インタビュー

2022年2月7日、譲渡成立

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A
  • 譲渡企業株式会社シーラソーラー(旧社名 日本太陽光発電株式会社)
    設立年月日
    2013年
    事業内容
    太陽光発電設備販売
    URL
    https://syla-solar.jp/
  • 譲受企業株式会社シーラテクノロジーズ(旧社名 株式会社シーラホールディングス)
    設立年月日
    2009年
    事業内容
    投資用不動産開発、不動産クラウドファンディングなど
    URL
    https://syla-tech.jp/

「人と環境に貢献できる仕事がしたい」。その思いから、30歳で太陽光発電業界に就職し、2013年には地元・愛知県一宮市で日本太陽光発電株式会社(現株式会社シーラソーラー)を設立した上本貴雅氏。法改正や政策の影響により、変動が激しい業界で10年にわたり堅実な経営を続けてきました。

元々はM&Aを本格的に考えていなかったという上本氏。しかし、投資用不動産開発や不動産クラウドファンディング事業などを手掛ける株式会社シーラテクノロジーズの杉本宏之会長との出会いによって「成長戦略としてのM&A」という道が大きく拓き、両社は2022年2月にM&Aの成約に至ります。

再生可能エネルギーと不動産の強みを掛け合わせ、環境を保全しながらも豊かな生活を両立できる世界を目指し、両社の協業はすでに始まっています。

上本氏と後継社長の淵脇健嗣氏、そして杉本氏の3名に、M&A成約までの経緯や今後の展望について伺いました。

※譲渡企業・譲受企業は2022年7月1日に社名を変更。本記事では変更後の社名(譲渡企業:株式会社シーラソーラー、譲受企業:株式会社シーラテクノロジーズ)で記載

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

創業から10年。常に意識してきた「堅実な経営」

(株式会社シーラソーラー 上本貴雅氏・淵脇健嗣氏インタビュー)

創業の経緯をお聞かせください。

上本氏:私は若い頃から独立願望が強く、27歳でアパレルブランドを立ち上げたのが最初の起業でした。その後、太陽光発電の業界に入ったのは30歳のころ。ちょうどクリーンエネルギーの太陽光発電に注目が集まり始めていて、私も以前から環境問題には大きな関心を寄せていました。さらに、私生活では子どもが生まれるタイミングだったんです。なので、人と環境に貢献できる仕事をしながら、しっかり稼いで家族も大事にしたいという思いで、この道に進む決意を固めました。独立を前提に太陽光発電会社で雇っていただき、4年近くの下積みを経て、2013年に日本太陽光発電を設立しました。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

株式会社シーラソーラー 上本貴雅氏

上本様はこれまでの10年間、どのようなことを意識して経営されてきましたか?

上本氏:経営指針に掲げている通り、とにかく「堅実な経営」を常に意識してきました。経費の使い方がずさんで苦労している会社も見てきたので、そういう経営はしたくないなと思っていましたから。当社を創業したときは、太陽光発電設備の設置に対して税制優遇がありました。なので、利益が出た分で融資を受けて自社の発電所を設置し、資産として保有してきました。無駄な固定費をかけず、健全なキャッシュフローと資産運用を続けるように心掛けてきたと自負しています。

地元の一宮市で起業されたのは、何か理由があったのでしょうか?

上本氏:正直なところ、最初は少し離れた場所での起業も考えました。地元だとやはり失敗できないというか、後に引けませんから。しかし、それに逃げることなく不退転の覚悟で臨もうという決心から、地元での起業を決意しました。

太陽光発電業界には、どのような課題があると感じられていますか?

上本氏:大手企業に比べ、中小・零細企業は「情報」で不利になる場面がしばしばあります。例えば、2012年7月1日にFIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)がスタートしたとき、大手企業は初日から売電を開始していました。一方、中小・零細企業は電力会社に問い合わせても、初日時点で申請の仕方すら分からないという状況。そのときは、特に情報を早く取得できないことによって、不利益を感じましたね。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

その課題は、今回M&Aを検討された理由にもつながっているのでしょうか?

上本氏:むしろ、決断の理由になったかもしれません。やはり、資本が大きくなれば、情報の取得も早くなり、ビジネスとしての主導権も握れますから。ただ、実のところ、もともとM&Aをする気はまったくなかったんです。以前から何社かのM&A仲介会社が訪問してくださっていて、お話も聞いてはいたのですが、そこまで本気になれず。しかしfundbookさんからシーラテクノロジーズさんをご紹介頂き、お話するうちに「会社を成長させる手段」としてM&Aが有効であると考えるようになり、本格的に検討するようになりました。

人柄とシナジーに惹かれ、会社のさらなる成長を確信

譲渡先に不動産事業のシーラテクノロジーズ様を選ばれた決め手をお聞かせください。

上本氏:シーラテクノロジーズさんの手掛けている事業は、当社にとって、ものすごく強みになるんです。特に太陽光発電にかかわる用地取得の面で不動産は強化したい部分でしたし、マーケティングにも長けていらっしゃいます。また、独自のクラウドファンディングやマイニング事業という強みを持っており、当社が関心を持っていた分野なので、成長に向けて事業の幅が広がると感じました。また、シーラテクノロジーズさんの方でも、今後再生可能エネルギーが必要だと感じており、その中で太陽光発電装置の付いたマンションを販売したいとのことでしたので、当社とのシナジー効果が高いと感じました。

あとはやはり、杉本会長のお人柄ですね。最初にお会いした時点で、M&Aを本格的には考えていませんでしたが、お話を重ねていくうちに「一緒に手を組めば、さらに会社が成長できる」と確信するようになりました。

杉本様とはどのようなお話をされたのでしょうか?

上本氏:私の心が最も動いたのは、杉本会長の「一緒にやっていきましょう!」という言葉でした。会社を譲渡して去るつもりはありませんでしたから、今まで通りに会社の経営に携わりながら、シーラテクノロジーズさんのリソースも活用させていただくことで、当社の事業の幅が広げられる。そう考えると、M&Aをしない理由がなかったんです。太陽光発電業界は売電のルールなど様々な制度の変更により、中小規模のミドルソーラー発電所よりも、大規模なメガソーラーの建設ニーズが高まっています。そうなると、発電所を1基造るにも、土地の取得から造成工事、パネルの仕入れなどにかかる初期費用も、今までと比べ物にならないほど高騰しています。「業界として、資金調達力が重要な経営課題となっている。しかしM&Aを実行すれば、その課題を乗り越えながら、会社をさらに成長させていける」――そんな期待を持つようになりました。

今回のM&Aは、今後の業界の動きをしっかりと見据えたうえでの決断だったのですね。

上本氏:先を見越していないと怖いですからね。これまでも3年以上先を見据えながら、慎重に経営を続けてきました。ただその中で、私自身、経営者としての限界や壁を感じる場面もありました。なので、今回のM&Aのお話が進んでいくうちに、「シーラテクノロジーズさんと組む事で、経営者としてもう一度学び直したい。自分自身ももっと成長したい」という思いも抱くようになりました。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

優秀な後継社長と共に、さらに進化したマネジメントへ

シーラテクノロジーズ様とのM&Aについて、社内の反応はいかがでしたか?

上本氏:最初に、これまで私についてきてくれた幹部の3名に話をしたら、「社長がいなくなってしまうのではないか?」と不安に思ったようでした。なので、「譲渡後に私が去るわけでもなく、むしろ会社をもっと成長させるためのM&Aだから、皆にとってプラスになるんだよ」と、真摯に伝えてきました。

M&A成約後は、シーラテクノロジーズさんから当社の後継社長として淵脇さんが来てくれましたし、私もファウンダーとして経営に携わっています。長年、太陽光発電事業に従事してきた私と、数百人規模のチームを率いてきたマネジメント経験の豊富な淵脇さんとの二人体制で経営するようになったので、以前よりもきめ細やかなマネジメントが可能になりましたね。当初は従業員も不安だったと思いますが、離職もなく、社内の雰囲気もより良くなったと感じています。

淵脇様がシーラソーラー様の後継社長に就任された経緯をお教えいただけますか?

淵脇氏:私は太陽光発電とはまったく違う畑の出身で、以前は外資系の医療機器メーカーに勤めていました。シンガポールで各国の病院に製品を届けるチームのリーダーを務めたり、日本でも800人ほどの組織のリーダーとして、業務改善や組織改革に取り組んだりと、さまざまな経験を積んできました。2019年にシーラテクノロジーズの杉本会長による不動産セミナーに伺ったご縁から、杉本会長ともお話する仲になり、「一緒に仕事をしようよ」とオファーをいただき、何度かお話を重ね考えた末に、シーラテクノロジーズへと転職しました。その頃、両社のM&Aの話も進んでいたようで、転職前からも上本さんとは2回ほどお会いしました。様々なご縁が重なって、M&Aが成約した当日からシーラソーラーに来ています。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

株式会社シーラソーラー 淵脇健嗣氏

上本様から見た淵脇様の印象はいかがですか?

上本氏:大きなチームを率いてきた人ですから、とてもエネルギッシュで行動力も抜きん出ていますね。その上、財務やマネジメントについてもとても詳しく、丁寧に会社を見てくれているので、「優秀な社長が来てくれた」と思うばかりです。太陽光発電や電力に関する知識の吸収の早さにも驚かされていますよ。通常、M&Aによるシナジー効果は短期的ではなく、長期的に見なければなりません。しかし、既に今の状況を見ても、淵脇さんのような優秀な人が当社に来てくれて、きめ細かいマネジメントがなされています。また、自分自身もファウンダーとして「今まで以上に努力しよう」と思えている。こういった環境が生まれているだけでも、既にシナジー効果が発揮されています。これは、シーラテクノロジーズさんとグループになったおかげだと思いますね。

淵脇氏:シーラソーラーに来た当初から、上本さんや従業員の皆さんが、電力業界の構造や、電力の仕組みまで一つ一つ教えてくださったんです。私は医療系の出身ですし、会社経営も経験していないので、こういったレクチャーを日々うけることで、アップデートができました。そこに、太陽光発電とは違う分野にいたからこそ得られた経験を、当社で存分に生かしていきたいと思っています。

「太陽光発電で日本一」を目標に、新たに広がる構想

今後、シーラテクノロジーズ様とどういった事業を展開される計画でしょうか?

上本氏:グループ間の新規事業として、「マイニングソーラー」の開発がすでに動き始めています。現在、暗号通貨の計算処理を行った報酬として、新規発行された暗号通貨が受け取れるマイニング投資が注目されています。シーラテクノロジーズさんもマイニングができる高性能マシンを販売していますが、マイニングマシンは高度な計算を行う分、多くの電力が必要です。そこで、その電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄って、環境にやさしい投資手法にしようとしたものがマイニングソーラーです。当社も以前から関心を持っていた分野だったので、楽しみはひとしおですね。このほか、既存事業も業容・エリアともに拡大が進んでいます。これまでの施工実績が豊富な愛知県や岐阜県を引き続き強化しつつ、徐々に範囲を広げています。また、当社は土地の取得から建設、販売、保守、さらには財務のご支援まで、お客様が求める一から十までを一貫して手掛けることが可能です。この強みを最大限に生かして、環境問題の解決にも積極的に取り組んでいきたいですね。

淵脇氏:2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、国や大手企業が大規模な施策に取り組まれています。しかし私たちはそこに参入するというよりも、シーラグループだからこそできる環境対策に力を入れるべきだと考えています。環境問題は結局のところ、一人ひとりの意識や行動につながっている問題です。なので、“個人”が太陽光発電に関われるプラットフォームやコミュニティを作っていくべきだと思いますね。例えば「太陽光発電×農業」「太陽光発電×キッチンカー」「太陽光発電×宇宙開発」など、太陽光発電をきっかけに、自分ごと化して考えられるコミュニティが創出できれば、環境改善は次のステージに進むのではないでしょうか。シーラグループはブランド力もありますし、不動産を通じて社会貢献・地域創生につながる事業に応援型投資ができるサービスも展開しています。これらのリソースを活用すれば、当社のコミュニティ構想は実現していけるはずです。私たちの構想に共感を持ってくださる企業や人々の輪を広げるためにも、発信をより強化していきたいと思っています。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

上本様と淵脇様から、今後の抱負をお聞かせください。

淵脇氏:前職で「どうすれば組織を改革できるか?」と悩んでいたときも、楽しみながら仕事をしていたからこそ、いろんな成果が出せたと思っています。なので、今一緒に働いている仲間の皆さんがしっかりと意義を持って、かつ幸せに楽しく仕事ができる雰囲気を率先して作っていきたいですね。そして、パートナー企業の皆様にも「シーラソーラーと一緒に仕事をしていて楽しいし、ワクワクする」と思っていただける企業にしていきたいと考えています。

上本氏:目指すは、「太陽光発電で日本一」です。実は杉本会長が「日本一になるぞ!」と私に掛けてくださった言葉で、それが今の私の目標になっているんです。たとえ心の内に大きな目標があっても、自信がなければなかなか言葉にできませんし、以前の私もそうでした。それをまるで、杉本会長が代わりに言ってくださったように思いましたね。言ったからにはまい進するしかありません。私としても、自身がもっと努力できる環境に身を置きたいと考えていましたので、杉本会長からも色々と学びながら、淵脇さんと力を合わせて会社を発展させていきたいと思っています。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

「堅実な経営」に対して生まれた信頼感

(株式会社シーラテクノロジーズ 杉本宏之氏インタビュー)

シーラテクノロジーズ様は、もともと太陽光発電の会社をグループに迎える意向をお持ちだったのでしょうか?

杉本氏:はい。「なぜ太陽光発電会社と?」と言う人もいますが、実は不動産と太陽光発電は非常に親和性の高い事業同士なんです。まず、当社が販売する投資用マンションと太陽光発電設備は、購入するお客様にローンを組む金融機関がほぼ共通しています。そして太陽光発電は、売電収入でローンを返済しながら差額で利益を出す利回り商品という点で、賃貸収入で利益を出す投資用マンションと共通しています。さらに、節税効果は当社の取り扱うワンルームマンションより大きいという特徴もあります。

このほか、2018年には第5次エネルギー基本計画が策定され、再生可能エネルギーの割合を増加させる目標が立てられました。2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を全体の36%程度にするという目標が設定されています。ですから、太陽光発電は、マーケットがさらに拡大していくと見込まれています。そこで、当社では3年前から太陽光発電の会社と一緒に事業を展開したいと考えていて、M&Aに向けて具体的に動いていました。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

株式会社シーラテクノロジーズ 杉本宏之氏

太陽光発電会社数社とお会いした結果、シーラソーラー様とのM&Aが成約しました。シーラソーラー様にどういった魅力や強みを感じられましたか?

杉本氏:一口にM&Aと言っても、実施する企業はそれぞれにいろんな考えを持っているんですよね。実際、経営を諦めるという理由で譲渡する経営者もいれば、「資本力のある会社と共にシナジー効果を高め、もっと社員や株主、お客様のために会社を良くしたい」と思い譲渡する経営者もいます。シーラソーラーさんは後者の考えを持たれていました。それに、太陽光発電設備の販売をしながら、自社でもソーラーパネルを保有し売電収入で利益を出されているので、当社のスタイルと似ていると感じたんです。当社もビルやマンションを多数保有して、家賃収入で利益を確保していますし、他にも数多くのアセットを持っています。シーラソーラーさんは、約90基分の発電設備を開発できる土地を押さえているなど、堅調なビジネスを展開されていて、信頼できる会社さんだなと思いました。

上本様に対しては、どのような印象を持たれましたか?

杉本氏:上本さんは一見飄々としていて、やるべきポイントをしっかり押さえていらっしゃる経営者だなという印象を持ちました。ですが、ご本人は「会社をさらに成長させるには、自分の力だけでは限界を感じるから、何かしらの力を借りる必要がある」と何度もおっしゃっていたんです。加えて、「何社かお会いしたなかで、シーラテクノロジーズが一番将来の事業シナジーがある」。そう上本さんがおっしゃっているとfundbookのアドバイザーから伝え聞いていました。それに私と年代も近いので、親しみ深く一緒に経営をしていけそうだと。そういったこともあり、上本さんと力を合わせていきたいと思ったんです。当社としても、上本さんには、今後も一緒に会社を大きくするという意志のもと、経営に協力していただきたいとお願いしました。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

シーラソーラーで実施した“会社が成長していくための投資”

杉本様からの「太陽光発電で日本一になるぞ!」という言葉が、今の上本様の目標になっていると伺いました。その言葉を掛けられた根底には、どのような思いがありましたか?

杉本氏:「どうせやるんだったら、日本一を目指そう!」という思いからです。最初、上本さんは「まずは売り上げ20億円を目指して…」とおっしゃっていたんですが、私は「20億円を売り上げるにしても、50億円を目指して20億円の売り上げは確保できるかもしれないけど、20億円を目指して20億円を達成するのはかなり難しい」と返したんです。個人のお客様に販売する太陽光発電設備の市場では、一緒に頑張れば日本一だって目指せるはずだと、私は思っています。

日本一を目指す第一歩として、M&A成約後にシーラソーラー様でどういった改革を行いましたか?

杉本氏:まずは淵脇さんをはじめ、当社から数人の幹部人材を配置し、私も取締役に就任しました。シーラソーラーさんとしては会社を進化させるためのM&Aでしたし、当社としても本気で実施したM&Aだったからこそ、私たちも積極的に経営に参画させていただいています。会社をもっと良くして、ともに大きな目標を目指していくためには、今以上にシステム面の効率化や管理体制の整備をしなければいけません。販売・営業面においても、メガソーラーの開発など、着手していかなければいけないことはたくさんあります。最初は大変な思いもしましたが、そのおかげで会社としてやりたかった方向に進めています。今は確実に会社が進化していると実感していますね。上本さんが作り上げてきた土台に、私たちのテクノロジーや人材、資金が加わって、従来の倍以上の開発ができるようになりました。

シーラソーラー様の従業員の皆様は、会社の進化や改革についてどのような反応を示されましたか?

杉本氏:当然、最初は不安な気持ちが大きかったと思います。M&A成約後、「まず、何から変えていこうか?」とお話をさせていただきながら、従業員の皆さんにヒアリングを重ねていきました。そのなかで、「皆さんの頑張りをもっと評価する仕組みを作らなければいけない」と思ったんです。従業員の皆さんは、シーラソーラーで働く理由として、「地元で働きやすい」「十分な給料をもらっている」とおっしゃっていました。でも、会社がもっと成長して、売り上げや利益も上がれば、皆さんの待遇や給料ももっと向上するという意識を持っていただきたかった。なので、築十数年のトイレを数百万円かけて新しくしたんです。これは、“会社が成長していくための投資”であることを、明確に示した形です。トイレの環境改善は一つの小さな変化だとしても、自分たちの頑張りが待遇の改善に直結するんだという意識は高めていただけたと自負しています。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

シーラグループだからこそできる、環境問題解決に向けた挑戦と貢献

シーラソーラー様とどういった協業をしていかれるか、展望をお聞かせください。

杉本氏: M&A成約直後から、早々に太陽光マイニング(マイニングソーラー)の共同開発を始めました。多くの電力を消費するマイニングマシンは、環境への影響が懸念されています。そこで、電力には太陽光発電やバイオマス発電を使用し、さらに地下水クーラー(気化の原理を用いた冷却の仕組み)も搭載して、再生可能エネルギー100%のマイニングに取り組んでいます。太陽光マイニングの開発は順調に進んでいるので、近々当社のクラウドファンディングサービス「利回りくん」にラインアップしていく計画です。

このほか、太陽光発電所の販売も、当社の営業担当が協力する体制を構築しています。本格連携が始まってからわずか4カ月で、当社側でも4基の発電所を販売したほど、グループ間の協業はどんどん進んでいます。

シーラテクノロジーズ様は、シーラソーラー様と同じく“環境”に密接した事業をされています。今後、グループ全体で意識されることはありますか?

杉本氏:マンション建設は、コンクリートに使用するセメントの製造で大量のCO2が排出されているほか、石油由来の建築資材も多いため、特に環境負荷の高い分野と言えます。当社は以前から、木造資材を活用して鉄筋やコンクリートの使用量を減らし、環境負荷を軽減しながら高い耐久性も有するマンションの建設に注力してきました。そこに、シーラソーラーさんの太陽光発電も応用し始めています。マンション内で使用する電力を再生可能エネルギーで賄う「ゼッチ・マンション」として、私たちの環境配慮型マンションの形は大きく進化しているところです。

通常のマンションに比べて、環境配慮型は大幅にコストが増えます。そのために、購入するお客様の投資効率が悪くなる可能性がある。ですが、“環境”に密接した事業を展開する企業として、これは必要不可欠な挑戦ですし、シーラグループだからこそできる取り組みだと考えています。お客様、地域、社会、環境との対話を重ねながら最良の形を追求し、社会から求められる商品・事業を創出するグループであり続けたいと考えています。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

先々の不安払拭ではなく、成長を目指すためにM&Aは必要とされていく

株式会社シーラソーラー(旧社名 日本太陽光発電株式会社)
ファウンダー 上本 貴雅氏

私は創業した当初から、後継社長となる人材の育成を目標に据えて、社長を続けてきました。「承継する側の立場を考えると、自分が限界まで踏ん張って、最後の最後で突然全てのバトンを渡してはいけない――」。これは、会社の後継者候補として家業に従事する同世代の仲間から話を聞くなかで、常に考えていました。早すぎると思われるかもしれませんが、50歳を過ぎて次の社長を育てられずにいる未来を一番心配していたのです。

今、私が42歳で、譲受企業から来てくれた淵脇社長は36歳(取材時)。世の中を見渡しても、20代の若いリーダーが引っ張って活躍している組織や企業はたくさんあります。もちろん、必ずしも全ての企業で若さや勢いだけが必要というわけではありません。しかし、移り変わりの激しい業界に生きる当社にとって、「リスクを取らないリスク」を敏感に察知しながら、会社を率いてくれる若いパワーはまさに求めている存在でした。我々がそうであったように、M&Aは「この先どうするの?」という不安を解消するための手段ではなく、会社の成長をしっかりと目指していくために、今後ますます社会から必要とされていくのではないかと思っています。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

「会社をもっと良くしたい」と、志をともにする企業と良い結果を出す

株式会社シーラテクノロジーズ(旧社名 株式会社シーラホールディングス)
代表取締役会長兼グループCEO 杉本 宏之氏

これから縮小すると想定される日本のマーケットのなかで、M&Aはもっと当たり前に活用されていかなければならない手法だと私は思います。なぜなら、意地を張って無理に1社で事業を続けた結果、産業自体が途絶えてしまう可能性もあるからです。そうなると、経営者だけでなく、社員やお客様にとっても悲しいことにしかなりません。企業同士が一緒になれば、単独では足りなかったリソースを確保でき、マーケティングも強化していける。M&Aによって今よりもブラッシュアップでき、どんどん次のステージへ行けるようになれば、社員やお客様、そして社会にとっても喜ばしいことです。ファッション通販大手の「ZOZOTOWN」がM&Aでソフトバンクグループの傘下に入ったとき、起業家である私たちは大きなインパクトを受けました。あれだけの規模の企業でも、「絶対にもっと会社を成長させてくれるはず」という意思と、譲受企業に対する強い信頼があれば、M&Aを選択するんだと。結果的に、売り上げも利益も時価総額も拡大していますから、多くの人の幸せにつながった選択をされたと感じています。これまでM&Aは、「譲渡するのは逃げだ」とか「買う側と買われる側」といった論点が多く見受けられましたが、もうそこからは脱却すべきです。私たちも「お迎えする、仲間になる」という気持ちで真剣にM&Aと向き合っています。「この会社をもっと良くしたい」という志をともにする企業と一緒に、私たちも良い結果を出していきたいですね。

「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

担当アドバイザー 馬場 智大 コメント

今回は、成長戦略を模索している東海エリアに根付いた太陽光発電システムインテグレーターと、首都圏の不動産デベロッパーの企業提携のお手伝いをさせて頂きました。

太陽光発電事業は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)により、2012年より再生可能エネルギーの全量買取がスタートし10年が経過する業界です。2017年の改正FIT法の施行や2022年度からはFIP制度の導入など、国の政策に影響を受けやすい業界であり、特に投資用商品として開発される低圧の太陽光発電所開発事業会社(10kW以上50kW未満の発電所)においては、全量買取による新規のFIT制度認定が厳しくなったことに伴い、転換期を迎えておりました。シーラソーラー様においても同様で、主業としていた低圧の太陽光発電所開発事業から高圧発電所、特別高圧発電所といった大型の発電所開発への転換に伴う資金需要、FIP制度へ対応した新しいサービスの転換といった課題を抱えていました。今回のシーラテクノロジーズ様との提携により、自社単独では解決が困難であった課題に対し、一緒に向き合い新しいビジネスチャンスへと変えてくれる、共に成長できるパートナーを選んでいただけたのではないかと思っております。

今後シーラグループ各社様との連携により、ご両社からどのような新しいサービスが生み出されていくのか非常に楽しみにしております。

私たちfundbookは今後も、fundbookに任せてよかったと仰っていただけるような満足度の高いM&A機会を創出していきます。

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