株式交換 税務

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を、他の株式会社または合同会社に取得させる会社法上の組織再編行為をいいます(会社法2条31号)。すなわち、完全親子会社関係を実現するための組織再編行為です。

株式交換については、異なる税務処理が100%親会社となる「完全親会社」、100%子会社となる「完全子会社」および「完全子会社の株主」の3者に対し義務づけられています。株式交換を用いて会社の譲渡を検討しているオーナー経営者の方は、譲渡企業の代表としても株主の立場としても、難解な専門用語や複雑な計算に戸惑うかもしれません。しかし、オーナー経営者が、こうした株式交換に関する知識を有しておくことで、取引をスムーズに行えるでしょう。

本記事では、税務仕訳の具体例を交えつつ、株式交換による「完全子会社」と、「完全子会社の株主」のそれぞれに必要な税務処理について解説します。

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この記事を執筆した専門家
株式交換 税務
公認会計士/税理士 深堀 雅展

地方銀行、国内の会計事務所、大手監査法人、アメリカの会計事務所を経て、2017年に独立開業。
特に会社設立や創業融資に力をいれている。また、経営・財務のみならず、人事・労務業務も守備範囲とし、これまで各中小企業の良きアドバイザーとして業務を展開している。

株式交換の税務と適格要件

株式交換の税務には、株式交換完全親会社と完全子会社、および完全子会社の株主の3者が関与します。完全親会社については、課税関係は生じませんが、適格・非適格の区分によって、完全子会社の株式の受け入れ価額の処理が異なります。

完全子会社については、合併など他の組織再編行為と整合性をとるため、税務上の適格要件を満たすかどうかが重要となり、これにより課税関係が生まれるかが決定します。従って、適格要件の検討が重要課題となります。

一方、完全子会社の株主に対する課税は、適格・非適格ではなく、親会社株式以外の資産を交付されたかどうかで区分します。株式以外の交付がなければ、完全子会社の株式の帳簿価額による譲渡を行ったものとして譲渡損益の計上を繰り延べ、株式以外の交付があった場合は譲渡損益の計上を行います。

完全子会社

適格要件
適格
課税関係は生じない
非適格
資産の含み損益を計上

完全子会社の株主

親会社株式以外の資産 交付なし 完全子会社株式の譲渡による譲渡損益は繰り延べられ、譲渡損益に係る課税が繰り延べられる。株の取得価額は、法人株主であれば完全子会社株式の帳簿価額を、個人株主の場合は取得価額を引き継ぐことになる。
交付あり 譲渡損益を計上し、親会社株式の取得価額は株式交換時の時価となる。

以下で、具体的に完全子会社と完全子会社株主の税務処理を解説します。

完全子会社の税務処理

次に税務処理について解説します。

適格株式交換の場合

株主の異動が生じるのみであり、課税関係は生じません。

非適格株式交換などの場合

完全子会社が株式交換の直前に有する一定の資産について時価評価を行います。時価評価の対象は固定資産(土地など)、有価証券、金銭債権および繰延資産です。ただしそれぞれの資産ごとの含み損益が完全子会社の資本金などの額の2分の1や1,000万円に満たない資産であることなどの制限があります。

上記の評価益(または評価損)相当額を、完全子会社にとって非適格株式交換などがあった日の属する事業年度の益金(または損金)の額に算入します。

具体例

A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする非適格株式交換を行った場合は以下のようになります。

株式交換 仕訳

B社の税務上の仕訳

株式交換 仕訳

このケースは非適格株式交換であることから、B社は時価評価資産について時価評価を行います。そのため含み益1,500(土地の時価-土地の簿価)が評価益として、株式交換実施日を含む事業年度の所得を構成し、これに対して法人税などの負担が生じます。

上記の具体例では、棚卸資産、および売買目的有価証券は、時価評価の対象から除外されているため時価評価は不要です。一方、建物については、時価評価の対象であるものの、帳簿価額が1,000万円未満のため、時価評価の対象から除外されています。

株式交換 税務

完全子会社の株主の税務処理(親会社の株式のみ交付)

完全子会社株式の譲渡対価が、完全親会社株式または完全支配親会社株式(完全親会社を100%支配する会社の株式)のいずれか一方の株式のみであるときは、完全子会社株式の譲渡損益は繰り延べられます。この場合、株の取得価額は法人株主であれば、完全子会社株式の帳簿価額を、個人株主の場合は取得価額を引き継ぐことになります。

この場合は、次の3公式が成り立ちます。

  • 株式交換完全子会社の株主には、みなし配当課税は発生しません。
  • 株式交換完全子会社株式の譲渡損益課税も生じません。
  • 適格株式交換により交付を受けた株式交換完全親法人株主の取得額は、法人の場合、旧株式交換完全子法人株式の帳簿価額(個人株主の場合は取得価額)を引き継ぎます。

一方、金銭などの交付を受けた場合は、譲渡損益を計上し、親会社株式の取得価額は株式交換時の時価となります。

具体例

1)A社はB社と適格株式交換を行った。株式交換による対価はA社株式のみである。B社の株主であるX社は、B社株式を帳簿価額100で保有している。

株式交換 仕訳

<X社の仕訳>

株式交換 仕訳

株式交換に該当することから、X社にみなし配当課税は生じません。また、X社に対して交付する株式交換の対価がA社株式のみであるため、X社に株式譲渡損益課税も生じません。この場合、X社におけるA社株式の取得価額は、B社株式の帳簿価値100を引き継ぐこととなります。

なお、B社の株主が個人であっても、法人株主の場合と同様、みなし配当課税および株式譲渡損益課税はありません。

2)B社(株式交換完全子会社)は、A社(株式交換完全親会社)と非適格株式交換を行った。A社はB社に対し、A社の株式のみを交付する。B社の株主C社におけるB社株式の簿価は100。

C社の税務上の仕訳

株式交換 仕訳

株式交換の対価が株式のみであるため、譲渡損益は認識しません。

株式交換 税務

完全子会社の株主の税務処理(親会社の株式の他にも交付)

次に親会社の株式以外に金銭などを交付している完全子会社の株主の税務処理について解説します。

具体例

B社(株式交換完全子会社)は、A社(株式交換完全親会社)と非適格株式交換を行った。A社はB社に対し、A社株式(時価120)と現金30を交付した。B社の株主C社におけるB社株式の簿価は100。

C社の税務上の仕訳

株式交換 仕訳

株式交換の対価に現金が含まれているため、譲渡益50(A社株式時価120+現金30-B社株式簿価100)を認識します。

まとめ

株式交換や会社分割、合併など組織再編に関する税務は、複雑で理解しづらいものです。しかし、会社の将来を左右するM&A事案において、税務処理のミスが判明すれば、関係者全員の利益関係に影響するとともに、M&A自体の成否にも関わりかねません。専門家の意見やアドバイスを十分活用することが、税務処理を迅速かつ適切に実施し、M&Aを成功させるために重要となるのです。