インタビュー

2018年12月25日、譲渡成立

M&Aでのれんを守る、明治創業の老舗きんつば店

M&Aでのれんを守る、明治創業の老舗きんつば店
  • 譲渡企業有限会社又一庵
    設立年月日
    1871年
    事業内容
    和菓子の製造販売
    URL
    http://www.mataichian.com/
  • 譲受企業株式会社TTC
    設立年月日
    1977年
    事業内容
    観光土産品の企画・開発・卸・販売、テナント店の開発・運営、店舗プロデュース全般等
    URL
    http://www.ttc-gr.co.jp/

静岡県の有限会社又一庵は、明治4年創業の老舗和菓子店。名物は熟練の職人が作る手焼きのきんつばで、地元のお客様から長年にわたり愛されてきました。しかし近年はコンビニ等が台頭した影響で苦しい経営を迫られ、鈴木康元社長はのれんを守るためにM&Aという決断を下します。

その結果、経営体制の変更なしで成約直後から業績が回復し、当初は猛反対した長男たちも後継者の自覚を高めました。譲渡成立から5ヶ月、M&Aが劇的な好転をもたらした経緯について、鈴木社長と譲受企業の株式会社TTC河越社長にお話を伺いました。

M&Aでのれんを守る、明治創業の老舗きんつば店

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コンビニ・大型店舗の台頭で経営厳しく

又一庵は2019年で創業148年と非常に歴史のある和菓子店です。4代目である鈴木社長がM&Aを検討されるまでの経緯について教えてください。

鈴木氏:私は5年ほど洋菓子の修行をした後、24歳で戻ってきました。当時は本店のみでしたが、きんつばが大変好評で毎日のように売り切れていたことから店舗を増やし、県内7店舗まで拡大しました。

ところが近年はコンビニや大型店舗の影響で、いい商品を作っても以前のようには売れなくなってきたのです。私たちはお菓子を作るのは得意でも売るのは苦手。販売先を増やそうと営業をかけましたが、状況を打開できずにいました。また、当社は長男、長女、長女の夫が役員を務めておりますが、私と若い世代では意見が食い違うことも経営上の大きな課題で、このままでは空中分解してしまうと危機感を抱いていました。

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そんな時、2018年5月にfundbookさんからご連絡をいただきました。お会いしてお話を聞いたところ、他の会社と一緒にやっていくことが一番必要なのではないかと考えるようになったのです。

担当アドバイザーがご提案した譲渡先が株式会社TTCでした。

アドバイザー:TTC様は、東京の百貨店や海外にも広く販売網を有し、行列のできる「熱海プリン」など商品プロデュース力も高い会社としてご提案いたしました。

河越氏:当社は観光地における商品の企画・製造・卸・販売を行ってきましたが、時代の変化とともにブランド商品・店舗・企業の開発をテーマとするようになり、老舗企業支援のビジネスモデルも作りたいと考えているところに今回のお話をいただきました。私自身、又一庵のきんつばのファンであり、素材も技術も一流で日本を代表するきんつばメーカーだと思っていましたので、ぜひお話を進めたいと考えました。

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鈴木氏:実は河越社長とは元々知り合いで、従業員教育を徹底されていることを存じ上げていました。譲渡先として申し分ないどころか、私たちでは恐れ多いのではないかと思ったほどです。

息子たちが猛反対 成約前1ヶ月間に行った説得とは

M&Aを進めるうえで難しかったのはどんな点でしょうか?

鈴木氏:息子たちに猛反対されました。「騙されている」「上手くいかない」「自分たちで立て直せる」と言われましたね。しかし私はすでに会社を譲渡すると決めていましたので、成約前の1ヶ月間は、fundbookさんと一緒に息子たちの説得に身骨を砕きました。

河越氏:又一庵の株式の大半は鈴木社長が保有していたため、M&Aは社長の独断で可能でした。しかし、私はそれでは意味がなく、家族全員から理解を得る必要があると考えていました。

アドバイザー:河越社長からそのお考えを聞いた時、「この2社ならきっと上手くやっていける、一緒になるべきだ」と確信しました。

まずは顧問税理士様のご同席のうえで、ご子息様たちに経営状況をご説明しました。現状は好ましいとは言えず、今後の見通しもさらに厳しくなるとお伝えしました。現状についてはご理解いただけたのですが、「数字を見ただけで納得はできない」という反応でした。

そこで私から「役員として経営の意思決定をされるなら、譲渡先をよく知ったうえでご判断を」とお願いして、TTC様が手がけるサービスエリアや卵の専門店の視察にご案内しました。また、まるでアミューズメントパークのようなTTC様のホスピタリティの高さを肌身で感じ、河越社長とも直接お話しいただくために、本社にもお連れしました。

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河越氏:私から「又一庵をどうしていきたいのか」と尋ねたところ、彼らは「歴史あるきんつばでお客様に本当に喜ばれる店にしていきたい」という思いを抱いていました。当社の店舗を実際に見て、「自分たちもこの会社と組めば、やりたいことを実現できるんじゃないか」という気持ちに少しずつ変わっていったようです。

M&A後について、TTCは又一庵の経営にどのように関与すると説明されたのでしょうか?

河越氏:老舗企業支援のビジネスモデルを確立するために、M&A後も社長・役員は変更せず同じ体制を継続したいとお伝えしました。当社には又一庵の素晴らしい技術をブランドとして光らせ、尖らせ、突き抜ける存在へと導くノウハウがあります。当社があらゆるアドバイスを行いサポートすれば、必ず業績アップし、東京進出や世界進出だって夢ではないのです。また、又一庵の将来を担う3人の教育も任せてくださいとお伝えしました。

鈴木氏:やはり親子なので、私の言葉は素直に受け入れられない部分があります。ですからM&Aでは河越社長に息子たちを経営者として育てていただくことも大変期待していました。

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fundbook担当アドバイザーの対応はいかがでしたか?

鈴木氏:非常に誠実な方で、夜遅くまで電話でご対応いただいたり、息子たちとの間に入って色々とご苦労いただいたりしました。一生懸命な姿を見て「この方なら信頼できる」と思い、お任せできました。

息子たちは成約の日までに100%納得した状態には至りませんでしたが、私たちの明るい未来を確信したアドバイザーさんが「なってみればわかりますから」と強く後押ししてくださったのも心強かったですね。

M&A後も経営体制に変更なし およそ3ヶ月で黒字へ

M&Aについて、従業員の方にはどのように伝えられましたか?

河越氏:せっかくなら盛大にやりたいと思い、2019年1月11日に企業同士の「結婚式」を行いました。又一庵の全従業員さんに集まっていただき、M&Aの発表と当社の紹介を行いました。従業員さんが安心して働くことができ、最高の会社にしていこうと思えることが重要なので、そのきっかけにしたかったのです。

鈴木氏:M&Aには不安もありましたが、TTCの方からうちの従業員にお酌をしていただいたりして、「本当にいい方々だ、これならやっていける」という気持ちになれました。

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M&A後、どのような変化がありましたか?

鈴木氏:経営体制や人員に変更はありませんが、TTCの方々に来ていただき当社の課題のピックアップや改善指導を本当に丁寧に行ってもらっています。また、週1回のビデオ通話による役員会議、月1回の合同会議を通じて密に連携しています。新商品の開発も進めており、TTCの強力な販売網も活用しながらきんつばに続く第二のブランドを作っていきたいと考えています。

河越氏:私がまず行ったのは、又一庵にはどんなスタッフがいてどんな強みがあるのかを把握することです。そして、当社と又一庵はお客様の感動を創造するという経営理念が共通していたため、その実現に向けて当社の社是や「TTC三つの心(素直な心・肯定する心・感謝する心)」に基づく従業員研修を実施しました。経営理念の浸透と確立が第一と考えました。

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経営が上手くいかないと社内が疲弊して後ろ向きになりがちですが、本当は素晴らしい人財が多いのだと気づかせることができれば、従業員に前向きな気持ちや責任感が芽生えます。さらに部門別損益への数字の意識も徹底しました。パート従業員さんまで一日の目標数値を頭に入れてどんな接客をすべきか自ら考えなければ、良くなっていきません。実際に結果としても表れており、2018年12月末に譲渡が成立してからおよそ3ヶ月、2019年3月には黒字に転じることができました。

成立前に納得していらっしゃらなかったご子息様たちには、どのような変化がありましたか?

鈴木氏:河越社長にお会いしたりTTCと会議を重ねたりするうちに、徐々にTTCの素晴らしさに気づき、後継者としての自覚を持つようになったようです。今では息子たちのほうが私よりも一生懸命頑張っていて、私にとってはM&Aの成果として一番嬉しいことです。

「自分たちのものじゃなくなる」という心配は杞憂に終わった

ご長男の鈴木将洋氏、ご長女の西澤佑梨氏とそのご主人の西澤範尚氏にもお話を伺いました。

社長からM&Aの話を聞いてどのように感じられましたか?

鈴木将洋氏:やはり抵抗感が非常に大きかったです。家業や自分たちが守ってきたものが途絶えてしまうのではないかという危機感がありました。

西澤佑梨氏:自分たちのものじゃなくなってしまうという気持ちが強かったです。まだ自分たちが経営に本格的に携わっていない状態で会社を他人に渡すことに抵抗感がありました。

西澤範尚氏:私は一族ではないので二人とは少し違うかもしれませんが、自分たちが楽になるために他人任せにするような感じがして、受け入れがたいものがありました。

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M&Aを通じてお気持ちはどのように変化しましたか?

鈴木将洋氏:完全には納得できていない状態でM&Aが行われましたが、今では本当によかったと感じています。河越社長は私たちに毎日電話でアドバイスやフィードバックをくださり、大変ありがたいです。

西澤範尚氏:河越社長に言われると、今までなら「これくらいやっておけばいいだろう」と考えていたことも一気にラインが拡大するような感覚です。TTCをお土産屋さんと考えていたのは大きな認識違いでした。我々よりも本物志向で、見習うところだらけの会社です。

西澤佑梨氏:河越社長が人一倍仕事をされているので、私も頑張らなければという気持ちになります。自分たちのものじゃなくなってしまうという心配は杞憂に終わり、TTCの方々は私たちが経営の中心を担えるように育ててくださっていると感じます。

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M&Aは老舗の価値を未来に残す一つの方法

有限会社又一庵
代表取締役社長 鈴木康元 氏

色々な不安はありましたが、fundbookに依頼してよかったです。TTCとの出会いがなければ私たちはどうなっていたかと思いますし、期待していた教育面の成果も予想以上。今は後継者不足の時代ですが、ありがたいことに当社には息子たちがいて、私が引退する前に河越社長から経営を学ぶ機会に恵まれました。ベストタイミングで会社を譲渡できたと考えています。

今、地域で長年頑張ってきたものの非常に厳しい状況に置かれている企業は少なくないと思います。しかし、せっかくの高い技術や優れた商品が失われるのは本当にもったいないことですから、M&Aという道を積極的に検討することも一つの方法ではないでしょうか。

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突き抜けるようなビジネスモデルで日本を元気に

株式会社TTC
代表取締役 河越康行 氏

譲受後の体制や人員を一切変えないM&Aは当社にとって初のケースでしたが、社長も役員も従業員の皆様も一生懸命取り組んでくださっていることが如実に伝わってきます。息子さんたちからは問題点や改善点について毎日メールが届きますし、彼らの背中を見て従業員も変わっていきます。

当社は日本全国の地域を活性化して日本を元気にすることをビジョンに掲げています。歴史や技術はあるが、売り方がわからないという企業をブランディングして企業価値を高め、突き抜けるようなビジネスモデルを作り出せるのが当社の強みです。今回のような老舗企業支援のビジネスモデルを今後も継続して、世の中のお役に立ちたいと考えています。
fundbookさんは誠実で説得力があり、勝負をかける時も責任を持った行動をしてくれました。今後の老舗企業支援についても相談しているところで、出会えて本当によかったと思います。

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