事例紹介

M&Aの力で描く、小さなヘルスケアブランドの成長曲線

2019年5月10日、譲渡成立
  • 譲渡企業
    匠の技株式会社
    創業
    2014年

    事業内容
    貿易および輸出入代行事業、ヘルスケア製品の開発販売事業等
  • 譲受企業
    三恵観光株式会社
    創業
    1952年

    事業内容
    アミューズメント事業、ゴルフ事業、エネルギー事業等

匠の技株式会社の代表取締役を務める武藤健一氏は、2012年に設立した米国法人のEC事業を年商数億円の規模にまで成長させ、2014年に日本で匠の技を創業。2016年にはヘルスケア製品ブランド「TAKUMED(タクメッド)」を立ち上げ、順調に業績を伸ばしてきました。

そして2019年、同ブランド事業を京都の総合レジャー企業、三恵観光株式会社に譲渡します。手塩にかけて育てたオリジナルブランドを手放すという大きな決断。その決断に至った経緯やどのようにM&Aが進んだのかを、武藤社長と三恵観光株式会社の森部一浩常務に伺いました。

サイドビジネスから自社ブランド立ち上げへ

匠の技の創業は、サラリーマン時代に始めたサイドビジネスがきっかけだそうですね。創業の経緯について教えてください。

武藤氏:2004年に自宅にあった印刷機を個人でECサイトに出品したのがきっかけですね。当時、私はアメリカのコンサルティング会社で働いていたのですが、それ以前から「優れた日本製品を海外で販売してみたい」という思いがありました。そして、ものは試しとトライしてみた結果、これがうまくいった。ただ、当時利用していたECサイトは出品や発送などの作業にとても手間がかかりまして。その後しばらくは何も出品していませんでした。

それから2011年になって、家族でEC事業に再びチャレンジしました。今度は日本のアニメ関連商品や玩具に見当をつけて商品ラインナップを揃えたところ、狙いが見事に的中したんです。売上は順調に伸び、翌年には勤めていた会社をやめてアメリカで会社を設立しました。

その後2014年に日本で匠の技株式会社を設立されました。なぜ改めて日本で創業されたのでしょうか?

武藤氏:会社の設立当初は、日米の価格差が大きかったので利益を取りやすく、取扱商品を数千点規模に増やしてさらなる売上アップを目指していました。そのうち日本製品をアメリカで販売するだけでは年商数億円規模が限界だと分かってきたので、年商10億円規模を目指すために世界各国の商品を扱うクロスボーダートレードにシフト。ひたすら規模拡大を追い求めました。

ところが、その翌年頃から当社と同じような事業を手がける企業の倒産が目立ち始め、私も今のビジネスモデルでは先がないという現実に気づきました。そこでもう一度、何がやりたいのかという原点に立ち返り、改めて日本製品の魅力を世界に伝えていこうと匠の技を設立しました。

2016年に初めてオリジナルブランドを立ち上げられます。どのような思いが込められているのでしょうか?

武藤氏:アメリカでのEC事業は年商数億円規模に育ちましたが、お客様の喜びの声に触れる機会がほとんどなかったので、どこか虚しさがありました。サラリーマン時代も金融商品など形のないものを扱っていましたから、ものづくりに対する憧れにも似た思いがあったのでしょう。いつしか日本のクオリティで価値ある商品を自ら作りあげたいと切望するようになりました。

そこで、お客様が悩みや不便さを感じやすい分野として注目したのが、ヘルスケア製品です。中でも骨折された方の入浴用ギプスカバーは、品質やブランディングの面で既存の製品に改良の余地があると分かり、これをブラッシュアップしてオリジナル製品を開発しようと決めました。そして、2016年に自社ブランド「TAKUMED(タクメッド)」を立ち上げました。

お客様の反応はいかがでしたか?

武藤氏:骨折された方が入浴する際、従来はギプスにビニール袋を被せて入浴するという方が多かった。しかし、その方法ではどうしても水が入ってしまい皆さん不快で不便な思いをされていたんですね。TAKUMEDのギプスカバーは間口を伸縮性の高いシリコン製にするなど防水性を高めているので、患部がまったく濡れず快適です。商品レビューのページに「こんな製品が欲しかった」という感想を見つけたときは、本当に嬉しかったですね。今では日本国内で最も多く販売されているギプスカバーとなりました。

オリジナル製品の開発を通じて実感したのは、世の中にあるすべての商品が必ずしも丁寧に説明されているわけではないということです。商品写真や説明文、パッケージに至るまで完璧と思える商品は多くありません。TAKUMEDはそこを重点的に改良し、オンライン販売であっても、お客様に丁寧に情報を届けることを大切にしました。

出会いから1週間での成約は、任せられると確信したから

そんなTAKUMEDブランドをM&Aにより事業譲渡されました。なぜなのでしょうか?

武藤氏:TAKUMEDを通じて、オリジナル製品の開発・販売に手応えを得ることはできました。しかし、ブランドの確立や浸透という点では理想の形に到達できていません。TAKUMEDをより成長させるには、これまで以上に人的リソースや時間をかける必要がありますが、当社は私と妻の2名体制なので現実的でないという結論に至りました。

そこで、思い入れのある事業だからこそ、安心してお任せできる方へ譲渡し、TAKUMEDを永続的にお客様に愛されるブランドへと成長させてもらいたいと考えました。そのうえで、当社はさらなる新ブランドの開発に注力し、現体制のままで「オリジナルブランドによる付加価値の提供」ができる企業を目指していこうと決断したのです。

M&Aを考え始めたのはいつ頃ですか?

武藤氏:2018年の末です。実際に動き始めたのは年が明けた2月頃でした。最初に行ったのはM&Aのマッチングサイトへの登録です。簡単な手続きで登録できるということだったので、まずはやってみようと思いました。  

反応はいかがでしたか?

武藤氏:大手企業をはじめ複数の法人・個人からご連絡をいただきました。ただ、その大半が10社20社と数多くの譲渡案件に気軽にアプローチをされていると感じられ、M&Aのお相手として相応しいのか測りかねていました。

そこで、マッチングサイトと並行して他のM&A仲介会社にも問い合わせてみようと考え、ピンときたのがFUNDBOOKです。アドバイザリーとプラットフォームを組み合わせたハイブリッドなところが面白いなと思い、ご連絡しました。

M&Aで重視されたポイントはどんなことですか?

武藤氏:スピード感です。3ヶ月以内の譲渡を目指しました。少人数で事業を動かしているので、M&Aに多くの時間を割くわけにはいきません。半年〜1年以上かけて譲渡先をじっくり探すイメージはありませんでした。

そして、FUNDBOOKからご提案したお相手が、三恵観光株式会社でした。森部常務は、なぜTAKUMEDに興味を持たれたのでしょうか?

森部氏:当社は長年アミューズメント事業を軸としてきましたが、業界が年々厳しくなっていたことから、数年前に経営の多角化に舵を切りました。そこで注目していたのがEC事業です。とはいえノウハウはありませんし、多くの人材を投入する余裕もありませんでした。そのようなときに、お二人だけで事業を運営されているというTAKUMEDのご提案をいただきました。

TAKUMEDのギプスカバーは非常にニッチで魅力的でした。実際に購入して使ってみたのですが、クオリティも素晴らしかった。さらにはブランディングの面でも優れていて、類似商品があっても消費者からするとまったくの別物に見えます。付加価値を高めるための最大限の努力をされている姿勢がうかがえ、興味を持ちました。

武藤社長は三恵観光株式会社にどんな印象を持たれましたか?

武藤氏:杉本社長と森部常務にお会いして、そのバイタリティやスピード感、親しみやすさに、とても良い印象を受けました。さまざまな新規事業に積極的に取り組んでおられますし、この方々ならばTAKUMEDをお任せできると確信しました。譲渡後も継続的にコミュニケーションを取らせていただいて、TAKUMEDブランドを成長させていくお手伝いをしていきたいと、その場でお話しいたしました。  

森部常務は武藤社長にお会いになって、どんな印象を持たれましたか?

森部氏:私は初対面の方の人柄を3分で見極められるのが特技なのですが(笑)、武藤社長はお会いした瞬間に「この方なら大丈夫」と思えました。非常に誠実な方だなという印象でした。

初対面から成約まで、どれくらいの期間だったのでしょうか?

森部氏:1週間です。当社もスピード重視の経営ですが、武藤社長のスピード感はそれ以上で驚きましたね。それでもFUNDBOOKさんが間に入って的確に条件や契約内容の調整をしてくださったおかげで、無事に予定通り成約することができました。

武藤氏:現代はワンクリックで中国でのモノづくりができるような時代ですから、成約まで何週間も何ヶ月間もかけていると、事業のスピードと感覚のズレが生じてしまうんですね。私としては心地よいスピード感で進めることができて満足しています。

譲渡後は新ブランド立ち上げに邁進

成約から4ヶ月が経過しました。TAKUMED事業の現状はいかがですか?

森部氏:おかげさまで売行きは順調ですが、同時にオンライン販売の難しさも感じています。聞いたこともない用語が次々と出てきますし、初めの頃は商品補充のタイミングが読めず、販売サイクルを確立するまでに少し時間がかかりました。自動車教習所で言えば、ポールにこすりながら縦列駐車にチャレンジしているような感覚でしょうか。しかし、武藤社長が「スーパー教官」として丁寧に指導してくださっていますし、何かあればすぐにサポートしてくださるので、とても心強いです。

今後は、現在のオンライン販売を軌道に乗せること、国内でBtoBのアプローチを広げること、そして当社の台湾法人を通じて台湾の大手ECサイトでの販売も目指しています。

匠の技では現在、どのような事業に取り組まれているのでしょう?

武藤氏:現在はアロマグッズやヘアアクセサリーなど、生活雑貨を中心とした新規事業を進めています。一から育ててきたブランドを手放した寂しさはありますが、価値あるブランドを新しく立ち上げるという次の目標に向けて楽しみながら取り組んでいます。これまで以上にお客様に喜ばれるようなモノづくりに、邁進していきたいですね。  

事業譲渡というイグジットの可能性

匠の技株式会社
代表取締役 武藤健一 氏

今回、TAKUMEDの事業譲渡を検討した際、規模を問わず多くの企業様からお問い合わせをいただきました。当社のような小さな企業が生み出したブランドであっても、お客様にとって価値のある製品であるならば、譲渡のお相手が見つかる可能性は十分あるのだと感じました。

私がM&Aというイグジットを進めていく中で、どのようなお相手が良いか判断に悩むこともありましたが、FUNDBOOKを通じて安心してTAKUMEDをお任せできる企業が見つかり、私も新ブランドの開発に注力できるようになりました。EC事業を運営されている経営者のなかには、同じような悩みを抱える方もいらっしゃるでしょう。そのような方は、M&Aを一つの選択肢として検討されてもよいのではないでしょうか。

M&Aが盛んな今こそ、信頼できる人を見極めたい

三恵観光株式会社
常務取締役 森部一浩 氏

経営の多角化に向けて、これまで何度もM&Aに関するセミナーに参加してきました。そのなかで無事に成約に至るケースは決して多くないと聞いていましたので、当社にとって初めてのM&Aが、こんなにもスムーズに成約したことに驚いています。

近年は大企業だけでなく中小企業の間でもM&Aが盛んに行われています。私も新規事業開発室の室長として、さまざまな方面からご提案をいただく機会が増えてきました。今回実際にM&Aを経験し、このような時代だからこそ、何より信頼関係が大切なのだと実感しました。これからM&Aを検討されている方には、お相手となる経営者様だけでなく、間に立ってくれるアドバイザーさんに関しても、信頼できる人を見極めることが成功の秘訣だとお伝えしたいですね。

確かな信頼が実現させた短期間での異業種マッチング

(担当アドバイザーのコメント)

この度は、匠の技株式会社様の「TAKUMED」ブランドを三恵観光株式会社様へ承継させるお手伝いができたことを大変光栄に思います。

武藤社長と面談させていただき、最初はこれほど順調な事業を譲渡されることに疑問を持ちました。しかし、M&Aを通して「TAKUMED」ブランドを拡大し、より多くの方の生活を豊かにしたいという想いを伺い、M&Aの意義を改めて認識いたしました。

そのときは、すでに他のプラットフォームサービスや仲介会社にもご相談されている状況でしたが、アドバイザー×プラットフォームそれぞれの強みを併せ持つ当社の「ハイブリット型」M&A仲介サービスや、分業制によるスピード感に魅力を感じてくださり、お相手探しを任せていただくに至りました。

「TAKUMED」製品は今後の市場展開が見込める大変有望な商品ですが、日本での認知度がまだ十分でないことから、お相手を探すのは簡単ではありませんでした。しかし、当社のプラットフォームや専門チームを通じて、幅広い選択肢の中から三恵観光様との素晴らしいご縁を結ぶことができました。特に大きかったのが、三恵観光様の杉本社長、森部常務と武藤社長に短期間で信頼関係を築いていただけたことです。それがあったからこそ、この異業種同士のマッチングが短期間で実現したのだと思います。

武藤社長が育て上げられた「TAKUMED」ブランドが、三恵観光様というパートナーとともに、今後さらなる成長を遂げられることを楽しみにしております。

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