インタビュー

2017年11月1日、譲渡成立

地域と共に30年、M&Aでバトンを託した調剤薬局

地域と共に30年、M&Aでバトンを託した調剤薬局
  • 譲渡企業若江東大阪ファーマシィ薬局株式会社(旧:みずほ薬局、現:ak薬局 男山店)
    設立年月日
    事業内容
    調剤薬局
  • 譲受企業株式会社あけぼの関西
    設立年月日
    事業内容
    調剤薬局
    URL
    http://www.akebono.co.jp/
地域と共に30年、M&Aでバトンを託した調剤薬局

地域と共に30年、M&Aでバトンを託した調剤薬局

インタビューの舞台は京都府八幡市。「八幡(やわた)」という市名は、市内に鎮座する日本三大八幡宮の一社、石清水八幡宮に由来します。大阪府と京都府の境目にあるこの地域は、男山を中心に田園や住宅地が広がっていることでも知られます。

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閑静な住宅地を抜けると、地域の人々に愛されながら30年間「みずほ薬局」の屋号で、若江東大阪ファーマシィ薬局株式会社の経営を続けてきた仲井氏にお出迎えいただきました。地元住民にとってはお馴染みの顔です。

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地域に寄り添った調剤薬局を営んできた「みずほ薬局」

さっそくですが創業の経緯を教えてください

仲井氏:まず前提として、薬剤師として人生を歩む上で「どんな仕事でも自分で一通りできなければならない」という思いがありました。そこで、まず「仕事の基本は営業職だろう」ということで、最初は薬剤の卸売りを行っている会社で営業職に就きました。

そこで約3年間、薬品の営業活動をしていましたが、やっぱり営業には向き不向きがありますよね。私はそこまで営業が得意ではなくて、思ったように営業活動がうまく行かず……。

当時は医薬分業が進んでいる時代だったということもあり、会社の上司から「仲井くんは薬剤師免許も持っているし、調剤薬局の方が向いているんじゃないか」と紹介していただいたのが、調剤薬局を営む会社でした。

7年ほど、調剤薬局にて薬剤師として業務に携わり、その後、ご縁があって独立し、今に至ります。

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これまで経営で苦労していたことは?

仲井氏:正直なところ、特に大きな苦労はせずにやってきたんですよ。店を開けている時間はずっとここに居て、患者さまが来たら対応し、疲れたら休憩しながらやってきましたから。この薬局は家のようなものなので、幸いにも苦労はほとんどなかったですね。

とはいえ、やっぱり薬局を経営していく上では、来る日も来る日も仕事を休むことが難しく、辛かった時期もありました。

例えば営業時間です。うちの場合は、平日は20時まで、土曜日は15時まで店を開けています。近くには住宅地や、目の前にバス停があるということもあり、営業時間を過ぎても患者さまがいらっしゃることが多いんです。

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患者さまの声にはできるだけ応えたいという思いから、本来の営業時間よりも長く、平日は21時ごろまで、土曜日でも17時ごろまでは店を開けていました。やっぱり患者さまからすると、長い時間開いていたほうが嬉しいですからね。ただそれが当たり前になってくると、時間通りに店を閉めることが難しくなります。実際、本来の営業時間通りに店を閉めると怒られてしまいますしね(笑)

ただ、患者さまから「いつも開いていて助かる」という言葉をいただくと、やっぱり嬉しいですよね。

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(みずほ薬局は住宅街にあり、小さい子どもや仕事帰りの患者が多く訪れる)

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森社長:仲井さんは地元の住人にとって「居てくれて当たり前の存在」になっているんです。みずほ薬局さんは医院の隣に立地しているのにもかかわらず、集中率(一か所の病院からの処方箋の割合)が低いことが特徴です。これはひとえに、地域密着で患者さまのことを第一に考えて経営されているということが、患者さまにも伝わっているのだと思います。

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村上:営業時間が終わった後も、遅くまで社長ご自身で事務処理などを行っていましたよね。実際に私が(譲渡の)お手伝いをさせていただいていた間も、いつもご従業員の皆さまが帰られた後の、夜 8 時半からのご面談でしたね。

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仲井氏:そうですね。結局、30年間で休んだのはたった一日だけ。それ以外は定休日じゃない日はずっと店を開けていました。 また、この年になってくると漠然とした経営の悩みはありましたね。薬剤師としての業務だけでなく、従業員のマネジメントや、売上や給与の計算などの経営にまつわる事務的な業務も多く、プレッシャーも感じていました。 経営者は普通の会社員とは違い、定年が訪れるという世界ではありませんから。そういった終わりのない経営にも不安はありました。

従業員や周りの人に支えられたからここまでやってこられたという思いがありますが、やっぱり身体的な疲れだけでなく、今思い返すと精神的なストレスも多かったと思います。

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会社を存続させる選択肢としてのM&A

M&Aを検討し始めたタイミングを教えてください

仲井氏:身体的な負担はもちろんのこと、先ほど話したような漠然とした先行き不安は常に抱えていました。そういったタイミングで、いくつかのM&A仲介会社から譲渡のお話をいただく中で「M&Aも将来の選択肢の一つ」と脳内に芽生えました。

村上:そうですよね。調剤薬局の経営者さまにお話を伺う機会は多いんですが、やはり、調剤報酬改定などの薬局業界ならではの悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。

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いくつかM&Aの仲介会社からお話があったということですが、その中でなぜ弊社を選ばれたのでしょうか?

仲井氏:fundbookさんにM&Aのご相談をしたのは、最終的に「縁」だったと私は思っています。以前に話が進んでいた仲介会社とは、何度か会ってみて具体的な話までは聞きましたが、最終的な意思決定には至りませんでした。

昨年(2017年)5月頃に、fundbookさんに電話をいただき、この薬局までわざわざ来るというので、ならば会ってみようと思いました。実際に村上さんにお会いし、さまざまなお話をする中で、普通に考えたらできるわけがないだろうという条件を提示したんですね。営業職は基本的に成果主義でしょう。私の中ではM&Aの仲介会社といえども「会社を紹介して売ったら終わり」という認識があったので、わざとそのような条件をお伝えしました。

他の仲介会社はこの条件ではできないと言っていたので、これができたら大したものだと思っていました。すると「やります」と村上さんが言ったので、それならば「お願いします」と、今回のお話を進めるきっかけとなりましたね。

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村上:仲井さんから提示された条件を超えるのは、正直ハードルの高いお話ではありました。ただ、やるのなら絶対に仲井さんの条件を受け入れたいと思っていましたし、もちろん森社長にもその旨をお伝えして、今回のM&Aをお手伝いさせていただきました。

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森社長:M&Aというのは大きなお金が動くことだし、譲り受ける立場としても不安なことも多々あるんですよね。でも村上さんはいつも、こちらが納得できるまで真摯に動いてくれているので、ほとんど不安は感じませんでした。 こちらが知りたいと思う情報を先読みして、フットワーク軽く何度も対応してくれて、最終的に双方が納得のいくM&Aができたのではないかと感じています。

村上:M&Aは「売りたい会社と買いたい会社を引き合わせれば成立する」という単純な話ではありません。双方の会社にとって、M&Aをすることによる互いの魅力をしっかりと感じていただいた時に、初めて話が前に進みます。

売りたい、買いたいとおっしゃる各社にとって“どのようなお相手と一緒になれば”双方にとってメリットがあるかを様々な角度で考え出し、シナジー効果を提供することが私ども仲介に立つ者の使命であり、存在意義であると私は考えています。

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関わる人たち全員がハッピーになれるM&A

「M&Aによる譲渡」という選択に不安を抱える経営者は多いと思います。譲渡を決断するきっかけとなったのはなぜでしょうか?

仲井氏:あけぼの関西さんへの譲渡を決めた理由は、先ほど話した条件を満たしてくれたということもありますが、一番は譲渡する際の見えない不安や、心配ごとを拭ってくれたことですね。

例えば森社長だけでなく、他のあけぼの関西さんの経営陣の方々が、何度もこちらの店舗まで足しげく通ってくれました。また、譲渡後にどのような運営体制になるかを詳細に教えてくれることのみならず、「これまで通りの運営」という明確な方向性を示してくださったのが大きかったと思います。

譲渡を考え始めた当初は、ただ単純に「会社を売る、手ばなす」という気持ちが強かったのですが、実際にあけぼの関西さんとの話を進めていくなかで、いつしか「会社を譲る、バトンを繋ぐ」という気持ちに変わっていきました。

譲渡後の対応についても、シフトがバラバラな従業員一人一人に対し、森社長みずからがコミュニケーションを取るために、わざわざこちらの店舗まで足を運んでくれたり、店舗の外装を変える際には夜中の1時や2時まで手伝いに見えられたりする姿を目の当たりにし、あけぼの関西さんがお相手で本当に良かったと思っています。

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森社長:私も実は譲渡を経験した立場なので、そういった気持ちはよく分かるんです。私はM&Aで大事なことは「会社同士」の譲り受けではなく「人同士」の譲り受けと捉えることだと考えています。

実際に会社を譲り受けるとなると、何度も現地を訪れて、納得のいくまで社長や従業員の方と接するようにしています。M&Aは今店舗にいる従業員の皆さんが一番大事になってきます。なので、従業員の皆さんの気持ちや想いを知るということから徹底的に着手しています。

譲渡する経営者からすると、事実上は「会社を売ったらそこで終わり」なのかもしれません。ですが、残された従業員の皆さんが一緒に働くのは、バトンを受け取った私ども譲受企業ですからね。コミュニケーションがうまく行かず、無理にM&Aを行ったところで、結果として離職に繋がってしまうと皆にとって不幸な結果となります。なのでしっかりと現場の声に耳を傾けています。

仲井氏:そうですね。実際に私の周りでもM&Aをした後に従業員が泣いているという話は耳にします。そういった不安を取り除いたうえで、譲渡するのが経営者にとっても大事な役目だと思います。

森社長:当社に譲る前に「うちの従業員はどうなりますか」と聞いてくれる経営者さんが多くいらっしゃいます。私は、そういった経営者さんに、必ず「守ります!」と伝えています。

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会社を「売る」のではなく「バトンを繋ぐ」

譲渡後の変化はありましたか?

仲井氏:将来的な漠然とした不安や経営の心配がぐっと減って、精神的に非常に穏やかになったと思います。これまでは給与の計算などの事務的な業務に追われ、毎晩日付が変わる頃までバタついていましたが、今ではそういったストレスはほとんどなくなり、患者さまとコミュニケーションを取り、薬剤師としての業務だけに専念できるのが嬉しいですね。

森社長:地域に密着した薬局だと、患者さまの顔も覚えてどの患者さまがどんな病気を患っているのかなど、調剤薬局の薬剤師さんがコミュニケーションを取っているんです。なかには「仲井さんがいるから」と通う患者さまもいらっしゃるので、そこは仲井さんにお任せしています。

今は、給与計算や経営の雑務は本社が一括で行い、仲井さんには患者さまとのコミュニケーションに集中してもらっています。

仲井氏:ただ、少し大変だったのは「人に任せるための引継ぎ」でしたね。特に私の場合は事務作業も一人でやっていましたから、これまでは自分だけが分かる方法でやっていれば良かったんです。ただ、譲渡後は自分でなく、従業員など別の人に作業を任せる必要があります。

そういった仕組みを作って共有するというのがどれだけ大変なものなのかを、会社を譲渡してみて初めて気が付きました。

地域と共に30年、M&Aでバトンを託した調剤薬局

仲井氏:また、休みがきっちり取れるようになったことが嬉しいポイントです。これまでの30年間は店を休むこともできず、旅行や遠出といったリフレッシュがほとんど出来ていませんでした。譲渡後は週休2日で休めていますから、時間に余裕もできました。

森社長:それは私としても嬉しい変化ですね!

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「“売る”のではなく“バトンを繋ぐ”」 ~第三者承継の心得~

若江東大阪ファーマシィ薬局株式会社(旧:みずほ薬局) 前代表取締役 仲井 秀文 氏

周りの会社経営者を見ていると、私と同世代でもまだまだ「自分でやるぞ」という意気込みで続けている人が多いんですね。私も実際に譲渡する前はそう思っていましたが、業界の動向や、将来に対しての漠然とした不安がある中で、身体的な負担は増えていく一方でした。

最初にM&Aの話を聞いた時は、やっぱり不安ばかりで、いくらM&Aの担当者がやってきて「経営が楽になる」や「円満に引継ぐ」という話を聞いても、「本当か?」と感じるときも正直ありました。ですが、従業員も誰一人辞めずに皆「頑張ります」と言ってくれているし、譲渡して良かったなあと感じています。

まずは話だけ聞いてみて、お相手の会社が合わなかったら、途中で辞めればいいと思いますよ。

良いお相手と出会ったら、本当に従業員や患者さま(お客さま)の為になるか、あるいは今の会社や家族の為になるのかをよく考えましょう。これら全てが満たされた時にいつしか会社を「売ってしまう」のではなく「譲る、バトンを繋ぐ」と感じるようになっているでしょう。

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「M&Aは“会社同士”ではなく“人同士”の譲り受け」

株式会社あけぼの関西 代表取締役 森 あかね 氏

会社を譲り受けるということは、単に屋号や経営権を引き継ぐということではありません。経営者の思いや会社の文化などを重視して、私たちが譲歩できる部分、難しい部分をしっかりと話し合います。

結局のところ人が会社を作っているので、そうした方が最終的には利益に繋がると考えています。経営に対する思いや歴史、文化を通じて「会社」ではなく「人同士」が繋がるので、徹底的に話し合って、本当に譲り受けたらお互いにとって最適かを考えてM&Aを行っていきたいですね。

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「単なる“後継者不足”だけでは語れないM&Aの価値」 ~M&Aの現場~

株式会社fundbook 村上 宗太郎

――fundbookの存在意義――

M&A仲介の現場に立つ私は、日々、全国の会社経営者の皆さまとお会いしています。新聞記事を読んでいると「日本の60歳以上の会社経営者の約50%以上は“後継者不足” である」と表現されていますが、私がお会いする会社経営者の半数以上の方がそのようにお答えするかと言うと、答えは「No」です。

仮に統計上は“後継者不足”の問題を抱えているとは言っても、実際には「今後の業界の変動にどう対応していこう」「新たな事業展開、会社の成長・発展はどうしよう」「従業員はどうしよう」などの理由で頭を悩ませている方がほとんどです。

つまり、M&Aを選択する経営者の理由として、必ずしも“後継者不足”の問題が先立つわけではなく、会社やそこで働く従業員、顧客、そして家族のことを総合的に考慮したうえで「M&Aによる譲渡」を検討されています。
M&Aというのは「1.後継者がおらず」「2.売却を検討すれば」「3.お相手が見つかる」といった容易な内容のお話ではありません。

独自の理念、技術、歴史や文化を持つ会社にとって、最もふさわしいお相手探し・巡り合わせを幅広く提供できることが弊社fundbookの存在意義です。これは、M&A事業を営む同業他社や金融機関が増えてきている中で、弊社が持つ何よりの強みです。


――M&A仲介の社会的価値――

必ずしもM&Aを選択される経営者にとって“後継者不足”が先立つわけではないとしても、“後継者不足”の問題は、日本経済に大きな影を落としています。経済産業省によると「“後継者不足”の黒字企業の廃業を放置すれば、2025年までの累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPの喪失の可能性がある」と試算されています。

AIやIoTによる第四次産業革命といった世界情勢、少子高齢化社会と人口減少といった日本情勢を背景に、各業界は揺れ動いています。

私は日々、全国のさまざまな会社を訪問する中で、各社が持つ理念、技術、歴史や文化に触れております。規模の大小を問わず、どこの会社も「世界一」を誇れる特徴のある会社ばかりです。

激動の社会情勢の中ですが、日本の中小企業において、決して絶やしてはならないこの「世界一」のバトンを繋ぐことがM&A仲介業の使命であり、同時に社会的価値であると私は考えています。

今後の日本経済を支える架け橋になるべく、日本経済の将来に変革をもたらすべく私は全国を渡り歩いていきます。

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