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2023/09/14

M&Aで必須のPPAとは?のれんとの関係性と評価方法も解説

M&Aで必須のPPAとは?のれんとの関係性と評価方法も解説

M&Aを検討している中で、PPAとよく聞くけど何のことだろう」と思ったこと、ありませんか?
実は、PPAはM&Aを実施するなら避けて通れないものです。

この記事では、現役のM&AアドバイザーがPPAの概要や、PPAに関係してくる「のれん」について解説します。
この記事を参考にすれば、PPAの全体像を把握できます。

円滑なM&AやPPAを実施するために、ぜひ最後までご覧ください。

PPAとは取得原価の配分のこと

PPAとは、Purchase Price Allocationの略で「取得原価の配分」のことを指します。
M&Aを実施した後に、譲渡企業の資産や負債を、譲受企業で確定する会計処理です。

2010年の企業結合会計基準法の改正によりPPAは、必須になりました。
M&Aの実施後、1年以内にPPAを行う必要があります。適切な処理が実施されていないと、会計監査で指摘を受ける可能性もあります。

特に注意したいのは、無形資産の計上も必要な点です。貸借対照表に載っている資産や負債だけでなく、無形資産も計上する必要があります。

PPAで必要な「のれん」とは

PPAでは「のれん」の扱いにも注意が必要です。

のれんとは、M&Aの買収金額で支払った金額のうち、譲渡企業の純資産(簿価)と実際の買収価格の差額を指しています。
企業のブランド力や技術のノウハウなど、目に見えない価値を指します。

のれんは「超過収益力」ということもあります。日本では、買収されてから超過収益力は徐々に価値が落ちていくと考えます。

しかし、企業結合会計基準(IFRS)は、日本と異なる考え方で、原則としてのれんの償却は行いません。のれんの価値が著しく落ちた時のみ「のれんの減損」として償却を行います。

なお、譲渡企業の純資産よりも、買収金額が小さい場合、その差額は「負ののれん」と言われます。負ののれんは、買収を行った企業の利益として計上されます。

のれんについては、以下の記事で詳しくまとめています。


▷関連記事:M&Aで必ず知っておくべき「のれん代」を徹底解説

無形資産の例

無形資産とは、建物や備品などのモノではなく、文字通り形がない資産です。経営手法・顧客との関係性・技術力・企業のブランド力などを指します。

無形資産には「法律上の権利」と「分離して譲渡可能な無形資産」があります。

「法律上の権利」とは、特定の法律に基づく権利を指します。具体的には、以下が挙げられます。

・特許権
・商標権
・意匠権
・著作権
・実用新案権等

上記以外にも、商号や業務上の機密事項も該当します。

「分離して譲渡可能な無形資産」とは、企業や事業と独立して売買でき、価格が算定可能なもの。具体的には、以下が挙げられます。

・顧客リスト
・ソフトウェア
・特許で保護されていない技術等

M&Aを行う場合、売り手、買い手ともにM&Aの対象となる企業の無形資産を考慮しておく必要があります。

PPAにおける「のれん」の評価方法

のれんは「企業価値評価手法」という、会社の価値や株式の価値を図る手法で評価されます。

企業価値評価手法には、以下の3種類があります。

・コストアプローチ
・マーケットアプローチ
・インカムアプローチ

PPAにおいて、のれんの評価方法は主に、コストアプローチとインカムアプローチが使われます。その中でもよく利用する手法は、以下の通りです。

・時価純資産法
・簿価純資産法
・DCF法

それぞれ解説していきます。

▷時価純資産法

時価純資産法は、コストアプローチに分類されます。

コストアプローチとは、純資産価値をベースに評価する手法です。中小企業のM&Aや、企業の清算でよく利用されます。
純資産価値をベースにするため、恣意性が低いとされています。

時価純資産法では、資産の時価総額から負債の時価総額を差し引き、発行した株式数で割って、1株あたりの株価を算出します。算出する際には、無形資産も時価評価を行います。

時価純資産法には、計算が簡単・客観的な評価ができるというメリットがあります。

時価純資産法では、貸借対照表があれば価値評価が可能です。他の評価手法では、ファイナンスの知識や多くのデータが必要になってしまいます。そのため、容易に価値評価ができる点は大きな利点です。

また、客観的に企業価値を評価できる点もメリットです。貸借対照表をベースにして価値を算出しているため、将来的な損益は含まず、現在の価値を反映した手法と言えるでしょう。

デメリットとしては、将来性を企業価値に反映できない点です。投資家は、これからの株式の値上がり・値下がりに興味があります。しかし、時価純資産方式では、ある時点での会社の資産・負債を算出してしまっています。

また、精算した時点で収益が獲得できていなくても、将来的に収益が期待できる場合もあります。将来的な収益は、企業価値に反映すべきですが、時価純資産法では不可能です。

M&Aは、将来性があるかを加味して実施します。そのため、M&Aで考慮している箇所がカバーできていない手法とも言えます。将来的な収益を反映できない点は、時価純資産法の大きな欠点です。

▷簿価純資産法

簿価純資産法も、コストアプローチによる評価方法です。帳簿上の資産の合計を企業価値と見なし、発行した株式数で割って、1株あたりの株価を計算します。

簿価純資産法のメリットは、客観的な評価であること。帳簿上の資産・負債をもとにして企業価値を計算しているため、恣意性が低いのです。

デメリットは、帳簿上の資産が時価とかけ離れている可能性があることです。そのため、実際は簿価純資産法で企業価値を判断することは少なくなっています。

時価純資産法や簿価純資産法については、以下の記事でより詳細に解説しています。

▷関連記事:【図解付き】企業価値評価におけるコストアプローチとは?メリット・計算方法・他の方法との違いを解説

▷DCF法

DCFとは、ディスカウンテッド・キャッシュ・フローの略。「割引キャッシュフロー」や「割引現金収支法」とも言います。インカムアプローチによる手法です。

インカムアプローチは、将来の収益を指標とした企業価値を評価です。

DCF法では、会社が将来生み出す収益を、フリーキャッシュフローで推測。フリーキャッシュフローとは、自由に使えるお金がどのくらいあるのかを表したものです。

そして、推測した収益を資本コストで割り引き、現在の価値を算出します。資本コストとは、会社の資金調達に伴うコストのことです。

DCF法のメリットは、のれんや将来に期待される収益を反映させた上で評価できる点です。

買収する側は、売り手企業のフリーキャッシュフローを把握できます。そのため、将来性を見越して、M&Aのメリットを判断できます。

DCF法のデメリットは、客観性に欠ける点です。

将来性を反映させたフリーキャッシュフローをもとに算出しており、その根拠となっているのは事業計画。もし、事業計画が客観性に欠けた、精度が低いものであれば、DCF法で算出した値は正確とは言えません。

のれんを合理的に判断できる手法として、大企業のM&AではDCF法がよく用いられます。

DCF法をより詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

▷関連記事:【徹底解説】企業価値評価の手法の一つ、インカムアプローチとDCF法の計算方法を解説

PPAにおける「のれん」評価の注意点

PPAにおいて「のれん」を評価する際には、以下の注意点があります。

・のれんの評価額は評価者によって変動する
・評価ミスがあると事業に悪影響の可能性がある

それぞれ解説します。

▷のれんの評価額は評価者によって変動する

のれんを評価する際の注意点1つ目は、評価額は評価する人によって変わる点です。
目に見えない価値を評価するため、絶対的な評価は難しくなっています。

個人の主観を排除し、客観的な評価を行う必要がありますが、個人差が生まれてしまうのは注意すべき点です。

▷評価ミスがあると事業に悪影響の可能性がある

のれんを評価する際の注意点2つ目は、評価にミスがあると、事業に悪影響の可能性がある点です。

のれんの評価を誤ると、のれんや企業価値を見直す「のれんの減損」が発生する場合があります。企業価値の見直しによって、株価と株主に影響が出てしまう可能性もあります。株価が下がれば、事業を行う際に資金調達をすることが難しくなります。

株主には、配当金の観点から影響が出ます。株主は配当金が受け取れない可能性も出てきます。

結果、のれんの評価ミスがあると、事業や株主に影響しかねないのです。

M&AにおけるPPA処理の手順

・STEP.01情報収集・分析 売り手企業の資産や負債・事業内容などを把握
・STEP.02無形資産の確認 何を無形資産として計上するのかを確認
・STEP.03無形資産の評価 どのくらいの価値になるのか金額を算出
・STEP.04会計監査 作成したレポートについて監査を受ける

M&AでのPPAの処理は、上記の手順で行われます。

▷PPAの手順1.情報収集・分析

情報収集・分析の段階では、売り手企業の資産や負債・事業内容などを把握します。

そのために、主に以下の資料を用意します。 

・株式価値の算定書
・M&Aに関する契約書類
・法務・財務・税務の調査資料
・売り手企業の事業内容や財務内容
・株式譲渡や事業譲渡などの買収スキーム
・無形資産評価に必要な買収の背景や目的

▷PPAの手順2.無形資産の確認

何を無形資産として計上するのか、確認します。

無形資産は、すべて計上されるわけではありません。譲渡企業が持つと思われる無形資産をチェックします。

無形資産の例としては、国際会計基準(IFRS)で以下が挙げられています。

・顧客関連の無形資産:顧客リスト・受注残・顧客契約
・芸術関連の無形資産:演劇・書籍・雑誌・音楽・写真・動画
・技術に基づく無形資産:特許技術・ソフトウェア・企業秘密
・マーケティング関連の資産:商標・商号・団体マーク・ドメイン名
・契約に基づく無形資産:ライセンス・ロイヤリティ・広告・フランチャイズ契約

無形資産の確認の段階で、会計監査人とすり合わせを実施することもあります。早めにすり合わせを行うことで、やり直しが発生することを防ぎ、スムーズなPPA処理が可能です。

▷PPAの手順3.無形資産の評価

計上する無形資産が決まれば、どのくらいの価値になるのか金額を算出します。
企業価値評価手法と異なり、無形資産の評価手法は少し複雑です。主に以下の方法が存在します。

・コストアプローチ:再調達原価法、・複製原価法
・マーケットアプローチ:売買取引比較法、利益差分法
・インカムアプローチ:利益差分法、超過収益法、ロイヤリティ免除法

無形資産に具体的な評価をつけるには、専門的なスキルや知識が必要です。無形資産の評価においては特に、プロに任せることをおすすめします。

無形資産の評価が終わったら、レポートを作成します。レポートには無形資産や負債について、以下を記載します。

・選定プロセス
・計算過程
・計算結果

買い手企業は、レポートを確認し、認識や理解に齟齬がないかチェックします。会計の方針と照合して、受け入れられるかも確認が必要です。

通常、レポートをもとに専門家と話し合いをします。その後、会計監査人にレポートを提出して監査を受けます。

▷PPAの手順4.会計監査

会計監査では、作成したレポートについて監査を受けます。

PPAの処理をプロに任せていても、レポートを提出する責任は、譲受企業にあります。

会計監査人は、レポートに記載された評価の根拠をチェックします。無形資産の特定方法・価値評価が妥当なのか、レビューを行います。

会計監査人のレビュー内容に対して、買い手企業はレポート内容の妥当性や正確さを説明。会計監査人は、専門的かつ厳しい質問を投げかけてきます。この時もやはり、プロの力が必要になります。

会計監査が無事に終われば、PPA処理も完了です。

まとめ


M&Aで行われるPPAについて解説しました。のれんの評価やPPA処理についてご紹介しましたが、いずれも専門家でないと厳しいもの。

さらに、PPAはM&Aを実施してから1年以内に実施する必要があります。

「M&AやPPAを任せられる人を探している」とお考えの方は、ぜひfundbookへご相談ください。M&Aはもちろん、PPAの知識が豊富なアドバイザーも在籍していますので、丁寧にサポートします。

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