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2023/12/27

事業承継・引継ぎ補助金とは?制度や利用方法など基礎知識

事業承継・引継ぎ補助金とは?制度や利用方法など基礎知識

事業承継・引継ぎ補助金は、前身となる制度が2017年度よりはじまり、国の事業承継を促進するための補助金制度です。
近年では、経営者の高齢化による事業承継ニーズの高まりや新型コロナウイルス感染症の影響で、廃業の危機にさらされている企業が増えています。

一方でM&Aなどによって、事業承継を行い事業を成長させている企業も存在しています。事業承継・引継ぎ補助金はこういった事業承継を応援して、国の経済発展を促進するためのものですが、実は補助金を受けられるのは中小企業だけでなく個人事業主も含まれるのです。

経済産業省の発表によると、事業承継・引継ぎ補助金は2024年も継続され、事業承継・M&A・グループ化後の設備投資、販路開拓や、M&A時の専門家活用費用などを支援する方針です。

今回は、2022年の内容をもとに事業承継・引継ぎ補助金について概要や要件などを解説します。
この補助金は過去のデータでは交付決定率が高く、人件費も対象経費になるなど、事業承継を進めるにあたり把握しておきたい補助金となります。

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事業承継・引継ぎ補助金とは?

『事業承継・引継ぎ補助金』とは、事業承継にかかる費用はもちろん、事業の再編や事業統合を機会とした新たな取組を行うための費用について、その一部を補助することで経済の活性化を目的とするものです。

つまり、事業の引継ぎ後にその事業をさらに発展させるために発生した費用や、M&Aにかかった費用に対し補助金が出るという制度です。詳しくは後述しますが、事業承継・引継ぎ補助金には次の三つの類型が存在します。

 補助上限額補助率対象経費対象者
①経営革新事業600万円2/3・設備投資
・店舗の借入費
・マーケティング調査費
・人件費
・改装工事費用 等
事業承継やM&Aを機に、経営革新にチャレンジする事業者
②専門家活用事業600万円2/3・委託費
・マッチングサイトのシステム利用料
・デューディリジェンス費用
・セカンドオピニオン 等
M&Aで他者から事業を引き継ぐ事業者、M&Aで他者に事業を引き継ぎたい事業者
③廃業・再チャレンジ事業150万円2/3・廃業費
・在庫廃棄費
・解体費 等
既存事業を廃業して新しい事業にチャレンジする事業者

※参考:中小企業庁

▷中小企業、個人事業主も対象

事業承継・引継ぎ補助金は国の中小企業や小規模事業者が申請できます。ポイントは要件さえ満たせば、個人事業主も対象に含まれるので補助金を受け取れます。
たとえば、経営革新で申請要件となる「経営経験」ですが、個人事業主としての経験も含まれることが明記されており、3年以上個人事業主としての経験があればOKです。

ただし、個人事業主が申請する場合は、青色確定申告の申請をしている必要があるので、この点には注意をしておきましょう。

【事業承継・引継ぎ補助金の種類】①経営革新事業

経営革新とは、事業承継やM&Aをきっかけに、設備投資や販路開拓にチャレンジするようなケースを指します。
2022年については、2017年4月1日以降(過去)に承継した事業の中で、今から新しいことをはじめようとするのであれば対象になり、補助上限額は600万円で、400万円までの補助金は対象経費の3分の2ですが、400万円を超えて600万円以下の部分の補助率は2分の1となります。

また経営革新事業はさらに細かく分けると三つの型が存在します。
—————————-
・創業支援型(Ⅰ類)
・経営者交代型(Ⅱ類)
・M&A型(Ⅲ類)
—————————-
それぞれの型について解説します。

▷【経営革新】創業支援型(Ⅰ類)

創業支援型とは、創業を契機として引き継いだ経営資源を活用し、経営革新等に取り組む中小企業・小規模事業者を対象とした補助金です。
利用のための要件として、廃業を予定している者等から”有機的一体として機能する経営資源”を引き継ぎ、創業間もない中小企業・小規模事業者であり、かつ産業協力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であることとなります。
上記の中にある有機的一体として機能する経営資源とは、設備や従業員、顧客、資産や負債などその事業に関するすべてを一体として見ることを指し、特定の設備などの引き継ぎのみなどは要件を満たしません。

▷【経営革新】経営者交代型(Ⅱ類)

経営者交代型とは、事業承継を契機とし、経営革新等に取り組む中小企業・小規模事業者を対象とした補助金です。
利用のための要件として、親族内承継や従業員承継等の事業承継(事業再生も含む)であり、産業協力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であることとなります。

▷【経営革新】M&A型(Ⅲ類)

M&A型とは、事業再編や事業統合を契機に経営革新に取り組む中小企業・小規模事業者を対象とした補助金です。
要件として産業協力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であることとなります。
前述の経営者交代型では事業承継を行う中小企業・小規模事業者を対象都市、M&A型では事業再編や事業統合等を行う中小企業・小規模事業者を対象としていますが、要件などは同様となります。

【事業承継・引継ぎ補助金の種類】②専門家活用事業

専門家活用はM&Aの時にかかる費用を補助するものです。
対象となるのは M&Aによって経営資源を他の人から承継する取組をすすめているもしくは、これからM&Aによって事業を売ろうとする中小企業・小規模事業者です。

そのため専門家活用には買い手側と売り手側の2つの型があります。
—————————-
・買い手支援型(Ⅰ型)
・売り手支援型(Ⅱ型)
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補助対象経費は、FA・仲介業者への手数料やデューディリジェンスにかかる専門家費用、セカンドオピニオン費用などです。補助上限額については経営革新事業と同じ600万円で、補助率も同様(2/3)です。

▷【専門家活用】買い手支援型

買い手支援型は事業再編や事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の補助対象者が、以下の2点に該当していることが要件となります。

・事業再編や事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
・事業再編や事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。

▷【専門家活用】売り手支援型

売り手支援型の要件は、すでに地域の雇用を推し進める事業を行っていて、かつM&Aで第三者にその事業を引き継いでも、雇用促進や経済活性化が継続されると見込まれることです。
国としては、事業者の老齢などによって、事業を廃業とすることで失われる雇用や経済を防ぎたいということです。

【事業承継・引継ぎ補助金の種類】③廃業・再チャレンジ事業

廃業・再チャレンジ事業とは、事業承継や事業再編成の際、廃業にかかる経費の一部を補助するものです。
補助率は2/3で補助上限は150万円となっています。対象経費には廃業支援費や在庫廃棄費、解体費などが含まれます。経営革新事業や専門家活用事業と同様、廃業・再チャレンジ事業についても個人事業主の申請は可能です。

廃業・再チャレンジ事業は大きく以下の2つに分けられています。
・併用申請型
・再チャレンジ申請型

▷併用申請型

併用申請型は経営革新や専門家活用と併用申請が可能です。
経営革新でも専門家活用(買い手支援型)でも、譲り受けた事業の一部や既存の事業を廃業する場合に申請できます。

また、専門家活用の売り手支援型とも併用可能です。M&Aなどによって事業を譲り渡した後に、残った事業を廃業する際に申請できます。

▷再チャレンジ申請型

再チャレンジ申請型は、M&Aなどで事業の譲り渡しに着手しても成約に至らなかった事業者が、地域の新たな雇用創出や経済の活性化にチャレンジするため、既存事業を廃業する場合に申請できます。
ここでの『着手』とは、M&Aのマッチングサイトや支援機関へ登録をしたことであり、自分自身でM&Aに着手したというケースは除かれます。

事業承継・引継ぎ補助金の申請から交付までの流れ

事業承継・引継ぎ補助金とは?制度や利用方法など基礎知識

事業承継・引継ぎ補助金の申請は、基本的に経済産業省が運営する補助金の電子申請システム(Jグランツ)を使います。
jGrantsを利用するためには、GビズIDプライムのアカウントを準備する必要があります。GビズIDプライムの登録までには1~2週間ほどかかるので早めに準備していくことがおすすめです。法人であっても個人事業主であっても以下の4点を準備すればアカウント登録をすすめられます。

▷アカウント登録に必要なもの

・印鑑証明書(法務局または地方公共団体が発行)
・登録印鑑を押した申請書
・メールアドレス
・SMS受信可能な携帯番号

経営革新と廃業・再チャレンジについては、申請する前に認定経営革新等支援機関に相談をしておく必要があります。無事に補助金の交付が決定した後、補助対象事業を実施し、実績報告をします。
実績報告後は確定検査が行われ、無事に通過すると補助金が交付されるという流れです。

事業承継・引継ぎ補助金の申請の注意点と交付決定率

申請にあたっては加点ポイントや注意点があります。
申請前にしっかりと確認してから準備をすすめるようにしましょう。

▷加点ポイント

申請のための必須要件ではありませんが、以下ポイントを実施している場合、審査で加点を受ける事が出来ます。

・経営革新事業

(1) 「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていること
(2) 交付申請時に有効な期間における経営力向上計画の認定、経営革新計画の承認又は先端設備等 導入計画の認定書を受けていること
(3) 交付申請時に地域おこし協力隊として地方公共団体から委嘱を受けており、かつ承継者が行う経営 革新等に係る取組の実施地が当該地域(市区町村)であること
(4) Ⅰ型の申請にあたって、認定市区町村による特定創業支援等事業の支援を受けていること
(5) Ⅰ・Ⅲ型の申請にあたって、第三者により補助対象事業となる事業承継の形態に係るPMI 計画書 42 (100 日プラン等)が作成されていること
(6) 地域未来牽引企業であること
(7) 新型コロナウイルス感染症拡大以後(2020年1月以降)に承継をしていること。(補助対象期間中の 承継も含む)

・専門家活用事業

【買い手支援型(Ⅰ型)・売り手支援型(Ⅱ型)共通】
(1) 経営力向上計画の承認を得ており、経営力向上計画の承認通知を交付申請時に提出した場合
(2) 経営革新計画の承認を得ており、経営革新計画の承認通知を交付申請時に提出した場合
(3) 地域未来牽引企業の認定を受けており、地域未来牽引企業の認定通知を交付申請時に提出し た場合
(4) 中小企業の会計に関する基本要領を遵守しており、顧問会計専門家印のあるチェックリストを交 付申請時に提出した場合
(5) 中小企業の会計に関する指針を遵守しており、顧問会計専門家印のあるチェックリストを交付申 請時に提出した場合
(6) 中小企業基本法等の小規模企業者

【売り手支援型(Ⅱ型)のみ】
(7) 直近決算期の、営業利益または経常利益が赤字の者
(8) 2020 年 4 月 1 日以降に決算が行われた任意の事業年度の売上高が、2020 年 3 月末日までに 決算が行われた事業年度のうち、最新の事業年度の売上高と比較して減少していること

・廃業・再チャレンジ事業

(1)再チャレンジする主体の年齢が若いこと
(2)再チャレンジの内容が、「起業(個人事業主含む)」「引継ぎ型創業」であること。

事業承継・引継ぎ補助金の交付決定率

事業承継・引継ぎ補助金は、採択のフェーズがなく申請後すぐに交付決定になります。
令和3年度の交付決定率を見ていくと、経営革新事業が約50%、専門家活用事業が約80%という結果になりました。申請した半分以上の事業者に補助金が下りていたことがわかります。
申請すれば必ず交付されるというものではないので、事前の準備や書類の手配を確実に行う様にしましょう。

まとめ

今回は、事業承継・引継ぎ補助金についての概要や申請要件、個人事業主も申請できる点について解説しました。事業承継・引継ぎ補助金は後継者問題を解決して国の経済発展を促進するための重要な補助金制度です。

補助金をうまく活用できれば、新規事業や起業に役立てられるかもしれません。
※事業承継・引継ぎ補助金の内容や要件は毎年少しずつ変更されています。本記事は2022年時点の内容をもとに解説しましたが、最新情報は中小企業庁のHPなどで確認できます。

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