よくわかるM&A

2023/09/26

ベトナムでのM&A|メリット・デメリットや注意点・動向・事例

ベトナムでのM&A|メリット・デメリットや注意点・動向・事例

「ベトナム企業とのM&Aを考えているが、ベトナムの企業やM&Aについて、よく知らない」とお悩みではないでしょうか?
ベトナムのM&Aには注目が集まるものの、情報はあまり出回っていません。

そこで、この記事ではベトナムとのM&Aの概要について、現役のM&Aアドバイザーが解説します。
ベトナムとのM&Aにおけるメリットやデメリット、現状が把握できますので、ぜひ最後までご覧ください。

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ベトナムのM&Aとは

ベトナムの企業が売り手になる場合、買い手になる場合の両方のケースがあります。
ベトナムは経済成長が著しく、日本と友好的な関係にあります。政治も安定していると見られ、M&Aの相手として魅力を感じる企業も多くなっています。
相手が外国企業のM&Aを、「クロスボーダーM&A」と言います。

クロスボーダーM&Aに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
▷関連記事:クロスボーダーM&Aとは?目的・メリットと成功のポイントから事例まで解説 M&A関連の用語解説

ベトナムのM&Aの動向

日本企業による、ベトナム企業の買収は増加しています。日本企業によるベトナム企業のM&Aは、経営権を取らないレベルのマイナー出資が多い傾向です。徐々に取得株式を増やしていく企業も見られます。
日本以外にも、シンガポールやタイからの投資が多くなっています。

ベトナムでM&Aを行うメリット

ベトナムに進出する企業が多い理由として、以下のメリットがあります。

・市場の拡大が見込める
・インフラが整備されている
・政府間で友好な関係を築いている

それぞれ解説します。

市場の拡大が見込める

ベトナムの人口は2020年時点で約9,700万人と、年々増加中です。さらに個人の所得も高まりを見せています。経済的に発展中のベトナムでは、あらゆる商品やサービスが求められている状態です。いわば、日本の高度経済成長期のような状況と言えます。

今後は、富裕層に対して中間層の増加が見込まれています。そのため、中間層が求めるモノやサービスの需要が高まっています。

インフラの整備が進んでいる

ベトナムでは、道路や空港などのインフラが整備されつつあります。

ベトナムのGDPの7%がインフラへの投資で、国全体でインフラの拡充に力を入れていることが伺えます。インフラが整えば、立地の良い所に工場を建てたり、全国に物流の幅を広げたりすることも可能です。主要都市に集中している企業の拠点も、地方にできやすくなります。

インフラの整備が進めば、全国規模で商品やサービスを広げることが容易になるでしょう。 

政府間で友好な関係を築いている

政府も、企業が参入しやすい環境を整えようとしています。2003年には、「日越投資協定」を結びました。これは、投資の自由化や投資がしやすい環境を整えることを定めた協定です。

ベトナム政府は日本に対して友好的なため、M&Aの交渉を行う際にも、歓迎されやすい点がメリットです。

ベトナムでM&Aを行うデメリット

一方、ベトナムでM&Aを行うデメリットは、以下の通りです。

・為替レートの影響を受ける
・会計基準や財務報告が整備されていない

それぞれ見ていきましょう。

為替レートの影響を受ける

ベトナム企業とのM&Aのデメリット1つ目は、為替レートの影響を受けることです。
理由としては、ベトナム企業とのM&Aでは、円ではなく米ドルで取引する機会が多くなっているためです。
為替レートの変動によって、予想外に取引の金額が高くなってしまう恐れがあります。

会計基準や財務報告が整備されていない

ベトナム企業とのM&Aのデメリット2つ目は、会計基準や財務報告が整備されていない点です。
会計基準や財務報告が曖昧なため、企業の評価が正確に行えません。ベトナムは経済成長の真っ最中であり、法の整備は後回しになっているのが現状です。
日本企業側としては、ベトナム企業の実態がよく分からず、リスクを負うことになります。結果、M&Aを断念するケースもあります。

ベトナムでM&Aを行う場合、法律・規制

ベトナムでM&Aを実施する場合、以下の通り、知っておきたい法律や規制があります。

・証券法
・統一企業法
・投資規制

それぞれの法律や規制について解説します。

証券法

ベトナムの証券法では「外資系企業が買収した企業は、100%その外資系企業のものとすべき」という新たな証券法が望まれています。

つまり、外国の企業や投資家から、資本金を限りなく調達できる制度への希望が高まっています。法の整備が進む中、どのような証券法となるのか、注目しておく必要があります。

統一企業法

2005年、ベトナムでは会社の設立や運営に関して定められた、統一企業法が制定されました。日本で言う会社法にあたります。

統一企業法は、民間企業、国営・公営企業、外資系企業などを対象としています。会社の種類によって、社員数・会社内の機関・株主の権利などが異なっています。

例えば、外資系企業であれば、統一企業法内で定められている「外国投資法」の確認が必須です。

統一企業法をチェックした上で、M&Aを進めていく必要があります。

投資規制

ベトナムでは、外国投資に対して投資規制が敷かれています。投資が禁止されている分野があり、細かく規制や制限が設けられています。

たとえば、麻薬や爆竹などの販売を行っている企業への投資は禁止です。様々な事業を手がける企業には、事業の一環として「実は爆竹を販売している」といったことがあります。取引先がどのような事業を行っているのか、事前によく確認しておきましょう。

また、麻薬や爆竹などは公に禁止されているもののあくまで一例です。投資規制の他にも、制限が設けられていたり、承認されない分野があったりします。そのため、M&A会社を通して確認するのがおすすめです。

ベトナムでM&Aは公開会社と非公開会社で流れが異なる

ベトナムでのM&Aは、公開会社と非公開会社で流れが異なります。
公開会社とは、証券法に定められている通り、以下に1つでも該当する会社のことです。

・株式の公募を行った会社
・証券取引所に上場している会社
・資本金が100億ドン以上で、100名以上の株主がいる会社

公開会社と非公開会社でのM&Aの流れの違いを解説します。

公開会社をM&Aする場合

公開会社をM&Aする場合、以下の4つを確認する必要があります。

1.日越投資協定に外資出資割合の規制があるか
2.投資法や関連する法令で、外資出資割合の規制に該当する事業を行っているか
3.条件付投資分野か
4.定款に外資規制割合が制限されているか

3.の条件付投資分野については、該当する場合、外国からの投資を全体で49%以内に抑える必要があります。他に外国の投資家がいる場合、その投資家と併せて49%までしか株式を取得できません。

非公開会社をM&Aする場合

非公開会社をM&Aする場合、以下の2つを実施する必要があります。

1.事前に計画投資局へ、M&A登録手続きを行う
2.M&A後、企業登記局へ社員・株主変更通知を行う

1.については、結果が15日前後で通知されます。さらに、重大なプロジェクトの場合は国会・首相・ベトナムの地方行政機関である省級人民委員会から、事前に承認される必要があります。重大なプロジェクトとは、空港の建設のような、規模や投資額の大きいプロジェクトが当てはまります。

また、M&A登録手続きについては、免除されることがあります。条件付投資分野に該当せず、外資出資割合が50%以下であれば、M&A登録手続きは免除です。

ベトナムでのM&Aの手法

ベトナムでのM&Aの手法として、以下が挙げられます。

・株式譲渡
・資産譲渡
・中間持株会社の利用
・組織再編

それぞれ解説します。

株式譲渡

ベトナムのM&Aにおいては、株式譲渡を利用することがほとんどです。既存株式の譲渡や、第三者割当増資を指します。

資産譲渡

ベトナムのM&Aにおいては、資産譲渡の事例は少数です。資産譲渡とは、日本で言う事業譲渡に似た手法になります。資産譲渡の際には、主に以下のことを考慮します。

・どの資産や負債を譲受するのか
・従業員は再雇用するのか
・取引先との契約は引き継げるのか

考慮する点は多数あり、手続きが複雑になります。一方で、偶発的な債務を回避できる可能性が高まります。

中間持株会社の利用

ベトナムのM&Aでは、中間持株会社を利用するケースもあります。中間持株会社を利用するM&Aにおいては、日本の企業はベトナム企業の株式を直接持ちません。間に別の法人が入り、その法人が株式を取得します。

中間持株会社を利用するメリットとしては、税制上の優遇がある点です。ベトナムの会社を直接M&Aすると、法人税が課せられます。しかし、中間持株会社を利用すれば、ベトナム企業の所得に対する法人税や源泉税は、計算の対象外になります。

組織再編

ベトナムのM&Aでは、組織再編を行う場合もあります。組織再編には、以下の方法があります。

・消滅分割
・存続分割
・新設合併
・吸収合併

組織再編は、会社に多大な影響を及ぼします。株主総会や社員総会で決議が必要です。債権者や従業員にも、組織再編を周知する必要があります。

ベトナムでM&Aをする際の注意点

ベトナムでM&Aを実施する際には、以下の注意点があります。

・株式の取得
・譲渡対価の支払い
・賄賂
・土地・建物

事前に把握しておきましょう。

株式の取得

株式の取得について「49%まで」と定められている場合があります。

背景としては、ベトナムの産業や雇用を守ることが挙げられます。

ほとんどの業種では、100%の取得が認められています。しかし、投資禁止分野と条件付き投資分野に関しては、制限が存在します。そのため、株式を本当に100%買収できるのかは確認が必要です。

譲渡対価の支払い

譲渡対価の支払いタイミングには、注意が必要です。

以前は、譲渡対価の支払いをしてからのみ、買収の承認や企業登録証明書の変更などの手続きはできませんでした。

しかし、買収の承認が降りるか分からない中、譲渡対価を支払わなければならないことに、外国人投資家や企業が不満を抱いていました。

現在は譲渡対価の支払い前に、買収の承認や企業登録証明書の変更が可能です。しかし依然として、譲渡対価の支払いを先に求められることがあります。

譲渡対価の支払いは、後でいいことを頭に入れておきましょう。買収の承認・企業登録証明書の変更が完了したことを確認の上、譲渡対価を支払うことをおすすめします。

賄賂

ベトナムは、贈収賄のリスクが高いことで知られています。

ベトナムにおいては、外国の投資家が会社を設立する際、投資登録証明書を発行する必要があります。しかし、発行の申請の際に、金銭を求められるほど贈収賄が横行しているのが現状です。汚職を防ぐべく法律の制定が進められ、取り締まりが厳しくなっています。

しかし、M&Aのデューディリジェンスで、対象のベトナム企業の状況を把握することは欠かせません。M&A後も、文化やコンプライアンス意識の違いを理解し、健全な企業風土をつくることが必要です。

デューディリジェンスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

▷関連記事:M&Aの最後にして最大の難関。「デューディリジェンス(DD)」を徹底解説

土地・建物

ベトナムでは、建物は所有が可能ですが、土地は所有することができません。

土地に関しては、現地企業か外資企業かを問わず所有が不可能です。そのため、企業は土地の使用権を持つことになります。

しかし、権利証書がなく、使用権を持つのが誰なのか不明な場合は注意が必要です。

ベトナムのM&Aの事例3つ

日本企業がベトナムの企業をM&Aした事例として、以下の3つをご紹介します。

・住友生命保険相互会社によるバオベトホールディングスの株式取得
・江崎グリコによるキンドの株式取得
・キリンホールディングスによるインターフードの株式取得

それぞれ解説します。

住友生命保険相互会社によるバオベトホールディングスの株式取得

バオベトホールディングスは、ベトナム最大手の金融グループです。2012年に住友生命保険相互会社が発行株式の18%を取得し、およそ280億円で買収しました。

住友生命保険相互会社は、生命保険事業のノウハウを100年以上にわたって蓄積しています。M&Aによって、バオベトホールディングスとの関係を構築し、培ったノウハウをもって、ベトナムで販路を拡大させる狙いです。

江崎グリコによるキンドの株式取得

キンドはベトナムで製菓市場のシェアの30%を占めます。江崎グリコ株式会社は2012年に、キンドを資本金10%に当たる株式の取得によって買収しました。

キンドが持つベトナム市場における販売網を利用し、江崎グリコ製品の販売促進や顧客の獲得が狙いです。

キリンホールディングスによるインターフードの株式取得

飲料の製造や販売を手がけるインターフードは、ベトナム全土で11万店以上の流通網を持ちます。飲料ブランドを多く扱っていることでも知られています。

ベトナムでは、人口増加とともに経済発展も目覚ましく、清涼飲料の市場規模も拡大しています。キリンホールディングス株式会社は、このベトナムの状況に目を付けます。

2011年にキリンホールディングスは、インターフードの株式を約57%取得しました。この株式取得により、インターフードの知的財産権および知的財産権の管理会社の発行済み全株式を買収しました。

インターフード買収により、世界での販売網を拡大させる狙いです。

まとめ

本記事では、ベトナムにおけるM&Aの概要について解説しました。

経済成長中のベトナムは、M&A先として人気が高まっています。しかし、法整備がされていないことをはじめ、M&Aの実施には注意点があります。

クロスボーダーM&Aは、現地の企業とのやり取りや手続きに難航しやすいため、専門家のアドバイスは欠かせません。

fundbookでは、クロスボーダーM&Aのご相談や案件を承っています。豊富な知識や経験をもとに、M&Aの成功に向けてサポートいたします。

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