の他の薬局さんからも、もしかしたら敬遠されるかなと思っていましたが、全然そんなことはなかったです。島の中で解決しないといけないから、お互いに助け合う、連携するのが普通になっているのかもしれないですね。
平井先生:「早急にM&Aを決断してください、引き継ぎをしてください」と言われたら大変でしたが、ゆっくりでいいと言ってくださったことも助かりました。事務的な仕事や、各所への報告の手間もありますが、事務を行う従業員にとっても勉強になっていると思います。今までは赤字にならなければよかったといった雰囲気でしたが、きちんとした会社というものがどういうものか、田舎にいながらも学ぶことができています。私の孫もまだ若く、病院とうちの薬局以外を知らないので、M&Aを通して良い勉強になっているなと思っています。
森社長:一番良くないのは、当事者同士が無理をして一緒になることが運営への負担となり、その結果、患者様へのサービスが落ちてしまうことです。
平井先生も従業員の皆さんも一生懸命頑張ってくれていますし、事務的な作業は後からでもフォローできますので、まずは患者様へのサービスを優先していきたいですね。そのためには、従業員の気持ちにゆとりが生まれて、「一緒にやってよかったな」と思ってもらえるようにしなければいけません。
平井先生:これまで通り、患者様が本当に喜んでくださる薬局経営を第一に考えて欲しいと思います。患者様が困っているときに、何かヒントを与えられることができる薬局であり続けて欲しいですね。
病気だけでなく、予防医学、健康寿命、在宅医療への関わり方など、医療事情が大きく変わっていく中で、どのように時代に対応していくかが薬局の大きな課題です。これまで通りのありきたりな薬局経営では厳しくなっていくでしょうから、手を取り合って新たなチャレンジに取り組んでいきたいですね。そして、森社長にはぜひ小豆島の医療を引っ張っていくような存在になって欲しいです。
森社長:新たなチャレンジができる環境ですし。できる従業員が揃っていると思っています。これからは、私たちが頑張る番ですので。
今は医療に関する国の方向性が、平井先生が何十年も前から考えていたことに近づいていると思います。私も普通の薬局で終わりたくない、何か今までと違う新しいことがしたい、という思いはずっとあるので、そういった点でも平井先生と意気投合しましたね。
今は経営につなげるのが難しくても、新しいことをどんどんやっていくことで何かが生まれると思いますので、積極的にチャレンジしていきます。平井先生のアイデアや知見をお借りして、このお店から新しい薬局のあり方を発信していきたいですね。
平井先生:数年前はこのあたりで店じまいする予定だったのですが、森社長との出会いを通じて「あともうちょっと頑張ってみよう」という気持ちになりました。
森社長:小豆島の医療って、実はすごく先進的なんです。
地方と聞くと色々な面で遅れているイメージがあるかもしれませんが、例えば患者様に寄り添う「かかりつけ薬剤師制度」は都会より断然進んでいます。どの病院に行っても、いつもと同じ薬局で薬をもらえる。病院に行く前にまずはOTCを試して様子を見て、改善されなければ病院を勧める。難しいとされている医師への処方提案も、患者様の検査値を見ながらしっかりと行っている。これって、まさに国がこれからやろうとしていることです。小豆島では、それが当たり前のようにできています。
平井先生:ちょっとでもおかしな点があれば薬局の判断で薬を処方しないとか、病院へ行くことを促したりだとか、島ではどこの薬局もやっていますね。
森社長:小豆島の人は健康寿命もすごく長いですよね。都会とは10歳くらい違うんじゃないかな?それくらい、皆さんお元気です。薬局がただお薬を出す場所というだけではなく、病気の予防にまで関わりを持てている地域なんです。小豆島に来ると、いつも学んで帰ることがたくさんあります。
あけぼの関西の従業員にも研修などを通じてこの薬局で学ばせたいと思っていまして、それが今回のM&Aの意図でもあります。教科書で学んだことを、実体験を通じて習得していく。いま求められている薬剤師の在り方を目の前で見て学ぶことができるという、教育の場としても活用させていただきたいと思います。
平井先生:これからは、病院の薬剤師とより交流を深めたいと思っています。島にたった1つの病院ですから、病院の薬剤師にも問題意識を持っていただきたい。薬剤師ってこんなこともできるんだ、と思う医師がもっと増えれば、薬剤師からの提案もより聞いてもらえるようになるはずです。
うちの薬剤師はそこもすごく上手で病院の医師へもしっかりと提案しますが、やはり外からのコミュニケーションだけでは限界がありますし、医師の意識を変えるまでの話をするのはなかなか難しいのです。
森社長:小豆島は観光や移住にも力を入れていますので、いずれはそういった面でも島全体でアピールしていきたいですね。まず、私たちは医療の領域から新しいものをどんどん発信していきます。きっと素敵な人が集まりますよ。今も人口が増えていますからね、この島は。
平井先生:ここの島は古くて新しいですよね。皆が古いものを大事にしながら、新しい考えを持っていて。新しく島に移住してきた人の力もあって、その文化が作られているのかな。
森社長:新しさは、新しい人から生まれると思いますが、それを受け入れる体制がないと育たないですよね。こんなにもしっかりと受け入れてくださって、私も他所から来たという感覚が不思議なくらいありません。これから島外からの人がもっと増えてくることを、本当に楽しみにしています。
調剤薬局げんきまん 平井 玉子 氏
M&Aには色々な理由があると思います。私の場合は、親族への承継や廃業を考え、辞めるタイミングや辞めた後のことで悩んでいましたので、新たな選択肢をいただけたことが嬉しかったです。
M&Aという選択をして良かったと思います。とてもいい出会いがありました。
これまでずっと、しんどい思いもしながら一生懸命経営してきた私のお店を、「この人なら」と思える方に引き継いでいただけました。譲渡してから3ヶ月ほど経ちましたが、今はすごく気持ちが楽です。
今後の経営について悩んでいらっしゃったら、とりあえず参考までに話を聞いてみたらいかがでしょう。私も3年悩んだ末にたまたまタイミングが合ってお話を伺い、そこからは物事が上手く進んでいきました。あのとき、一歩踏み出してみて良かったと、心から思っています。
株式会社あけぼの関西 代表取締役 森 あかね 氏
アドバイザーの方にご紹介していただいた後は企業同士の長い付き合いとなっていくので、お互いに無理をしないことが大事だと思います。経営方針から強みや弱み、日々の業務の細かいところまで、しっかりと擦り合わせる必要がありますから、そこで無理をして合意に進んでも双方が幸せにはなれないでしょう。些細なことが後々大きな問題になってしまう可能性もあります。まずはお互いの考えをはっきり言葉にして明確化し、時間をかけて進めていった方が、長い目で見て良いご縁談になると思います。
譲渡のタイミングに関しても、呼吸を合わせなければなりません。今すぐしたい、今すぐはできない、じゃあやめとこうか、という話があっても、あと半年待ってもらえたらできる、ということもよくあります。今回のM&Aも、しっかりと話し合うことができたから、上手くいったのだと感じています。
それでも、会社同士が一緒になる際には、お互いに変えなければならないところが必ず出てきます。気になることは遠慮せずに何でも話し合うことが大切ですね。
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双方の夢を叶えるM&A仲介
「ご家族の皆様と実現したM&A」
印象に強く残っているのは、譲渡オーナーである平井先生から「M&Aを進めることを決断しました」と大晦日にご連絡をいただいたことです。年末最終日まで、ご家族の皆様でM&Aについて深く吟味をされたとのことでした。その後、M&Aの成約までは平井先生のみならず、ご子息様ご夫妻・お孫様と3世代に渡ってご連絡をいただくようになり、休日も昼夜問わず本件のお手伝いに尽力させていただきました。
本件を通じて改めて、譲渡を検討されるオーナー様にとってM&Aのご決断はご自身のみならず、“ご家族皆様の夢を乗せた船出”であるのだと実感しております。廃業も将来的な選択肢にある中で、第三者への承継という形でこれまで続けてこられた薬局を存続させるという、オーナー様の夢を実現するお力添えができたことに大変な喜びを感じています。
「『私にしかできない』という信念で夢の実現をサポート」
M&A仲介を行う上で、譲受を検討されるオーナー様とお会いした際に、企業の今後の展望や経営者の夢に触れる機会は多々あります。私は、そのような皆様の夢の実現に力添えさせていただくことが、M&A仲介という仕事の妙味であると考えています。森社長から「いつか小豆島でお店を出したい」という強い想いを伺った際、「これを叶えられるのはM&Aアドバイザーである私しかいない」と感じたことを今でも覚えています。
しかし、森社長のお言葉にもあった通り、実現させることは決して簡単な話ではありません。森社長のみならず、あけぼの関西様で活躍される皆様方とお会いさせていただき、会社の沿革や文化、企業理念、社風などあらゆる面に触れさせていただくという勉強の機会を得られたことが、森社長の夢の実現にお力添えできた原点であったと感じています。
「薬局の未来のため、ご一緒になるべき会社だと感じた」
初めて伺った際に、平井先生・ご子息様ご夫妻・お孫様、皆様方から薬局への想いと今後について深くご教示いただきました。当時、すでに地域に根付いた独自の運営手法が確立されており、平井先生ご自身が目指される未来への展望をお持ちでした。
しかし今後の薬局業界を考えると、この展望を実現するには独自経営では非常にハードルの高いお話であるとも伺いました。その際に、私からあけぼの関西様のご紹介をさせていただきました。森社長が小豆島にご縁があることのみならず、あけぼの関西様の企業理念や経営方針をしっかり勉強させていただいていたからこそ、双方が一緒になることのシナジー効果を具体的にご紹介できたと思っています。結果として、平井先生と森社長に実際にお会いいただき、ご一緒になられた今までを振り返ると、とても感慨深いです。