インタビュー

2022年9月1日、譲渡成立

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A
  • 譲渡企業アソシアードフィナンシャル株式会社
    設立年月日
    2008年
    事業内容
    保険代理店運営
    URL
    https://www.asociad.jp/
  • 譲受企業株式会社F.L.P
    設立年月日
    2005年
    事業内容
    保険代理店運営等
    URL
    https://www.f-l-p.co.jp/

阪本勝氏は大手金融機関での勤務後、地元の奈良県で保険代理店業のアソシアードフィナンシャル株式会社を創業しました。創業の理由を「お客様目線で金融の悩みを解決したい」と話す通り、来店型保険ショップ「ほけんの扉」は、保険から住宅ローン、融資に至るまで、金融の悩みを包括的に相談できる店舗として、地域の皆様から親しみ深く頼られています。

事業は順調に成長していながらも、末永くお客様をフォローし、従業員の安定雇用を守り続ける店舗の“未来”を、経営者として考えるようになった阪本氏。そのなかで、理念や考えに互いが共感できる企業と出会います。それが、同じ保険代理店業の株式会社F.L.Pでした。2022年9月に両社のM&Aが成約し、統合後も「ほけんの扉」ブランドはそのままに、F.L.Pの店舗とともに地域に根差した活動に尽力されています。阪本氏とF.L.P代表取締役社長の須山馨氏に、成約までの経緯や今後への期待について伺いました。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

お客様目線を第一に、金融の悩みをワンストップで解決できる店舗へ

アソシアードフィナンシャル様を創業した経緯をお聞かせください。

阪本氏:私は以前、金融機関で7年間勤めていましたが、当時はなかなかお客様目線で金融商品を提案できないことに、少なからず疑問を感じていました。大きな組織ではどうしても、お客様の悩みを解決する立場より、単なる販売員という立場になってしまうのかもしれません。こうした背景から、保険だけでなく住宅ローンや融資なども包括的に相談でき、しっかりとお客様目線でコンサルティングができる場所を作りたいと考えるようになりました。そうしてアソシアードフィナンシャルを創業し、来店型保険ショップ「ほけんの扉」を開店しました。私は生まれも育ちも奈良県なのですが、創業の地に奈良県を選んだのも「自分がお世話になった地元で、金融関連の悩みを持たれている人を支援したい」「自分が嘘をつかない環境で仕事をしたい」という強い思いがあったからでした。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A
アソシアードフィナンシャル株式会社 創業者 阪本勝氏

創業以降、経営で意識してきたことをお教えください。

阪本氏:来店してくださったお客様の目線に立って悩みを解決することが何より大切なので、店頭に立つファイナンシャルプランナーの教育には特に力を注いできました。時間をかけてでも一人一人を丁寧に育て、質の高い接客を提供することが「ほけんの扉」の姿勢です。保険の相談だけでなく、住宅ローンや相続、税金など、お客様の様々な金融の悩みをファイナンシャルプランナーがワンストップで解決できる店舗づくりを意識してきました。

また、金融だけでなく、医療の悩みも相談できる店舗にしたいと考え、別会社で訪問看護ステーション・在宅医療サービスの会社、「ほっとナビ」を創業しています。「ほけんの扉」のお客様の健康・医療に関する不安にも、両社が連携して寄り添っていける体制を目指してきました。

F.L.P様の事業についても詳しくお聞かせいただけますか?

須山氏:当社も「ほけんの扉」様と同様に、お客様のご要望をじっくりと聞きながら、顕在ニーズではなく潜在的なニーズを深掘りしていくコンサルティング提案を強みとしています。

全国には数多くの保険ショップがありますが、同じ保険代理店業でも、考え方や運営スタイルは会社によってまったく異なるのが実状です。当社もお客様が気軽に足を運んでいただけるよう、相続相談や税務相談などにも無料で対応していますが、「ほけんの扉」様や当社のように、保険だけにとどまらないコンサルティング提案をしている会社はかなり稀な存在と言えます。阪本様が仰る通り、人材の育成は時間を要するものですが、一方で、口コミ評価やリピート率は高く、既存のお客様が別のお客様をご紹介してくださるケースも非常に多くあります。この強みをさらに伸ばしていこうと、日々取り組んでいるところです。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A
株式会社F.L.P 須山馨氏

「お客様の人生に寄り添う」という保険代理店の役目を果たすために

阪本様がM&Aを検討された理由をお教えください。

阪本氏:来店型保険ショップの“未来”を考える中で、M&Aを検討するようになりました。保険代理店は契約がゴールではなく、例えばその後入院したり亡くなられたりした際に、お客様ご本人やご家族の人生に寄り添ったフォローをしっかりと提供する役目を果たしていかなければなりません。お客様が永劫的に頼れる店であり続け、従業員の安定雇用も永く守られる環境をつくろうと考えると、いずれ大手企業の資本傘下に入るべき時期が来るだろうとは考えていました。

阪本様はどういったきっかけでfundbookを知ったのでしょうか?

阪本氏:私はほっとナビの子会社で、歯科医院の承継を支援する株式会社ほっとナビコンサルティングも運営しているのですが、fundbookさんとはそちらの事業の中で、3~4年ほど前から情報共有をさせていただく間柄になっていました。そして年月が経つうちに、私自身がアソシアードフィナンシャルの創業者としてM&Aを視野に入れるようになり、仲介を依頼する立場になったという流れです。ただ、fundbookさんに仲介を依頼したのは、昔からのつながりだけが理由になったわけではありません。これまでもいろんなM&A仲介会社や金融機関のM&A部門の方々とお会いしてきましたが、fundbookさんは特に行動力があって、私の思いにも寄り添っていただけると感じたからです。その印象の通り、「ほけんの扉」の将来を親身に考えていただきながら、今後の方向性と道筋を一緒に明確化してくだりました。

F.L.P様は今回初めての譲受でしたが、どういった経緯でM&Aを検討されましたか?

須山氏:当社は集客や認知度拡大に向けて、インターネットの検索結果で上位に表示される施策に力を入れています。ただ、首都圏を中心に店舗展開しているため、店舗がないエリアのお客様からお問い合わせがあった際には、当該エリアで懇意にしているほかの代理店様に紹介する形で対応せざるを得ませんでした。そのため、できれば首都圏以外の代理店様で当社と近い考えを持たれている企業があれば、ぜひ私たちと一緒になっていただきたいと以前から考えていたんです。コロナ禍以降も業績がスムーズに推移できたこともあり、2021年10月頃から本格的にM&Aを検討するようになりました。

確かなサービス品質と経営理念に強く共感した両社

両社様は、どのような企業をM&Aのお相手に探していたのでしょうか。

阪本氏:アソシアードフィナンシャルが作ってきた企業文化に理解を示していただきながら、将来のビジョンをしっかりと持たれていることが一番大事だと考えていたので、お客様への対応方針や、従業員教育などへの考えが共通している企業が見つかればと思っていました。規模や業態については、オーナー企業ではなく大手保険会社や金融機関、上場企業などを視野に入れていました。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

須山氏:当社の場合、やはり私たちと同じように、コンサルティング提案に強みにもつ企業が一番の希望でした。加えて、お客様との信頼関係が強く、地域に根差した活動もされていれば、なお嬉しいと考えていました。ただ、そんな魅力的な企業が、タイミングよくM&Aを検討しているとは限りませんから、そう簡単には見つからないだろうとも思っていました。実際、これまでも数社と面談をしてきましたが、そのたびに、希望する企業と出会う難しさを感じてきました。なので、fundbookさんからアソシアードフィナンシャル様をご紹介いただいたときは、まさに、希望していたような企業だと、驚きすら覚えましたね。

実際にアソシアードフィナンシャル様にお会いしていかがでしたか?

須山氏:初回の面談から、経営理念や接客のスタンス、従業員教育に至るまで、色々なお話をさせていただいたのですが、その全てが当社の考えととても近く、親和性が高いと感じるばかりで、ぜひこのご縁を大切にしたいと強く思いました。アソシアードフィナンシャル様は経営理念に「金融のプロとして、質の高い提案・サービスを提供し、お客さまの経済的安定を導くとともに社会経済の発展に貢献する」と掲げられている通り、丁寧なコンサルティング提案と、地域や社会の発展に向けた活動に実直に取り組まれています。そこに感銘を受けましたし、親近感も持ちました。M&Aが成約した今では、社内用のホームページのトップにF.L.Pの企業理念「お客様の想いを受けとめ、安心を提供する」と並べて、アソシアードフィナンシャル様の経営理念も掲載しているほどです。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

阪本様は須山様とお会いしてみていかがでしたか?

阪本氏:経営者として魅力的なお人柄でいらっしゃると素直に感じました。従業員の意見にしっかりと耳を傾けられている姿勢や、大きな視点で物事を捉えて判断されていることが、話の随所から伝わってきたんです。企業文化やスタンスも似ているので、お互いを尊重しながらお客様と従業員を守っていただけるのだろうと思いましたね。

また、F.L.P様は首都圏各地の有名な商業施設でも店舗を展開されています。そういった知名度も生かしながら、関西圏の「ほけんの扉」のコンサルティングサービスをより広げていただけそうだという期待も膨らみました。

信頼できる企業に託せたことで、従業員に「安心してほしい」と伝えられた

M&A成約後の阪本様のお気持ちや、従業員の皆様の反応はいかがでしたか?

阪本氏:私自身、創業時の思いを強く持って15年間歩んできたので、譲渡する寂しさは当然ありました。しかし同時に、経営者として従業員の今後を守る責任を果たせたという安堵もとても大きく感じていました。

従業員には最初に私の口から伝えたかったので、譲渡契約書に印鑑を押して投函した後すぐに、私と役員で各店舗を回って従業員一人一人と面談しました。唖然とする人や涙する人など、いろんな反応がありましたね。長く勤めてきた店舗や、自分自身の今後はどうなるのかという戸惑いと動揺があったんだと思います。ただ、F.L.P様に対する信頼や私が得られた安堵感は確かなものでした。その気持ちのまま、従業員に「安心してほしい」と直接伝えられたことは結果として良かったと思っています。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

F.L.P様の従業員の皆様は、どのような反応をされましたか?

須山氏:発表時こそ驚いた様子でしたが、以前から事業拡大の意向は折に触れて私から伝えていたので、すぐに「ほけんの扉」様を仲間として迎え入れる良い雰囲気が醸成されました。M&A成約直後から「ほけんの扉」様の接客や教育などのノウハウを学びたいといった熱い要望がたくさん寄せられているほどです。本格的な交流は体制を整えてからになりますが、近い店舗同士の交流や、オンラインミーティングによるコミュニケーションは、すでに活発化している状況です。

F.L.P様は今回初めての譲受でしたが、今のお気持ちはいかがでしょうか。

須山氏:保険業界は寡占化が進んでいて、中小規模の企業は淘汰の波に晒されている状況です。このため、当社にもM&A案件の提案は至るところからいただくのですが、M&Aの相手探しで一番重視している「経営理念」や「事業展開」といった要件が、二の次にされてしまうことは往々にしてあります。しかし今回、アソシアードフィナンシャル様と巡り合うことができたのは、fundbookさんが経営理念や事業展開に対する私たちの考えをしっかりと聞き入れてくださった結果だと思います。また、M&Aのイロハや心構えからアドバイスしていただいたことはとても心強かったですし、M&Aを進めていくなかでも細部まで気にかけて両社をサポートしてくださったので、本当に感謝しています。

地域のお客様を多方面から支えていく

阪本様は「ほけんの扉」様とF.L.P様の今後に、どういった期待を寄せていますか?

阪本氏:まずは、お客様の期待に応え、困ったときはいつでも寄り添う店舗であり続けることと、従業員の安定雇用を今後も維持していただくことが、F.L.P様への一番の希望であり、期待していることです。また、今回は子会社化ではなく統合のため、アソシアードフィナンシャルの社名はなくなりましたが、「ほけんの扉」のブランドを永続的に発展させていただき、地域密着型の成長を目指していただければ嬉しく思います。

一言に保険代理店と言っても、他社にはない優位性を高めるためには、保険事業にとどまらない取り組みや付加価値が必要です。私はこれまで、金融と医療を組み合わせて、お客様の人生に起きる様々な悩みをサポートする店舗づくりを目指してきました。今後もそういった形でサービスの幅を拡充し、地域の皆様の一生を支えられるお店として確立していただきたいと願っています。

F.L.P様の今後のビジョンをお聞かせください。

須山氏:「ほけんの扉」様のノウハウを共有しながら、お客様のご要望と潜在的ニーズを丁寧に深掘りするコンサルティング提案を引き続き強化し、地域の皆様に喜ばれるサービスや取り組みを各地に広げていきたいと考えています。「ほけんの扉」様という強力な存在が加わったことで、首都圏と関西圏の約30店舗で地域に根差したサービスが提供できるようになりました。その他の地域にも私たちと同じ方針や考えを持つ企業様がいらっしゃれば、今後も積極的に提携を呼びかけ、中期的には50店舗まで拡大していきたいと思っています。そうすることで、従業員とお客様の経済的な安定をともに果たしていきたいと考えています。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

最後にぜひ、阪本様ご自身の今後の目標や抱負をお聞かせください。

阪本氏:ほっとナビ訪問看護ステーションは現在、全国15拠点(取材時)まで拡大しています。「ほけんの扉」と同様に、今度は医療の目線で皆様の問題や悩みを解決できる会社にしていこうと、尽力しているところです。今後もほっとナビの医療サービスを全国に広く展開していき、そして従業員の働きやすい環境を構築することで、また新たな分野で地域社会に貢献していきたいと考えています。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

経営者は企業価値を最大化する努力と、“きれいな引き際”が大事

アソシアードフィナンシャル株式会社

創業者 阪本 勝氏

経営者には必ず、経営者としての幕を引くときがやってきます。そのときに一番大事なことは、経営者が利己的な考えだけで判断しないことです。全ての企業には、“企業物語”とも言うべき歴史があるはずで、その物語はお客様や従業員など、たくさんの人によって紡ぎ出されています。企業に関わる全ての人が幸せになるために、経営者は先を見据えた考えを持ち、承継に向けた入念な準備をしておかなければなりません。

そして、経営者であるうちに、企業価値を最大化する努力をし続けることも重要だと思います。やはり企業価値を高めた状態にしておかなければ、譲渡することも難しいからです。「まだいける」「自分なら立て直せる」という時期は当然あるにしても、その状態がけじめなくズルズルと長引いていれば、それも経営者の利己的な考えに偏ってしまっているのではないでしょうか。企業は多くの方々の支えによって成り立っていますから、そうした皆様を裏切らない努力と判断をして、未来につながる“きれいな引き際”にすること。そこまでが経営者の責務だと考えています。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

中小企業のM&Aは日本社会の活性化につながる

株式会社F.L.P

代表取締役社長 須山 馨氏

一社一社の企業には、それぞれの知恵や工夫、ノウハウなどがものすごく凝縮されています。M&Aは、そうした各社のリソースが合わさって、拡大・発展できる手段になるため、今後もさらなる活用の広がりが期待できるのではないかと思っています。

日本は特に中小企業が多い国と言われていますが、とりわけ中小企業に関しては、大手企業とは違ったノウハウが無限にあると実感しており、それらをもっと融合していけば、もっと広く伝搬していく力が持てるものと考えられます。マーケットの変化など様々な要因により、事業拡大や事業展開の見直しが必要になることは決して珍しくありません。中小企業こそM&Aを活用し、各社の培ってきたリソースを相乗効果で進展させることができれば、日本の社会全体をより明るく元気に活性化していけるだろうと、私は信じています。

「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

担当アドバイザー 小倉 竜馬 コメント

この度は、自社の更なる成長を目指す関西の保険事業者様と、M&Aを通じて関西進出を熱望する関東の企業様との企業提携のお手伝いをさせていただきました。

アソシアードフィナンシャル社は、大阪・奈良を中心に展開する来店型保険ショップを運営される企業様です。阪本様が創業し、自社の優秀な人材と連携して関西を中心に商圏を広げられておられました。生損保両方を扱っておられ、財務基盤も安定していたものの、自社を更にスピード感をもって成長させるため、成長戦略型M&Aをご決断されました。

F.LP.様は、関東を中心に来店型保険ショップを営む企業様です。自社のさらなるネットワーク拡大等を目的に本件を進められました。関東と関西では商圏文化が大きく異なるため、今回新規立ち上げではなくM&Aという手段を取ることで、スピード感をもった関西圏進出を検討されておられました。

本件については、双方の事業親和性の高さはもちろんのこと、何より双方の企業文化・価値観が非常に近しいことがポイントでした。同じ保険業ではありながらも、顧客第一主義を貫き現場レベルまで徹底させる、またその価値観に沿った店舗作りを行うという考え方が双方にとっての今回のM&Aの決め手になったものと存じます。

アソシアードフィナンシャル様がF.L.P様というパートナーとともに、さらに成長される未来をとても楽しみにしております。

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