会計事務所のM&A

近年、中小企業の数は減少傾向にある一方、税理士の数は増加しているため、会計事務所同士での競争が熾烈化しています。日本税理士会連合会の調査によると、2014年時点で全国の税理士は60代以上が半数以上を占めており、会計事務所業界は特に高齢化が進んでいる業界のひとつとなっています。

会計事務所 M&A"

こういった状況の中で、経営者の世代交代をスムーズに行い、熾烈な競争の中で生き残る方法として、ここ数年、会計事務所間のM&Aが活発に行われています。

M&Aの意味に関しては下記をご参照ください。

▷関連記事:M&Aとは?メリットや手法、流れなど成功するための全知識を解説

会計事務所におけるM&A活用のメリット

会計事務所がM&Aを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。譲渡企業と譲受企業でそれぞれ以下のようなメリットがあります。

譲渡企業のメリット

・後継者問題を解消し、スムーズに世代交代ができる

・大手グループの傘下に入ることで、経営が安定する

・職員の雇用を維持できるだけでなく、場合によっては労働条件が向上する可能性がある

・譲渡対価を得ることで、事務所代表にまとまった資金が入り、引退後の生活に余裕が出る

・譲渡後も代表は事務所に残り、仕事を続けることも可能

・経営基盤が安定したグループに参入することで、顧問先にもより安心してもらえる

・事業規模が拡大することで、これまでにないサービスを提供できる

譲受企業のメリット

・進出していない新しい地域にグループ事務所を置くことで、新規開拓ができる

・グループ会社を増やすことで、リスクを負うことなく短期間で事業規模を拡大できる

・経験と実績を積んだ優秀な人材を確保できる

・安定した売上実績のある優良な顧問先を獲得できる

M&Aを実施する際に注意したいこと

会計事務所業界のM&Aを成功させるためには、以下のように注意しなければならないポイントもあります。

譲渡企業の注意点

・M&Aを行うことにより職場環境や労働条件が変わることで、職員が退職するなど人材流出のリスクがある

・会計事務所のM&Aは売り手市場だが、買い手市場に転換する可能性もあり、M&Aを検討するなら早くから検討を始めることが肝心

譲受企業の注意点

・会計事務所の多くは代表の実績や人柄を信頼し契約している顧問先が多いため、M&Aを機に代表が引退する場合、契約が解除される可能性がある

・統合後も代表が残って働くケースが多いため、譲渡企業・譲受企業双方の文化を理解しないと人間関係のトラブルに発展することもあり、双方の歩み寄りが重要

会計事務所業界のM&A動向

M&Aは、業界の特徴や社会情勢によって交渉の仕方も変わってきます。ここでは、会計事務所業界におけるM&Aの動向についてご紹介します。

M&Aに絶好なのは売上1億円前後

会計事務所では、個人事務所から大手税理士法人まで、さまざまな規模の事務所が存在します。

そのうち、M&Aが最も頻繁に行われているのは、ベテラン職員が数名在籍していて、安定した経営の企業を顧問先に持っている「売上規模1億円前後の会計事務所」です。

安定した経営基盤ができているため、拠点を増やして事業拡大を積極的に進めたいという企業にとっては、絶好の譲り受け先といえそうです。

また、売上規模5,000万円前後の会計事務所も、比較的M&Aが成約しやすい傾向があります。職員は少ないものの少数精鋭で実績を積んでいることが多く、規模は小さいながら、着実に営業基盤を固めている点が強みです。

会計士事務所のM&Aはいつまでも売り手市場とは限らない

先述の通り会計事務所のM&Aは売り手市場から買い手市場に転換する可能性があります。会計事務所の場合、高齢となった代表が後継者問題を解決できないところから、M&Aを検討するケースが多くあります。

また、資格業であるため、譲受企業も優秀な人材を欲しがる場合は多く、実績も信頼もある会計事務所は引く手数多の売り手市場となっています。

しかし、この傾向はいずれ沈静化するという見方もあり、M&Aに踏み切れず先延ばしにしていると、いざというときに譲渡先が見つからない可能性もあります。会計事務所のM&Aは、できるだけ早くから検討しておいたほうが良さそうです。

会計事務所におけるM&Aをお考えなら

会計事務所業界は、特に急速にM&Aが進んでいる業界のひとつです。譲渡企業・譲受企業どちらも豊富な選択肢がありますが、規模や職員数、顧問先、どのようなM&Aを望んでいるかは、自社のニーズによって大きく異なります。

最適な譲受先を見つけることができなければ、会計事務所同士の競争についていけなくなったり、高値での譲渡ができなくなることも考えられます。

M&Aを円滑に成功させるために、できるだけ早い段階でM&Aを検討し、M&Aの専門アドバイザーに相談することが肝心でしょう。