M&Aならfundbook

fundbookの3つの特徴

※お客様との合意により別途、組織再編手続き等の費用が発生する場合があります。※お客様との合意により中間金が発生する契約形態を選択する場合があります。

中小企業のオーナー様、経営者様

こんなお悩みはありませんか?

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  • 大手企業の傘下で事業を成長させたい
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  • 資金を得て次の事業に挑戦したい
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  • 自社の技術やサービスを残したい

fundbookのM&Aで解決できます

fundbookが選ばれる理由

  1. 相談・検討がしやすい完全成功報酬制

    他のM&A仲介会社では数百万円以上の着手金や中間金がかかることもありますが、fundbookでは、M&Aが成約するまで一切の費用を頂きません。

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  2. M&A支援実績の豊富なアドバイザーがフルサポート

    fundbookには100名以上のM&Aアドバイザーが在籍しています。様々な業種で支援実績のあるアドバイザーが、お客様に寄り添った誠実なサポートをいたします。

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  3. お相手先とのマッチング力

    日本全国約25,000社の買手候補企業ネットワークをもとに、あらゆる可能性を追求したマッチングを行うため、より多くの候補先から最適なお相手を選択できます。

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    fundbook独自の全方位型マッチングにより、多数の買手候補企業へアプローチが可能なため、市場原理が働き譲渡価額が適正化されます。

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完全成功報酬制のメリット

fundbookはM&Aが成約するまで一切の費用が発生しない「完全成功報酬制」です。
多くのM&A仲介会社で設定されている「着手金」「中間金」「月額報酬」はございませんので、
お気軽にご相談、ご検討いただけます。

  1. メリット01

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    「着手金」「中間金」「月額報酬」が設定されているM&A仲介会社では、M&Aが成約しなかったとしても数百万から数千万円の費用を支払う場合があります。
    fundbookは完全成功報酬制を採用しているため、M&Aが成約しなかった場合は一切の費用を頂きません。

  2. メリット02

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    fundbookは譲渡企業様、譲受企業様共に完全成功報酬制となっております。
    そのため譲受企業様にとっても着手金や中間金のハードルがなく、より多くの譲受企業様にご利用いただけるため、譲渡企業様は幅広い買手候補とのマッチングが可能になります。

  3. メリット03

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    現時点ではM&Aを検討していなくても、経営戦略としてM&Aに関する情報を収集しておくことは非常に重要です。
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M&A仲介会社では「着手金」「中間金」「成功報酬」といった料金体系があります。
fundbookはM&Aが成約するまで一切の費用が発生しない完全成功報酬制を採用しています。
M&A仲介会社によって着手金・中間金の有無の差があるので、しっかりと確認されることをおすすめします。

M&Aの流れ

OUR CASES

成約実績

  • 後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    インタビュー

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    譲渡:株式会社MASHU

    譲受:BIQREAホールディングス株式会社

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室
    • 譲渡企業株式会社MASHU
      設立年月日
      1989年
      事業内容
      美容室経営
      URL
      https://mashu.jp/
    • 譲受企業BIQREAホールディングス株式会社
      設立年月日
      2021年
      事業内容
      美容室等経営
      URL
      http://biqrea.com/

    1988年に東大阪市で1号店を開店し、現在は10店舗の美容室を展開する株式会社MASHU。創業者である増成進氏の人財育成手腕は業界でも一目置かれ、大阪を拠点としながらも、今や全国的に有名な美容室となっています。

    60歳で社長を引退し、MASHUに在籍するスタイリストの奥裕介氏にMASHUを引き継ぐ決断をした増成氏は、数年前から社長交代に向けたプランを着々と進めていく一方で、株式の承継による奥氏や従業員の負担を懸念していました。その懸念を解消する手段として、増成氏はM&Aの本格的な検討を開始。美容室等を展開するグループのBIQREAホールディングス株式会社とめぐり逢い、2023年に資本提携に至りました。新社長には予定通り奥氏が就任し、MASHUは発展と進化を続けています。一方で、BIQREAホールディングスグループで美容室運営を行うフレイムス株式会社やリタ株式会社も、業界内でも有名なMASHUと手を組めたことで喜びと期待にあふれています。

    増成氏、奥氏、フレイムス株式会社代表取締役の舟津隆一氏と、BIQREAホールディングスの親会社であるニューホライズンキャピタル株式会社の漁野有紀氏に、M&A成約までのエピソードや今後の展望について伺いました。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    「日本一になる」の心意気で創り上げた、「人財育成」を大切にする美容室

    27歳で独立した増成様。MASHU様の創業の経緯をお教えください。

    増成氏:30年前は、特に男性の美容師は独立することが当たり前という時代で、私も独立自体を目標としていたわけではなく、美容師人生の通過点の一つとして独立をしました。27歳と言っても、美容学校の同期のほとんどがその頃に独立していたので、特別若いわけでもなかったんです。

    独立した当時、増成様にはどのような思いがありましたか?

    増成氏:日本一になろうと思っていました。何をもって日本一かというと分かりませんが、「どうせやるんやったら、何らかの日本一になろう」と。漠然としているし、何の根拠もないし、経営すら分からない状態でしたが、そういう心意気だけは携えて、東大阪市の1号店から始めました。

    ただ、店舗の運営は最初、なかなかうまくいきませんでした。もともと美容室だったところに居抜きで入れたのですが、ビルの2階で窓もなく、暗い階段を上がらないといけない場所だったんです。それに、前の美容室が閉店してから半年も経っていましたし、私が勤めていた美容室から顧客を連れて行かないという約束で独立していましたから、開店からしばらくはまったくお客様が来ない日が続きました。勤めていた頃は店長をしていましたし、お客様も多く付いてくださっていたので、独立後は潤った生活になると夢見ていましたが、実際はかなり苦難が多かったですね。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室
    株式会社MASHU 増成進氏

    どのようなお取り組みで、お客様が来店してくれるようになったのですか?

    増成氏:お客様が来たときにお渡しするノベルティとして、シャンプーとリンスのミニボトルセットを用意していたのですが、一向にお客様が来ないので、「これはもう、街で配るしかない」と考えました。街頭で配布したり、近所の家々を訪問してお渡ししたりと、言わば「ローラー作戦」でお店を知ってもらうように努めました。そうしているうちに、徐々にお客様が来てくださるようになったんです。

    今や店舗数は拡大し、全国的にも有名な美容室となっています。奥様の思う現在のMASHU様の強みをお聞かせいただけますか?

    奥氏:MASHUの強みは、増成会長にあると強く感じています。当社には“おもろ”という考え方があるのですが、これは「また会いたくなる人」という人間性を意味していて、接客をはじめとしたあらゆる面で増成会長がずっと大事にしてこられました。「MASHUは人財育成業」と掲げる通り、商売よりも人を育てることに重きを置くインナーブランディングに力を入れており、そこに惹かれて集まってきた人たちが「人財」として蓄積されています。お客様だけでなく、スタッフも大事にしているからこそ、お互いがまた会いたくなるような接客や人間性が形成されているんです。人生観、職業観、社会観など、増成会長が作り上げてこられた軸をさらに強化しながら人財を育成しようとする考え方が、まず一つのMASHUの強みだと思っています。

    もう一つの強みはやはり、技術面です。美容室にはカット、カラー、ストレート、パーマなど、メニューがたくさんありますが、一つ一つにスペシャリストを置いて、外部講師も呼びながら非常に速いスピードで技術をブラッシュアップしています。それと同時に、技術やノウハウを反映した自社商品の開発も手掛け、スタッフのやりがいやブランディングにつながっていることも、MASHU独自の特長になっています。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室
    株式会社MASHU 奥裕介氏

    優秀な従業員へ社長を引き継ぎ、M&Aでさらなる飛躍を目指す

    増成様はMASHU様の承継や後継者について、どのような考えをお持ちでしたか?

    増成氏:美容業界は今までのノウハウが通用しづらく、新陳代謝が激しい世界です。今はBIQREAホールディングスの舟津さんのような40代が一番力を発揮できる年代になりますし、私はインスタグラムをやっていませんが、奥社長や従業員らは集客にもSNSを駆使しています。こうした時代の変化を受けて、私は60歳になったら社長を降りようと考えていました。

    後継者については、自分の娘に継がせる方法も考えられますが、私が60歳のときに娘はまだ23歳。これだけの組織を率いていかなければならないことを考えると、一番能力がある彼(奥氏)に引き継いでもらいたいと思ったんです。

    奥様を次期社長に選ばれた決め手をお聞かせください。

    増成氏:仕事に対して真摯であること。そして、仕事をすごく楽しんでいることが最大の理由です。仕事が楽しいと言える人は自分自身で改善できますし、できないこともできるように進化していくでしょうから。美容師の仕事も、困難は結構多いものです。でも、奥社長は仕事を楽しんでいるからこそ、どんなトラブルがあっても矢面に立てますし、それゆえに解決もしやすいんです。なので、何年も前から「奥裕介が次期社長になる」と決めていましたし、2020年には従業員に向けても発表していました。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    社長は奥様に引き継ぎつつ、BIQREAホールディングス様とのM&Aも行うことになりました。その経緯をお教えいただけますか?

    増成氏:最初のプランでは、今から3年後あたりに奥社長を中心とした会社を設立して、そこに私の株式を譲渡しようと考えていました。奥社長に「自分なりのまったく新しいやり方でやって欲しい」と言っていても、やはり私が株を保有したままだと、経営に口出しをしてしまうかもしれませんから。今までもいろんな承継事例を見てきましたが、社長交代をしても前社長が後継者に口出ししてしまうパターンは多いと思います。ですが私は、「奥社長には自分流でやらせた方が絶対に良い」という確信があったので、自分が口出しをしないためにも、株式を渡していく計画を立てていました。ただ、そうなった場合、私の株式を買い取るための負担を、奥社長たちにかけてしまうことが懸念でもありました。

    そのときにfundbookさんから、M&Aの手段を提案していただいたんです。M&Aをすれば株式の承継が奥社長たちの負担にならずに済みますし、事業面でも新たな仲間もできて広がりが見込めます。それに、何と言っても奥社長や幹部陣が「BIQREAホールディングスさんと一緒にやりたい」と言ったことは一番の決定打になりましたね。

    舟津様はM&Aのお相手としてMASHU様の名前を知ったときに、どう思われましたか?

    舟津氏:「あのMASHUさんがM&Aを考えられているんだ!」と、すごく驚きました。先ほど増成さんが日本一を目指していたと仰っていましたが、私がまだ半人前だった20年以上前から、MASHUさんは関東でもとても有名で、本当に日本一だと思うほど、当時から圧倒的なブランド力のある会社でした。いろんな業界誌に載っていましたし、増成さんご自身も経営者としての影響力が大きく、「教育のMASHU」という印象がとても強かったんです。私たちの世代からすると魅力の多い憧れの会社で、今回のM&Aの話になる前からも一度お会いしたいと思っていたので、一緒のグループになれてよかったと思うばかりです。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室
    BIQREAホールディングス株式会社 舟津隆一氏

    BIQREAホールディングス様に迎え入れる企業を探すうえで、ニューホライズンキャピタル様が一番大事にしたことは何でしたか?

    漁野氏:やはり、理念が共通していることをとても重視しました。MASHUさんと増成会長の知名度は非常に高く、お客様との関係をしっかり築かれていることはもちろんですが、加えて、制度や取り組みからも人を大事にされている姿勢がものすごく伝わってきたことも大きなポイントとなりました。例えば、企業主導型の保育所を運営されていることも、その表れの一つです。従業員が永く働ける環境を目指したことがきっかけで開設されたそうですし、今では地域の皆様からも親しまれ、広く利用される保育所となっていることに、当社としても深く感銘を受けました。

    フレイムス社とリタ社は以前から、業務委託型ではなく、自社でスタイリストを採用して育成していく雇用形態をとっており、「美容師が一生安心して働ける会社を作ろう」という両社共通の思いのもと、BIQREAホールディングスとして一緒になって事業を拡大してきました。MASHUさんも「〜Life with MASHU〜 『MASHUと共に人生を』」を経営理念に掲げているように、お客様や従業員の一生に寄り添い続ける会社にしたいという増成会長の思いは、まさにBIQREAホールディングスと共通しています。それが、「一緒にやっていこう」と全員が思った一番の要因になったのだと思います。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室
    ニューホライズンキャピタル株式会社 漁野有紀氏

    グループ間で連携を深め、互いに学び合いながら成長していく

    増成様と舟津様が最初に面談でお会いした際の、お互いの印象をお聞かせください。

    舟津氏:私はもう印象どころか、憧れの目で増成さんを見てきたので、お会いする前からとにかく緊張していました。初めてお会いしたときは緊張のあまりどんどん話が脱線してしまったことを今でも覚えています。

    増成氏:その様子を見て、誠実で裏表がない人だと、良い印象を受けました。舟津さんも、一緒にお会いしたリタ代表の高橋さんも人柄が良くて、フレイムスさんもリタさんもすごく素敵な会社に育っているので、とても興味が湧きました。奥社長や幹部陣も、BIQREAホールディングスの皆さんをちゃんと見たうえで、M&Aに納得したんだと思います。

    舟津氏:そう言っていただけてすごく嬉しいです。フレイムスとリタは埼玉県を中心に店舗展開しているので、グループになりたいと言っても、関西随一のMASHUさんにどう思われるのかと、少し心配もしていました。しかし今、こうして受け入れてくださっています。グループ内で上や下はないにしても、お互いに影響し合いながら、MASHUさんから色々と勉強させていただきたいと思いました。また、奥社長も知れば知るほど並外れた知識や技術をお持ちだと、本当に驚いています。

    漁野様は増成様にどのような印象を持ちましたか?

    漁野氏:最初の面談で、「こういうことがしたい」と仰る内容の端々に増成会長の従業員の皆様を思う気持ちが垣間見えて、「増成会長だからこそ、こんな素晴らしい会社になったんだな」と、強く感じました。

    グループに参画していただいた後、幹部の皆さんとお会いしたり、一顧客として美容室にお邪魔したりするようになってからも、“おもろ”の価値観が従業員の皆様にしっかりと浸透していると実感するばかりです。ここまで組織文化が浸透している会社はそうそうありません。これは増成会長が築かれてきたMASHUさんの大きな強みの一つだと思いますし、この文化を大事にしていきたいと強く思いました。

    フレイムス様はグループに参画して約2年。舟津様の感じるグループのメリットをお教えいただけますか?

    舟津氏:フレイムスは2021年にニューホライズンキャピタルさんからの投資を受け、その際に設立されたBIQREAホールディングスの一員となりました。働いている皆が「グループになってよかった」と思えれば、きっとそれを仲間にどんどん伝えていくはずです。約2年が経ち、フレイムスや周辺では、M&Aは良い選択だったというイメージがかなり広がっています。

    個人経営の美容室だと、従業員の美容師がどれだけ頑張っても経営者のご子息が後を継ぎ、結局その中で働いていくしかないというケースも少なくありません。ですが、BIQREAホールディングスのようなファンドを通じたグループであれば、頑張った皆が社長になれるチャンスを得やすくなります。また、チャンスだけでなく、働く人の安心感が増すこともグループのメリットだと思います。例えば、どこかの地域で災害が発生して店舗が営業できなくなったとしても、グループで連携すれば復旧までの間、従業員はほかの地域で働くことができる。東日本大震災のときも、全国にネットワークがあるサロンはその強みを発揮したと思うので、BIQREAグループも各社間の連携をますます深めていきたいですね。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    MASHU様はBIQREAホールディングス様に参画してから、何か新たな気づきや変化などはありましたか?

    奥氏:当社は「課題」を「進化ポイント」と言っているのですが、進化ポイントに対してフレイムスさんやリタさんからアドバイスをいただくことが多々ありますね。

    増成氏:舟津さんたちのやり方からはたくさんの学びを得られます。当社は人財に困らないほど応募が来ていたのは確かですが、「人財育成」と言いつつも、やはりしんどいと思った人は辞めてしまうので、150人規模に達してからは特段、拡大も縮小もしていません。しかし、フレイムスさんは絶えず規模が拡大しています。その理由を考えてみたのですが、舟津さんの話を聞いている感じからすると、良い意味での“緩さ”があるんですよね。それはたぶん、器の広さだと思うんです。結局、社長の器以上に会社は大きくなりませんから。

    奥氏:舟津さんは上の立場であっても物腰柔らかで、50店舗以上を展開する会社の社長がその姿勢でいられる理由は何だろうと、ものすごく勉強になりますし、舟津さんやリタの高橋さんからは本当にたくさんのヒントをいただいています。グループになってから、集客や店舗展開、人への接し方など、私も発想が今までにないほど広がった感覚があります。

    舟津さんと高橋さんのお二人は、一緒にいるとよく議論を交わされていて、でも後には良いところで落ち着いている様子を見ていると、そうやって遠慮なく意見を言い合える関係性を構築されていることもすごく面白いなと思います。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    新たなステージに立ち、MASHUらしい冒険を続けていく

    スタイリストと社長の双方の職務でますますご多忙な奥様ですが、ご自身の今後の目標をぜひお聞かせください。

    奥氏:もちろん今、プレッシャーはものすごく感じていますが、私は「人生、経験や」という考えを常に心に刻んでいます。簡単な方より難しい方を選んでいきたいと思うからこそ、独立よりも難しい道になるであろうMASHUを引き継ぐ道を選びましたし、今回のBIQREAホールディングスさんとのM&Aについても、最初は不安が大きかったですが、話を聞くほどに一緒にいろんな取り組みができて面白そうだと思い、この道を選ぼうと決めました。

    私の今の抱負は、まずMASHUとして“おもろ”の人財を育成していくことです。「人に貢献できる“おもろ”な人が増えていけば、人の幸せも広がっていき、やがて世界平和という大きなテーマにもつながっていくはず」。これは以前、増成会長が仰っていたことで、私も強く共感しています。なので、自分がMASHUにいる間にもっと“おもろ”の人財を増やしていきたいのです。そしてもう一つ、抱負というよりはビジョンになりますが、BIQREAホールディングスさんを通じて、もうすでに様々な成長の可能性が広がりつつあるので、これからグループの皆さんとともに、いろんなチャレンジをし続けていきたいと思っています。

    増成氏:「難しい方を選びたい」というのはまさに、私も小さい頃からそうだったなと思います。難しいことも楽しみながら何とかしていこうという人は滅多にいませんから。やっぱりそういうところが、社長になってもらった決め手だったんです。

    BIQREAホールディングス様のグループとしての今後の取り組みや展望についてのお考えをお聞かせください。

    舟津氏:先ほど、グループのメリットをお話したように、規模が大きくなればいろんな良いことが起こります。災害などのリスク対策以外にも、例えばMASHUさんの作っている商材をフレイムスやリタでも取り扱うなど、できることはまだまだたくさんあるので、皆で利益を生んでいけるようになっていきたいですね。

    現在のBIQREAグループは、美容室、アイラッシュサロンなど、すでに幅広いジャンルが揃ってきていますが、今後また新たに優れたサロンが加わっていただけると嬉しいですし、そうなればなおいっそう面白くなるのではないかと思います。実際、増成さんがいらっしゃるという理由で、BIQREAホールディングスに興味を持ってくださるサロンもあります。様々な会社と連携していくためのベースはもうできあがっていると思うので、これからの5年後、10年後がとても楽しみです。

    ニューホライズンキャピタル様は、今後のBIQREAホールディングス様の成長をどのように考えていらっしゃいますか?

    漁野氏:現時点でもBIQREAホールディングスは、国内有数のサロン事業を手掛ける規模のグループになっていますし、今後もさらに拡大させていきたいと思いますが、各社が大事にしてきた「美容師が一生安心して働ける会社」「お客様や従業員の一生に寄り添う」という軸は、今後も変わらず持ち続けていたいですね。むしろ、その軸をいっそう強化しながら、さらなる成長を目指したいです。

    グループが発展するうえで重要なのは、各社それぞれの持つやり方や考え方を共有し、互いに刺激し合うなかで、事業のアイデアや様々なシナジーが自然発生的に創出されること。そして、グループとしてのビジョンもしっかりと持っておくことです。BIQREAホールディングスには素晴らしい会社が集まっていますから、各社間や経営者同士でダイナミズムを生み出せる良い環境が構築できるよう、引き続き私たちも応援していきたいと思っています。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    最後に、増成様が今後のMASHU様やBIQREAホールディングス様に期待することをお聞かせください。

    増成氏:グループになるにあたって、BIQREAホールディングスさんとニューホライズンキャピタルさんには「(MASHUに)冒険をさせてあげたい」ということをお願いしていました。今後のMASHUは、私の時代とはやり方がまったく変わると思うんです。3年前に社長交代の発表をしてから、すでにMASHUは奥社長のビジョンで経営するようになっています。そのビジョンは私からすると想像できないことがたくさんありますが、それを「矛盾だ」と思うのではなく、「これは新しいな!」と思うことが大切です。今までのMASHUでは、美容室の仕事は「デザインを作る」が大部分でしたが、今は「問題解決業」の要素が大きく加わっています。その変化により、ある商品がものすごく売れたり、奥社長の初回指名料が10万円を超えても予約が常に埋まっている状態だったりと、今までの美容業界では考えられなかったことが起きています。私からすると「これは失敗するんじゃないか」と心配になることもたくさんありますが、それすらもやらせてあげたいんです。

    漁野氏:ニューホライズンキャピタルのフィロソフィーの1つに「常に挑戦と変化を肯定する」というものがあります。なので、冒険や挑戦は大歓迎です。規模のあるグループだからこそ、挑戦するうえでのリスクも軽減できますし、成功すればより大きなムーブメントになっていきます。今後もぜひ、MASHUさんらしい冒険を続けていただければと思います。

    増成氏:それを聞いて安心しました。奥社長によってまた新たなステージへ進み、私の頭の中では考えられなかったようないろんな新しいことが実現できると確信しているので、あらゆる冒険や経験をさせてほしいと願っています。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    成功事例を作って、M&Aのネガティブなイメージを払しょくしたい

    株式会社MASHU会長 兼 BIQREAホールディングス株式会社顧問
    増成 進氏

    美容業界においても過去には、経営不振の会社を大手グループが譲受したケースや、関西でもM&A後に結果が伴わず、従業員が半減した美容室があったのも事実なので、「譲渡する=会社がダメになった」というイメージを持たれていたことは確かです。そういうネガティブなイメージからか、今でも「MASHUがM&Aをしたということは、今の美容業界は大変なんだ」と捉えている人もいます。過去からのネガティブな先入観を払しょくして「M&Aは素晴らしい手段になるんだ」と認識してもらえるよう、私たちも成功事例を作って、良いイメージを構築していく一助とならなければいけないと痛切に感じているところです。

    誰かに会社を引き継ぐとき、自分の持っている株式をどうするのか、これが大きな厄介ごとになりますが、株式はお墓まで持って行けませんから、いずれ誰かに渡すことになります。自分の身内に渡すのならまだしも、そうでなければなおのことネックになるでしょう。その点でも、今回のようなM&Aの形はとても良いと思いましたし、私も経営権がなくなる不安は完全に解消しています。ポジティブなM&Aがあることを、美容業界をはじめ世の中に広く伝わってほしいと願っています。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    「やってよかった」と思えるM&A案件が今後さらに増えていく

    株式会社フレイムス代表取締役 兼 BIQREAホールディングス株式会社代表取締役
    舟津 隆一氏

    私が創業したフレイムスは、譲渡をした立場でもあります。今でも時折「舟津さんは会社を売ったの?」と聞かれることがありますが、私ははっきりと「売ったわけではないし、“バイアウト”と言うけど、私はまだ全然“アウト”していない」と答えています。いつか私に何かあっても、会社がずっと生き続けていくために、法人格として皆で会社を育て上げていき、常に次へとつないでいけるようにしたかったのです。それに、自分で創業した当社の価値を一度評価してもらうことも大事でしたし、M&A後は企業価値をさらに高めていく流れも作られています。

    承継問題は、決して美容業界特有の課題ではありません。味は絶品なのに後継ぎがおらずに閉店してしまう飲食店や、技術はあるのに後継者不在で廃業してしまう会社など、世の中にはそういった惜しい事例がたくさんあります。しかし、一方では、やる気はあるのに現時点で自分の店や会社を持っていない人もいる。ご子息や従業員に会社の全てを継いでもらう選択肢しかほぼない状態だった一昔前までと違い、今は多くの人が当たり前のようにM&Aを受け入れられるようになってきています。それに、マッチングの支援もより丁寧になっているので、「やってよかった」と皆が思えるM&Aが、今後ますます増えていくのではないでしょうか。

    後継者がいるなかでM&Aを決断 挑戦と進化を続ける人気美容室

    担当アドバイザー 木下 喜雄 コメント

    MASHU様は、「Life with MASHU」をフィロソフィーとして掲げ、従業員様やお客様と一生をともにできる企業を目指し、女性の働きやすい会社づくりや地域住民に向けた企業主導型保育所事業にも取り組まれている社会的意義の大きな企業様です。
    この度のBIQREAグループ様との協業により、創業者の増成会長の想い「Life with MASHU」がより一層に体現化され、MASHU様固有の高い技術力と高度なサービス品質に裏付けされたお客様との信頼関係をもって、多様なニーズに応えられる新たな美容室のカタチを時代と共に創造されることを陰ながら応援しております。

  • 「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    インタビュー

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    譲渡:浅小井農園株式会社

    譲受:株式会社大和コンピューター

    インタビュー

    2023年4月12日、譲渡成立

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦
    • 譲渡企業浅小井農園株式会社
      設立年月日
      2008年
      事業内容
      トマト栽培
      URL
      http://asagoi.com/
    • 譲受企業株式会社大和コンピューター
      設立年月日
      1977年
      事業内容
      ソフトウェア開発、Web関連システム設計など
      URL
      https://www.daiwa-computer.co.jp/jp/

    滋賀県内を中心に、全国的にも有名になった「朝恋トマト」。2008年に、近江八幡市浅小井町出身の松村務氏が地元で浅小井農園株式会社を創業し、丹精込めてこのブランドを作り上げてきました。

    2018年、当時銀行員だった関澤征史郎氏が、農業への深い関心から浅小井農園へ研修に訪れます。松村氏から後継者がいないことを聞き、農園を引き継ぐことを決意した関澤氏は、1年半の研修を経て代表取締役社長に就任しました。その後農園を経営するなかで、コロナ禍をはじめとした様々な困難に直面。特にウクライナ情勢の影響は大きく、関澤氏は今後の経営を考え、M&Aの本格的な検討に踏み出しました。

    その後、40年以上にわたってシステム開発を手掛けながら、農業事業にも力を入れる株式会社大和コンピューターと出会い、2023年4月に「農業×IT」の異業種M&Aが成約。「日本の食を支えたい」という思いが合致し、農業界を取り巻く課題にも両社で果敢にチャレンジしようとしています。M&A成約までの経緯や業界の課題、今後の展望について、関澤氏と大和コンピューターの代表取締役社長・中村憲司氏にお話を伺いました。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    高品質な「朝恋トマト」を栽培する大規模農園を承継

    浅小井農園様の事業内容や強みをお教えください。

    関澤氏:当社は滋賀県近江八幡市で「朝恋トマト」というブランドのミディトマトを栽培している農園です。ハウスの広さは県内最大規模の約8000平方メートルで、室内は環境制御システムによって温度や湿度、二酸化炭素濃度などを全て管理し、高品質なトマトを栽培しています。「朝恋トマト」は県内から京阪神地区を中心に流通していますが、最近では関東や中部地方、九州地方などへも販売を拡大しており、少しずつ全国的に知名度が上がってきています。

    また、適切な農場運営の基準「JGAP(Japan Good Agricultural Practice)」を県内で最初に取得していることも強みです。当社の松村会長は新規就農者として創業したため、農業のオペレーションを自らの手で確立していかなければなりませんでした。中小規模の農業法人であっても、従業員を雇用しながら農園を運営していくうえでガバナンスは必要です。JGAP認証はオペレーションの最適化につながると考え、創業直後の2009年に取得したのだそうです。

    関澤様が農業に興味を持つようになったきっかけをお聞かせいただけますか?

    関澤氏:私自身は農家の出身でもなく、農業に関わる職歴もなかったのですが、昔から食べることが好きで、食に深い興味を持っていました。以前はケーキ店で店長を務めていたこともありますし、その後11年間、銀行員として勤務していた頃も、週末にはいろんな産地に出向いては特産品の食べ歩きをしていたほど、とにかく地のものが好きだったんです。

    また、銀行に勤務していた頃は中堅中小企業への融資業務を手掛けていたのですが、いろんな経営者とお会いするなかで、自分も起業してみたいと思うようになったことも、農業の道に進む一つのきっかけになりました。起業・創業や制度融資について調べていたときに、新規就農者向けの無利子の資金「青年等就農資金」があることを知ったのです。よく「農業は儲からない」という噂を耳にしますが、金融面での支えはしっかりしているのではないかと思い、自らの今後の仕事として農業を本気で考えるようになりました。

    浅小井農園様とはどのようにして出会ったのでしょうか?

    関澤氏:社会人向けの週末農業スクールに通い始め、そこで農業経営の勉強をしていたのですが、実際の栽培技術も習得したいと考えるようになり、滋賀県に研修先を探していただくようお願いしたんです。私としては環境制御や養液栽培に興味があったので、それに合った研修先を希望していたところ、紹介いただいたのが浅小井農園でした。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦
    浅小井農園株式会社 関澤征史郎氏

    研修で出会った浅小井農園様を継ぐまでのいきさつをお教えいただけますか?

    関澤氏:銀行の融資業務で事業承継に関わることも多かったので、研修中にそれとなく松村会長に後継者をどうするのかと聞いてみたんです。すると、「後継者はいないけど、最後は土地をきれいにして地主に返したらいいから」というような回答でした。ただ、せっかく軒高4メートルの環境制御ハウスが8000平方メートルもあって、「朝恋トマト」も県内で有名になってきているのに、なんてもったいないんだと率直に思いました。
    当時、私は滋賀県東近江市に自分で運営するための農地を一つ見つけていましたが、やや規模が小さかったので、ほかに空いているハウスはないかと探していた時期でもありました。しかし、もし浅小井農園を私に継がせていただけるのであれば、ここで農業を生業として十分やっていけますし、従業員も引き続きここで働いていけます。そう思った私は、1年半の研修が終わる少し前に松村会長を飲みに誘い、プレゼン資料も提示しながら「後継者として私はどうですか?」と話してみたんです。

    後継者としてご自身を提案された関澤様に、松村会長はどう反応されましたか?

    関澤氏:唐突な提案だったのでとても驚かれていました。ただ、年齢のこともあって、会長は奥様とも話しながらそろそろ引退を考えていらっしゃったそうなんです。お互いのニーズが合致したことですぐに第三者承継を進めることになり、提案からわずか半年後の2020年10月に代替わりが完了しました。

    「日本の食を支えたい」という思いから農業を始めたIT企業

    大和コンピューター様の事業内容についてお教えください。

    中村氏:当社は、ソフトウェア開発事業、SaaS分野のサービスインテグレーション事業、農業を含めたその他事業――大きくこの3つの事業を展開しています。1977年の設立からソフトウェア開発を手掛けてきた知見を生かし、この3つの事業が有機的に結び付けられていることが特徴です。

    農業の分野に着手された時期や理由をお聞かせください。

    中村氏:農業には2008年頃から本格的に着手しました。ソフトウェア開発会社である当社が農業を始めた背景には様々な思いがありましたが、「日本の食を支えたい」という考えが最大の動機になりました。食を支えるためにはまず、食の安全保障と食品そのものの安全性を維持しなければいけません。日本は世界に誇れる食文化を持つ一方で、農業では後継者問題が深刻化しており、良い農作物が食べられなくなる危機に迫られています。また、素晴らしい農業技術があるにもかかわらず、そのほとんどが経験と勘に頼っており、マニュアルや技術指導ではせいぜい3割程度しか補えない状況です。加えて、天候不順や天災など様々な要因で安定的に農作物が成長・収穫できない事態も珍しくないため、当社も食の安全に少しでも貢献できればと思い、農業の事業を開始しようと決断しました。
    もう一つ、当社の従業員の働き方を考えたこともきっかけになりました。日頃はどうしてもバーチャルな世界で仕事をすることが多いため、リアルな世界とのバランスを取れるようにしたかったのです。農業を始めたことで、今ではリアルとバーチャルがちゃんと融合した環境で仕事ができるようになったと思っています。

    大和コンピューター様の中で、農業の事業はどのような位置付けにありますか?

    中村氏:メインの領域ではないにしても、農業は現在当社が手掛けている無線ICタグやトレーサビリティ、ECサイト構築など、そういった製品やビジネスを展開する端緒を開いてきた重要な存在です。今後も農業が新たな取り組みの起点になっていくと思いますし、農業の事業自体もますます伸ばしていきたいと考えています。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦
    株式会社大和コンピューター 中村憲司氏

    農業界での様々な課題に直面し、農園の今後を考えて決断したM&A

    県内最大級の農園を引き継がれた関澤様ですが、これまで困難に直面したことはありましたか?

    関澤氏:いろんな困難がありました。まず、承継と同時期にコロナ禍に突入してしまい、販路がガラリと変わりました。栽培においては病害虫が原因で、一度トマトを全滅させてしまったこともあります。また、最近ではウクライナ情勢の影響で、肥料、原油、電気代などが大幅に値上がりしています。それにもかかわらず、消費者心理としては10円でも高くなると手が出にくくなってしまうため、農作物の小売価格はなかなか上げることができません。当社は多い日に2トンもの収穫量があるのですが、着実に売れていかないと不良在庫となって廃棄せざるを得なくなってしまうので、小売りの面でも悩むことは多いですね。

    食料安保や現場での困難など、農業界には解決が急がれる様々な課題があるのですね。

    関澤氏:中村社長が仰った通り、食料安保の問題は深刻で、私自身も課題意識を強く持っています。農業に尽力する立場としてそこに関われるのは社会貢献度が高いことだと思いますが、ただ、政策と農業生産の現場との温度差はかなり大きいと感じるばかりです。例えば農家への年間の補助金にしても、日本はアメリカなどに比べるとはるかに少額で、さらには農作物の多くを安価な外国産の輸入品に頼っています。これではその場しのぎにしかなりません。根本的なてこ入れが必要であることを、メディアや行政と話す際にはいつも提言するようにしています。

    中村氏:農業においては承継しづらい要因を解決していくことも重要だと思います。少子高齢化については私たち参入者だけで解決できる話ではありませんが、重労働の負担軽減や生産性の向上には積極的に取り組み、承継しやすい環境を作ることで後継者問題の解決に貢献できるのではないかと考えています。

    関澤様が実際に直面した困難や農業界の課題は、今後の経営に対する考えに影響を与えたのでしょうか?

    関澤氏:そうですね。病害虫の問題は正直、自分たちの対策にも要因があったと思いますし、コロナ禍による販路の劇的な変化も、営業次第では何とかなったかもしれません。しかし、ウクライナ情勢以降の苦境は、浅小井農園単体で経営していくには難しい局面が多すぎます。元銀行員の感覚として、自力で資金調達できるうちはよくても、今後を考えるとどこかと手を組んだ方がいいと考え、その手段として2022年8月からM&Aの検討を本格的に始め、fundbookさんに相談しました。その後はスピーディーに進めていただいたので、1年弱で成約に至ることができました。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    「農業×異業種」を考えていた。ITは農業界を激変させられる

    関澤様が大和コンピューター様と面談されたときの印象をお聞かせいただけますか?

    関澤氏:まず、大和コンピューターさんが農業を手掛けられていることに驚きました。お会いするまでは、IT企業が農業をされる一番の原動力は何なのかと、私もすごく気になっていましたね。

    先ほど中村社長がバーチャルとリアルのお話をされましたが、面談のときに「農業とITは対局関係にある」と仰っていて、この概念がとてもしっくりきたんです。時には土に触れたり、自然豊かな場所に出掛けたりすると感性がニュートラルになる気持ちは私も共感しますし、IT分野の上場企業の社長というお立場でいらっしゃりながら、農業について深く理解されていることも本当に嬉しく思いました。

    IT企業との異業種M&Aに対し、どのような印象を受けられましたか?

    関澤氏:「まさかのIT」という思いはまったくなく、むしろ業界のリスクヘッジのためには、できれば大和コンピューターさんのような別の業界の企業がお相手として良いと考えていました。農園の場合、例えば卸売企業やスーパーなどの小売企業のような、流通の川下にあたる企業が生産部隊としてグループ化することも十分考えられますが、それだと当社自体は業界リスクから抜け出せきれません。それに、食料安保などの大きな課題に農業界だけで立ち向かうとなると、ウクライナ情勢の影響が甚大な中では非常に難しくもあります。このため、「農業×異業種」でうまくシナジーが発揮でき、業界のリスクヘッジにもつながる企業とのご縁があればと当初から思っていました。
    農業では土壌分析や環境制御、収穫ロボットまで、いろんなIT技術が登場していますが、それでもまだまだITの活用は遅れている業界です。農業界を激変させられるのはITだと私は思っているので、大和コンピューターさんとのM&Aは本当に理想の形でした。

    M&Aが成約した際の関澤様のお気持ちをお聞かせください。

    関澤氏:浅小井農園が間違いなく安定すると確信しましたし、大和コンピューターさんというしっかりした会社の目線を経営に入れるべきだと思っていたので、M&Aが成約したときは感謝の限りでした。松村会長と農場長も「すごく良い判断だと思います」と、歓迎してくれています。

    中村様は浅小井農園様に、どういった印象を持ちましたか?

    中村氏:アプローチの方法はそれぞれ違っていても、農業界を取り巻く課題に対して目指す方向性は一緒だと感じました。面談だけでなく、農園の見学にも伺わせていただきましたが、浅小井農園さんは当社も手掛けている統合環境制御システムを取り入れて、品質や生産性をどんどん良くしていこうとされていますし、廃油のリサイクルなど、エコでクリーンな取り組みにも力を入れていらっしゃいます。単にトマトを作るだけにとどまらない考え方に、強いシンパシーを覚えましたね。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    大和コンピューター様はM&Aのお相手となる農業法人を探すうえで、大変だったことはありましたか?

    中村氏:15年前に農業事業を始めた頃は、一緒に取り組んでいただける農園を探そうにも、ITという異業種だからか、なかなか話すら聞いてもらえない時期もありました。たまたま静岡県のメロン農家さんが後継者不在で廃業されるかもしれないという話を聞き、お声かけさせていただきましたが、ご理解いただくまでには相当な時間を要しました。現在は静岡に数名の従業員が常駐して、実際の栽培と農業向けシステムの開発に一緒に取り組んでいます。
    静岡の農園と提携した後も、大阪本社に近い近畿圏の農園と手を組むことができれば、より事業が進展するだろうと考えていたので、考え方を共にする浅小井農園さんとのご縁がいただけてよかったと思っています。

    企業をグループに迎え入れるお立場として、大和コンピューター様が意識していることをお教えください。

    中村氏:企業ごとに文化や事業のやり方は違いますし、農業とITでは当然ファシリティも違います。企業同士が融合して発展していくためには、お互いに変わるべきところがあると思いますし、どう変われば最善なのかを探求するうえでは、相互の理解が不可欠です。それはコミュニケーションなしには成り立ちませんから、スピードよりも十分な時間をかけて理解を深め合っていくことを重視しています。浅小井農園さんの事業に携わらせていただいたり、関澤社長から色々と伝授いただいたりしながら、相乗効果が最大化する進化をともに成し遂げていきたいですね。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    互いに協力し、農業界を取り巻く課題に挑戦していく

    両社様の今後の展望や構想をお教えいただけますか?

    中村氏:まずは、人的交流を促進させたいと考えています。当社は静岡の農場で新入社員の農業研修を行っていましたが、残念ながらコロナ禍以降は休止せざるを得ない状況が続いていました。ようやく人々が活発に動けるようになってきたので、浅小井農園さんにも研修に伺わせていただきながら、「一緒の仲間だ」という意識をより強固にしていきたいと思っています。

    また、農業界を取り巻く社会課題にも、両社で力を合わせてチャレンジしていきたいです。農業にIoTやICTを取り入れたり、統合環境制御システムで栽培したりすれば、品質や生産性の向上が見込める一方で、エネルギーが一つの重大な問題になってきます。世界的にもカーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速している今、中小企業もエネルギー効率を高める挑戦を怠ってはいけないと考えています。すでにエコでクリーンなエネルギーを積極的に活用されている浅小井農園さんとともに、両社で知恵を出し合いながら前進していきたいですね。

    関澤氏:今の若い人はSDGsへの関心がものすごく高いですし、当社もSDGsへの力の入れようは関西でも屈指だと思いますので、大和コンピューターさんの事業に当社の取り組みが少しでもプラスに働けばと願っています。中村社長が仰るように、両社間の人的交流やコミュニケーションを重ねながら、意見を出し合って進めていきたいです。

    最後に、関澤様ご自身の今後の抱負と、中村様から関澤様への期待を、ぜひお聞かせいただければと思います。

    関澤氏:私個人としては農業の後継者問題に力を入れたいと考えていて、つい最近も、個人農業の規模でもM&Aができるような事業承継のマッチングプラットフォームに申し込みをしたところです。そのプラットフォームを活用しながら、農業の後継者問題を解決する活動を近畿圏で広げていきたいと思っています。
    やはり、事業承継は誰かに相談しようとしても、実際に経験した人からでないと的確なアドバイスが得られないと思いますし、特に農業は特殊な分野なので、農業を始めたい人や農業を継いでもらいたい人に、私の経験を役立てていけるよう、こつこつと努力を続けていきます。

    中村氏:当社は“農業とITの二毛作”の形で、もっと仕事を面白くしていこうとしているので、ぜひ関澤社長には農業の魅力をアピールする方法を一緒に考えていただければと思っています。機械やITの導入により、農作業の負担は大幅に軽減されるにもかかわらず、今もなお「農業は重労働だ」というマイナスイメージが先行しています。農業を始めようとする人材を増やして育成できれば、ひいては後継者問題へのアプローチにもなるはずですので、農業の魅力を正しく広めるアイデアを出し合っていければ嬉しいです。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    新規就農者はM&Aや事業承継も選択肢に入れるべき

    浅小井農園株式会社
    代表取締役社長 関澤 征史郎氏

    銀行員をしながら農業スクールに通っていたときに、農業をやりたいと思っている人はかなり多いと感じました。ただ、そのうち新規就農できる人は10分の1にも満たないのではないかと思います。なぜなら、新規就農するにはハウスや設備を用意して、販路も自力で開拓するなど、全てゼロの状態から立ち上げなければいけないものだとイメージされがちだからです。当然、それではハードルが高すぎて一歩が踏み出せないでしょうし、家族も納得してくれないと思います。

    しかし一方では、立派な農園や販路があるにもかかわらず、後継者不在などで農業を辞めようと思っている農家さんも多くいらっしゃいます。新規就農しようとしている人がM&Aや第三者承継、事業承継という引き出しさえ持っていれば、初期投資やリスクがほぼないまま、すでに営農している人から引き継げる可能性は十分にあります。私自身、浅小井農園の創業者である松村会長から第三者承継をした立場として、こういったゼロから作り上げる以外の方法を選択肢に入れておいた方がいいと自信を持って言えますし、様々な場所で啓発するように努めています。M&Aも含めた事業承継の形が、今後の農業界でますます加速させられれば嬉しく思います。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    農地の価値をゼロにしてはいけない。M&Aや協業で手を打つべき

    株式会社大和コンピューター
    代表取締役社長 中村 憲司氏

    先祖代々農業を営まれている農家さんも多くいらっしゃる中、農業の発展を意図したM&Aを提案したとしても、M&Aと聞くと「受け継いできた農地が持って行かれてしまうのではないか」と、不安に思われることも決して少なくないと思います。今は浅小井農園さんと静岡のメロン農園と手を組めている当社も、十数年前は農家さんに提携を持ち掛けたところで、ただただ怪しまれる一方でした。なので、農業界ではM&Aと合わせて、もう少し緩めた形の“協業”も促進させて、協力体制を作る入り口を広げていくことも一つの策になるのではないかと考えています。

    せっかくの農地も、放置してしまうと土地が荒れてしまい、再び作物を作ろうとしても収穫までに数年を要することになってしまいます。使える農地はしっかりと有効活用して、実りあるものを作っていかなければ意味がありません。M&Aや協業などを活用し、農地としての価値がゼロになってしまう前に手を打っていく取り組みが、今まさに求められているのではないでしょうか。

    「農業×IT」の異業種M&Aで、食や環境の課題に挑戦

    担当アドバイザー 石原 大輝 コメント

    本件は両社長の「日本の食を支えたい」という強い想いが結んだ農業×ITの異業種M&Aでした。
    お相手を探すなかで、大和コンピュータ―様と浅小井農園様が出会うまでは一筋縄ではいかず、関澤社長は多くの会社とトップ面談を実施し、最終的に大和コンピューター様に巡りあい、M&Aの成約に至ることができました。
    後継者がおらず廃業を視野にいれていた浅小井農園が上場企業グループの仲間入りをし、より盤石な体制で「朝恋トマト」のブランドを今後も世に発信していけるM&Aに携われたことを大変光栄に思います。
    今後のご両社の益々の発展をお祈り申し上げます。

  • 生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    インタビュー

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    譲渡:佐世保靑果株式会社

    譲受:富永商事ホールディングス株式会社

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A
    • 譲渡企業佐世保靑果株式会社
      設立年月日
      1929年
      事業内容
      青果卸売
      URL
      https://saseboseika.jp/
    • 譲受企業富永商事ホールディングス株式会社
      設立年月日
      1968年
      事業内容
      青果物専門商社
      URL
      https://www.tsckobe.co.jp/

    長崎県の佐世保市地方卸売市場で地域の食を支え続けてきた佐世保靑果株式会社は、まもなく創業から100年を迎えます。長い歴史を誇り、地元大手スーパーなど多くの販売先を抱える佐世保靑果ですが、近年は周辺産地での生産者減少に伴う集荷量への影響が課題となってきました。

    佐世保市に限らず、地方市場は今、生産者と市場運営に関わる人材の減少で苦戦が強いられており、同地域内や同業者との合併の動きが相次いでいます。そのなかで、代表の山本茂雄氏は自社と青果卸売業界の将来性を最大化するために、青果物の専門商社グループの富永商事ホールディングス株式会社とのM&Aを決断。異業者でありながらも、同じ青果物を取り扱う立場として、両社とも生産者への貢献と業界の発展への思いが根底にありました。山本氏と富永商事ホールディングス株式会社代表の富永浩司氏のそれぞれに、M&A成約までの経緯や今後の展望について伺いました。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    およそ1世紀にわたって地元で商売を続けてきた佐世保靑果

    (佐世保靑果株式会社 山本茂雄氏インタビュー)

    佐世保靑果様の歴史や事業についてお教えください。

    山本氏:当社は佐世保市が開設している佐世保市地方卸売市場で、青果物や花きの卸売業を手掛けており、JAや生産者が市場に出荷した商品を当社が受けて、せりで販売している会社です。この市場は九州でも2番目に早くできたほど歴史が古く、当社も昭和4年(1929年)の設立から100年近くの間、この地で商売を続けています。

    山本様が佐世保靑果様に入社されたきっかけをお聞かせください。

    山本氏:私は生まれも育ちも佐世保市で、大学の頃だけ県外に出ていたのですが、地元で働くため卒業とともに帰ってきました。当社には青果関連の業界に従事していた親に勧められたことがきっかけで入社したので、正直なところ当時はこんなにも長く勤めるとは思ってもいませんでした。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A
    佐世保靑果株式会社 山本茂雄氏

    山本様が佐世保靑果様に入社されてから、社長に就任されるまでの経緯をお教えください。

    山本氏:当社では、入社後にまず、売上伝票や仕入伝票を管理する電算課に配属となって、そこで基礎的なことを勉強してから、営業やその他の部署へそれぞれ配属される仕組みとしています。私も入社直後から電算課に約3年間所属し、その後はずっと経理を担当し、その後2020年5月に社長に就任しました。当社はオーナー企業ではないので、社員の中から社長が決まる形となっています。今、私で8代目になりますが、もう3~4代も前からずっと経理部門出身の人が社長を務めてきたので、それが社長に選ばれた一つの大きな理由だったと思います。やはり、経理は会社の全ての部門に関わらないといけない仕事ですし、良い所も悪い所も全て見えることが、経営にも生かせられるという考えがあるからではないでしょうか。

    社長に就任されてから、経営でどのようなことを意識してこられましたか?

    山本氏:社長になって最初に、「社長の仕事とは何か?」と考えました。管理部門を統括していたときは管理部門だけを集中的に見ておけばよかったのですが、社長は営業部門と管理部門の全体を見なければいけませんから。そしてたどり着いた答えが、「会社にある色々な問題を、一つ一つじっくりマネージメントしながら最適解を見つけること」。それこそが社長の一番の仕事なのではないかと思ったのです。

    私は営業の経験がない分、営業のことに意見や疑問を投げかけると、営業担当からすると快く思わないことだってあると思います。しかし、最適解を見つけるためには、各部門に気を使ってばかりでは仕方ない――。そういう意思は強く持つようにしています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    同業者との合併が主流の業界で見出した「異業者との資本提携」という選択肢

    今の青果業界には、どういう課題があると感じていますか?

    山本氏:まず、生産者の減少が大きな課題となっています。当社は商品を集荷しないと商売が始まりません。しかし、生産者が減るということは、青果物や花の生産量の減少に直結することを意味し、現に集荷が難しくなってきているのです。今まで青果物を出荷してくださっていた産地が高齢化によりなくなってきていますし、JAに集まる青果物も減少して市場に出荷する分がなくなるなど、生産者の減少には一番の危機感を覚えています。

    そしてもう一つ、青果卸売業における人材不足もとても大きな課題です。市場は朝が早い力仕事というイメージがどうしても強いようで、若い人たちからは敬遠されがちなのだと思います。それに、せりや何かの商品を担当する業務は専門的になるため、入社から2~3年はいろんな知識を蓄えないといけないのですが、今の社会は転職できる環境や職業の多様化が進んでいるため、人材が育った頃に離職してしまうことも少なくありません。

    そういった課題のなかで、山本様が佐世保靑果様を経営していくうえで何らかの変化はありましたか?

    山本氏:平成10年頃から青果市場の業界は右肩下がりが続いており、特に中小の市場や地方の市場は厳しい状況となっています。なので、私は10年以上前から、いずれは県内の同業者か、大都市の大きな市場と合併することも視野に入れていました。この業界では同地区の同業者同士や大都市の市場などとの「合併」で規模を大きくする形が主流で、県内の同業2社の合併話が出た時は、私も「うちもいよいよどこかと合併かな」と本気で考えるようになっていました。ただ、仮に同じ県内で合併したところで将来性が最大化するのか分からなかったですし、ほかの地域からも合併後になかなかシナジーが生まれないという話を耳にしていたので、合併が本当に良い道なのかという迷いもありました。

    そんなときにfundbookさんと話して、株式譲渡による「資本提携」という道があることを知ったのです。もしfundbookさんとお話ししていなければ、今もまだ合併どころか悶々と考え続けていただけだったかもしれません。

    同業者に限らず、相乗効果の高い企業との資本提携も視野に入れた結果、富永商事様と出会われました。面談での印象はいかがでしたか?

    山本氏:最初の面談では、どういった提携をしていくか、といった具体的な将来の話をするというよりは、お互いの仕事の内容などの話が中心で、雰囲気を味わうのが第一の目的だったように思いますが、私は富永社長に対して、話しやすくてお付き合いがしやすそうな、とても良い印象を持ちました。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    M&Aを前向きに捉えてもらおうと努めた日々

    M&Aを進めるうえで大変だったことはありましたか?

    山本氏:M&Aは一般的に、従業員への開示は成約後に行うそうですが、当社の場合は役員や従業員も株主で、株主の総数は100人以上にのぼります。もし私一人でM&Aを進めて、最終的に知らされた従業員が動揺して会社が不安定になってしまうと本末転倒ですから、ここはぜひ、会社が一体となってM&Aを進めるべきだと考え、早い段階で役員と一部の従業員に説明しました。ただ、最初は「会社や自分たちはどうなるのか?」といった不安の声ばかりでした。それで、1週間じっくり考えてもらってから再度意見を聞いたのですが、皆の考えは変わっていなくて。従業員の皆に、M&Aに対して前向きな気持ちになってもらうまでが大変でしたね。

    従業員の皆様一人一人に対応するのは、多大な労力が必要だったと思いますが、何が山本様のモチベーションになっていましたか?

    山本氏:あのときはfundbookのアドバイザーさんと毎日連絡を取り合っていたくらい、ずっと頼っていました。困ったことがあればすぐに相談して、そのたびに的確なアドバイスをくださったので、ここまで来られたのだと思っています。

    それに、M&Aに消極的だった従業員の意見としても、「自分たちでやれる」という気持ちが前面にあったので、それだけ皆が佐世保靑果を「自分の会社」と思ってくれているのだと実感できたことも大きかったです。納得してもらうまでの労力もありましたが、一方では自社を思う従業員の気持ちが嬉しくもありました。

    従業員の皆様が前向きにM&Aを考えてくださるようになるまで、どういった出来事や取り組みがありましたか?

    山本氏:何が不安で何を懸念しているのか、富永商事さんに向けた質問を従業員から寄せ集め、失礼を承知のうえで富永商事さんにご回答いただくようお願いしました。すると、多くの質問あったにもかかわらず、富永商事さんからすぐに誠意のあるご回答をいただけたのです。それに加えて、今度は富永商事さんの富永社長や役員の皆様と、当社の役員がお会いして何でも質問させていただける機会も設けていただいたことで、従業員の気持ちはかなり変化していきました。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    数年後に「やってよかった」と思える提携になるように

    今後、富永商事様とどのような取り組みをしていきたいと考えていますか?

    山本氏:まず出荷に関しては、どうしても地元だけでは消費しきれずに、全量販売が難しい状況にあったことが課題だったので、今後は富永商事さんの力を借りて、関西圏や関東圏にも販路を広げていきたいと考えています。仕入れに関しては、当社のお客様である地元の大手スーパーさんなどが色々な商品を求めているので、富永商事グループのパイプや情報を活用して、自社だけでは集荷が難しかった商品も取り扱えるようになりたいと願っています。

    また、今の時代は生産者が売れるか売れないか分からない青果物を作るのではなく、市場の方から生産者に「この品種のカボチャを作ってください」といった提案をして、しっかりと販売する仕組みが主流となりつつあります。そうした生産者さんに対する提案も、富永商事さんとの協力でより活発にできるようになると思いますし、それが生産者さんへの貢献にもなると期待しています。

    引き続き、佐世保靑果の社長を続投される山本様。ご自身の今後の抱負をお聞かせください。

    山本氏:このM&Aは私が主導したわけですから、成約してからも、投げ出すようなことはしたくないですね。それに、「提携したけど、何も変わっとらんやん」と思われるような結果にはしたくないです。1~2年かけて富永商事さんとしっかり連携できる体制を構築してから次の社長に譲りたいですし、3年後や5年後に「やってよかったな」と思える提携にしていきたいと思っています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    世界的に減少する「生産」を大事にしたい

    (富永商事ホールディングス株式会社 富永浩司氏インタビュー)

    富永商事様のグループの事業内容や強みをお教えください。

    富永氏:当社は青果物の専門商社です。食品という幅広い商材の中でも、厳選した青果物を取り扱うニッチな事業を手掛けていることと、研究・開発から生産、加工、流通までをグループで一貫して担える体制が強みとなっています。

    佐世保靑果様と富永商事様は、青果物を取り扱う点で共通しています。この業界では今、どのような課題があると捉えていますか?

    富永氏:第一次産業全般に言えることですが、若手人材の不足が課題となっています。北米などでは農業従事者の世代交代がスムーズに行われていて、若い世代の生産者が多いイメージですが、日本をはじめ東アジア各地では高齢化が進んでいる一方です。このため、若い人材が一緒に仕事をできるような環境作りが急務だと捉えています。

    また、地球規模で考えても、世界人口が増え続けていますが、気候変動や資源枯渇など様々な要因で、生産は減少傾向にあります。だからこそ、消費以上に生産を大事にする視点を持つようにしていかなければならないと思いますし、当社もその姿勢で営業するよう心掛けています。

    富永様は若くして3代目社長に就任されましたが、青果の業界に課題がある一方で、魅力はどのようなところにあると思われますか?

    富永氏:野菜や果物は世界的に見てもとても歴史が長く、今後もずっと続くビジネスであるものではないでしょうか。流行が目まぐるしく移り変わるサービス産業とは違う側面が強く、まるでコレクターのような完成のない仕事だと感じますし、それが一つの魅力であると思っています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A
    富永商事ホールディングス株式会社 富永浩司氏

    お互いの歴史や考えを大切に、長所を生かし合う

    佐世保靑果様のどういったところにシナジーを感じたのでしょうか?

    富永氏:当社は九州にも販売先が多く、佐世保靑果さんも元々は販売先の1社でした。ただ、九州に仕入れの支店がなかったので、佐世保靑果さんと一緒になることで、現地の生産者とのつながりがより強化できると考えました。佐世保の周辺には農作物の良い産地がありますし、そうした産地に当社の神戸本社から伺うよりも、佐世保靑果さんと協力できれば、時間をかけず円滑に取引ができるようになると期待しています。

    また、当社には市場(いちば)のお客様も多くいらっしゃるので、お客様のことを深く知るうえでも佐世保靑果さんから色々と教わりたいという思いもありました。今後、従業員同士の行き来が活発化すればもっと面白くなるだろうなと思っています。

    面談で山本様にお会いしたときの印象をお聞かせください。

    富永氏:紳士的で優しくて、人柄が素敵だという印象を受けました。それに、佐世保靑果さんで勤めてこられた40年間のことや、今後の佐世保市への思いもお話しいただくなかで、きっと人徳のあるお方なんだろうなということも伝わってきましたね。

    M&A成約までの間に、佐世保靑果様の従業員の皆様からの質問や面談にも対応されたと伺いました。今までもそういった事例はあったのでしょうか?

    富永氏:いえ、珍しいケースではありました。ただ、佐世保靑果さんは元々佐世保市が発起人となって立ち上がった施設で、約100年もの歴史がありますし、地域の皆様の食を支えるために働いてこられた方々の力で栄えた企業でいらっしゃいます。誰か個人の会社というより地域のための会社という存在ですから、従業員の皆様も自社を大事に考えられているのだと思います。なので、私たちも佐世保靑果さんの歴史や考えを大切にしないといけないと強く思っており、それが伝わるよう、佐世保靑果さんの役員や従業員の皆様と対話させていただきました。

    業態はもとより、社風や文化も違う企業同士が手を組むうえで、どういった考えを大事にしていますか?

    富永氏:お互いの長所を生かそうという考え方です。当社は商社なので、利益重視の風潮が強いと思います。「利益ベース」と言うと冷たい印象に聞こえるかもしれませんが、食品は放っておくと傷んでいくだけなので、この考えは重要なのです。例えば、1000円で仕入れたものを1500円で売ることもあれば、500円で売らざるを得なくなることもありますし、商品価値がゼロになってしまうこともあります。もし怠慢な管理によって商品を腐らせてしまい、利益が出なくなったとしても、最終的なしっぺ返しは生産者に向かってしまうのです。なので、生産者に対する思いやりが根底にあってこその利益重視の社風となっています。

    一方で、佐世保靑果さんも農産物を取り扱っている点では当社と共通していますが、主には地域の食料供給を支えてこられた背景がありますから、当社とまったく同じような利益ベースの考えを求めるのは筋違いだと思っています。無駄が生じている部分を少しずつ改善しつつも、お互いの良さを掛け合わせる道を追求することが大事だと考えています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    流通の拡大や物流の効率化。市場との提携により高まる期待

    M&Aが成約してから、佐世保靑果様とどのような交流や連携が始まっていますか?

    富永氏:毎月定例の財務ミーティングのほか、当社の営業部長が佐世保に頻繫に伺うなど、着々と連携を強化しているところです。また、佐世保靑果さんと当社間のやり取りだけでなく、年に4回ほど開催しているグループ全体会議も、各社間の交流の場になると期待しています。コロナ禍以降のグループ全体会議はオンラインで行われていましたが、そろそろ対面での開催もできるかと思いますので、グループ間で関係を深める動きがますます活発化すればと願っています。

    佐世保靑果様との今後の取り組みや展望についてお聞かせください。

    富永氏:青果物は遠い外国産のものより、国産の方が新鮮なままお届けできるので、まずは佐世保靑果さんの取り扱う九州産の青果物を国内で広く流通させていきたいです。また、当社がグローバルに取り扱っているカボチャや玉ねぎなどについては、佐世保靑果さんからの出荷品が輸出ルートに載る可能性も十分にあると思っています。

    それともう一つ、佐世保靑果さんとともに、物流を効率化させる取り組みにも力を入れていきたいです。物流業界では働き方改革に伴う2024年問題が懸念されている通り、今後は長距離輸送や大量の小口配送への対応が難しくなるため、各地域の物流拠点の価値はよりいっそう高まるものと考えられます。そうした状況下で、流通施設として利用できる市場は、今まで以上に機能を発揮するようになると思うのです。

    週休3日制を取り入れる企業も出てくるなど、世の中の働き方改革は前進していますし、私もそうなるべきだと考えています。そのために、物流をはじめとした業務効率化は不可欠です。働き方改革を推し進めるうえでも、佐世保靑果さんをはじめ、グループ各社で協力し合っていければと思っています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    会社の存続・発展のためには、「単独」ではなく「手を組む」べき

    佐世保靑果株式会社
    代表取締役社長 山本 茂雄氏

    少子高齢化と人口減少が進むなかで、オーナー企業や個人経営の事業者は特に後継者問題がますます深刻化するものと考えられます。そういった場合にただ廃業するのではなく、譲受してくれる企業を見つけられれば、経済的にも最善の策になる可能性が大きいものと思います。

    当社はオーナー企業ではなく、言うなれば私もサラリーマン社長ですが、それでも責任は非常に重大で、単に自分の任期を満了すればいいとはまったく考えていませんでした。「従業員の生活もかかっているからこそ、会社を存続・発展させなければいけない。ならばこれから先、単独でいるよりも相乗効果の高い企業と手を組んでいくべきだ」と、判断したのです。

    後継者問題の解決や会社の発展に向けては、M&Aが一番有効な手段になると期待できるので、今後ますます活用する動きが増えてくるのではないかと思っています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    産業を良くしていくためには、競争よりも力を合わせることが重要

    富永商事ホールディングス株式会社
    代表取締役社長 富永 浩司氏

    企業間の競争はある程度必要なものの、一つの産業の中に事業者が溢れかえっている状態では、競争相手ばかりを意識してしまい、その産業や業界自体をどう良くしていこうかという考えが欠けてしまいかねません。私も、いかに競争相手に打ち勝とうかとばかり、ずっと考えていた時期がありました。ですが、自社のマーケットシェアが拡大するに従い、「業界をどう伸ばそうか」という健全な考え方へ自然と変わっていきました。なぜなら、その産業や業界がなくなることの方がはるかにリスクになるからです。

    「1産業1業者」と言うと極端かもしれませんが、その産業を発展させるためには、一つのパイを大勢で食い合いながら多くの無駄を発生させるのではなく、今後は集約して力を合わせていく方がますます重要になってくるのではないでしょうか。新規参入が難しい第一次産業においても、M&Aは有効に働くと私は考えています。

    生産者への貢献と青果業界の発展へ。100年続く地方市場のM&A

    担当アドバイザー 原田 欣和 コメント

    本件は、100年もの歴史を誇る地元に無くてはならない青果卸売会社の譲渡企業様と、国内・国外とグローバルな展開をする青果専門商社の譲受企業様とのM&Aという青果業界に多大な影響を与えるマッチングだと思います。

    青果卸売会社である譲渡企業様は、地元の「食」のインフラとして、重要な役割を有しています。大手量販店、小売店側と生産者側との間に入り、需要と供給のバランスを整え、両社にとってメリットがあるためには時には損をしながらも消費者の台所に野菜や果物を届ける必要があります。

    しかし、現在、青果業界は非常に厳しい環境にあります。
    生産者様が減少の一手をたどっていることに加え、市況に伴う青果物の低価格化などが主な要因です。単独の経営戦略と資本ではなかなか解決できない悩みが、どこの青果事業者にも当てはまる状況です。

    また青果業界のM&Aは同業同士が多いのですが、それでは面の取り合いになってしまい、根本的な解決にはならないことが多いです。

    このような背景から、譲渡企業の山本社長様と青果事業として「食」のインフラ機能を大事にしつつ、抜本的な改革を起こせるM&Aを一緒になって考えてきました。

    譲渡企業様の願いである地元の生産者と一緒になって販路を見出していくためには、譲受企業様のような国内のみならず国外にも「青果」の販路を保有しているのが一つ、またその上で販路が確定できれば、譲渡企業様のバックにいる生産者にも自信を持って何を作れば生産者として安定するのかを提案できる。そこに商品としてのブランドを作り上げ、低価格だけではない付加価値のあるものを市場に流していくことができます。これは単独資本ではなかなか難しくM&Aだからできることと言っても過言ではありません。

    M&Aは終わりではなく、ここからがスタートとなります。
    今後、ご両社が日本の青果業界に新しい風を吹き込むことをとても楽しみしています。

  • 訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    インタビュー

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    譲渡:医療法人かなの会

    譲受:介護事業所等運営法人

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継
    • 譲渡企業医療法人かなの会
      設立年月日
      2001年
      事業内容
      無床診療所
      URL
      http://www.kozaclinic.or.jp/
    • 譲受企業介護事業所等運営法人
      設立年月日
      -
      事業内容
      通所介護事業所など

    沖縄県で生まれ育った川平稔氏は、2001年に内科・神経内科・リハビリテーション科を診療科目とする「医療法人かなの会 コザクリニック」を沖縄市で開設。県内で神経内科に対応する医療機関が少なかった頃から神経疾患の治療に励み、パーキンソン病治療の「LSVT BIG」を県内で初めて導入したほか、「全国パーキンソン病友の会・沖縄支部」の立ち上げも率いてこられました。

    後継者を探すべくM&Aに動き始めていたコザクリニックに、突如としてコロナ禍の影響が降りかかることに。当初の予定よりも早く譲受法人を見つけなければならない――。不安と焦りの中でしたが、リハビリや介護事業に強みを持つ法人とめぐり逢い、2022年5月、M&Aの成約に至りました。譲受法人との連携によりコロナ禍で打撃を受けていた収益は大幅に改善し、休止していた訪問診療も再開に向かうなど、相乗効果が顕著に表れています。

    川平稔理事長と、医師の町田憲彦氏、総務を担当するご子息の川平史明課長に、M&A成約までの経緯や、今後への期待などについて伺いました。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    沖縄県を代表する神経内科専門クリニック

    川平理事長がコザクリニックを開設された経緯をお教えください。

    川平稔氏:私はここ沖縄県で生まれ育ち、大学進学等で10年近く県外へ出た後沖縄に戻り、以降はずっと県内で医師として勤めてきました。私自身、神経内科を専門にしてきたのですが、昔は県内に神経内科が少なかったんです。県内の患者さんが県内で治療とリハビリを受けられるようにしたいと思い、2001年にコザクリニックを開設しました。現在は北は本島最北端の辺戸から、南は石垣島・宮古島からも患者さんが来られています。沖縄県は非常に広域ですが、当院の近くまで高速道路が通っていますし、離島と本島間の航空便も充実してきましたから、県外の病院に通わなければならなかった頃に比べて、コザクリニック開設後は患者さんたちもはるかに治療が受けやすくなったと思います。

    特にパーキンソン病治療では沖縄県の第一線で活躍されてきたそうですね。

    川平稔氏:当院は県内初のパーキンソン病治療を行うクリニックですが、沖縄県でパーキンソン病の患者会を立ち上げてはどうかとずっと働きかけてきて、ようやく「全国パーキンソン病友の会・沖縄支部」を発足させられたことは思い出深いです。当院は沖縄市に位置していますが、友の会の拠点は県内の中心都市にあった方がいいだろうと提案し、那覇市に拠点を置くこともできました。コザクリニックに来てくださった皆さんが中心となって立ち上げられたことはとても嬉しかったですし、今も継続して友の会の活動に力を注いでいます。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継
    医療法人かなの会 川平稔氏

    M&Aを進め始めたところで襲い掛かったコロナ禍の大打撃

    かなの会様がM&Aを検討し始めたきっかけをお聞かせください。

    川平稔氏:私の年齢やクリニックの建て替えなどいろんな事情が相まって、数年前からM&Aを視野に入れるようになっていましたね。神経内科の医師として、20年以上にわたって続けてきた訪問診療も、年齢的にだんだん難しくなってきたと感じていた矢先、4年ほど前に病気を患ってしまったんです。そのときに課長の呼びかけで町田先生が当院に来てくれたのですが、町田先生にはご自身が続けてきた研究に専念できる時間も必要です。診療以外の病院経営の面まで負担をかけないようにしたいという思いから、M&Aが最善の策ではないかと真剣に考えるようになりました。

    町田先生はそのような状況をどう感じられていましたか。

    町田氏:私はコザクリニックに来てから2年間ほど訪問診療にも携わってきました。神経疾患は進行すると通院が困難になる場合もありますし、療養病棟に入院するより、落ち着いて過ごせる自宅での療養を選ばれる患者さんも多くいらっしゃいます。また、特別養護老人ホームに伺って診療することもあるなど、訪問診療は地域医療の一端を担う重要な取り組みであることは間違いありません。

    一方で、訪問診療は人材と時間と体力が要求されるため、容易には行えない医療サービスでもあります。また、私はコザクリニックに来る前からある医療分野の研究を続けている最中の身で、川平理事長と従来のペースのまま訪問診療を続けていくには限界があり、やむを得ず休止することになりました。訪問診療はコザクリニックの看板でもあるので、将来的に再開できればと色々な考えを巡らせていました。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継
    医療法人かなの会 町田憲彦氏

    その後、いつ頃からM&Aに向けて本格的に動き始められましたか?

    川平史明氏:2021年末に開催されたfundbookさんのセミナーを受講したことが、第一歩になったと思います。セミナー後に個別の相談をしたこともあってM&Aが具体的にイメージできるようになり、翌月には担当アドバイザーさんとともに、M&Aに向けて動き出しました。

    当初はM&A成約まで半年から1年弱のペースでゆっくり進めていこうと話していたのですが、直後に当院がコロナ禍の影響を大きく受けてしまったのです。県内でオミクロン株が急速に感染拡大し、途端に運営状況が悪化してしまいました。私がここで勤めてきたなかでも、最も大きな困難でした。資金繰りの不安もあり、その時点からスピードを上げてM&Aを進めていただくことになりました。

    短期間でM&Aを進めるうえで、大変だったことはありましたか?

    川平史明氏:強いて挙げるならば、資料の準備が大変でした。ただ、分からないことがあったときもfundbookさんが丁寧に教えてくださったので、問題なく資料を作成することができました。私たちとしては大変だったことより、時間が限られた中でも素晴らしい法人を紹介していただけたことに感謝の思いでいっぱいです。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継
    医療法人かなの会 川平史明氏

    譲受法人の支えで、クリニックの経営や職員の意識が向上

    譲受法人様と面談されたときの感想をお聞かせください。

    川平史明氏:当院はリハビリに力を入れており、譲受法人さんもリハビリを得意とされていらっしゃいますので、まず率直に相乗効果がありそうだと感じました。譲受法人の代表からも「一緒にやりましょう!」という熱い言葉を掛けていただき、こちらとしてもぜひ手を組ませていただければと、初回の面談から思いましたね。本格始動から4~5カ月でM&A成約に至れたことは奇跡的と言いますか、本当に良いご縁をいただけたと身に染みて感じています。

    町田氏:私も、初めて代表にお会いしたときから、そのエネルギッシュさと、従業員や周りの人々を大事にされているお人柄を見て、「とても良い法人さんを紹介していただけたな」と嬉しく思ったことを覚えています。また、私は鍼灸の分野にも興味を持っていて、研究対象にしたいと考えていたことがあったんです。譲受法人さんは鍼灸治療にも強みを持たれていますから、色々と勉強させていただけるのではないかという期待も膨らみました。

    M&Aが成約した際の川平理事長のお気持ちはいかがでしたか?

    川平稔氏:もう、「良かった」の言葉に尽きます。クリニックの移転や建て替えから後継者のことまで、今後どうするべきかと模索し続けていましたし、とにかく職員の雇用を守るために一番良い方法は何だろうかと探っていましたから。譲受法人さんに経営を応援していただけることになり、安堵の気持ちはひとしおでした。私は80歳(取材時)を迎え、無事にM&Aも成約したので、これからは少しゆっくりさせていただこうかなとも思いましたが、患者さんやクリニックが必要としてくださるときはぜひ、引き続き力になっていきたいと考えています。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    M&A成約後、コザクリニックではどのような変化が表れているでしょうか?

    川平稔氏:今までも「コザクリニックの人たちは良心的だ」という評判は得られていたと思います。ただ、クリニックを長く続けていくには、そういった評判と同時に、経営もしっかりしておくことが大事です。譲受法人さんの代表が当院を見てくださるようになって、評判と経営の双方が乖離なく良い状態になったと実感しています。

    やはり経営者というのは、自身の生活をかけてその職を担っているものでしょうから、バイタリティーがあって、職員に対する気配りも大事にしてくださる代表が当院を率いてくださることは、すごく良いことだと思いますね。代表の「一緒にやっていくんだ!」という思いがこれからますます職員にも浸透していくと、さらに当院が発展していくのだろうと楽しみにしています。

    川平史明氏:職員にM&A成約を伝える際は、多くの人が離れていかないだろうかと心配していましたが、今も大半の職員が勤務し続けています。それに、譲受法人さんの施設との連携や職員間の交流も進んでいますし、譲受法人さんによる教育によって、職員の意識もますます向上している状況です。

    また、以前はほぼ私一人だけで財務管理をしていたのですが、譲受法人さんからノウハウの提供やサポートが受けられるようになり、負担もかなり軽減されました。様々な連携と支援によって、医業収益もM&A成約前に比べて倍近くまで伸長しています。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    クリニックの存続は患者の安心につながっている

    今後のコザクリニックに期待することをお聞かせください。

    川平稔氏:まずはこのコザクリニックが存続し、職員が安心して生活できる基盤を固めることですね。医療機関であっても、世の中の移り変わりに合わせて、その都度、柔軟に方向性を変えていくことは必要です。その際に、医療法人としての核となるものをしっかりと持ちながら、経営に長けた譲受法人さんからアドバイスをいただいていけば、最適な方向に進んでいけると信じています。医療も経営も、一人だけで全てができるとは考えられませんから、皆がお互いに協力し合うことはとても大切です。職員同士、そして譲受法人さんと当院との協力が相乗効果を生み出し、その雰囲気が患者さんや外に向けても伝わっていけば嬉しく思っています。

    町田氏:ありがたいことに、譲受法人さんとの取り組みによって、訪問診療が小規模から徐々に再開できるようになりました。川平理事長も市外の患者さんのところまで行かれているんですよ。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    川平稔氏:訪問診療はまさに、コザクリニックの一つの核です。

    訪問診療について少しお話させていただくと、診療報酬のルール上、訪問診療を行えるエリアは医療機関から16km以内という決まりがあります。今でこそ神経内科に対応する医療機関が増えてきましたが、当院を開設した20年前は県内にほとんどなく、その上離島に住む患者さんも多くいらっしゃるので、当時は何とか遠方の患者さんにも訪問診療を行えないかと、厚生局などへ熱心に掛け合ったものでした。その結果、専門的な治療が必要な患者さんを例外として認めてもらえたこともあります。それだけ訪問診療は必要とされていますし、私たちにとっても強い思いがあるんです。

    訪問診療の再開など、M&Aは患者様とコザクリニックの双方にとって喜ばしい結果を生み出しているのですね。

    川平稔氏:そう思います。クリニックがより良くなって経営を続けられ、そして求められる医療が提供できるのですから。

    いろんな事情で閉院するクリニックがありますが、そのときは患者さんをほかの医療機関にお願いするわけですよね。いつも診てくれていた医師や医療機関を丸ごと変えなければならなくなると、患者さんに対しても大きな不安や負担を与えかねません。しかし、M&Aでその医療機関が続いていくのであれば、職員も然り、患者さんも心配せずに過ごせられると思うのです。M&Aがなければ、ただ単に閉院することになる医療機関もあるでしょうから、医療業界にとってもこういう手段があって本当に良かったと思っています。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    個人レベルではなく、公共の視野で物事を考えることが大切

    医療法人 かなの会

    理事長 川平 稔氏

    十数年前までは、M&Aに関するネガティブなニュースの影響で、M&Aに対して悪い印象を持った人は少なくなかったと思います。しかし今は、後継者不在など様々な課題を解決する手段を模索するなかで、M&Aは必要だと認識する人が多くなったのではないでしょうか。実際に当院もM&Aを実施してみると、課題を解消しながら、これまでの長所はさらに伸びていると実感しています。

    人は物事に対する良い印象は忘れやすく、悪い印象の方が残りやすいものです。医療業界でも「M&Aをして良かった」というところは当院以外にもたくさんあるでしょうから、もしM&Aに対して悪い印象が払拭できないまま悩んでいる医療機関があれば、ぜひ良い事例にも目を向けてみてはどうかと思うのです。

    理事長である以上、年齢を重ねるといくら健康に自信があっても「このまま続けられるのか?何かあったときにどうするのか?」という、将来の不安は必ず出てきます。そのときに、個人のレベルで物事を理解するのではなく、職員や患者さんたちも考慮した公共の視野で物事を理解し、考えようとすることが大切です。今回のM&Aを経て、改めてそう思いました。

    訪問診療も再開へ 沖縄の専門医療を担うクリニックの事業承継

    担当アドバイザー 西山 賢太 コメント

    この度は、沖縄県でも数少ないパーキンソン病の専門治療を担うクリニックとリハビリに強みを持つ譲受法人のM&Aをご支援させて頂きました。

    クリニックには毎年延べ数万人のパーキンソン病患者が通い、地域に欠かせない医療機関の代表例のような存在でした。そこに突如として襲い掛かかったオミクロン株の影響で経営にも打撃が・・・、1日でも早くM&Aでお相手を見つけたいと願った矢先、奇跡とも呼べるタイミングと相性で現れたのが譲受法人でした。

    譲受法人の経営支援により患者数が増え、コロナ禍の影響で失われた業績も一気に回復、休止していた訪問診療も再開の目途が立ちつつあり、新たな風が吹いたことで職員にも活気が湧いてきたように思えます。

    理事長から成約式で言われた「いいお相手に縁を持たせてくれてありがとう」という言葉が今でも胸に残っています。医療法人かなの会が地域に欠かせない医療機関として更に存在感を増していく姿をとても楽しみにしております。

  • 地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    インタビュー

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    譲渡:社団医療法人養生会

    譲受:株式会社地域ヘルスケア連携基盤

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援
    • 譲渡企業社団医療法人養生会
      設立年月日
      1983年
      事業内容
      病院経営
      URL
      https://www.kashima.jp/
    • 譲受企業株式会社地域ヘルスケア連携基盤
      設立年月日
      2017年
      事業内容
      ヘルスケア分野での経営支援
      URL
      https://www.chcp.jp/

    福島県いわき市で、長年にわたって地域医療を支えてきた社団医療法人養生会。かしま病院をはじめ、特別養護老人ホームやケアハウスなどもグループで運営しながら、職員が一丸となって住民の健康と福祉の向上に尽力されています。

    県外の大学病院で勤めていた中山大氏は、父が創設したかしま病院から手伝いを求められ、地元へ戻ることに。そこで地域医療の重要性を目の当たりにし、理事長を引き継いで献身的に医療・看護・介護の地域連携の推進に取り組まれています。そんな中山氏にとって大きな壁となったのが、東日本大震災とコロナ禍でした。

    医師として現場に対応したいが、経営も見なければならない――。その葛藤から、経営支援を受けようと考え始め、医療グループの株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)と出会いました。CHCPの社名と事業内容はまさに、養生会の目指す地域連携そのものだと期待を寄せています。中山氏と、CHCPの代表取締役会長・武藤真祐氏、代表取締役社長・国沢勉氏の3名に、医療業界の課題や養生会の展望について伺いました。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    地域多機能病院のかしま病院。勤務当初は戸惑いの連続

    中山様が医師を志したきっかけやご経歴をお教えください。

    中山氏:私の父はかしま病院の創設者であり、もともと開業医でもあったため、私も物心がついた頃から「将来は医師になるんだろう」という環境にいたと思います。

    臨床研修医時代は心臓カテーテル治療の創生期で、その分野に魅力を感じた私は、研修を終えて大学に戻ってからもカテーテル治療を中心に対応していました。そうしているうちに、米国への留学の機会を得て、循環器科で1年半ほど臨床研究や論文の執筆、学会での発表などに携わり、帰国してからもしばらくはそういった仕事をしていました。

    そんなあるとき、かしま病院から「人手不足で大変だ」と手伝いに来るよう求められ、いわき市に戻ってきました。でも、最初は一時的な手伝いの予定だったんです。

    もともとはかしま病院を継ぐと思っていなかったのでしょうか?

    中山氏:私は末っ子ということもあって、かしま病院を継ぐなんて自分には関係ないだろうと思っていたほど、当初はまったく考えてもいませんでした。私が戻ってくる前から兄や姉夫婦が手伝いに来ていたのですが、当時兄は医大の仕事で多忙を極めていたので、「だったら、弟の私に」という程度で声がかかったのだと思います。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援
    社団医療法人養生会 中山大氏

    ですが、中山様は今もかしま病院で尽力されています。医師としてかしま病院に戻ってきて、お気持ちに変化はありましたか?

    中山氏:それまでは大学病院等で専門医として勤務していたため、循環器のことしか知らない状態で戻ってきたわけですが、地域多機能病院であるかしま病院にはいろんな症状の患者さんがいらっしゃいます。例えば、腰椎の圧迫骨折など、高齢者にはよくある外傷で来院された患者さんにも何をすればいいのか分からず、整形の先生に電話で聞いたりして、本当に「日々、勉強だな」と思うばかりでした。

    一方で、自分の得意とする分野の患者さんでも、併存症の状態が悪ければなかなか退院できない。大学病院とはまるで違う戸惑いの連続でした。今でこそ、重複して持つ病気を総合的に管理する医療は当たり前になっていますが、振り返れば私は20年ほど前から対峙していたということになります。

    今、中山様は医師としてどういうことを心掛けながら医療の現場に立っていますか?

    中山氏:常に“利他”を心掛けるようにしています。やはり、医療は中立的な立場でなければいけませんし、疾病や年齢で差別があってもいけません。それに、自分のことより相手を中心に考えることが大切です。若い頃の私は自分のやりたいことに目が向いていましたが、かしま病院に戻ってきてからは、「求められることにしっかり応えていこう」という意識を持って現場に立つようになりました。

    当法人のValue Statementには、①何物にも先入観を持って対応せず、医療・介護弱者の手助けを行うこと②他の施設が遂行困難な問題にこそ大きな需要があることを知ること③その仕事に誇りを持ち、決して皮肉はいわないこと――を掲げています。職員にも同じベクトルで考えてほしいと思い、この3つを明文化しました。「そんなの自分じゃなくてもいいでしょ」ではなく「自分がやらねば、誰がやる」と思って対応しようと、職員全員で心掛けています。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    格差、高齢者ケア、医療従事者の負担など、業界の課題は山積

    皆様が感じられる医療業界の課題についてお聞かせください。

    中山氏:地域医療に関わる立場からすると、やはり都市部と地方の格差が非常に大きな課題です。また、医業に関しては、「高齢者の管理」が目の前にある一番の課題だと思っています。例えば、脳梗塞を起こした場合、最初に救命センターで機能障害を最小限に食い止めてから、かしま病院のような回復期リハビリテーション病棟を利用することになりますが、高齢になり再発を繰り返すとどうしても回復機能は低下してしまうので、再発時に高次特定機能病院で診てもらえなくなってしまうといった現状があるのです。在宅や介護施設などでの療養中に身体能力の低下や、症状が急性憎悪した状態を「サブアキュート」と呼びますが、そういった方々を私たちがしっかりと管理していかなければいけないと考えています。

    かしま病院では、訪問診療を活用しながら集合住宅に住んでいる高齢者を包括的に管理できるような仕組みを作ったり、地域内で救命センターを持つ病院との協力関係を構築したりと、課題の解決に向けた様々な取り組みに力を入れています。高齢者が過ごしやすく、健康長寿を叶える地域「Age-Friendly City」を実現するのは単独では難しいですから、病院をハブとした地域内の連携を推し進めていくことも、今必要になっていると思います。

    武藤氏:私たちも在宅診療を行っていますので、中山先生が仰った課題は身に染みて感じています。医療業界の課題は様々ありますが、格差の問題はものすごい勢いで広がると考えられます。その理由の一つに、医局の構造の変化が挙げられるのではないでしょうか。以前は大学が中心となって医師が各所に派遣されていましたが、今は医師個人の選択に変わってきているように思うのです。若い医師たちへのある調査結果を見ても、「教育」や「自身の成長」が重視されていることが分かりますし、働き方改革の流れも踏まえると、今後は「自分の時間」も大事になってくるとも想定されます。そうなると、教育や希望の働き方を提供できる医療機関とそうでない医療機関との間で、人材の集まり方にますます格差が生じてしまい、結果的に地域医療の格差も広がってしまいます。

    また、高齢者のケアについても、一人暮らしの高齢者が増えていますし、入院先の病院が十分ではない地域も少なくないので、病院外で高齢者が安心して生活できる環境の整備がいっそう重要になっています。そのために訪問看護・介護、薬局などと連携する制度の充実化は課題だと思います。

    最後に、新しい仕組みやイノベーションを導入できるか否かが、格差をさらに助長するのではないかと懸念しています。ITの活用などで、より少ない人材でより良い医療・介護が提供できるようになるにもかかわらず、従前どおりのオペレーションを続けていれば、人頼みになる上に人材が集められない状況になってしまう。従って、イノベーションをきちんと導入していくリーダーシップや、支援する仕組みが今まで以上に必要になってくると考えています。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援
    株式会社地域ヘルスケア連携基盤 武藤真祐氏

    国沢氏:医療従事者や、特に医師が多忙すぎることも課題だと思います。理事長が典型的な例になりますが、理事長や医師が、診療から経営、さらには関係各所との会合まで、全てに対応しなければいけません。まして、病院は医療の中心という考えがあるので、退院後に在宅看護に移られた患者さんのことまでも考えていらっしゃるほど、医療従事者が地域全体を一手に担っていると言えます。今までは理事長や医師のやる気と「私が支えていく」という意志に頼って何とか成り立っていましたが、このシステムがいつまでも維持できるとは考えられません。長く続いた「気合いと根性」の風習を、これからの時代は変えていかなければならないと思っています。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援
    株式会社地域ヘルスケア連携基盤 国沢勉氏

    CHCP様の事業についてお教えください。

    国沢氏:私たちは医療グループとして、医療機関や調剤薬局、訪問看護・高齢者施設運営などの在宅サービス事業者に対し、資金・人材・ノウハウの提供を通じて、新しい地域包括ケアモデルを創出する支援をしています。これまでの医療支援は、医療機関のみ、調剤薬局のみ、といった形でそれぞれの業態に特化した支援をする事業者が一般的でしたが、私たちは全てのヘルスケア・プロバイダーを総合的に支援していることが特徴です。

    また、医療の現場はやはり医師・看護師と患者さんとの関係性が大事ですから、専門的な医療サービスは医療従事者にお任せし、経営部門を全面的にサポートするのが私たちのスタンスです。ヘルスケアと経営の両方に精通したメンバーが、医療従事者の皆様としっかりコミュニケーションを取りながら、一体となって経営を改善・推進する体制を整えていることも強みとなっています。

    CHCP様の社名にもある「連携」についてのお考えをお聞かせいただけますか?

    国沢氏:まず、これまで医療従事者にかかっていた猛烈な負荷を軽減するために、「機能の連携」と「サービス提供者の連携」の両軸が必要だと考えています。この2つは、医療従事者が医療行為に集中していただけるよう、経営などその他のことは私たちのような事業者がサポートすること、そして、調剤薬局や歯科医院などのいろんな医療資源と病院が連携して役割分担をすることを意味しています。

    格差においても、人材が集まる都市部ではできるようなことが、できない地域で生じてしまうものなので、私たちはその課題認識に則って、地域で連携と役割分担がうまく機能するインフラを構築したうえで、格差を解消していこうとしています。

    武藤氏:少子高齢化が進行し、社会保障費が国家財政を大きく圧迫している現状にある日本では、地域の医療機関・薬局・在宅系サービス事業者がそれぞれ孤軍奮闘しながら地域の医療インフラを支えている現行の医療・介護システムは限界に近づきつつあります。だからこそ、連携を進めなければいけません。また、後継者を含む人材の確保・育成や、IT化への対応は、組織の存続と地域医療の継続を左右する課題にもなっています。地域医療の担い手が誇りとやりがいを持って協働するネットワークを構築し、地域医療の現場から新しいイノベーションを創出していくことも私たちの大事な責務だと考えています。

    医師として経験した震災とコロナ禍。経営はプロに任せるべきと再認識

    中山様が理事長に就任して以降、特に印象に残っている出来事をお聞かせください。

    中山氏:東日本大震災での原発事故と昨今のコロナ禍は、本当に大きな出来事でした。震災後2カ月ほどは断水が続きましたし、避難地域からもそう遠くなかったため、当然、職員の中にも病院に残ると言う人もいれば、子どもが心配で避難させたい人など、いろんな思いや事情がありました。なので、私から正式に「避難しなさい」と伝えたんです。2週間ほどは職員が減って大変でしたが、通常診療を再開した途端に皆が戻ってきてくれてすごくありがたかったですし、職員との関係性がさらに強まったと感じました。このときに改めて「職員に対しても、私がしっかりやっていかないといけないな」と思いましたね。

    そして次は今のコロナ禍です。ワクチンも治療薬もなかった頃に地域の病院とコロナ患者の受け入れについて話し合ったのですが、そのときはどの病院も手を挙げなかったんです。ですが私は、「地域に求められていることだから、私たちがやらないといけない!」と思い、受け入れを決めました。震災の経験から、地域に応えていこうとする土壌が職員の間でもしっかり固められていたのだと思います。この規模ながら、今では県内で3番目に多くのコロナ患者を受け入れており、各職員がプロフェッショナルとして、誠実に義務を果たしてくれているなと実感するばかりです。

    震災やコロナ禍の経験を経て、中山様が病院を経営していくうえで何らかの変化はありましたか?

    中山氏:震災のときを思い返しても、本来ならば私は経営者としての目線も持っていなければいけなかったのに、どうしても現場に走ってしまったんです。その反省があったにもかかわらず、コロナ禍でも同じことをしてしまって。だったら、自分が不得手としていることは、その道に長けた人から全面的なサポートを受けた方がいいと考えたんです。数年前に母校の理事長が「教授は医療と学問に専念すべきで、医局の運営はプロがすべきだ」と話されていたのですが、まさにその通りだと思いました。こうした経緯から、経営支援や協業の仕方を勉強するようになり、fundbookさんのセミナーも受講させてもらいました。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    経営コンサルティングではなく、しっかりと中に入っていただける経営支援には、どういったメリットがあると思いましたか?

    中山氏:過去には当法人も経営コンサルタントに色々と相談に乗っていただいたことがあるのですが、その多くは短絡的な提案で、やはり長期的な視野で見ていただきながら、経営の母体を強固にする仕組みを作る必要があると思ったんです。また、病院経営をするうえで、ほかの医療機関と比較して自分たちがどの立ち位置にいるかを知ることも重要ですが、欲しいデータはなかなか手に入らないものです。その点、情報を豊富に持っている医療グループと協業できれば、メリットも大きいだろうとも感じていました。

    CHCP様と面談されたときのお気持ちをお聞かせください。

    中山氏:fundbookさんから最初にCHCPさんを紹介頂いた時は、「経営のサポートを受けながら、共に地域医療のあるべき姿を目指していくーー。そんな方法があるんだ!」と、イメージが覆りましたね。そして迎えた面談の日、お話ししていくなかで「私が求めていたことはこれだ!」と直感しました。私たちが目指していることは間違っていなかったんだと再確認できましたし、何よりCHCPさんの社名がそれを表していらっしゃいます。まだ経営支援が決まった段階でもないのに、面談後に浮足立っていたことを思い出します。

    CHCP様は、養生会様にどういった印象を受けましたか?

    国沢氏:最初に訪問したときから、とてもアットホームで良い雰囲気が醸成されていることがよく伝わってきました。しかも、そのアットホームさが病院の中だけに閉じているのではなく、地域に広く染み渡っているんです。地域のほかの病院や保育園とどう協業するのか、地域住民とどういった形で関係を構築するのかなど、医療機関を中心に皆で役割分担と連携をしながら地域全体をケアしていこうとされていて、まさに私たちが目指す地域医療の姿を体現されていると思いました。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    面談や見学を重ねた結果、養生会様にはどういった形で経営支援を提供されることになりましたか?

    国沢氏:経営の概念には、「リーダー」と「事業運営」の2つの側面があります。中山理事長をはじめ、養生会さんのトップマネージメントの方々から医療に対する思いを伺うと、皆様が本当にリーダーシップを持っていらっしゃることがよく分かりました。ですので、引き続き中山理事長やトップマネージメントの皆様にリーダーを務めていただきながら、私たちは事業運営の支援に徹し、そのうえで地域連携に向けて協力していきましょうと、そう気持ちを一つにしました。

    武藤様は養生会様や中山様にどのような印象を持ちましたか?

    武藤氏:長年にわたって地域医療に貢献されてきており、単なる医療機関ではなく「無形の財産」と言える存在になっていると思います。私も医療法人を運営していますので、地域を巻き込んでアットホームな雰囲気を作り上げることは決して容易ではないと重々承知しています。日々の診療やマネージメントを通じて実現されてこられたことを本当に素晴らしいと思うばかりですし、中山理事長の医師としての姿勢、そして地域における病院の価値の正当性を築き上げてこられた功績に、心から感銘を受けています。

    これまでの医療業界はイノベーションや協業などに馴染みが薄かったと思いますが、中山理事長はそういったことにも関心を持たれ、新たな価値を生み出せるのではないかと期待してくださっています。私自身、医師及びCHCPの立場として色々な活動をしてきましたので、中山理事長のお考えには大きな共感と尊敬を持っていますね。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    いわき市のこの地で「Age-Friendly City」を実現していく

    CHCP様からの経営支援が決まった際の中山様のお気持ちと、職員の皆様の反応はいかがでしたか?

    中山氏:私はもう「よしっ!」の一言でしたね。職員からは色々な反応がありましたが、ネガティブな意見はまったく出ませんでした。CHCPさんとお会いする前からも、全職員に向けて地域連携や多職種業務連携の話を頻繫にしていましたし、例えば訪問診療に行く最中にも看護師やドライバーとざっくばらんに意見交換をしていたので、「常日頃から言っていたことね」と、すんなり捉えてくれたのだと思います。

    CHCP様からの経営支援が始まってから、すでに何らかの変化は起きていますか?

    中山氏:今まで自分たちだけではできなかったことも、CHCPさんの丁寧なサポートのおかげで着実に進められています。収益構造も目に見えて向上していますし、いろんなことがものすごいスピードで前進していると、身をもって実感する毎日です。それに、現場もより未来志向になり、前にも増して明るくなったように思います。

    国沢氏:採用も、少しずつ強化しています。医療制度や教育はそんなに急激に変われるものではないので、まずは技術と熱意を持った人に集まっていただき、中長期的な視野で、段階的かつ確実に良い方向へと進んでいくことが大切です。私たちもその心づもりでチームをセットしているので、末永くお付き合いさせていただければと願っています。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    経営支援を受けるべきか悩んでいる医療機関に向けて、CHCP様から一言アドバイスをいただければと思います。

    国沢氏:経営支援や事業連携など、医療機関ごとに最善の方法は異なりますから、まずは色々な事業者をご存じの、fundbookさんのような立場の方々とたくさんお話しして、良い選択肢を提示してもらえればいいと思うんです。その後、私たちのような事業者とお話しする際にも、じっくり時間をかけて最適解を導けばいいのではないかと思いますね。「話をしたからには、何かしなければいけないのでは?」と悩む必要はまったくありませんし、第一歩として選択肢を広げることが大事だとお伝えしたいです。

    最後に、養生会様の目指す将来像や今後の展望をお聞かせください。

    中山氏:まずは、目の前にある高齢者救急問題をしっかりと解決していけるようになること。次いで、健康長寿を目指す高齢者に向けて、地域が一体となって親身な介入をしていくことが大きな目標です。当法人の中だけでも、病院のほかにグループホームや特別養護老人ホームもありますし、近くには小学校や保育園、複数の介護施設などもあって、実はかなり魅力的な地域なんです。医療から介護までシームレスにケアしていくことはこれからますます重要になりますから、かしま病院を中心に点と点を連携させ、この地域で「Age-Friendly City」を実現していきたいですね。CHCPさんの力もお借りしながら、地域での医療・介護・福祉の連携を推し進めたいと思っています。

    武藤氏:養生会さんのお取り組みは、いわき市の「街づくり」に直結していると思います。それだけに、養生会さんの発展が地域には欠かせないのです。地域医療や住民の方々の健康と福祉を守ることに、中山理事長や職員の皆様がさらに多くの時間と情熱を注げるよう、私たちも労力を惜しまず最大限のサポートをしていきます。

    国沢氏:当社の社名にもなっている「地域ヘルスケア連携」は、養生会さんがずっと前から力を入れてこられていることです。養生会さんの成功モデルや中山理事長の理念を、全国各地の同じような課題やニーズを持つ地域に向けて展開していくことも当社の使命だと考えていますので、良い成果を出して全国に広くインパクトを与えていきたいですね。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    職員たちが“良い夢”を見られる職場にすることが私の役目

    社団医療法人 養生会
    理事長 中山 大氏

    2015年に地域医療構想が策定されてからも、色々なところで格差は生じてしまっています。やはり、各々の医療機関が各々の考えで「連携を組んでいきましょう」と言っても、相当なリーダーシップを持った医療機関がないと、実現は難しかったと思うのです。今回のような協業によって、様々なシステムや人材、地域とのコネクションが広がっていけば、例え私たちが今までと同様の取り組みをしていたとしても、地域医療構想の推進力はもっと強くなっていくのだろうと感じています。そういう意味でも、経営支援や協業は、一医療機関の経営課題の解決にとどまらない、非常に大きな価値があるのではないでしょうか。

    地域のためにしっかりと真面目に働いてくれる職員たちにとって、もっと自慢できる職場にすることと、次世代の職員たちが“良い夢”を見られる職場にすることが、私の役目です。CHCPさんからのご支援もいただきながら、一歩ずつ実現していきたいと考えています。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    「医療と経営」それぞれの責任者で役割分担する必要がある

    株式会社地域ヘルスケア連携基盤
    代表取締役会長 武藤 真祐氏

    日本は原則として、医師・歯科医師でなければ医療法人の理事長になれない制度のため、結果として理事長が経営にも関わらなければならないケースが多くなります。しかし、診療報酬は年々複雑になってきていますし、中山理事長が仰る通り、震災やパンデミックなどの不確実な事態がいつ起こるとも限らない中で、従前のマネージメントスタイルだけではうまく対応できないこともあるかもしれません。また、医療機関としては、医療従事者に成長できる場所を提供して人材を集めていくことも、ますます重要になっています。こうした全てを、プロの医師である理事長だけに任せるということは、企業であればほぼ無理な話です。

    海外では、CMO(チーフメディカルオフィサー)と経営の責任者が役割分担をして、より良い組織にしていく動きはすでに一般化しています。日本でもこうした流れは今後ますます取り入れられると思いますし、そうならざるを得ない状況になっているのではないでしょうか。私たちは医療機関への経営支援を通じて、医療従事者の業務改善から地域医療の発展まで、医療を取り巻くあらゆる課題を解決していきたいと思っています。

    地域医療の課題解決に挑む、病院理事長が決めた経営支援

    担当アドバイザー 横山 朗 コメント

    医療法人の経営は、新時代を迎えようとしています。

    医療職中心で運営していく時代から、各々スキルを持ったプロが集い、スキルシェアをしていくこれからは、

    ・CMO(最高医療責任者)

    ・CEO(最高経営責任者)

    ・CTO(最高ICT・DX導入責任者)

    ・CAO(最高地域連携責任者)

    など、各々の役割分担を明確にした組織体の増加、今までになかった呼称も誕生していく可能性を感じています。地域の患者様・働き手となる生産年齢人口がこれだけダイナミックに変化する時代を迎え、変化し続ける医療機関が、その地域の地域医療の新しい形を創っていくのではないでしょうか。この度の経営支援が、養生会様の更なる発展に繋がるとともに、いわき医療圏の皆様にとって有益となることをとても楽しみにしています。

  • 「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    インタビュー

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    譲渡:アソシアードフィナンシャル株式会社

    譲受:株式会社F.L.P

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A
    • 譲渡企業アソシアードフィナンシャル株式会社
      設立年月日
      2008年
      事業内容
      保険代理店運営
      URL
      https://www.asociad.jp/
    • 譲受企業株式会社F.L.P
      設立年月日
      2005年
      事業内容
      保険代理店運営等
      URL
      https://www.f-l-p.co.jp/

    阪本勝氏は大手金融機関での勤務後、地元の奈良県で保険代理店業のアソシアードフィナンシャル株式会社を創業しました。創業の理由を「お客様目線で金融の悩みを解決したい」と話す通り、来店型保険ショップ「ほけんの扉」は、保険から住宅ローン、融資に至るまで、金融の悩みを包括的に相談できる店舗として、地域の皆様から親しみ深く頼られています。

    事業は順調に成長していながらも、末永くお客様をフォローし、従業員の安定雇用を守り続ける店舗の“未来”を、経営者として考えるようになった阪本氏。そのなかで、理念や考えに互いが共感できる企業と出会います。それが、同じ保険代理店業の株式会社F.L.Pでした。2022年9月に両社のM&Aが成約し、統合後も「ほけんの扉」ブランドはそのままに、F.L.Pの店舗とともに地域に根差した活動に尽力されています。阪本氏とF.L.P代表取締役社長の須山馨氏に、成約までの経緯や今後への期待について伺いました。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    お客様目線を第一に、金融の悩みをワンストップで解決できる店舗へ

    アソシアードフィナンシャル様を創業した経緯をお聞かせください。

    阪本氏:私は以前、金融機関で7年間勤めていましたが、当時はなかなかお客様目線で金融商品を提案できないことに、少なからず疑問を感じていました。大きな組織ではどうしても、お客様の悩みを解決する立場より、単なる販売員という立場になってしまうのかもしれません。こうした背景から、保険だけでなく住宅ローンや融資なども包括的に相談でき、しっかりとお客様目線でコンサルティングができる場所を作りたいと考えるようになりました。そうしてアソシアードフィナンシャルを創業し、来店型保険ショップ「ほけんの扉」を開店しました。私は生まれも育ちも奈良県なのですが、創業の地に奈良県を選んだのも「自分がお世話になった地元で、金融関連の悩みを持たれている人を支援したい」「自分が嘘をつかない環境で仕事をしたい」という強い思いがあったからでした。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A
    アソシアードフィナンシャル株式会社 創業者 阪本勝氏

    創業以降、経営で意識してきたことをお教えください。

    阪本氏:来店してくださったお客様の目線に立って悩みを解決することが何より大切なので、店頭に立つファイナンシャルプランナーの教育には特に力を注いできました。時間をかけてでも一人一人を丁寧に育て、質の高い接客を提供することが「ほけんの扉」の姿勢です。保険の相談だけでなく、住宅ローンや相続、税金など、お客様の様々な金融の悩みをファイナンシャルプランナーがワンストップで解決できる店舗づくりを意識してきました。

    また、金融だけでなく、医療の悩みも相談できる店舗にしたいと考え、別会社で訪問看護ステーション・在宅医療サービスの会社、「ほっとナビ」を創業しています。「ほけんの扉」のお客様の健康・医療に関する不安にも、両社が連携して寄り添っていける体制を目指してきました。

    F.L.P様の事業についても詳しくお聞かせいただけますか?

    須山氏:当社も「ほけんの扉」様と同様に、お客様のご要望をじっくりと聞きながら、顕在ニーズではなく潜在的なニーズを深掘りしていくコンサルティング提案を強みとしています。

    全国には数多くの保険ショップがありますが、同じ保険代理店業でも、考え方や運営スタイルは会社によってまったく異なるのが実状です。当社もお客様が気軽に足を運んでいただけるよう、相続相談や税務相談などにも無料で対応していますが、「ほけんの扉」様や当社のように、保険だけにとどまらないコンサルティング提案をしている会社はかなり稀な存在と言えます。阪本様が仰る通り、人材の育成は時間を要するものですが、一方で、口コミ評価やリピート率は高く、既存のお客様が別のお客様をご紹介してくださるケースも非常に多くあります。この強みをさらに伸ばしていこうと、日々取り組んでいるところです。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A
    株式会社F.L.P 須山馨氏

    「お客様の人生に寄り添う」という保険代理店の役目を果たすために

    阪本様がM&Aを検討された理由をお教えください。

    阪本氏:来店型保険ショップの“未来”を考える中で、M&Aを検討するようになりました。保険代理店は契約がゴールではなく、例えばその後入院したり亡くなられたりした際に、お客様ご本人やご家族の人生に寄り添ったフォローをしっかりと提供する役目を果たしていかなければなりません。お客様が永劫的に頼れる店であり続け、従業員の安定雇用も永く守られる環境をつくろうと考えると、いずれ大手企業の資本傘下に入るべき時期が来るだろうとは考えていました。

    阪本様はどういったきっかけでfundbookを知ったのでしょうか?

    阪本氏:私はほっとナビの子会社で、歯科医院の承継を支援する株式会社ほっとナビコンサルティングも運営しているのですが、fundbookさんとはそちらの事業の中で、3~4年ほど前から情報共有をさせていただく間柄になっていました。そして年月が経つうちに、私自身がアソシアードフィナンシャルの創業者としてM&Aを視野に入れるようになり、仲介を依頼する立場になったという流れです。ただ、fundbookさんに仲介を依頼したのは、昔からのつながりだけが理由になったわけではありません。これまでもいろんなM&A仲介会社や金融機関のM&A部門の方々とお会いしてきましたが、fundbookさんは特に行動力があって、私の思いにも寄り添っていただけると感じたからです。その印象の通り、「ほけんの扉」の将来を親身に考えていただきながら、今後の方向性と道筋を一緒に明確化してくだりました。

    F.L.P様は今回初めての譲受でしたが、どういった経緯でM&Aを検討されましたか?

    須山氏:当社は集客や認知度拡大に向けて、インターネットの検索結果で上位に表示される施策に力を入れています。ただ、首都圏を中心に店舗展開しているため、店舗がないエリアのお客様からお問い合わせがあった際には、当該エリアで懇意にしているほかの代理店様に紹介する形で対応せざるを得ませんでした。そのため、できれば首都圏以外の代理店様で当社と近い考えを持たれている企業があれば、ぜひ私たちと一緒になっていただきたいと以前から考えていたんです。コロナ禍以降も業績がスムーズに推移できたこともあり、2021年10月頃から本格的にM&Aを検討するようになりました。

    確かなサービス品質と経営理念に強く共感した両社

    両社様は、どのような企業をM&Aのお相手に探していたのでしょうか。

    阪本氏:アソシアードフィナンシャルが作ってきた企業文化に理解を示していただきながら、将来のビジョンをしっかりと持たれていることが一番大事だと考えていたので、お客様への対応方針や、従業員教育などへの考えが共通している企業が見つかればと思っていました。規模や業態については、オーナー企業ではなく大手保険会社や金融機関、上場企業などを視野に入れていました。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    須山氏:当社の場合、やはり私たちと同じように、コンサルティング提案に強みにもつ企業が一番の希望でした。加えて、お客様との信頼関係が強く、地域に根差した活動もされていれば、なお嬉しいと考えていました。ただ、そんな魅力的な企業が、タイミングよくM&Aを検討しているとは限りませんから、そう簡単には見つからないだろうとも思っていました。実際、これまでも数社と面談をしてきましたが、そのたびに、希望する企業と出会う難しさを感じてきました。なので、fundbookさんからアソシアードフィナンシャル様をご紹介いただいたときは、まさに、希望していたような企業だと、驚きすら覚えましたね。

    実際にアソシアードフィナンシャル様にお会いしていかがでしたか?

    須山氏:初回の面談から、経営理念や接客のスタンス、従業員教育に至るまで、色々なお話をさせていただいたのですが、その全てが当社の考えととても近く、親和性が高いと感じるばかりで、ぜひこのご縁を大切にしたいと強く思いました。アソシアードフィナンシャル様は経営理念に「金融のプロとして、質の高い提案・サービスを提供し、お客さまの経済的安定を導くとともに社会経済の発展に貢献する」と掲げられている通り、丁寧なコンサルティング提案と、地域や社会の発展に向けた活動に実直に取り組まれています。そこに感銘を受けましたし、親近感も持ちました。M&Aが成約した今では、社内用のホームページのトップにF.L.Pの企業理念「お客様の想いを受けとめ、安心を提供する」と並べて、アソシアードフィナンシャル様の経営理念も掲載しているほどです。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    阪本様は須山様とお会いしてみていかがでしたか?

    阪本氏:経営者として魅力的なお人柄でいらっしゃると素直に感じました。従業員の意見にしっかりと耳を傾けられている姿勢や、大きな視点で物事を捉えて判断されていることが、話の随所から伝わってきたんです。企業文化やスタンスも似ているので、お互いを尊重しながらお客様と従業員を守っていただけるのだろうと思いましたね。

    また、F.L.P様は首都圏各地の有名な商業施設でも店舗を展開されています。そういった知名度も生かしながら、関西圏の「ほけんの扉」のコンサルティングサービスをより広げていただけそうだという期待も膨らみました。

    信頼できる企業に託せたことで、従業員に「安心してほしい」と伝えられた

    M&A成約後の阪本様のお気持ちや、従業員の皆様の反応はいかがでしたか?

    阪本氏:私自身、創業時の思いを強く持って15年間歩んできたので、譲渡する寂しさは当然ありました。しかし同時に、経営者として従業員の今後を守る責任を果たせたという安堵もとても大きく感じていました。

    従業員には最初に私の口から伝えたかったので、譲渡契約書に印鑑を押して投函した後すぐに、私と役員で各店舗を回って従業員一人一人と面談しました。唖然とする人や涙する人など、いろんな反応がありましたね。長く勤めてきた店舗や、自分自身の今後はどうなるのかという戸惑いと動揺があったんだと思います。ただ、F.L.P様に対する信頼や私が得られた安堵感は確かなものでした。その気持ちのまま、従業員に「安心してほしい」と直接伝えられたことは結果として良かったと思っています。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    F.L.P様の従業員の皆様は、どのような反応をされましたか?

    須山氏:発表時こそ驚いた様子でしたが、以前から事業拡大の意向は折に触れて私から伝えていたので、すぐに「ほけんの扉」様を仲間として迎え入れる良い雰囲気が醸成されました。M&A成約直後から「ほけんの扉」様の接客や教育などのノウハウを学びたいといった熱い要望がたくさん寄せられているほどです。本格的な交流は体制を整えてからになりますが、近い店舗同士の交流や、オンラインミーティングによるコミュニケーションは、すでに活発化している状況です。

    F.L.P様は今回初めての譲受でしたが、今のお気持ちはいかがでしょうか。

    須山氏:保険業界は寡占化が進んでいて、中小規模の企業は淘汰の波に晒されている状況です。このため、当社にもM&A案件の提案は至るところからいただくのですが、M&Aの相手探しで一番重視している「経営理念」や「事業展開」といった要件が、二の次にされてしまうことは往々にしてあります。しかし今回、アソシアードフィナンシャル様と巡り合うことができたのは、fundbookさんが経営理念や事業展開に対する私たちの考えをしっかりと聞き入れてくださった結果だと思います。また、M&Aのイロハや心構えからアドバイスしていただいたことはとても心強かったですし、M&Aを進めていくなかでも細部まで気にかけて両社をサポートしてくださったので、本当に感謝しています。

    地域のお客様を多方面から支えていく

    阪本様は「ほけんの扉」様とF.L.P様の今後に、どういった期待を寄せていますか?

    阪本氏:まずは、お客様の期待に応え、困ったときはいつでも寄り添う店舗であり続けることと、従業員の安定雇用を今後も維持していただくことが、F.L.P様への一番の希望であり、期待していることです。また、今回は子会社化ではなく統合のため、アソシアードフィナンシャルの社名はなくなりましたが、「ほけんの扉」のブランドを永続的に発展させていただき、地域密着型の成長を目指していただければ嬉しく思います。

    一言に保険代理店と言っても、他社にはない優位性を高めるためには、保険事業にとどまらない取り組みや付加価値が必要です。私はこれまで、金融と医療を組み合わせて、お客様の人生に起きる様々な悩みをサポートする店舗づくりを目指してきました。今後もそういった形でサービスの幅を拡充し、地域の皆様の一生を支えられるお店として確立していただきたいと願っています。

    F.L.P様の今後のビジョンをお聞かせください。

    須山氏:「ほけんの扉」様のノウハウを共有しながら、お客様のご要望と潜在的ニーズを丁寧に深掘りするコンサルティング提案を引き続き強化し、地域の皆様に喜ばれるサービスや取り組みを各地に広げていきたいと考えています。「ほけんの扉」様という強力な存在が加わったことで、首都圏と関西圏の約30店舗で地域に根差したサービスが提供できるようになりました。その他の地域にも私たちと同じ方針や考えを持つ企業様がいらっしゃれば、今後も積極的に提携を呼びかけ、中期的には50店舗まで拡大していきたいと思っています。そうすることで、従業員とお客様の経済的な安定をともに果たしていきたいと考えています。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    最後にぜひ、阪本様ご自身の今後の目標や抱負をお聞かせください。

    阪本氏:ほっとナビ訪問看護ステーションは現在、全国15拠点(取材時)まで拡大しています。「ほけんの扉」と同様に、今度は医療の目線で皆様の問題や悩みを解決できる会社にしていこうと、尽力しているところです。今後もほっとナビの医療サービスを全国に広く展開していき、そして従業員の働きやすい環境を構築することで、また新たな分野で地域社会に貢献していきたいと考えています。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    経営者は企業価値を最大化する努力と、“きれいな引き際”が大事

    アソシアードフィナンシャル株式会社

    創業者 阪本 勝氏

    経営者には必ず、経営者としての幕を引くときがやってきます。そのときに一番大事なことは、経営者が利己的な考えだけで判断しないことです。全ての企業には、“企業物語”とも言うべき歴史があるはずで、その物語はお客様や従業員など、たくさんの人によって紡ぎ出されています。企業に関わる全ての人が幸せになるために、経営者は先を見据えた考えを持ち、承継に向けた入念な準備をしておかなければなりません。

    そして、経営者であるうちに、企業価値を最大化する努力をし続けることも重要だと思います。やはり企業価値を高めた状態にしておかなければ、譲渡することも難しいからです。「まだいける」「自分なら立て直せる」という時期は当然あるにしても、その状態がけじめなくズルズルと長引いていれば、それも経営者の利己的な考えに偏ってしまっているのではないでしょうか。企業は多くの方々の支えによって成り立っていますから、そうした皆様を裏切らない努力と判断をして、未来につながる“きれいな引き際”にすること。そこまでが経営者の責務だと考えています。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    中小企業のM&Aは日本社会の活性化につながる

    株式会社F.L.P

    代表取締役社長 須山 馨氏

    一社一社の企業には、それぞれの知恵や工夫、ノウハウなどがものすごく凝縮されています。M&Aは、そうした各社のリソースが合わさって、拡大・発展できる手段になるため、今後もさらなる活用の広がりが期待できるのではないかと思っています。

    日本は特に中小企業が多い国と言われていますが、とりわけ中小企業に関しては、大手企業とは違ったノウハウが無限にあると実感しており、それらをもっと融合していけば、もっと広く伝搬していく力が持てるものと考えられます。マーケットの変化など様々な要因により、事業拡大や事業展開の見直しが必要になることは決して珍しくありません。中小企業こそM&Aを活用し、各社の培ってきたリソースを相乗効果で進展させることができれば、日本の社会全体をより明るく元気に活性化していけるだろうと、私は信じています。

    「お客様と従業員を永劫的に守る」経営者の果たす責務とM&A

    担当アドバイザー 小倉 竜馬 コメント

    この度は、自社の更なる成長を目指す関西の保険事業者様と、M&Aを通じて関西進出を熱望する関東の企業様との企業提携のお手伝いをさせていただきました。

    アソシアードフィナンシャル社は、大阪・奈良を中心に展開する来店型保険ショップを運営される企業様です。阪本様が創業し、自社の優秀な人材と連携して関西を中心に商圏を広げられておられました。生損保両方を扱っておられ、財務基盤も安定していたものの、自社を更にスピード感をもって成長させるため、成長戦略型M&Aをご決断されました。

    F.LP.様は、関東を中心に来店型保険ショップを営む企業様です。自社のさらなるネットワーク拡大等を目的に本件を進められました。関東と関西では商圏文化が大きく異なるため、今回新規立ち上げではなくM&Aという手段を取ることで、スピード感をもった関西圏進出を検討されておられました。

    本件については、双方の事業親和性の高さはもちろんのこと、何より双方の企業文化・価値観が非常に近しいことがポイントでした。同じ保険業ではありながらも、顧客第一主義を貫き現場レベルまで徹底させる、またその価値観に沿った店舗作りを行うという考え方が双方にとっての今回のM&Aの決め手になったものと存じます。

    アソシアードフィナンシャル様がF.L.P様というパートナーとともに、さらに成長される未来をとても楽しみにしております。

  • 父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    インタビュー

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    譲渡:三豊工業株式会社

    譲受:松永産業株式会社

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A
    • 譲渡企業三豊工業株式会社
      設立年月日
      1961年
      事業内容
      包装資材販売
      URL
      http://www.sanpou-k.jp/
    • 譲受企業松永産業株式会社
      設立年月日
      1954年
      事業内容
      食品容器、包装資材関連総合商社
      URL
      http://www.e-msk.net/

    梱包資材の卸売業を営む三豊工業株式会社は、1961年に兵庫県神戸市で創業しました。地元企業からの厚い信頼を得ながら成長し、現在は全国に卸先を持つほど広い販路を持たれています。

    創業者である父親が急逝し、突如として2代目社長に就任した前田晃江氏。数年前から同社に勤めていたものの、入社当初は会社を継ぐつもりはなかったと言います。しかし、従業員とお客様を思う責任感は人一倍強く、「皆の将来のためにも、会社はこれからも続いていかなければいけない」と、経営者として選んだ手段がM&Aでした。

    梱包資材関連の総合商社である松永産業株式会社とめぐり逢い、2022年7月にM&Aが成約。松永産業の代表取締役社長・松永誠三氏が三豊工業の社長を兼任し、前田氏は会長に就任する形で、経営はますます強化されています。また、両社それぞれの得意分野、商材、エリアを最大限に生かした協力体制も、早速築かれ始めています。前田氏と松永氏に、M&A成約までの経緯や今後の展望について伺いました。

    地元企業とともに歩んだ60余年、受け継いだ会社を続けていくために

    三豊工業様の創業からの歴史についてお聞かせください。

    前田氏:当社は1960年に私の父が神戸で創業し、当時からずっと梱包資材の卸売業を手掛けてきました。色々な包装資材を取り扱っていますが、なかでも有孔シート(小さな穴が開いたフィルム)で食品を上下から覆って密着包装する「スキンパック」の販売に、特に強みを持っています。昔、甘いものが手に入りにくかった時代に、神戸の菓子メーカーが台湾から輸入した砂糖を使ったどら焼きを作り、「三豊工業さんで何か良い包装方法はないだろうか?」と、相談に来られたんだそうです。そのときに、資材メーカーと一緒にフィルムを改良した密着包装を開発し、それがスキンパックを取り扱う始まりになったと聞いています。どら焼きの人気とともにフィルムの売り上げも順調に拡大し、次第に全国の和菓子店や土産物店にも普及するようになったので、まさに地元企業とともに成長してきた会社だと思います。

    前田様が社長に就任された経緯や、経営者として意識されてきたことをお教えいただけますか?

    前田氏:もともと私は別の会社で営業の仕事に就いていましたが、あるときに父から「もしよかったら三豊工業に来てほしい」と言われたんです。別の会社で多くのことを学んできたので、それを三豊工業で生かせられればと思い入社しました。ただ、当初は会社を継ぐつもりなんてまったくなかったんです。最初は事務職から始めましたが、前職の経験を生かして数年も経たないうちに営業にも出るようになりましたね。そうして忙しく過ごしていた中、2004年に父が急逝してしまい、私が会社を継ぐことになりました。突然、経営者になった形ですが、やはり従業員のためにも売り上げをどう上げていくかと常に考えてきました。それに、お得意様を大事にする気持ちはよりいっそう強くなったと思います。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A
    三豊工業株式会社 前田晃江氏

    社長として20年近く率いてこられましたが、M&Aを検討し始めたのはいつ頃でしょうか?

    前田氏:メディアでもM&Aに関する情報を目にしていたので、5年ほど前から自分ごととして意識し始めていました。しかしそこから今日に至るまでには、いろんな困難がありました。4年前の台風では阪神間で数百棟が浸水する記録的な高潮に見舞われて、当社もその影響を大きく受けました。それから間もなくして、次はコロナ禍の打撃を受けるなど、目の前の困難を乗り越えていくうちに、M&Aもしないままあっという間に5年が経ったように感じています。

    そうした苦境の中でも力強く事業を続けてこられた三豊工業様が、なぜM&Aを決断されたのでしょうか。

    前田氏:それは、会社を存続させるためです。従業員の生活や将来のためにも、会社は続いていかないといけませんから。人間の寿命は延びていますが、不老不死ではありません。私も健康には気をつけていますが、いつかは次の世代に引き継いでもらわなければいけないと前から考えていました。私には娘と娘婿がいるのですが、二人とも別の仕事をしていますし、二人には自分の好きな仕事を続けてほしいと願っています。それに、世襲制のようにご子息が家業を継いだケースを色々と見ていても、本当に「やりたい!」と思って継いだ人でないと、会社を継続するにも難しい局面が多々あると思うんです。向き不向きもあるでしょうし、「経営後継者として適した人にやってもらいたい」と考えた結果、M&Aが最善の手段だと判断しました。

    M&Aを進めるうえでも不安や迷いはなかったのでしょうか?

    前田氏:当社は父の代からずっとお世話になっている会計事務所があり、そこの税理士さんにM&Aを検討していると相談すると「そういう方法もあるよね」と、肯定的に話を聞いてくれたんです。もちろん、「同じ業種の会社がいいのか?」など、考えることはたくさんありましたが、fundbookの担当アドバイザーさんも、いろんな相談に乗ってくれながら一生懸命に取り組んでくださったおかげで、無事ここまで進めてこられました。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    両社の強みを生かし、更なる発展へ

    fundbookがご提案したお相手は、松永産業様でした。面談される中で、お互いの印象はどのようなものでしたか?

    松永氏:当社が取り扱ったことがないスキンパックは、三豊工業さんの一番の特徴であり、強みだと思いました。スキンパックは業界の中でもニッチな商材なのですが、三豊工業さんは長年の実績をお持ちですし、全国への販売もされています。また、スキンパックを全国展開しながらもしっかりと地域密着型の事業を展開されていて、地元企業からの信頼が厚いところも魅力だと感じました。当社も以前は神戸に営業所を構えていましたが、阪神大震災によって営業所を閉じることになり、以降は本社のある大阪から営業と物流を行っています。ですが、商売というのは地元に拠点がないと難しく、神戸の卸先は大幅に減少してしまいました。なので、地場に強い三豊工業さんと力を合わせて、神戸での商売をもう一度強化していきたいと考えたんです。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A
    松永産業株式会社 松永誠三氏

    前田氏:松永産業さんは、何と言っても会社の規模や取り扱う商材の豊富さが強みだと思います。特に、チェーン店のスーパーマーケットにもたくさん商材を卸されていらっしゃいますから。当社は容器やトレーなどに関してはあまり多く取り扱っていなかったので、そこに強みを持つ松永産業さんと手を取り合って、当社の販路も広げていきたいですね。

    M&A成約後、三豊工業様の従業員の皆様はどのような反応をされましたか?

    前田氏:私自身、M&Aは良い選択だったと確信していますが、従業員は当然、最初は少し心配そうな様子でした。ただ、私が60代を迎えていたこともあって、M&Aが成約する以前の「誰が後を継ぐんだろう?」という心配の方が大きかったように思います。松永社長も当社に何度も足を運び、従業員といろんな話をしてくださったので、そうしていくなかでだんだんと従業員の不安や心配は解消されていきましたね。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    時代とともにニーズが変わりゆく包装資材業界

    両社様ともに包装梱包資材を取り扱う事業を展開されていますが、業界特有の課題などはあるのでしょうか?

    松永氏:包装資材や容器にはプラスチックなどが使われますから、やはり環境問題は大きな課題だと思います。私たち卸業者は直接製品を作っているわけではないので、代替商品の提案など、できることは限られています。それでも、植物由来の原料を使った資材や紙の資材、薄くて軽い資材などを提案して、できるだけプラスチックを使う量を少なくしようと努力しています。植物由来の原料であれば、使用後に燃やしてCO2が発生しても、植物は成長過程でCO2を吸収している分、全体のサイクルで見るとCO2排出量が増加しないカーボンオフセットにもつながりますからね。

    前田氏:昔は食品を買うと新聞紙に包んでいたり、市場(いちば)でも木製のトロ箱が使われたりしていましたが、だんだんとプラスチックや発泡スチロールの入れ物に変わりました。しかし、廃棄方法の煩わしさや環境問題の観点から、自然に還りやすい素材が再び求められてきています。資材を作るメーカーも、耐水性や保冷力の高い段ボールを開発するなど試行錯誤をされていますから、私たちもそうした時代の変化に対応した販売をしていく必要があると感じています。

    松永氏:両社とも主に食品の包装資材や容器を取り扱っていますが、消費者が急に食品を口にしなくなるわけではないので、この業界自体は普遍的に続いていくだろうと思っています。環境への配慮はもちろん重視しながらも、食品に関わるからこそ「安心安全」も常に大事にしなければいけません。また、お店にとっては容器にあまりコストをかけたくないことも重々理解しています。環境への配慮や安心安全といった“質”と、適正な“価格”を両立し続けないといけないと常に心掛けていますね。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    お取引先様や消費者の声を傾聴しながら、事業を続けられているのですね。

    松永氏:そうですね。一般家庭にしても、1世帯あたりの人数が減少していたりと、家庭環境もどんどん変化しています。人数が多かった頃はスイカを丸ごと買っていたのが、最近ではカットされた状態で店頭に並ぶことが一般的になっていますよね。カットすればラップをしなければいけませんし、ブロックカットであればカップも必要になります。それに、食卓に総菜を取り入れる世帯も多くなっているので、実は包装資材や容器というのは、昔に比べて用途も種類も増えているんです。

    前田氏:最近では、「自宅用の買い物には簡易包装がいい」という声が聞かれるようになった一方で、ギフトは包装に凝る傾向が強まっています。当社も日々様々な要望をいただいています。日本は風呂敷や熨斗の文化がありますし、マナーや風習もしっかり受け継がれているためか、“包むこと”に対する意識が高いのかもしれません。そう考えると、包装というのは本当に難しい世界でもあり、日本らしさが表れるところでもあると思いますね。

    事業の強みと社風の良さを、存分に生かしていく

    前田様は三豊工業様の会長に就任し、松永様が両社様の社長を兼任されています。松永様から見た三豊工業様の様子はいかがですか?

    松永氏:従業員同士のコミュニケーションが非常に活発で、皆さんの仲や雰囲気がとても良い会社だとつくづく実感します。三豊工業さんが60年以上会社を続けてこられたのも、事業の強みに加えて、こうした社風もあってこそお客様に受け入れられていると思います。なので、今の良さはこれからも存分に生かしていきたいですね。

    松永産業様は今回が2度目のM&Aですが、グループに迎え入れるお立場として、感じられていることはありますか?

    松永氏:長く継続されてきた企業ばかりですので、今までの経験や実績への尊敬の思いが大きいです。グループになったからといって、急激に松永産業の色に変えようとはまったく思いませんし、互いを尊重しながら徐々に馴染んでいく形が一番理想だと思います。当社の従業員を見ていても「三豊工業さんに行って新しいことを知りたい」と、積極的に手を挙げてくれる人がいます。それほど、グループ内で良い関係を構築していこうとする雰囲気が現場からも醸成されていますよ。

    前田氏:コロナ禍でのM&Aだったので、従業員同士の直接の交流はまだまだ制約が大きいですが、落ち着いてきたらもっと活発化させようと話しているところです。今できることを着々と進めつつ、皆で親睦を深められる日が来るのを楽しみにしています。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    早くも協力体制を築く両社。今後も安心安全で人に喜ばれる食を届け続けたい

    M&A成約からわずか1カ月半(取材時)ですが、すでにご両社で動き始めていることがありましたら、ぜひお教えください。

    松永氏:早速、両社間で仕入れルートの見直しを始めました。同じ業種とはいえ、それぞれに得意分野があります。お互いの得意なところを融通し合えば、仕入れコストが抑えられ、その分をお客様に還元できますからね。

    前田氏:お客様の要望に応えていくためにも、仕入れルートの見直しは非常に重要です。もちろん、そう簡単に進められることではないので、これからいくつものハードルが立ちはだかるかもしれません。ですが、「今まで通りにやっていては何にもならへん!」と強く思うんです。新しいことをすると、しんどいと感じることもあると思います。でもそれを乗り越えていかないと本当の改良にはなりませんし、発展にもつながりません。松永産業さんと一緒に、三豊工業が良い方に変わっていくことこそが私の願いです。今からしっかりと改良していけば、ゆくゆくは従業員の負担ももっと軽減していけるものと期待しています。

    松永氏:仕入れルートのほかにも、今後は物流の効率化も図っていく計画です。三豊工業さんは営業担当者が配送も兼務している一方、松永産業は営業担当と物流担当を分けています。そのうえ、三豊工業さんの地場である神戸の中でも、松永産業の配送エリアと被る部分がありました。それであれば物流を一本化して、三豊工業さんの営業担当者がより営業に専念できる体制を作っていくよう、戦略を練っているところです。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    最後に、両社様の今後の抱負をお聞かせいただきたく思います。

    松永氏:当社は経営理念の一つに「食品包装を通じて食品の流通に寄与し、継続可能な社会の創造に向け努力を続けます。」と掲げています。食のサプライチェーンの中でも、私たちは食品を安全に保つための商材を扱っており、私たちが抜けてしまうと消費者に食品が届かない事態にも陥りかねません。また、一度売って終わる商材とは違い、食品の包装や容器はほぼ毎日使用されるので、ほとんどのお取引先様とは長いお付き合いになります。食の流通を切らさないことを使命に、今後も安心安全な商材を適正な価格で販売し、適正な利益を得ながら、長く継続できる商売をしていきたいと考えています。

    前田氏:私たちの関わる業界で最近起きた大きな変化の一つに、レジ袋の有料化が挙げられると思います。これを機に皆さんがエコバックを持ち歩くようになりましたが、やはり食品によっては衛生面が心配なものや、お寿司などお手持ちのエコバックでは傾いたり崩れたりして、きれいに持ち帰れないものもあります。お店側からすると、お客様には安心安全かつ、作りたてのきれいな状態で届けて食を楽しんでいただきたいという思いがあるので、商品の特性に応じた専用の袋を、環境に配慮した素材に替えて用意しておきたいという声はよく耳にするようになりました。袋や容器には、食品の作り手と販売者の気持ちまでもが詰まっているのです。私たちもその気持ちに寄り添い、これからも安心安全で、人に喜ばれる食を届け続ける責務を果たしていきたいですね。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    会社を「手放す」ではなく、「良くする」ために自分ができること

    三豊工業株式会社

    取締役会長 前田 晃江氏

    日本には、優れた技術を持つ小さな町工場や、世界に誇れる伝統工芸・伝統建築など、後世に残していくべき事業や職人の技が数多く存在します。しかし、そうしたところからも経営者や職人の後継者がいないという話はよく耳にします。素晴らしい技術や事業を未来につなげていくうえで、M&Aは役立つ手段になると思いますし、ひいては日本の発展にも寄与するのではないかと考えています。

    企業には大事な従業員がいて、彼らを守っていかなければいけません。なので、経営者は先々のことまで、そして次の代のことまでを考えておく必要があります。今日は元気でも、明日も本当に大丈夫なのかは誰にも分からないものなので、根拠のない「何とかなるわ」という考えでは、責任を全うしているとは言えないのです。

    次の代の最適な人材に経営を引き継いでもらうことは、会社を「手放す」ことではなく、会社を「より良くしていく」ために自分自身ができることだと、私は確信しています。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    M&Aは成長戦略の一環として有効な手段になる

    松永産業株式会社

    代表取締役社長 松永 誠三氏

    以前、松永産業の創業者である私の父から、「大阪は商売人が多いから、皆が皆、同じ1社から仕入れるのではなく、自社としっかり組んでくれる仕入先を持ちたがると思う」という話を聞いたことがあります。当社は、1954年の創業から大阪の地で着実にお取引先様との信頼関係を築き上げ、その実績を糧に大阪以外の地でも営業所を開設して、その土地に根付いた販売を続けてきました。そんななか、阪神大震災で神戸営業所の閉店を余儀なくされ、無念にも神戸での商売の大部分を失ってしまったという経験があります。

    今回、神戸の地場に強い三豊工業さんと手を組めたことで、当社は再び神戸で販売展開できるようになり、三豊工業さんにとっても販路拡大が可能になります。今の社会の状況を踏まえると、後継者不在によるM&Aが今後も増えると考えられ、三豊工業さんも同じような課題を持たれていたと思います。それでも、前田会長は「会社の発展」を常に念頭に置いて、M&Aを進めてこられました。M&Aは譲渡企業と譲受企業の双方にとって、成長戦略の一環として有効な手段になると大いに期待しています。

    父から継いだ会社を未来へつなぐために。私が選んだM&A

    担当アドバイザー 中村 優介 コメント

    この度は、長年にわたって地域のお客様から信頼をいただいている地域密着型の企業様と、阪神淡路大震災で一度その地域を撤退された企業様の資本業務提携をお手伝いさせて頂きました。

    一見同じ事業を行う企業様同士のM&Aに見えますが、顧客層、営業スタイルはそれぞれ異なっており、お互いの強み弱みを補完し合える、両社にとってとても良いご縁談だったと感じております。

    従業員様開示に立ち会った際、ある従業員の方が「これから期待と、期待と、期待しかないです!」とお話されていたのが非常に印象的でした。世の中にはまだまだ我々の提供するサービスを待っている方が大勢いらっしゃるのだと改めて感じました。

    これからも、企業様の存続・発展に寄与できますよう精進して参ります。

  • 「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    インタビュー

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    譲渡:株式会社シーラソーラー(旧社名 日本太陽光発電株式会社)

    譲受:株式会社シーラテクノロジーズ(旧社名 株式会社シーラホールディングス)

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A
    • 譲渡企業株式会社シーラソーラー(旧社名 日本太陽光発電株式会社)
      設立年月日
      2013年
      事業内容
      太陽光発電設備販売
      URL
      https://syla-solar.jp/
    • 譲受企業株式会社シーラテクノロジーズ(旧社名 株式会社シーラホールディングス)
      設立年月日
      2009年
      事業内容
      投資用不動産開発、不動産クラウドファンディングなど
      URL
      https://syla-tech.jp/

    「人と環境に貢献できる仕事がしたい」。その思いから、30歳で太陽光発電業界に就職し、2013年には地元・愛知県一宮市で日本太陽光発電株式会社(現株式会社シーラソーラー)を設立した上本貴雅氏。法改正や政策の影響により、変動が激しい業界で10年にわたり堅実な経営を続けてきました。

    元々はM&Aを本格的に考えていなかったという上本氏。しかし、投資用不動産開発や不動産クラウドファンディング事業などを手掛ける株式会社シーラテクノロジーズの杉本宏之会長との出会いによって「成長戦略としてのM&A」という道が大きく拓き、両社は2022年2月にM&Aの成約に至ります。

    再生可能エネルギーと不動産の強みを掛け合わせ、環境を保全しながらも豊かな生活を両立できる世界を目指し、両社の協業はすでに始まっています。

    上本氏と後継社長の淵脇健嗣氏、そして杉本氏の3名に、M&A成約までの経緯や今後の展望について伺いました。

    ※譲渡企業・譲受企業は2022年7月1日に社名を変更。本記事では変更後の社名(譲渡企業:株式会社シーラソーラー、譲受企業:株式会社シーラテクノロジーズ)で記載

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    創業から10年。常に意識してきた「堅実な経営」

    (株式会社シーラソーラー 上本貴雅氏・淵脇健嗣氏インタビュー)

    創業の経緯をお聞かせください。

    上本氏:私は若い頃から独立願望が強く、27歳でアパレルブランドを立ち上げたのが最初の起業でした。その後、太陽光発電の業界に入ったのは30歳のころ。ちょうどクリーンエネルギーの太陽光発電に注目が集まり始めていて、私も以前から環境問題には大きな関心を寄せていました。さらに、私生活では子どもが生まれるタイミングだったんです。なので、人と環境に貢献できる仕事をしながら、しっかり稼いで家族も大事にしたいという思いで、この道に進む決意を固めました。独立を前提に太陽光発電会社で雇っていただき、4年近くの下積みを経て、2013年に日本太陽光発電を設立しました。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    株式会社シーラソーラー 上本貴雅氏

    上本様はこれまでの10年間、どのようなことを意識して経営されてきましたか?

    上本氏:経営指針に掲げている通り、とにかく「堅実な経営」を常に意識してきました。経費の使い方がずさんで苦労している会社も見てきたので、そういう経営はしたくないなと思っていましたから。当社を創業したときは、太陽光発電設備の設置に対して税制優遇がありました。なので、利益が出た分で融資を受けて自社の発電所を設置し、資産として保有してきました。無駄な固定費をかけず、健全なキャッシュフローと資産運用を続けるように心掛けてきたと自負しています。

    地元の一宮市で起業されたのは、何か理由があったのでしょうか?

    上本氏:正直なところ、最初は少し離れた場所での起業も考えました。地元だとやはり失敗できないというか、後に引けませんから。しかし、それに逃げることなく不退転の覚悟で臨もうという決心から、地元での起業を決意しました。

    太陽光発電業界には、どのような課題があると感じられていますか?

    上本氏:大手企業に比べ、中小・零細企業は「情報」で不利になる場面がしばしばあります。例えば、2012年7月1日にFIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)がスタートしたとき、大手企業は初日から売電を開始していました。一方、中小・零細企業は電力会社に問い合わせても、初日時点で申請の仕方すら分からないという状況。そのときは、特に情報を早く取得できないことによって、不利益を感じましたね。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    その課題は、今回M&Aを検討された理由にもつながっているのでしょうか?

    上本氏:むしろ、決断の理由になったかもしれません。やはり、資本が大きくなれば、情報の取得も早くなり、ビジネスとしての主導権も握れますから。ただ、実のところ、もともとM&Aをする気はまったくなかったんです。以前から何社かのM&A仲介会社が訪問してくださっていて、お話も聞いてはいたのですが、そこまで本気になれず。しかしfundbookさんからシーラテクノロジーズさんをご紹介頂き、お話するうちに「会社を成長させる手段」としてM&Aが有効であると考えるようになり、本格的に検討するようになりました。

    人柄とシナジーに惹かれ、会社のさらなる成長を確信

    譲渡先に不動産事業のシーラテクノロジーズ様を選ばれた決め手をお聞かせください。

    上本氏:シーラテクノロジーズさんの手掛けている事業は、当社にとって、ものすごく強みになるんです。特に太陽光発電にかかわる用地取得の面で不動産は強化したい部分でしたし、マーケティングにも長けていらっしゃいます。また、独自のクラウドファンディングやマイニング事業という強みを持っており、当社が関心を持っていた分野なので、成長に向けて事業の幅が広がると感じました。また、シーラテクノロジーズさんの方でも、今後再生可能エネルギーが必要だと感じており、その中で太陽光発電装置の付いたマンションを販売したいとのことでしたので、当社とのシナジー効果が高いと感じました。

    あとはやはり、杉本会長のお人柄ですね。最初にお会いした時点で、M&Aを本格的には考えていませんでしたが、お話を重ねていくうちに「一緒に手を組めば、さらに会社が成長できる」と確信するようになりました。

    杉本様とはどのようなお話をされたのでしょうか?

    上本氏:私の心が最も動いたのは、杉本会長の「一緒にやっていきましょう!」という言葉でした。会社を譲渡して去るつもりはありませんでしたから、今まで通りに会社の経営に携わりながら、シーラテクノロジーズさんのリソースも活用させていただくことで、当社の事業の幅が広げられる。そう考えると、M&Aをしない理由がなかったんです。太陽光発電業界は売電のルールなど様々な制度の変更により、中小規模のミドルソーラー発電所よりも、大規模なメガソーラーの建設ニーズが高まっています。そうなると、発電所を1基造るにも、土地の取得から造成工事、パネルの仕入れなどにかかる初期費用も、今までと比べ物にならないほど高騰しています。「業界として、資金調達力が重要な経営課題となっている。しかしM&Aを実行すれば、その課題を乗り越えながら、会社をさらに成長させていける」――そんな期待を持つようになりました。

    今回のM&Aは、今後の業界の動きをしっかりと見据えたうえでの決断だったのですね。

    上本氏:先を見越していないと怖いですからね。これまでも3年以上先を見据えながら、慎重に経営を続けてきました。ただその中で、私自身、経営者としての限界や壁を感じる場面もありました。なので、今回のM&Aのお話が進んでいくうちに、「シーラテクノロジーズさんと組む事で、経営者としてもう一度学び直したい。自分自身ももっと成長したい」という思いも抱くようになりました。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    優秀な後継社長と共に、さらに進化したマネジメントへ

    シーラテクノロジーズ様とのM&Aについて、社内の反応はいかがでしたか?

    上本氏:最初に、これまで私についてきてくれた幹部の3名に話をしたら、「社長がいなくなってしまうのではないか?」と不安に思ったようでした。なので、「譲渡後に私が去るわけでもなく、むしろ会社をもっと成長させるためのM&Aだから、皆にとってプラスになるんだよ」と、真摯に伝えてきました。

    M&A成約後は、シーラテクノロジーズさんから当社の後継社長として淵脇さんが来てくれましたし、私もファウンダーとして経営に携わっています。長年、太陽光発電事業に従事してきた私と、数百人規模のチームを率いてきたマネジメント経験の豊富な淵脇さんとの二人体制で経営するようになったので、以前よりもきめ細やかなマネジメントが可能になりましたね。当初は従業員も不安だったと思いますが、離職もなく、社内の雰囲気もより良くなったと感じています。

    淵脇様がシーラソーラー様の後継社長に就任された経緯をお教えいただけますか?

    淵脇氏:私は太陽光発電とはまったく違う畑の出身で、以前は外資系の医療機器メーカーに勤めていました。シンガポールで各国の病院に製品を届けるチームのリーダーを務めたり、日本でも800人ほどの組織のリーダーとして、業務改善や組織改革に取り組んだりと、さまざまな経験を積んできました。2019年にシーラテクノロジーズの杉本会長による不動産セミナーに伺ったご縁から、杉本会長ともお話する仲になり、「一緒に仕事をしようよ」とオファーをいただき、何度かお話を重ね考えた末に、シーラテクノロジーズへと転職しました。その頃、両社のM&Aの話も進んでいたようで、転職前からも上本さんとは2回ほどお会いしました。様々なご縁が重なって、M&Aが成約した当日からシーラソーラーに来ています。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    株式会社シーラソーラー 淵脇健嗣氏

    上本様から見た淵脇様の印象はいかがですか?

    上本氏:大きなチームを率いてきた人ですから、とてもエネルギッシュで行動力も抜きん出ていますね。その上、財務やマネジメントについてもとても詳しく、丁寧に会社を見てくれているので、「優秀な社長が来てくれた」と思うばかりです。太陽光発電や電力に関する知識の吸収の早さにも驚かされていますよ。通常、M&Aによるシナジー効果は短期的ではなく、長期的に見なければなりません。しかし、既に今の状況を見ても、淵脇さんのような優秀な人が当社に来てくれて、きめ細かいマネジメントがなされています。また、自分自身もファウンダーとして「今まで以上に努力しよう」と思えている。こういった環境が生まれているだけでも、既にシナジー効果が発揮されています。これは、シーラテクノロジーズさんとグループになったおかげだと思いますね。

    淵脇氏:シーラソーラーに来た当初から、上本さんや従業員の皆さんが、電力業界の構造や、電力の仕組みまで一つ一つ教えてくださったんです。私は医療系の出身ですし、会社経営も経験していないので、こういったレクチャーを日々うけることで、アップデートができました。そこに、太陽光発電とは違う分野にいたからこそ得られた経験を、当社で存分に生かしていきたいと思っています。

    「太陽光発電で日本一」を目標に、新たに広がる構想

    今後、シーラテクノロジーズ様とどういった事業を展開される計画でしょうか?

    上本氏:グループ間の新規事業として、「マイニングソーラー」の開発がすでに動き始めています。現在、暗号通貨の計算処理を行った報酬として、新規発行された暗号通貨が受け取れるマイニング投資が注目されています。シーラテクノロジーズさんもマイニングができる高性能マシンを販売していますが、マイニングマシンは高度な計算を行う分、多くの電力が必要です。そこで、その電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄って、環境にやさしい投資手法にしようとしたものがマイニングソーラーです。当社も以前から関心を持っていた分野だったので、楽しみはひとしおですね。このほか、既存事業も業容・エリアともに拡大が進んでいます。これまでの施工実績が豊富な愛知県や岐阜県を引き続き強化しつつ、徐々に範囲を広げています。また、当社は土地の取得から建設、販売、保守、さらには財務のご支援まで、お客様が求める一から十までを一貫して手掛けることが可能です。この強みを最大限に生かして、環境問題の解決にも積極的に取り組んでいきたいですね。

    淵脇氏:2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、国や大手企業が大規模な施策に取り組まれています。しかし私たちはそこに参入するというよりも、シーラグループだからこそできる環境対策に力を入れるべきだと考えています。環境問題は結局のところ、一人ひとりの意識や行動につながっている問題です。なので、“個人”が太陽光発電に関われるプラットフォームやコミュニティを作っていくべきだと思いますね。例えば「太陽光発電×農業」「太陽光発電×キッチンカー」「太陽光発電×宇宙開発」など、太陽光発電をきっかけに、自分ごと化して考えられるコミュニティが創出できれば、環境改善は次のステージに進むのではないでしょうか。シーラグループはブランド力もありますし、不動産を通じて社会貢献・地域創生につながる事業に応援型投資ができるサービスも展開しています。これらのリソースを活用すれば、当社のコミュニティ構想は実現していけるはずです。私たちの構想に共感を持ってくださる企業や人々の輪を広げるためにも、発信をより強化していきたいと思っています。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    上本様と淵脇様から、今後の抱負をお聞かせください。

    淵脇氏:前職で「どうすれば組織を改革できるか?」と悩んでいたときも、楽しみながら仕事をしていたからこそ、いろんな成果が出せたと思っています。なので、今一緒に働いている仲間の皆さんがしっかりと意義を持って、かつ幸せに楽しく仕事ができる雰囲気を率先して作っていきたいですね。そして、パートナー企業の皆様にも「シーラソーラーと一緒に仕事をしていて楽しいし、ワクワクする」と思っていただける企業にしていきたいと考えています。

    上本氏:目指すは、「太陽光発電で日本一」です。実は杉本会長が「日本一になるぞ!」と私に掛けてくださった言葉で、それが今の私の目標になっているんです。たとえ心の内に大きな目標があっても、自信がなければなかなか言葉にできませんし、以前の私もそうでした。それをまるで、杉本会長が代わりに言ってくださったように思いましたね。言ったからにはまい進するしかありません。私としても、自身がもっと努力できる環境に身を置きたいと考えていましたので、杉本会長からも色々と学びながら、淵脇さんと力を合わせて会社を発展させていきたいと思っています。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    「堅実な経営」に対して生まれた信頼感

    (株式会社シーラテクノロジーズ 杉本宏之氏インタビュー)

    シーラテクノロジーズ様は、もともと太陽光発電の会社をグループに迎える意向をお持ちだったのでしょうか?

    杉本氏:はい。「なぜ太陽光発電会社と?」と言う人もいますが、実は不動産と太陽光発電は非常に親和性の高い事業同士なんです。まず、当社が販売する投資用マンションと太陽光発電設備は、購入するお客様にローンを組む金融機関がほぼ共通しています。そして太陽光発電は、売電収入でローンを返済しながら差額で利益を出す利回り商品という点で、賃貸収入で利益を出す投資用マンションと共通しています。さらに、節税効果は当社の取り扱うワンルームマンションより大きいという特徴もあります。

    このほか、2018年には第5次エネルギー基本計画が策定され、再生可能エネルギーの割合を増加させる目標が立てられました。2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を全体の36%程度にするという目標が設定されています。ですから、太陽光発電は、マーケットがさらに拡大していくと見込まれています。そこで、当社では3年前から太陽光発電の会社と一緒に事業を展開したいと考えていて、M&Aに向けて具体的に動いていました。

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    株式会社シーラテクノロジーズ 杉本宏之氏

    太陽光発電会社数社とお会いした結果、シーラソーラー様とのM&Aが成約しました。シーラソーラー様にどういった魅力や強みを感じられましたか?

    杉本氏:一口にM&Aと言っても、実施する企業はそれぞれにいろんな考えを持っているんですよね。実際、経営を諦めるという理由で譲渡する経営者もいれば、「資本力のある会社と共にシナジー効果を高め、もっと社員や株主、お客様のために会社を良くしたい」と思い譲渡する経営者もいます。シーラソーラーさんは後者の考えを持たれていました。それに、太陽光発電設備の販売をしながら、自社でもソーラーパネルを保有し売電収入で利益を出されているので、当社のスタイルと似ていると感じたんです。当社もビルやマンションを多数保有して、家賃収入で利益を確保していますし、他にも数多くのアセットを持っています。シーラソーラーさんは、約90基分の発電設備を開発できる土地を押さえているなど、堅調なビジネスを展開されていて、信頼できる会社さんだなと思いました。

    上本様に対しては、どのような印象を持たれましたか?

    杉本氏:上本さんは一見飄々としていて、やるべきポイントをしっかり押さえていらっしゃる経営者だなという印象を持ちました。ですが、ご本人は「会社をさらに成長させるには、自分の力だけでは限界を感じるから、何かしらの力を借りる必要がある」と何度もおっしゃっていたんです。加えて、「何社かお会いしたなかで、シーラテクノロジーズが一番将来の事業シナジーがある」。そう上本さんがおっしゃっているとfundbookのアドバイザーから伝え聞いていました。それに私と年代も近いので、親しみ深く一緒に経営をしていけそうだと。そういったこともあり、上本さんと力を合わせていきたいと思ったんです。当社としても、上本さんには、今後も一緒に会社を大きくするという意志のもと、経営に協力していただきたいとお願いしました。

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    シーラソーラーで実施した“会社が成長していくための投資”

    杉本様からの「太陽光発電で日本一になるぞ!」という言葉が、今の上本様の目標になっていると伺いました。その言葉を掛けられた根底には、どのような思いがありましたか?

    杉本氏:「どうせやるんだったら、日本一を目指そう!」という思いからです。最初、上本さんは「まずは売り上げ20億円を目指して…」とおっしゃっていたんですが、私は「20億円を売り上げるにしても、50億円を目指して20億円の売り上げは確保できるかもしれないけど、20億円を目指して20億円を達成するのはかなり難しい」と返したんです。個人のお客様に販売する太陽光発電設備の市場では、一緒に頑張れば日本一だって目指せるはずだと、私は思っています。

    日本一を目指す第一歩として、M&A成約後にシーラソーラー様でどういった改革を行いましたか?

    杉本氏:まずは淵脇さんをはじめ、当社から数人の幹部人材を配置し、私も取締役に就任しました。シーラソーラーさんとしては会社を進化させるためのM&Aでしたし、当社としても本気で実施したM&Aだったからこそ、私たちも積極的に経営に参画させていただいています。会社をもっと良くして、ともに大きな目標を目指していくためには、今以上にシステム面の効率化や管理体制の整備をしなければいけません。販売・営業面においても、メガソーラーの開発など、着手していかなければいけないことはたくさんあります。最初は大変な思いもしましたが、そのおかげで会社としてやりたかった方向に進めています。今は確実に会社が進化していると実感していますね。上本さんが作り上げてきた土台に、私たちのテクノロジーや人材、資金が加わって、従来の倍以上の開発ができるようになりました。

    シーラソーラー様の従業員の皆様は、会社の進化や改革についてどのような反応を示されましたか?

    杉本氏:当然、最初は不安な気持ちが大きかったと思います。M&A成約後、「まず、何から変えていこうか?」とお話をさせていただきながら、従業員の皆さんにヒアリングを重ねていきました。そのなかで、「皆さんの頑張りをもっと評価する仕組みを作らなければいけない」と思ったんです。従業員の皆さんは、シーラソーラーで働く理由として、「地元で働きやすい」「十分な給料をもらっている」とおっしゃっていました。でも、会社がもっと成長して、売り上げや利益も上がれば、皆さんの待遇や給料ももっと向上するという意識を持っていただきたかった。なので、築十数年のトイレを数百万円かけて新しくしたんです。これは、“会社が成長していくための投資”であることを、明確に示した形です。トイレの環境改善は一つの小さな変化だとしても、自分たちの頑張りが待遇の改善に直結するんだという意識は高めていただけたと自負しています。

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    シーラグループだからこそできる、環境問題解決に向けた挑戦と貢献

    シーラソーラー様とどういった協業をしていかれるか、展望をお聞かせください。

    杉本氏: M&A成約直後から、早々に太陽光マイニング(マイニングソーラー)の共同開発を始めました。多くの電力を消費するマイニングマシンは、環境への影響が懸念されています。そこで、電力には太陽光発電やバイオマス発電を使用し、さらに地下水クーラー(気化の原理を用いた冷却の仕組み)も搭載して、再生可能エネルギー100%のマイニングに取り組んでいます。太陽光マイニングの開発は順調に進んでいるので、近々当社のクラウドファンディングサービス「利回りくん」にラインアップしていく計画です。

    このほか、太陽光発電所の販売も、当社の営業担当が協力する体制を構築しています。本格連携が始まってからわずか4カ月で、当社側でも4基の発電所を販売したほど、グループ間の協業はどんどん進んでいます。

    シーラテクノロジーズ様は、シーラソーラー様と同じく“環境”に密接した事業をされています。今後、グループ全体で意識されることはありますか?

    杉本氏:マンション建設は、コンクリートに使用するセメントの製造で大量のCO2が排出されているほか、石油由来の建築資材も多いため、特に環境負荷の高い分野と言えます。当社は以前から、木造資材を活用して鉄筋やコンクリートの使用量を減らし、環境負荷を軽減しながら高い耐久性も有するマンションの建設に注力してきました。そこに、シーラソーラーさんの太陽光発電も応用し始めています。マンション内で使用する電力を再生可能エネルギーで賄う「ゼッチ・マンション」として、私たちの環境配慮型マンションの形は大きく進化しているところです。

    通常のマンションに比べて、環境配慮型は大幅にコストが増えます。そのために、購入するお客様の投資効率が悪くなる可能性がある。ですが、“環境”に密接した事業を展開する企業として、これは必要不可欠な挑戦ですし、シーラグループだからこそできる取り組みだと考えています。お客様、地域、社会、環境との対話を重ねながら最良の形を追求し、社会から求められる商品・事業を創出するグループであり続けたいと考えています。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    先々の不安払拭ではなく、成長を目指すためにM&Aは必要とされていく

    株式会社シーラソーラー(旧社名 日本太陽光発電株式会社)
    ファウンダー 上本 貴雅氏

    私は創業した当初から、後継社長となる人材の育成を目標に据えて、社長を続けてきました。「承継する側の立場を考えると、自分が限界まで踏ん張って、最後の最後で突然全てのバトンを渡してはいけない――」。これは、会社の後継者候補として家業に従事する同世代の仲間から話を聞くなかで、常に考えていました。早すぎると思われるかもしれませんが、50歳を過ぎて次の社長を育てられずにいる未来を一番心配していたのです。

    今、私が42歳で、譲受企業から来てくれた淵脇社長は36歳(取材時)。世の中を見渡しても、20代の若いリーダーが引っ張って活躍している組織や企業はたくさんあります。もちろん、必ずしも全ての企業で若さや勢いだけが必要というわけではありません。しかし、移り変わりの激しい業界に生きる当社にとって、「リスクを取らないリスク」を敏感に察知しながら、会社を率いてくれる若いパワーはまさに求めている存在でした。我々がそうであったように、M&Aは「この先どうするの?」という不安を解消するための手段ではなく、会社の成長をしっかりと目指していくために、今後ますます社会から必要とされていくのではないかと思っています。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    「会社をもっと良くしたい」と、志をともにする企業と良い結果を出す

    株式会社シーラテクノロジーズ(旧社名 株式会社シーラホールディングス)
    代表取締役会長兼グループCEO 杉本 宏之氏

    これから縮小すると想定される日本のマーケットのなかで、M&Aはもっと当たり前に活用されていかなければならない手法だと私は思います。なぜなら、意地を張って無理に1社で事業を続けた結果、産業自体が途絶えてしまう可能性もあるからです。そうなると、経営者だけでなく、社員やお客様にとっても悲しいことにしかなりません。企業同士が一緒になれば、単独では足りなかったリソースを確保でき、マーケティングも強化していける。M&Aによって今よりもブラッシュアップでき、どんどん次のステージへ行けるようになれば、社員やお客様、そして社会にとっても喜ばしいことです。ファッション通販大手の「ZOZOTOWN」がM&Aでソフトバンクグループの傘下に入ったとき、起業家である私たちは大きなインパクトを受けました。あれだけの規模の企業でも、「絶対にもっと会社を成長させてくれるはず」という意思と、譲受企業に対する強い信頼があれば、M&Aを選択するんだと。結果的に、売り上げも利益も時価総額も拡大していますから、多くの人の幸せにつながった選択をされたと感じています。これまでM&Aは、「譲渡するのは逃げだ」とか「買う側と買われる側」といった論点が多く見受けられましたが、もうそこからは脱却すべきです。私たちも「お迎えする、仲間になる」という気持ちで真剣にM&Aと向き合っています。「この会社をもっと良くしたい」という志をともにする企業と一緒に、私たちも良い結果を出していきたいですね。

    「太陽光発電で日本一」へ。堅実経営の社長が決断したM&A

    担当アドバイザー 馬場 智大 コメント

    今回は、成長戦略を模索している東海エリアに根付いた太陽光発電システムインテグレーターと、首都圏の不動産デベロッパーの企業提携のお手伝いをさせて頂きました。

    太陽光発電事業は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)により、2012年より再生可能エネルギーの全量買取がスタートし10年が経過する業界です。2017年の改正FIT法の施行や2022年度からはFIP制度の導入など、国の政策に影響を受けやすい業界であり、特に投資用商品として開発される低圧の太陽光発電所開発事業会社(10kW以上50kW未満の発電所)においては、全量買取による新規のFIT制度認定が厳しくなったことに伴い、転換期を迎えておりました。シーラソーラー様においても同様で、主業としていた低圧の太陽光発電所開発事業から高圧発電所、特別高圧発電所といった大型の発電所開発への転換に伴う資金需要、FIP制度へ対応した新しいサービスの転換といった課題を抱えていました。今回のシーラテクノロジーズ様との提携により、自社単独では解決が困難であった課題に対し、一緒に向き合い新しいビジネスチャンスへと変えてくれる、共に成長できるパートナーを選んでいただけたのではないかと思っております。

    今後シーラグループ各社様との連携により、ご両社からどのような新しいサービスが生み出されていくのか非常に楽しみにしております。

    私たちfundbookは今後も、fundbookに任せてよかったと仰っていただけるような満足度の高いM&A機会を創出していきます。

  • 熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    インタビュー

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    譲渡:株式会社エッグ

    譲受:株式会社スカラ

    インタビュー

    2022年2月28日、譲渡成立

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」
    • 譲渡企業株式会社エッグ
      設立年月日
      1949年
      事業内容
      システム受託開発
      URL
      https://egg.co.jp/
    • 譲受企業株式会社スカラ
      設立年月日
      1991年
      事業内容
      IT / AI / IoT事業
      URL
      https://scalagrp.jp/

    鳥取県米子市で、1927年から印刷事業を続けてきた株式会社エッグ。40年ほど前に現社長の髙下士良氏がお父様から経営を引き継ぎ、以降はIT企業へと転換していきます。

    その後、髙下氏の先見の明と豊富なアイデアで、数々のサービスが誕生。特に、ふるさと納税システムは自治体導入実績ナンバーワンを誇り、現在は心身の老いや衰えによって介護状態になる手前の「フレイル」の早期発見システム開発に注力しています。

    一方で、自身の年齢を考慮し後継者の必要性を意識し始めた髙下氏は、M&Aでの事業承継を決断。多くの譲受候補先のなかで、株式会社スカラと社会問題への取り組みに対する考えが合致し、2022年2月にM&Aが成約しました。今後は自治体との“共創”による社会問題の解決に向けて思いを一つにしています。

    成約までの経緯や、M&A後に描く今後のビジョンについて、髙下氏と株式会社スカラ戦略投資事業部の山崎秀人氏、辻健輔氏にお話を伺いました。

    印刷業からの転換。ふるさと納税システムNo.1企業に

    エッグ様の会社の歴史についてお聞かせください。

    髙下氏:私の父が1927年に鳥取県米子市で印刷業として創業し、「米子印刷所」の名前で地域の皆様に親しまれてきたと自負しています。長い年月のなかで、印刷技術が次々と変わっていく歴史を見てきました。40年ほど前に私が社長に就任した頃は、写植(写真植字)という印刷手法が多かったですね。その後、写植の組版をコンピューターで行える電算写植が登場し、私もコンピューターの勉強を始めました。1992年頃には、データベースと印刷を組み合わせた名簿印刷を始め、1996年にはホームページも開設しています。この間に社名を「エッグ」に変更し、従来の印刷業から、将来性のあるIT事業へと徐々に転換していきました。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    IT事業へ転換後、どのようにしてビジネスを展開されてきましたか?

    髙下氏:2000年頃に、インターネットでハガキが出せる「ポスコミ」というサービスを始めました。世の中は「アナログをデジタルにしていこう」という流れでしたが、印刷業を手掛けていたので紙の良さをよく分かっていましたし、世代や利用シーンを考えると、ハガキはこれからも残っていくだろうと思っていました。「ポスコミ」は利用者に職業や年齢などを入力していただくことで、無料でハガキが送れる仕組みです。このビジネスモデルは大手企業や金融機関からも注目を集め、ファンドを新しく立ち上げてIPO(新規株式公開)を狙おうとするまでの大きな動きになっていたのですが、個人情報保護法の施行によって運用ができなくなってしまいました。

    そんな失敗も経験しましたが、その後は「ふるさと納税」の黎明期から、自治体向けふるさと納税システムの開発に注力するようになりました。それを鳥取県にプレゼンした結果採用されたので、同県のふるさと納税システムを制作しました。そして、2013年に鳥取県がふるさと納税の寄付額で日本一になった。鳥取県のふるさと納税に注目が集まると同時に、当社のふるさと納税システムも「使いやすい」との評価をいただき、自治体導入実績は国内ナンバーワンまでに成長していきました。

    IT事業への転換後も次々と画期的な事業を創出されています。その中で意識されていることはあるのでしょうか?

    髙下氏:コミュニケーションですね。やはりトレンドは重要ですから、時代を感じ取るためにいろんな業種の人と出会うことではないでしょうか。

    私自身、ビジネスは楽しくやるものだと思っているので、それを社員にも伝えるように意識してきました。そして、社員を含めた周囲の皆様からの応援によって私たちはチャレンジし続けられ、ここまで成長できた。これを還元するためにも、社会貢献をしたい思いも強く持っていますね。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    「社員」「お客様」「地域」を、これからも守っていく

    M&Aを検討したきっかけについてお聞かせください。

    髙下氏:私は今年72歳になるので(取材時)、いずれの形にせよ後継者が必要な時期だと思っていました。ただ、当初はM&Aをすることにメリットを感じていませんでした。後継者探しでは、社外から次期社長の候補まで見つけていましたが、入社直前に辞退の申し出を受けまして。そのタイミングでfundbookからM&Aの話を伺い、検討してみようと考えました。

    実績が豊富なエッグ様とのM&Aに、多くの企業が手を挙げられました。最終的にスカラ様を選ばれた理由は何でしたか?

    髙下氏:「社員」「お客様」「地域」、この3つを守ってくださいと候補先各社に要望しました。私からの願いに対して、一番真摯に向き合ってくださったのが、スカラの梛野憲克社長だったのです。

    山崎氏:当社も髙下さんのご意向と同様に、鳥取に拠点を置くエッグさんと、東京の上場企業である当社のインパクトの違いを考慮し、鳥取県発祥の企業とそのビジネスモデルを大事にしていきたいと強く思っていました。鳥取県内で働かれている従業員の皆様もいますから、鳥取―東京間の交流とコミュニケーションは活発に行いながら、今まで通りの拠点でやっていきましょうという話で合致しています。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    スカラ様にとっては、エッグ様のどういったところに強みやシナジーを感じられましたか?

    山崎氏:スカラグループ(以下、スカラ)は「医療と健康」「農業と食」「教育」「地方創生」をテーマに事業展開しており、特に「地方創生」の分野では、私たちもふるさと納税のサポートを手掛けてきた実績を持っています。そうした経緯から、エッグさんのノンネームシート(譲渡企業の匿名情報)を拝見した段階ですぐに興味を持ちました。その後エッグさんの社名が公開された時、私は非常に驚きましたね。というのも、私は前職に在籍していた2016年に、実は髙下さんと一度お会いしたことがあったんです。髙下さんはいろんな分野に好奇心をお持ちで、やりたいことがたくさんある人だという印象があったので、きっと私たちと相性が合うに違いないという自信を持ちましたね。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    まさに「やりたいことがたくさん」を体現されているように、エッグ様は今、ふるさと納税システムのみならず、フレイル早期発見システムにも力を入れられています。

    髙下氏:7年前、当社がふるさと納税システムを始めた頃は、市場はブルーオーシャンでした。さらに、実績主義の行政からも信用が得られたことで、みるみるうちに普及していきました。ふるさと納税自体の市場は今後もまだまだ伸びると思いますが、参入企業が増えたために、今はレッドオーシャンになっています。その状況に対して冷静に判断した結果、ふるさと納税システムを続けながらも、ほかの分野にも目を向けるようになったのです。

    そこで、4~5年前に「認知症早期発見システム」を開発しました。それを東京大学で老年病を研究している鳥取県出身の教授に見せたところ、「これからは認知症よりもフレイルだよ。フレイル全体を網羅したシステム開発をしてみたらどうか?」と言われたんです。その時はフレイルという考え方があるのかと衝撃を受けましたね。それがきっかけとなり、フレイルの早期発見システムへの開発に舵をきりました。現在は、「フレイルを早く発見する⇒自治体が介入指導する⇒本人が元気になる⇒介護率と介護保険の財政負担が軽減する」を実現できるビジネスに力を入れているところです。

    スカラ様は、フレイル早期発見システムという新しいアイデアを聞かれたときに、どのような印象を持たれましたか?

    辻氏:スカラとしても「医療と健康」の事業を強化するタイミングだったので、フレイルは事業ポートフォリオの重要な一つになるのではないかと思いました。それに、まだ世に浸透していない時期にふるさと納税システムを手掛けられてきたエッグさんが、次はフレイルの早期発見に取り組まれている。髙下さんに先見の明があるのは証明されていますし、当社の「医療と健康」の事業ともシナジーが生まれるという判断に至りました。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    山崎氏:最初はふるさと納税システムの実績が目に留まるものですが、面談のときから「これからはフレイルの事業だ」と何度も主張されていたので、髙下さんのバイタリティーや好奇心には驚かされるばかりでしたね。

    熱意が込められた“異例”の企画書。夢の実現に向けて提携

    「地方創生」だけでなく、「医療と健康」の分野でもシナジー効果の強い両社様ですから、成約までスムーズに進まれたのではないでしょうか?

    辻氏:実は当社以外にも10社ほどが手を挙げており、そのなかからエッグさんに選んでいただかなければいけなかったので、当社にとっては容易な道のりではありませんでした。3カ月間は毎日のようにfundbookのアドバイザーと会話していましたね。

    山崎氏:最初の面談から、髙下さんは「具体的に何をするか」までの提案をすごく期待されていました。しかし、当社はグループ全体で幅広い事業を展開しているので「いろんなことができます」という提案になってしまったんです。そのときの髙下さんの物足りない感じが、私には強く伝わってきまして。それと同時に、「M&A後の会社は任せる」という経営者も少なくないなか、「社員や会社の未来を、どう描いてくれるのか?」と、熱心に聞かれる姿勢はすごいなと思いました。面談後、アドバイザーからは、「髙下さんがおっしゃった3つの要望をしっかり要素に組み込んで、熱意を伝えましょう」と提案いただき、チーム一丸となって形にしてきました。

    辻氏:それで、エッグさんに渡す意向書に、「一緒にこういうことをやりましょう」という企画書まで付けさせていただいたんです。一般的にはあまりないケースだと思います。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    書類にもスカラ様の熱い思いが込められていたのですね。受け取られた髙下様は、どのようなお気持ちになりましたか?

    髙下氏:山崎さんが勘づかれた通り、最初は具体的に何ができるのかが、私にはよく見えていませんでした。ただ、初回の面談以降は、その企画書含めてどんどんと熱意が伝わってきたのです。私としては、フレイルやふるさと納税にしても、実現したい夢がちゃんとあるので、それらをしっかり話し合いながら応えてもらえるだろうなと。提携が決まってからもいろんな話が具体的に進んでいるので、良い方向に進めていると実感しています。

    M&Aについて、エッグ様の従業員の皆様はどう反応されましたか?

    髙下氏:私は「M&A」という言葉をほとんど使わずに、「経営統合」と言い続けてきました。それでもやはり、最初は皆不安だったと思います。しかし、スカラさんから多くの従業員の方が米子に訪問してくださるうちに、だんだんと気持ちが和らいでいき、今では自分で夢を追っているような生き生きとした雰囲気が高まっているほどです。私からも「上場企業のグループになって安定するかもしれないけど、これまで以上に責任を持ち、夢を持っていこう」と、常々話しています。「次に何をするか」が、しっかりと語れる企業になってきていると思いますね。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    珍しいのが、M&A成約前から両社間で交流を深められていたとお聞きしました。

    辻氏:M&A成約前から両社でPMIのチームを組んで、頻繁にコミュニケーションをとってきました。今では週に一度の定例会に留まらない頻度で会話が活発に行われていますし、オリエンテーションをやろうという企画がお互いから挙がっているぐらいです。

    山崎氏:面談の段階から、両社のトップ抜きで従業員同士が話をする機会も設けてきました。珍しいケースかもしれませんが、あまり特殊だという風には思っていません。現在、私たちPMIチームのコミュニケーションと並行して、実務の方もお互いの拠点を行き来しながらすでに業務が進行している状況です。

    髙下氏:スカラの皆様は、当社の社員ととても積極的に交流をしてくださっていますね。社員同士の交流が一番だと思っているので、アクティブにコミュニケーションを取っている様子を見ていると、非常に良い状態が作られているなと思うばかりです。

    それに、すでにスカラさんから次期社長となる人が当社に来てくれているのですが、私の比じゃないほど前向きでチャレンジ精神が豊富な方なんです。「この人についていけば大丈夫!」と社員から思われる、頼もしい存在となっていますね。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    企業として、個人として、成し遂げたい社会貢献活動

    これからの協業の構想や、ビジョンについてお聞かせいただけますか?

    辻氏:従来からスカラは、企業と自治体との“共創”によって様々な社会課題を解決していくサービス「逆プロポ」に力を入れてきました。取り組みの一例が「マルチエントリープラットフォーム」の開発です。例えば、災害発生などの緊急時に、現状では住民が求めるスピードで物資や給付金等の支援ができていない場面が多いと思います。住民それぞれの困っている内容が異なっていても、1つのプラットフォーム上であらゆる住民サービスが申請できるようになれば、人々が安心安全に暮らせる環境が提供できるのではないだろうか――。そんなシステムを目指して、「マルチエントリープラットフォーム」の開発と実証実験を自治体とともに行っています。今後は、全国の自治体とリレーションを持たれているエッグさんと手を組み、開発に勢いをつけていきたいと考えています。

    米子にお伺いしたときから、困っている人に寄り添ってサービスを創り上げられているエッグさんと、私たちの“共創”の考え方は非常に共通していると思っていたので、両社がパートナーとなって一緒に取り組んでいけるこれからがとても楽しみです。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    髙下氏:行政は今まさに「マルチエントリープラットフォーム」のようなシステムを求めていると思います。そして、両社が手を組めば、その実績となる自治体を鳥取県で作って、横展開する進め方がしやすくなると確信しています。当社はこれまで、行政や自治体の悩みに寄り添う“課題解決型”の会社として運営してきましたから、このノウハウをぜひ、スカラさんに取り込んでいただきたい。スカラさんなら十分に実現できると私は思っています。

    山崎氏:加えて、フレイルに関する事業もしっかり立ち上げていこうと動き始めています。フレイルを追求すれば、社会保障問題や地方の過疎化といった、社会課題の大きなテーマにつながることは明らかです。エッグさんと自治体と当社は、言わば“共創パートナー”ですから、課題解決に向けてしっかりと手を取り合いながら、前向きに取り組んでいきたいですね。

    髙下氏:私たちのサービスによって介護費用が減少するというエビデンスがとれれば、行政からの利用は一気に広がると思うので、今もまさに大学の協力を得ながら研究を続けているところです。フレイルの予防・改善は、運動や食事、健全な精神状態の維持と密接に関係しています。スカラさんは幅広い事業を手掛けられていますから、早期発見システムに留まらず、一貫したサポートができる仕組みを構築できるのではないかと期待しています。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    「社会課題の解決」という共通の目標に向かう両社様の取り組みを楽しみにしています。最後にぜひ、皆様から今後の抱負についてお聞かせください。

    辻氏:当社はミッションの一つに「究極の社会貢献をめざす」と掲げている通り、強みであるITを活用して、社会に潜む様々な課題を解決しようとしています。今取り組んでいる「マルチエントリープラットフォーム」やフレイルの分野以外にも、社会課題はまだまだ多いはずです。それらを見落とさない視野を持って、社会に貢献できるサービスにつなげていきたいと思っています。

    山崎氏:市町村合併によって自治体の数は減ってきていますが、機能が集約される分、新たな課題も発生している状況です。自治体が生活基盤を支えているわけですから、その課題を放っておいてはいけません。エッグさんと当社の強みは掛け算になりますから、今後はより積極的に自治体に入り込んでいき、社会の発展に貢献する企業として責務を果たしていきたいです。

    髙下氏:スカラさんは“課題解決型”のエッグと考え方が共通していて、なおかつ行動力のある人たちの集まりなので、夢を実現してくださる企業だと私は思っています。行政課題に対しても「逆プロポ」という優れた制度をお持ちですから、エッグでもぜひその武器を使わせていただきたいです。

    それともう一つ、私個人としても次の目標を持っています。経営からリタイアした後も、地域にしっかりと利益をもたらすような起業人を育てていきたいですね。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」
    左から、山崎氏、髙下氏、株式会社スカラ代表取締役 梛野憲克氏、辻氏

    M&Aは、経営が一緒になって前進する“共創”を表した形

    株式会社エッグ

    代表取締役 髙下 士良氏

    事業承継を考えた当初、私の選択肢にM&Aはありませんでした。しかし、実際にM&Aを実施すると、譲受企業との交流や協業によって、以前に増して社内が生き生きとし始めましたから、今となっては全面的に肯定する立場です。

    譲受企業のスカラは“共創”の考え方を大事にしていますが、M&Aは経営が一緒になってともに前進する、まさに“共創”を表した形ではないでしょうか。両社が同じ目的、同じ方向に進んでいれば、“共創”の原理にちゃんと従っているのだろうと私は思います。

    近い将来、次期社長に経営を承継する日が訪れますが、それは決して惜しいことではありません。会社というのは個人のものではなく、従業員やその家族も含めた組織体です。社員が夢を見続けられる企業でいられるよう、次期社長にも大きな期待を寄せています。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    M&Aがより一般化しても、やはり重要なのは「人の気持ち」

    グリットグループホールディングス株式会社     代表取締役      

    株式会社スカラ 戦略投資事業部

    山崎 秀人氏

    M&Aと聞くと、以前は精神的な面でも負担の伴う手段という印象が強かったと思いますが、今後はますます一般的になるのではないかと予想しています。ただ、ニーズが増えたとしても、やはり人の気持ちがとても重要なポイントになる。そのためには、しっかりとコミュニケーションをとりながら、丁寧に進めていくこと。私自身もM&Aによってスカラに入ってきた立場ですし、これまで数十件のM&A案件を手掛けてきた経験からも、これは確実に言えます。

    今回は地方の有力企業であるエッグさんとのM&Aでしたので、これまでの当社の事例からしても珍しい案件となりました。しかし、大切なことは「その会社がどういう考えを持って、何をしているか」です。拠点を意識しない、ボーダレスなM&Aが進んでいけば、これからもより多くの可能性が広がっていくのではないかと思っています。

    熱意が結んだM&A、共創で目指す「社会課題の解決」

    担当アドバイザー 古橋 賢人 コメント

    この度は、地方都市から全国展開を目指す企業様と、首都圏の上場企業様との企業提携のお手伝いをさせていただきました。

    一般的に、中小企業には営業、案件、人材、技術、ネットワークなどすべてのリソースが揃っているわけではありません。M&Aを通して、譲渡企業は新しい技術・開発案件に触れる機会を創出することや、世の中のニーズに対してアンテナを高く持つ機会など素晴らしい環境を作ることができます。また、それは譲受企業の従業員にとっても同様で、エッグ様との提携を通してこれまでとは違ったものの見方で新たなビジネス創出をしていくチャンスを得ることができたと思っております。

    昨今、世の中の情勢も非常に変化の激しい時代になってきております。自社の事業を1社単独で圧倒的シェアを取っていくのは相当なハードルがあり、その点においても、この提携が今まさに取組中のフレイル事業の全国展開を後押しできれば、我々としてもこの上ない幸せです。

    fundbookの役割は、経営陣の想いを引継ぎ実現するためのベストなパートナーをお繋ぎし、会社が一段上のステージへ進むお手伝いをすることです。その意味でも、今回は複数社からの提携オファーをご提示することで、高下社長及びエッグ様にとって幅広い選択肢の中からベストなパートナーとの企業提携をご選択いただけたと思っております。

    エッグ様がスカラ様というパートナーとともに、さらに成長される未来をとても楽しみにしております。

ADVISOR

アドバイザー紹介

森山 智樹
医療業界

大切な病院やクリニックを次世代につなぐため、豊富な実績・ノウハウで医療経営者の悩みに誠心誠意寄り添います。

森山 智樹執行役員 M&Aコンサルティング本部長

医療機関専門の総合商社を経て2014 年株式会社日本M&A センターに入社。ヘルスケア分野専門のM&Aアドバイザーとして、数多くのM&A成約に携わる。出資持分あり・なし、特定医療法人、企業立病院の事業譲渡、許認可取得にかかる行政対応など、様々なスキームを経験し、全ての法人形態に対応できる。2021 年にfundbook へ参画。

小倉 竜馬
ファンド、製造業界、建設業界、サービス業界

最高のM&A実現の為、プロフェッショナルとしての覚悟をもってご支援いたします。

小倉 竜馬M&Aコンサルティング本部 / 第一事業法人部長

慶應義塾大学経済学部卒。株式会社キーエンスへ入社し、規模を問わず幅広い企業に対するコンサルティングセールスに従事。2020年にfundbookへ入社し、製造業を中心に、建設業やIT業など幅広い業界におけるM&A支援実績を有する。

木下 喜雄
デジタルマーケティング業界、美容業界

貴社事業の価値最大化の為、ファイナンス観点をもったアドバイザーが貢献の形をお示しします。

木下 喜雄M&Aコンサルティング本部 / 第四事業法人部長

新卒でソフトバンクグループ入社後、赤字部署の黒字転換に貢献。その後大手ハウスメーカー顧問の司法書士法人で所長代理を務め、M&Aの法務及び仲介に従事。 デジタル業、漫画業、デザイン業、美容業、WEBマーケティング業等幅広い企業のM&Aを支援。2019年4月にfundbookへ入社。

小川 浩正
製造業界、サービス業界、飲食業界

M&Aアドバイザーとして経営者様のご決断をサポートし、関係当事者みなさまの成功にコミットします。

小川 浩正M&Aコンサルティング本部 / 第五事業法人部長

静岡大学教育学部卒。2016年に三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)へ入行し、国内営業支店にて、中堅中小企業に対する事業承継スキームの立案・ファイナンスの実行や、上場企業・PEファンドに対するMBO・LBOスキーム立案、買収ファイナンスの実行に従事し、複数の社内賞を受賞。2021年にfundbookへ入社。

古川 弘樹
建設業界、人材派遣業界、建材・電材卸業界、食品卸業界

想像を超えるシナジーを生み出すM&Aによって、より良い社会や未来を創出します。

古川 弘樹M&Aコンサルティング本部 / 第一業界再編戦略部長

慶応義塾大学商学部卒。公認会計士試験に合格後、有限責任あずさ監査法人へ入所。中小企業の税務会計から上場会社の監査まで幅広い業務を経験。2018年にfundbookへ入社。上場・未上場や後継者不在型・成長戦略型M&Aを問わず、建設、人材派遣、製造などを中心に多岐に渡る業種のM&A・事業承継成約実績を有する。日本公認会計士協会準会員。

中村 優介
建設業界、製造業界

お客様に誠実に向き合い、全体最適なM&Aを実現いたします。

中村 優介M&Aコンサルティング本部 / 第二業界再編戦略部長

明治大学理工学部卒。2010年に野村證券へ入社し、企業オーナーや富裕層向けの資産管理業務に従事。相続・事業承継コンサルティングを得意とし、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能、更に日本最年少でのシニアプライベートバンカー資格合格。2018年にfundbookへ入社。

古橋 賢人
IT業界、ファンド、警備業界、ビルメンテナンス業界

一生に一度の決断を納得して実現いただけるよう、顧客第一主義に徹します。

古橋 賢人M&Aコンサルティング本部 / 第三業界再編戦略部長

北海道大学経済学部卒。2016年に伊藤忠商事株式会社へ入社し、国内外の出資先金融関連会社の事業管理、ビジネスサポートに従事。グループ会社間の組織再編や地域企業へのファンドを通した出資によりM&Aによる事業拡大を推進。その後、グループ会社の金融機関にて中堅中小企業向けの動産担保融資等のコーポレートファイナンス業務に従事。2019年にfundbookに入社。IT・WEB業界、インフラ産業を中心に多数のM&A・事業承継支援実績を有する。

濱田 貴也
医療業界、介護業界、福祉業界

領域特化ならではの高いノウハウをもって、日本のライフラインの永続的な発展に寄与します。

濱田 貴也M&Aコンサルティング本部 / 第一ヘルスケアビジネス戦略部長

東京理科大学経営学部卒。2012年に株式会社リクルートスタッフィングへ入社し、人材を求める企業と働き先を探す求職者を結びつける業務に従事。2017年に株式会社日本M&Aセンターへ入社し、医療・介護業界のサポートを専門で行う医療介護支援部に配属。2021年にfundbookへ入社。

西山 賢太
医療業界、介護業界、福祉業界

理事長・家族・従業員・患者の誰もが幸せになれるM&Aを約束します。

西山 賢太M&Aコンサルティング本部 / 第二ヘルスケアビジネス戦略部長

日本大学薬学部卒。薬剤師・調理師・医療経営士。埼玉県済生会川口総合病院にて薬剤師としての実務経験を得た後、2018年に株式会社日本M&Aセンターへ入社。病院・診療所における事業承継やM&Aのほか、事業計画策定・病床機能転換など経営支援にも従事。2021年にfundbookへ入社。

平田 樹
医療業界、介護業界、福祉業界

ヘルスケア業界での知見を活かし、納得感のあるM&Aを戦略立案から実現までサポート致します。

平田 樹M&Aコンサルティング本部 / 第三ヘルスケアビジネス戦略部長

近畿大学生物理工学部卒。2013年にスリーエムジャパン株式会社へ入社し、医療材料の営業に従事。2016年にエムスリーキャリア株式会社へ入社し、医療法人に対する経営支援業務に従事。2019年に株式会社日本M&Aセンターへ入社し、医療介護業界のM&A及び病院経営改善コンサルティング業務に従事。2021年にfundbookへ入社。

十亀 秀仁
建設業界

企業の永続と発展のために、覚悟をもって寄り添い、責任ある提案をお約束します。

十亀 秀仁M&Aコンサルティング本部 / 大阪支社 第二事業法人部長

同志社大学経済学部卒。2012年にSMBC日興証券へ入社。顕著な営業成績を記録し、複数の受賞歴を有する。銀証連携を担う三井住友銀行担当を兼務。その後、外資系製薬企業へ入社し、2017年に最優秀学術賞を含め、複数回の海外表彰を受賞。2018年にfundbookへ入社。

白井 智嗣
製造業界

一生に一度の決断を、二人三脚で共に進み、M&Aの成功へと導きます。

白井 智嗣M&Aコンサルティング本部 / 大阪支社 第三事業法人部長

近畿大学理工学部卒。2010年にシティバンク銀行へ入行し、プライベートバンキング事業に従事後、2015年に株式会社日本M&Aセンターへ入社。 西日本全域を主な活動拠点とし、上場企業から中堅・中小企業まで幅広い企業を担当。株式譲渡、事業譲渡、株式交換、会社分割など複雑なスキームの知見を有し、アドバイザーとして数十件に及ぶM&Aの成約に携わる。2020年にfundbookへ入社。

足洗 瞬一
建設業界、青果卸業界

ステークホルダーの皆様が満足するM&Aの実現に向けて、経営者様と誠心誠意向き合います。

足洗 瞬一M&Aコンサルティング本部 / 大阪支社 第四事業法人部長

東北大学経済学部卒。2009年に商工組合中央金庫に入庫し中堅中小企業の法人営業に従事。2017年に株式会社日本M&Aセンターに入社し、売買の両面で様々な企業の企業の成約を支援。2020年にシニアディールマネージャーに昇格。2020年にfundbookへ入社。

横山 朗
介護業界、福祉業界、調剤薬局業界

ヘルスケア領域の経営課題解決を通じて、地域および国全体のウェルネスに貢献します。

横山 朗アライアンス戦略本部 / 第二事業法人部長

名古屋商科大学大学院マネジメント研究科卒。外資系大手製薬会社へ入社後、MBAを取得。2016年に株式会社日本M&Aセンターへ入社。医療・介護・ライフサイエンス分野専門のM&Aアドバイザーとして、50件以上のM&A成約を支援。ヘルスケア分野の譲渡相談数はチーム内で最多を誇り、M&Aのみならず親族承継などコンサルティングサービスも提供。セミナー講師依頼も多数。2021年にfundbookへ入社。

浅川 大介
建設コンサル業界、ファンド

アドバイザーの叡智を結集させ、あらゆる可能性の中から、ベストな手段をご提案いたします。

浅川 大介アライアンス戦略本部 / 第三事業法人部長

東京経済大学経済学部卒。2007年にいちよし証券へ入社し、富裕層向けの資産運用業務に従事。2014年に株式会社日本M&Aセンターへ入社。上場企業のM&A戦略立案や、業界再編型・成長戦略型・事業承継型のM&Aに携わる。様々なスキーム経験を有し、上場企業から中小企業まで幅広く担当。サービス・製造・運送・建設など業界問わず多数の企業のM&A・事業承継成約を支援。2020年にfundbookへ入社。

よくある質問

  • 相談料はいくらですか?

    ご相談は無料です。また、企業価値評価や候補先とのマッチングなどM&A成約までのサービスはすべて無料で提供しております。

  • 会社の将来について悩んでいるのですが、経営相談にのってもらえますか?

    もちろん可能です。M&Aや事業承継に関することだけでなく、経営に関するお悩みも気軽にご相談ください。

  • 自社の譲渡価額が知りたいです。譲渡価額はどのように算出されるのですか?

    複数の評価方法による理論的な企業価値算定と経営者様の意向を考慮したうえで決定されます。fundbookでは企業価値評価を無料で行っていますので、気軽にご相談ください。

  • 一部の事業のみの譲渡は可能でしょうか?

    はい、可能です。事業譲渡や会社分割など、ご相談内容に合わせて適切な手法をご提案します。

  • 知り合いの会社とのM&Aを検討しています。仲介会社に依頼する必要はありますか?

    当事者同士の交渉も可能ですが、双方が納得できる契約条件を引き出せず、うまくいかないケースがほとんどです。M&A検討の段階から専門家のサポートを受けることをおすすめします。