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急激に変化する物流業界。M&Aの選択で共に描く未来とは

譲渡企業

有限会社六ツ星運送

設立年月日
1992年
事業内容

長距離運送

URL
http://mutuboshi.jp/

譲受企業

株式会社五健堂

設立年月日
1990年
事業内容

食品輸送

URL
https://www.gokendo.co.jp/

1992年の設立から30年を迎えた有限会社六ツ星運送。長年にわたって本社を置く徳島県と関東間の長距離輸送を手掛け、地元企業の物流に大きく貢献してきました。多くの企業から必要とされ、順調に成長してきた六ツ星運送ですが、ここで一つの大きなハードルが立ちふさがります。それが物流業界における、「2024年問題」です。

働き方改革関連法の施行に伴い、あらゆる企業が労働時間の削減に取り組んでいますが、長距離輸送のビジネスにおいては、ドライバーの長時間運転が求められるため、他業種以上の困難が伴います。企業が存続し、発展していくためには、どのようにして社会の変化に対応し続ければいいのか――。そう考えた創業者の山本訓資氏は、5年ほど前からM&Aを検討し始めました。

そして2022年4月、同じ物流業のなかでも、異なる事業を手掛ける株式会社五健堂とのM&Aが成約。決め手は、五健堂の蓮尾拓也代表取締役社長が持つ考えに大きく共感したからだそうです。M&A後、山本氏は五健堂の取締役に就任。六ツ星運送の社長も続けながら両社で手腕を発揮されています。さらに、六ツ星運送は今後、グループ全体の強みを糧にして、同業者の譲受を計画しています。ハブとなる拠点を増やすことで、ドライバーの労働時間削減と持続的な成長を実現すべく尽力しています。

山本氏と五健堂の蓮尾拓也代表取締役社長に、M&Aに対するお考えや今後の展望についてお話を伺いました。

株式会社五健堂

設立から30年。会社の存続と今後の発展のために決断したM&A

1992年設立の六ツ星運送様。山本様にとってどのような30年間でしたか?

山本氏:30年の月日は長いようで短くもありました。その時代や会社の成長段階ごとに色々な思いを持ってきましたが、やはり年を重ねるごとに、お客様や従業員に対しての “責任感”はしだいに強くなっていきましたね。30年の間に物流業界を取り巻く環境や法律も大幅に変わり、それと同時に背負っているものが変わったり、重みを増したりしてきたので、自分自身も変化を続けてきたように思います。

山本訓資氏

「業界の変化」とありましたが、今の物流業界にはどのような課題があると感じられていますか?

山本氏:物流業界では、働き方改革関連法の施行に伴って生じる「2024年問題」が目前に迫っています。「時間外労働時間の上限規制」が、2024年4月から自動車運転の業務にも適用されるため、長距離ドライバーの働き方の整備が急務となっています。当社は徳島から関東間の長距離輸送をメインに手掛けているので、一度の運送が長時間になってしまい、2024年問題を乗り越える対策を講じることが喫緊の課題なのです。


蓮尾氏:もう一つ、課題として挙げられるのが高齢化ですね。かつては18歳で普通免許を取得すれば、中型トラック(4tトラック)の運転も可能でした。なので、免許を取れば若くして高い収入が得られる点を魅力に感じて、運送業に就く人は非常に多かったと思います。それが免許制度の改正に伴って、2007年に「中型免許」の区分が新たに設立され、中型免許を取得できる年齢が20歳以上になりました。つまり、トラックを運転するための条件に制限がかかるようになったのです。安全面では、良い改正だということは私たちも重々理解しています。ただ、これまで運送業は18歳で就職する人にとっての大きな受け皿となっていました。それが、免許制度が改正されたことによって、入社してすぐ運転ができなくなり、若い人材が入りづらい業界となってしまいました。こうした背景も、高齢化と人手不足が進む大きな要因になっています。

蓮尾拓也氏

物流業界の課題はM&Aの検討に大きく影響したと思いますが、六ツ星運送様が検討を始めた時期や理由についてお聞かせいただけますか?

山本氏:4〜5年前に、最初は譲受する側としてM&Aを検討していました。ただ、M&Aの価格相場や算出方法がわからなかったので、「たとえば自分の会社を売る場合だと、どのように算出し、どれくらいの価値になるのだろう?」と思い立ち、調べたことがきっかけでした。私は、今後の運送業界において、中小企業が1社で改正に対応していくのは非常に困難だと感じていたので、fundbookに相談する中で「先行きが不透明な同業者を譲受しても、当社にとってはかえって負担になってしまう可能性がある」と考えるようになったのです。M&Aを検討するうちに「会社の存続と発展のためならば、会社を譲渡するという手段もあるのではないか」と考えるようになったことで、譲渡する側としての本格的な検討が始まりました。

「六ツ星運送の経営を続けてほしい」の言葉が決め手に

数社と面談された結果、五健堂様とのM&Aを希望された決め手は何でしたか?

山本氏:蓮尾社長の考えと、五健堂さんの経営方針に大きく共感したからです。1社単独で運営していたら常に利益の確保が必要で、利益を下げることもできなければ、利益がトントンであっても会社は継続できません。しかしM&Aを活用してグループの中に入れば、例えば当社が労働時間の削減に取り組む間、一時的に利益が落ちたとしてもグループ内で利益を補完し合える。それが一番のメリットでありグループの強みだということを、今もまさに蓮尾社長と話しています。


蓮尾氏:同じ物流・運送業であっても長距離輸送の六ツ星運送さんと、食品を中心に関西近郊での配送を行う当社では、手掛ける事業がまったく異なります。当社がM&Aを積極化させている理由は、“関連多角事業”を展開することによってリスクヘッジをしながら、グループ各社が着実に成長できる基盤を作るためです。当社は「食品」の繋がりで、物流だけでなく飲食店の運営も手掛けていますが、コロナ禍では売り上げの2割を占める飲食事業が大打撃を受けてしまいました。しかし、スーパーマーケットやコンビニ向けの配送が巣ごもり需要で好調だったため、結果的に業績は向上しています。もし事業を一つに絞っていたら、太刀打ちできなくなっていたでしょう。だからこそ、同じ物流業でも違う事業を手掛ける六ツ星運送さんとぜひ手を組みたいと強く感じたのです。


山本氏:蓮尾社長が私に「六ツ星運送の経営を続けてほしい」と仰ったことも決め手でした。だから実際に譲渡はするものの、気持ちとしては「譲渡をした」という感覚がないんですよね。M&A以前から、「譲渡をしたら経営から一切手を引く」という認識が私の中にはなくて、むしろM&Aが成約した後もどんどん自社を飛躍させたいという思いでいっぱいだったんです。蓮尾社長は気さくに話を聞いてくださりますし、当社の展望に対しても「思うようにやってや!」と背中を押してくださるのでとても心強いです。

山本訓資氏2

蓮尾様は六ツ星運送様の方針や山本様の考えを尊重されている印象を持ちました。

蓮尾氏:当社は「M&A=買収」という考えはまったくなく、第一には“運送連合”を作りたいという考えを持っています。つまり、会社同士を一つにまとめるのではなく、皆で手をつなごうという考え方です。同業であっても分野が違うので、六ツ星運送の専門分野は、山本社長の方がはるかに明るいことに間違いありませんから、これまでの考え方とやり方で成功されてきた六ツ星運送さんに、当社の考えを押し付けようなんて思いは一切ありません。それに、山本社長は経営から手を引くために譲渡したのではなく、これからも成長していくために当社と一緒になったわけですからね。

私も山本社長も、いつかは経営から退く日がやってきます。しかし、その後も会社を存続させなければいけません。存続させるためにはどういう選択肢が良いか、模索し続けるのは両社とも同じ。同じ経営者としても、いつまでも六ツ星運送らしくあり続けてほしいと思っています。


蓮尾拓也氏2

後継者がいるなかでの譲渡という選択

六ツ星運送様には山本様の息子さんが後継者として入社されていますが、そのなかで譲渡を選択されたことには、どういった思いがありましたか?

山本氏:M&Aという選択は、後継者のためでもありました。「後継者がいるのに、なぜM&Aをするのか」と言う人もたくさんいますが、私からすると、広い視野の中から会社にとって最善の道を選ばなければ、会社の未来を何も考えていないのと同然です。仕事やビジネスは時流に乗っていかなければいけませんし、意地だけで頑張って何とかなるものではないと痛感しているからこそ、M&Aに踏み切って存続と発展を目指したのです。


蓮尾氏:中小企業の社長が自分のご子息に会社を継がせる理由には、例えば債務があって他人に継がせられなかったり、従業員が承継するには、後継者が株式を取得する資金の確保が難しかったりと、色々な事情があると思います。ただ、自分の子どもに継がせるにしても、好景気のときならまだしも、経済成長が鈍化しているなかではすごく怖いものです。まして今、物流業界では2024年問題が目の前に迫っている。そのなかでの山本社長の判断は、私も同じように子どもを持つ立場として非常に大きな共感を持つばかりです。


M&Aの話をされたとき、山本様の息子さんはどのような反応を示されましたか?

山本氏:将来会社を継ぐために、大手企業で7年ほど下積みをして帰ってきたところだったので、譲渡をすると話したときには「せっかく下積みをして帰ってきたのに、譲渡するなんておかしい!」と言われたのが最初の反応でした。しかし、息子は他社で色々な業務を手掛けてきていたので、視野の広さや物事を高い視座から見る力がぐっと身についていたのでしょう。ちゃんと話をすると、業界の状況や時代の流れをすぐに理解し、M&Aの決断に納得してくれました。蓮尾社長も、息子と何度も会ってくださって、話すうちにより安心できたのだと思います。今はM&Aという判断をして良かったと本人も思ってくれています。

山本訓資氏3

蓮尾氏:息子さんが六ツ星運送さんを継いで、社長になるまでが山本社長の責任だと思いますし、私も当社の後継者を育てていくまでが責任だと自覚しています。当社は今回5社目の譲受になりますが、これまでは私の父親世代の社長が引っ張ってきた会社を譲受してきたので、後継者がいる会社を譲受したのは六ツ星運送さんが初めてです。親心としての不安はあっても、同時に次世代への大きな期待も持っていますね。

「六ツ星運送らしさ」はそのままに、さらなる飛躍を”共に目指す”

蓮尾様は面談の段階から山本様に五健堂様の取締役に就任いただくようオファーされ、M&A成約と同時に就任されました。そこには蓮尾様のどういったお考えがあったのですか?

蓮尾氏:六ツ星運送さんをここまで成長させてこられた山本社長の経営手腕が当社にとっても魅力だったことはもちろん、「一緒に飛躍しましょう」という気持ちの表れでもあります。当社は2021年10月にTOKYO PRO Marketに上場し、株価と企業価値を高めるように努めながら、ゆくゆくは一般市場への上場も目指しています。山本社長には取締役として当社の株主になっていただければ、株価が向上したときに、山本社長が頑張って育ててきた六ツ星運送さんの評価にもつながる。六ツ星運送さんらしい経営を続けていただきながらも、一緒に努力しましょうという気持ちは共にしていきたいんです。

蓮尾拓也氏3

五健堂様とのM&Aについて、六ツ星運送様の従業員の皆様の反応はいかがでしょうか?

山本氏:私としても、やはり従業員のことは一番気にかけていました。M&Aと聞くと、譲受企業が社内に入ってきてあれこれと指示されるといったイメージがどうしてもあったようで、従業員は不安な気持ちになっていたようです。ですが、先ほど蓮尾社長が仰ったように、五健堂グループになっても六ツ星運送は六ツ星運送のまま、何も変わっていません。その上、五健堂さんの取締役のポジションまで用意していただけたので、従業員も非常に安心しています。

2024年問題が目前に迫っていても、「このまま行けるところまで行く」という考えではいけません。なぜなら、経営者が退いた後も会社は存続していかないといけませんから。ドライバーは言うならば技術職なので、年功を積むほどに熟練する一方、急に明日から別の仕事に就くことは難しい職業です。行けるところまで行った結果、働き方改革関連法に抵触して会社が営業できなくなってしまえば、従業員の職を守る経営者の責務が果たせません。最初に申し上げた“責任感”は、まさにここにも通じています。M&Aによって2024年問題を乗り越えられる盤石な体制を作り上げようとしていることは、従業員にも十分伝わっているように思います。

山本訓資氏4

物流を通して地域と社会に貢献する企業を目指す

今後の展望についてお聞かせください。

山本氏:2024年問題の労働時間の上限をクリアするために、今後は当社がM&Aで同業者を譲受して、地方の拠点を拡張していくよう動き始めているところです。徳島から関東間の輸送では、距離的にも時間的にもちょうど名古屋が中間地点にあたるので、名古屋に拠点を持つ企業を譲受してハブのようにしていきたいと構想しています。


蓮尾氏:譲受するための資金を1社で用意するのは大変なことですが、グループであれば皆で助け合えるので、資金の面でもすごく楽になりますよね。それに、M&Aで良縁があっても資金面で諦めてしまうと、譲渡企業・譲受企業の双方にとって成長の機会を逃してしまうことにもなりかねませんから。六ツ星運送さんにはグループとしての強みを存分に活用していただきたいです。


山本氏:蓮尾社長の「六ツ星運送さんのままでやってね」という言葉はすごく嬉しかったですし、五健堂さんと一緒になったことで当社が描いている未来も現実化に向けて着実に前進しています。これはもう、ありがたいとしか言いようがありません。

山本氏と蓮尾氏

今後の物流業界において、グループとして社会にどのような貢献をしていきたいと考えられているか、最後にお聞かせいただきたく思います。

蓮尾氏:今の日本の物流は、無駄な運行が多いのが実情です。私たちが目指しているのは決して安い運賃でたくさん走るのではなく、合理化・効率化して無駄を最小限にすることであって、それこそが物流業界が取り組むべき課題だと考えています。合理化・効率化ができれば、二酸化炭素排出量や労働力不足などの問題も軽減していけますからね。また、物流業はお客様が繁栄していくためのお手伝いをする、縁の下の力持ちとしての役目であることは今後も変わらないと思います。お客様が商品を作り、消費者の手に渡るまでの大部分を物流会社が担っているので、“運ぶ”という作業だけでなく、物流全てのプロセスを通して社会に貢献していきたいです。


山本氏:「縁の下の力持ちとしての役目は変わらない」と蓮尾社長が仰るように、私も物流業は社会からなくなることのない仕事だと思っています。だからこそ、継続できる企業にならなければいけません。これまで当社が拠点としてきた徳島や関東、五健堂さんの拠点である京都のほか、今後も配送拠点を増やしていく計画ですので、それぞれの地域で企業の皆様の繁栄に貢献できるような六ツ星運送へと、さらに成長していきたいと考えています。

山本氏と蓮尾氏2

M&Aは企業の存続と発展を実現する手段

有限会社六ツ星運送

代表取締役 山本 訓資氏

企業は利益の確保が大事であることはもちろんながら、その大前提としてコンプライアンスを遵守し、継続できる体制が求められています。働き方改革関連法に伴う2024年問題や、度重なる免許制度の改正など、設立した30年ほど前とは比べものにならないくらい物流業界を取り巻く環境は変化しており、私たち経営者はしっかりと対応していかなければなりません。

ただ、1社で何とか対応しようとしても困難なことだってあります。今の当社は、M&Aによってグループの強みを最大限に活用させていただき、コンプライアンスを遵守できる会社づくりに集中できるようになりました。これは企業の存続には不可欠な過程です。

次は当社が譲受する側としてM&Aを進める立場になれることも、今回のM&Aが成約したおかげです。M&Aは企業の存続だけでなく、発展を実現する手段として有効だと実感しています。

山本訓資氏5

互いに手を取り合い、社会の変化に対応しながら成長する

株式会社五健堂

代表取締役社長 蓮尾 拓也氏

創業者の多くは、健康である限りずっと経営者を続けたいと願っていると思いますが、やはり人間ですからいつまでも続けられません。その引き際を考えたときに、M&Aという手段がある時代で良かったと思います。昔のようにM&Aが主流でなければ、すごく苦しかったのではないでしょうか。

経営者は法律の改正や、時代の流れに対応しながら会社を成長させなければいけない、まさに“変化対応進化業”が仕事です。その変化への対応が1社では難しい場合も、グループならお互いに手を取り合いながら乗り越えられる。それがM&Aの利点として非常に大きいのです。例えば燃料費の高騰に際しても、1社単独ではお客様に運賃の値上げを申し出づらいところ、複数社であれば正当な交渉がしやすくなる。つまり、社会の変化に合わせながら健全な運営を続けていけるということです。

人口減少や経済状況の変動など、一見すると企業運営にマイナスと思われる変化も、それらにしっかり対応していればグループ各社の成長は続けられる。私はそう考えています。

fundbookのアドバイザーはいつも私たちの希望や心情を機敏に察してくださり、大きな信頼を寄せているので、今後もぜひお付き合いいただきたく思っています。

蓮尾拓也氏4

<担当アドバイザー 金井 良太 コメント>

今回は、物流業界が今後直面する2024年問題を解決するために、後継者がいながらも譲渡を決断した企業様と、株式上場を果たし今後の更なる成長のために積極的にM&Aを推進する企業様の戦略的資本業務提携のお手伝いをさせて頂きました。同じ物流会社でありながら「異業種」同士のM&Aであったと感じています。

六ツ星運送様は地元徳島から関東への長距離輸送を得意とし、高利益体質で財務基盤は盤石でした。ご子息が社内に在籍しており、株式や経営の承継も進めておられる状況であり、外部から見ると今回の株式譲渡は「?」がつくかもしれません。一方で、長距離輸送会社が直面している2024年問題は自社だけでの解決は困難であり、今後も従業員や取引先への責任を果たすためにはM&Aしかないという考えもお持ちでした。

五健堂様は地元京都において盤石な顧客基盤を持ち、安定的な利益を生み出しているものの、株式上場を果たし今後の企業発展にはM&Aは必要不可欠な手段であるとの考えから、現在も積極的にM&Aを推進しておられます。

両社は同じ物流会社ではあるものの、六ツ星運送様は長距離輸送、五健堂様は近距離定期輸送と、物流に対する考え方は全くの異業種同士です。

そんなお二人が初めてTOP面談で意見交換をされたときのことを今でも鮮明に覚えています。初めはどこか話も噛み合わなかったのですが、今後の事業戦略の話に進むにつれて議論は盛り上がり、TOP面談の最後には御両社ともに今回のM&Aを決断されていたのだろうと感じています。

今後も私たちfundbookは、企業の経営課題解決の手段であるM&Aを通じて、関わる全ての人の成功を創出します。

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