個人事業 M&A

後継者不在が叫ばれる中で、事業の承継を検討されている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。事業を引継ぐ方法として、親族承継や合併・買収を意味するM&A(Mergers and Acquisitions)などいくつかの手段があります。

M&Aと聞くと上場企業や大企業同士の事業再編といったイメージを持たれる方も多いですが、昨今では中小企業や個人事業主の間でも活発に行われている手法です。ここでは、個人事業のM&Aを行うにあたり、どうすれば成功するのか、その具体的な方法や流れについて解説します。

M&Aを検討している個人事業主の方は、ぜひ参考にしてください。

個人事業のM&Aの定義や取引のメリット

まず、個人事業のM&Aの定義や取引のメリットについて説明します。

個人事業のM&Aの定義

個人事業のM&Aとはその名の通り、個人事業主が譲渡するM&Aを指します。
個人事業であっても、独自の技術やビジネスモデル、安定した顧客や優良堅実な取引先がある場合などは、譲受企業にとっても魅力的なM&Aの相手と言えるでしょう。

個人事業M&Aのメリット

2018年11月に株式会社帝国データバンクが公表した『全国「後継者不在企業」動向調査(2018年)』によると、社員数5人以下の企業においては約75%の企業が後継者不在に直面しています。この状況の中で、個人事業のM&Aには下記のメリットが考えられます。

  • 後継者問題を解決できる
  • これから事業を始めたいと思っている方、同業者や競合会社など、自身の事業に興味を持ってくれる相手に事業を移すことで後継者不在の問題が解決できます。

  • 個人保証からの解放
  • M&Aにより事業を譲渡すれば、多くの場合で連帯保証を含めて譲受企業に引継ぐことができるため、個人保証を解消することができます。

  • 事業を譲渡して、創業者利益を得られる
  • 事業を譲渡して譲渡対価を得ることが期待できます。M&A後は創業者利益を元手に新しい事業を始める、そのまま会社に残って仕事を継続する、自由な時間を楽しむなど様々な選択肢があります。

個人事業のM&Aを成功させる有効な方法

それでは、個人事業のM&Aを行うにあたり、どのような方法があるのでしょうか。
M&Aを成功させるためにも、自身の事業に合った、有効な方法を選択する必要があります。少しでも自己の事業を高く評価してくれて、有利な条件の下、スムーズにM&Aの手続きが進められることが理想です。相手探しの上では以下の手段があります。

信頼できる仲介会社に取引相手を探してもらう

まず、M&Aを具体的に進めようと決断しても、どのような会社が興味を持ってくれるのかわからないことが大半です。より良いM&Aの相手を見つけるためにも、経験と実績のある仲介会社とともにM&Aの相手先を選定しましょう。

ただし、M&Aにはリスクも伴い、大きな金額が動きます。仲介会社は相手探しだけでなく、多岐に渡る実際の手続きまでサポートしてくれます。いくつかの仲介会社と話をして、親身になって最後まで寄り添ってくれる専門性の高い協力会社を探すことが重要なポイントです。

▷関連記事:M&A仲介会社とは?業務内容をFAと比較しながら紹介

マッチングサイトで取引相手を見つける

現在では小規模会社や個人事業のM&A需要が増えている背景から、インターネット上で相手探しをするためのM&Aマッチングサイトが増えています。メリットとしては手数料も比較的安価で手軽なこと、多くの相手候補に自社をアピールできる点が挙げられます。

しかしながら、マッチングサイトでできることは相手探しに留まるため、実際の手続きについてのサポートを提供していない会社が大半です。前述の協力会社と同じように、信頼のおけるマッチングサイトを見分ける必要があります。また、譲受側と譲渡側がM&Aの合意に至るまでは、直接交渉するリスクや時間がかかる点がデメリットといえるでしょう。

▷関連記事:中小企業M&Aのカギを握るマッチング。成功に導くコツとは

事業引継ぎ支援センターを利用する

後継者不足は深刻な社会問題であり、国も事業承継やM&Aのための支援を行っています。
全国47都道府県に、国の機関である中小企業基盤整備機構が相談窓口「事業引継ぎ支援センター」を開設しています。相談窓口として事業承継やM&Aに関する基本的な知識やスムーズな取り組み方法や、セカンドオピニオンとして無料で親身になって相談を受けてもらえる公的な機構です。

▷関連記事:M&Aで企業が選ぶべきは仲介会社やFA、マッチングサイトのどれ?
▷関連記事:事業承継を成功させる方法とは?事業承継としてのM&A

個人事業のM&Aの具体的な手続きの流れ

個人事業のM&Aの相手探しから、契約締結までの具体的な手続きの流れを説明します。
ここではM&A仲介会社を介して、スムーズで確実な取引手続きを進める方法について取り上げます。

1.仲介会社を探す

経験と実績のある仲介会社を探します。
財務・法務・財務など、多岐にわたり専門的な知識を有するM&Aアドバイザーがいる仲介会社に任せることが重要です。また、事業の価値を高め、締結まで任せられる仲介会社を探すことが成功の秘訣といえるでしょう。また、仲介会社に依頼することで自身の事業に集中することができます。仲介会社が見つかったら、まず秘密保持契約(NDA)アドバイザリー契約を締結します。

契約を締結後、譲受企業を募るための事業の内容がわかる書類を用意します。必要な書類は事業形態などによっても異なるため、M&Aアドバイザーに相談して用意しましょう。

あわせて、仲介会社では事業の価値の算出と結果に基づいた企業概要書(IM)を作成します。事業の優位性や将来の収益性を含め、譲渡側と譲受側の交渉のベースとなる譲渡金額を客観的に算出し、譲渡側の条件を添えた打診書類としてまとめます。

M&Aにおいて必要な書類は以下の記事で詳しく解説しています。

▷関連記事:【M&Aの必要書類と契約書】M&Aの書類作成手続きをプロセスに沿って解説

2.譲受企業候補の紹介を受ける

アドバイザーと相談しながら、仲介会社から紹介を受けた譲受企業候補のリストの中から業種や事業内容、経営状態などの観点で譲受企業を絞り込みます。その後、ノンネームシートと呼ばれる、社名が特定されない範囲で企業情報をまとめた匿名の資料を用いて、譲受企業候補への打診を開始します。

▷関連記事:M&Aの交渉において重要となる「ノンネームシート」とは

3.譲受側と譲渡側で面談する

ノンネームシートを見て興味を持った企業と秘密保持契約(NDA)を締結後、より企業の詳細な情報がまとめられた「企業概要書(IM)」を相手方に開示します。

譲受企業候補が数社に絞り込まれた時点で、トップ同士の面談を実施します。互いの将来の方向性や価値観などを確認し合い、信頼関係を築くとともに、M&Aの相手(企業)として相応しいかどうかを見極めます。一般的にトップ面談の場においては事業や詳細な条件交渉についてではなく、お互いの価値観や事業の方向性についてすり合わせる場になります。

▷関連記事:M&Aを成約させる「企業概要書(IM)」の作り方

4.基本合意書を作成する

最終的に譲受企業候補が1社に絞り込まれた時点で、基本合意書を締結します。その後、M&A成立までのスケジュールをはじめ、具体的な従業員や役員の処遇などを取り決めます。

▷関連記事:M&A契約における「基本合意書」とは?

5.デューデリジェンス(DD)を実施する

譲受企業は、譲渡側から開示された情報に基づく企業調査(買収監査)を実施します。それまで伝えられた財務・労務・法務などの裏付けを取り、M&Aに際するリスクの洗い出しを行います。実際に譲受企業、または依頼を受けたM&Aアドバイザーが出向いて調査されます。それまでに開示された内容と差異が生じた場合は、基本合意書の合意条件の変更や交渉が行われる可能性があります。

▷関連記事:M&Aの最後にして最大の難関。「デューデリジェンス(DD)」を徹底解説
▷関連記事:M&Aの監査(デューデリジェンス)の役割と受け入れ方

6.最終合意

最終的な合意内容を基にM&Aの契約書を作成し、両者の署名・捺印を経て契約を締結します。多くのケースで、同時に決済も実行します。

より詳細な流れについては以下の記事にて解説しています。

▷関連記事:M&Aを検討する前に知っておきたい、M&Aの流れと手順
▷関連記事:M&Aの一般的な手続きの流れ 検討~クロージングまで

まとめ

かつてはM&Aと聞くと大企業同士で行われているものだと思われていましたが、現在では深刻な後継者不足を背景に、企業同士のM&Aのみならず個人事業のM&Aへの注目が高まっています。メリットを理解しておくことも重要ですが、個人事業のM&Aにおいて、仲介会社・マッチングサイトの選定が、成功の秘訣と言っても過言ではありません。

M&Aを行うためには財務・税務・法務などさまざまな分野の専門知識も必要となります。経験豊富な仲介会社に相談しながら、譲受企業の選定から契約締結までの一連の手続きを依頼することをおすすめします。