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2023/09/15

学校法人のM&A-現状やメリット、成功するためのポイント

学校法人のM&A-現状やメリット、成功するためのポイント

近年は少子化問題などの影響により、学校法人同士による生徒の獲得競争が激化している傾向があります。このような状況の中、学校法人のM&Aはハードルが高いと感じる経営者も多いのではないでしょうか。
また、学校法人は、営利を目的としない公益社団法人・公益財団法人の1つとなるため、一般的な企業のM&Aとは異なる点もあります。
本記事では、学校法人の現状やM&Aを実施するメリット、成功するためのポイントなどを紹介しているので、参考にしてみてください。

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学校法人の定義と特徴

まずは学校の定義を確認しておきましょう。学校とは、学校教育法1条に規定される小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園(「一条校」)、学校教育法124条に規定される専修学校、および学校教育法134条に規定される各種学校(自動車学校、インターナショナルスクール等)のことを指します。一般に、教育業の範疇に含まれる学習塾、語学教室等は学校には含まれません。一条校学校とは、教育基本法第6条で「法律に定める学校は、公の性質を持つものであつて、国または地方公共団体及び、法律に定める法人のみが、設置することができる」と定義されています。
また、教育基本法第6条に出てくる「法律に定める法人」とは同法第2条で定める法人、具体的には学校法人のことを指しており、学校法人とは、私立学校を設置運営する主体を指しています。
なお、一条校の区分は以下のようになります。

・国立学校:国の設置する学校
・公立学校:地方公共団体の設置する学校
・私立学校:学校法人の設置する学校

つまり、学校法人は、「公の性質」を持つ私立学校を設置・運営する主体となる法人を指しており、営利を求めない公益社団法人・公益財団法人の1つとなります。
学校法人には主に以下のような特徴があるので、覚えておきましょう。

・株式や株主が存在しない
・所轄庁の許認可が必要(許認可が厳しい)
・制度により体制変更等の際に規制を受ける
・管理体制の規定が特殊(役員として理事5人以上、監事2人以上を置かなければならない)
・学生数が収益に影響を与えるなど

学校法人のM&Aの現状や動向

学校法人のM&Aは私立学校がメインとなりますが、近年は少子化の影響などにより、私立学校は生徒を確保するのが困難な状況となっており、特に私立大学・短期大学は経営状態が厳しい傾向となっています。

文部科学省(私立学校・学校法人基礎データ)の発表によると、令和2年5月時点の大学・短期大学の総数は1,118校となっており、うち私立の大学・短期大学は921校と、全体の82.4%を私立学校が占めています。

大学・短期大学のうち、約8割が私立学校となっていますが、私立大学の31%が入学定員未充足(うち、7%が充足率80%未満)となっており、私立短期大学は74%が入学定員未充足(うち、35%が充足率80%未満)となっています。

私立短期大学の経営状況について

このような背景がある中、学校法人同士による生徒の取り合いが激化しています。そのため、学校法人のM&Aを実施する際は、施策だけではなく、あらかじめ経営や生徒獲得のためのノウハウを心得ていなければスムーズな運営は難しいと考えられ、学校法人への進出はハードルが高いといえるでしょう。
ただし、学校法人への進出は難しい状況となっているものの、学校法人のM&Aの成功事例も多数あります。そのため、学校法人のM&Aを検討する際は、適切な場所に相談・依頼し、事前の準備をしっかりと行うことで、M&Aが成功する可能性は十分にあります。

学校法人のM&Aにおける相場

一般的な企業の場合は、基本的に株式の譲渡、譲受によりM&Aが行われるケースが多いため、M&Aの費用は譲受企業が株式を取得した分となります。しかし、学校法人の場合は株式の発行がなく、理事長や理事の入れ替えによって経営権の移動が行われるため、経営権の獲得自体は無料で行うことが可能です。

ただし、理事長や理事の入れ替えに伴い退職金が発生するため、学校法人のM&Aに必要な費用は、この退職金と考えることができます。学校法人によって退職金は異なりますが、相場は、数千万単位となるのが一般的です。

また、学校法人のM&Aには事業譲渡のスキームが用いられることがあります。事業譲渡の場合は、一部の学校や施設だけを譲渡、譲受することになるため、退職金は必要ありませんが、譲渡側の学校の施設や設備などの資産に見合った対価を支払う必要があります。

状況によって異なりますが、事業譲渡における対価は基本的に「純資産+のれん代」の金額が相場となるので、覚えておきましょう。

学校法人でM&Aを活用するメリット

学校法人でM&Aを活用するメリットは、譲渡側と譲受側によって異なります。ここでは、譲渡側と譲受側に分けて、それぞれのメリットを紹介します。

学校法人のM&Aにおける譲渡側のメリット

学校法人のM&Aにおける譲渡側のメリットには、「譲受側の法人のブランド力を獲得できる」「教育機関の継続が可能になる」「退職金の支給が可能になる」などが挙げられます。以下、それぞれのメリットについて解説していきます。

譲渡側のメリット①:譲受法人が大手の場合はブランド力を獲得できる

譲受側が大手の学校法人の場合、譲渡側は譲受側のブランド力を獲得できる可能性があります。また、M&Aにより組織形態の変更などによって、業務の効率化や教育環境・教育の質の向上に繋がることも期待できるでしょう。
譲受側のブランド力によって学校としての知名度が上がる可能性があり、教育の質が向上すれば安定した生徒数の獲得にも繋がるため、長期的な経営の安定が期待できるかもしれません。

譲渡側のメリット②:教育機関の継続が可能になる

M&Aを活用することで、経営難などにより学校の運営が難しい状況になっても、学校を存続させられる可能性があります。学校が廃校になると、既存の生徒は転入しなければならず、学校で働く職員も解雇することになり、教育現場の混乱を招いてしまうかもしれません。
しかし、M&Aを活用すれば教育機関として継続が可能になるので、教育現場の混乱を回避できるメリットがあります。

譲渡側のメリット③:退職金の支給が可能になる

学校が経営破綻した場合、職員や教員は解雇となるため、原資があれば退職金などの支払いが必要となりますが、そもそも資金がなければそれも難しくなってしまいます。M&Aを活用して学校の譲渡を行うことができれば、M&A後に職員や教員のリストラが行われたとしても、譲受側によって退職金が支給されるケースがあります。

学校法人のM&Aにおける譲受側のメリット

学校法人のM&Aにおける譲受側のメリットには、「ブランド力強化と生徒数の確保ができる」「人材を確保できる」「不動産を得られる」などが挙げられます。以下、それぞれのメリットについて解説していきます。

譲受側のメリット①:ブランド力強化と生徒数の確保ができる

学校法人同士の場合、譲受側はM&Aによって譲渡側の学校を得ることで、全国に学校名を浸透させられる可能性があるため、ブランド力の強化に繋がることが期待できます。
また、譲渡側の既存の生徒は、M&A後もそのまま学校に通うことになるため、生徒数の確保ができる点も大きなメリットとなるでしょう。

譲受側のメリット②:人材を確保できる

医療法人などの専門的な知識や技術が必要な業種が、学校法人においてM&Aを活用するケースがあります。このようなケースでは、人材の確保に繋がるメリットがあります。
どのような業種であっても、人材の育成には時間が必要です。特に専門性の高い医療系などは、人材の教育や育成に時間がかかってしまいますが、M&Aを活用して専門学校を得ることができれば、学校を卒業後そのまま自社の従業員として働いてもらうことも可能になります。
結果的に優秀な人材の確保に繋がるため、人材の確保や育成のための時間・コストを軽減できる可能性があります。

譲受側のメリット③:不動産を得られる

学校には多くの生徒が通うため、基本的に学校を建てるためには広大な土地や建物が必要です。そのため、M&Aを活用して学校を得ることができれば広大な土地と建物を得られるメリットがあります。
このような不動産は探してもすぐに見つかるとは限らないため、将来の事業計画に活かそうと考えて学校法人のM&Aを検討するケースもあります。

学校法人のM&Aスキーム

学校法人のM&Aに関しては、以下のような手法が用いられます。
・経営支配権の譲渡
・事業譲渡
・合併
ここでは、学校法人のM&Aで用いられる各手法について解説します。

経営支配権の譲渡

学校法人は一般的な企業とは異なり、株式の発行を行うことができません。そのため、一般的な企業同士のM&Aで用いられることが多い、株式譲渡の手法は利用できませんが、代わりに経営支配権の譲渡によって経営権を移転できます。
経営支配権の移転には理事長及び理事の立場を譲渡、譲受する必要があり、その際、譲渡側の理事長や理事には退職金の支払いが事実上の対価として必要となります。

事業譲渡

事業譲渡は、譲渡側の学校法人が所有する個別の学校や施設だけを譲渡する手法です。事業譲渡を行う場合、譲渡側の学校法人は、解散または事業規模の縮小によって事業を継続します。
なお、事業譲渡の手法を用いる場合は、譲渡する学校や施設の設置者の名義を譲受側の名義に変更しなくてはいけません。また、財産、契約関係、債権債務、労働契約なども個別に移転する必要があるため、一般的な企業同士の事業譲渡と同様に、手続きが煩雑となります。

合併

学校法人の合併には、理事の3分の2以上の同意が必要であったり、所轄庁の許可が必要であったり、学校法人間でのみ可能であったりと、厳しい条件が決まっています。
また、学校法人の合併にも、一般的な企業の合併と同様に新設合併と吸収合併がありますが、一般的に用いられるのは吸収合併が多くなります。
なお、M&Aで合併の手法を用いる場合は、一定の要件を満たすか満たさないかで「適格合併」と「非適格合併」に分類されます。
一定の要件を満たして適格合併になると、学校法人も一般的な企業が合併を行う場合と同様に税制上の優遇を受けることができます。税金の仕組みは複雑なため、M&Aアドバイザーや税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

学校法人のM&Aを成功させるポイント

学校法人のM&Aを成功させるためには、譲渡側の学校法人の質やガバナンスを確認するなど、いくつかポイントがあります。ポイントを抑えることで、M&A後のトラブルを避けられる可能性が高くなるので、確認しておきましょう。

譲渡側の学校法人の質を確認する

学校法人のM&Aは、譲渡側の学校法人の質を確認することが重要です。例えば、「どのような環境や設備で運営しているのか」、「どのような学部や学科、コースなどを設けているのか」、「どのような学生をターゲットとしているのか」などが挙げられます。
また、学校法人の収益は生徒数に大きく左右されるため、「生徒の募集の妨げになる問題がないか」といったことも一緒に確認しておくと良いでしょう。

譲渡側の学校法人のガバナンスを確認する

学校法人のM&Aでは、譲渡側の学校法人のガバナンスも確認しましょう。学校法人は教育機関であるため、管理体制や経営方針は重要です。
また、ガバナンスがしっかりしていない場合は、M&A後に職員がトラブルを起こす可能性も考えられます。大きなスキャンダルになってしまうと、学校の経営自体に影響するだけでなく、教育機関として運営を継続できないこともあるため、注意しましょう。

M&Aアドバイザーなどの専門家に依頼する

M&Aは、M&A自体の知識に加えて経営、法律、税金などの幅広い専門知識が必要となるため、M&Aアドバイザーなどの専門家に依頼するようにしましょう。一般的な企業同士のM&Aにおいても、M&Aアドバイザーなどの専門家に依頼するのが一般的となっています。
特に学校法人のM&Aは、一般的な企業のM&Aとは異なる点が多くあります。そのため、学校法人のM&Aを行う際は、学校法人のM&Aに強いM&Aアドバイザーを擁する仲介会社に依頼するのがおすすめです。

まとめ

学校法人は、私立学校の設立・運営の主体となる営利を追求しない法人のことを指し、公益社団法人・公益財団法人の1つです。一般的な企業とは異なり、株式の発行ができなかったり、所轄庁の許認可が必要であったりといった特徴があるので覚えておきましょう。

また、学校法人は少子化などの影響により、参入が難しい状況かもしれませんが、M&Aの活用は譲渡側と譲受側の双方にさまざまなメリットがあります。事前の準備をしっかりと行い、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、学校法人のM&Aは高度な専門知識が必要です。学校法人のM&Aを検討する際は、学校法人のM&A経験が豊富なM&Aアドバイザーを擁する仲介会社に相談・依頼するようにしましょう。

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