業界毎の事例

2023/09/26

小売業界のM&A|事例10選

小売業界のM&A|事例10選

小売業とは、最終需要者である消費者に対して商品を販売する業種をいいます。例えば百貨店やスーパー、コンビニエンスストアなど、消費者として商品を購入する際に利用するお店のことを意味し、商品流通の最終過程とされています。業界規模として、2017年の小売業全体の販売額は前年比1.9%増加の142兆5,140億円と3年ぶりに増加しています。

また、小売という言葉は聞いたことはあるけれども「小売業と卸売業ではなにが違うの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。本記事では小売業とは何か、卸売業との違いを解説したうえで、小売業界が展開する経営戦略としてのM&Aをわかりやすく紹介します。

渡邊 和久
今回話を聞いたM&Aアドバイザー
渡邊 和久
東北大学教育学部卒。株式会社山形銀行へ入行し、中堅中小企業の法人営業に従事。同行営業支援部にて中小企業を対象とした事業承継・M&A 業務を担当する。2018年にfundbookへ入社。業界初のガス・エネルギー専門チームを立ち上げ、当分野の第一人者としてM&A・事業承継を通じ、多くの経営者を成功に導く。
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小売業とは?最新の業界動向を紹介

小売業とは、卸売業者から仕入れた商品を消費者に販売することで利益を得る事業形態です。一方で卸売業は、商品を業者に卸すことで利益を得る事業形態をいいます。つまり、問屋などの卸売業者がメーカーや工場で生産された商品を小売業者に卸し、小売業者が消費者に商品を消費者に直接、販売しています。小売業は消費者との距離が近いという特徴があるため、消費税の増税や人口減少などの社会情勢の影響を受けやすいです。そのため昨今、日本の少子高齢化により小売市場は縮小傾向になります。市場の縮小に対応するため、日本の小売業界のM&Aや資本提携などのニュースは頻繁に目にします。

では、減少傾向にあった小売業販売額がなぜ増加したのでしょうか?その要因の一つに、各社の経営戦略として行われたM&Aがあり、国内市場が縮小している小売業界の環境の変化に対応するために、業界再編を続けながら拡大を行っています。今回はM&Aの観点から小売業各社がどのように変化を続けているのか、近年話題となった事例とともに紹介します。

総合スーパー(GMS)業界

2017年のスーパーの販売額は13兆497億円でした。前年より0.4%の増加となり、1事業所当たりの販売額は減少したものの、事業所数は増加しています。

株式会社イオンによる株式会社ダイエーの完全子会社化

小売業界のM&A|事例10選

式会社イオンは、2015年に連結子会社であった株式会社ダイエーに対してTOBを実施し、完全子会社化しました。

ダイエーは、首都圏や関西地方に活動領域を特化し、ダイエーの強みでもある「食品」に経営資源を集中させ、一部にイオンの店舗も加えることにより、新たな業態を創造する狙いがあります。一方、イオンはスーパー事業の店舗網の拡大を図る狙いで、ダイエーの他にも、国内外の大小のスーパーを相次いで傘下に収めています。

また、2015年2月にイオンはドラッグストア大手のウエルシアホールディングス株式会社を連結子会社化しています。これは、資本・業務提携を拡大し、年間の販売額が6兆円を超えて成長が続くドラッグストア業界においても攻勢を強める狙いがあります。

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コンビニエンスストア業界

株式会社セブン&アイ・ホールディングスによる株式会社バルスの子会社化

小売業界のM&A|事例10選

株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下セブン-イレブン)は、2013年12月にインテリア・雑貨小売販売事業を展開し、「Francfranc」を運営する株式会社バルスを子会社化しました。

セブン-イレブンは、グループ傘下の西武百貨店、そごう及びイトーヨーカ堂が運営するショッピングセンター、アリオなどへの「Francfranc」の出店や、ロフトとの共同出店などを通じ、双方店舗への来店誘致を図るとともに、グループを挙げて推進するEC事業「オムニチャネル」分野との連携を図る狙いです。

2017年9月、バルスは社名を「株式会社Francfranc」に変更することを発表しました。変更後は「Francfranc」に注力し、オンラインと連携した取り組みを進めていく見込みです。

株式会社ローソンによる株式会社成城石井の買収

小売業界のM&A|事例10選

株式会社ローソンは、2014年10月に高級スーパーとして知られる「成城石井」を運営する、株式会社成城石井の全株式を取得しました。

成城石井は、高級スーパーとしてのブランドを構築し、関東圏を中心に120店舗を展開(平成2014年9月時点)しています。

ローソンは、成城石井の店舗開発のノウハウを活かし、ローソンでは出店が難しい富裕層の多い都市型の立地や駅構内においても、成城石井なら出店させることができると判断し、グループでの店舗展開を広げる狙いがあります。成城石井は、ローソンが持つ店舗立地獲得、物流の効率化、購買データの活用等に関するノウハウを通じて、大都市圏市場における消費者の高額商品への消費と低価格志向という二極化への対応を強化し、圧倒的な競争力を有する業態として進化し続けていくことが狙いです。

株式会社ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス株式会社の経営統合

小売業界のM&A|事例10選

株式会社ファミリーマートは、2016年9月にサークルKサンクスの親会社であるユニーグループ・ホールディングス株式会社と経営統合を行いました。

人口の減少による市場規模の縮小や、コンビニエンスストアの出店競争、ドラッグストア、同業に加え量販店や百貨店等の異業態との競争を勝ち抜くために、両社の経営資源を結集し、新たな小売グループを形成することが狙いです。

これにより、ファミリーマートが運営する店舗数は業界最大手のセブン‐イレブンの2万,600店舗に次ぐ1万6,715店舗となり、業界2位の店舗数となりました。(2018年9月時点)経営統合後、ファミリーマートは「サークルKサンクス」、「サンクス」から「ファミリーマート」へのブランド転換を徐々に進めており、2018年11月には転換が完了する見込みです。

百貨店業界

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社による株式会社イズミヤの子会社化

小売業界のM&A|事例10選

阪急阪神百貨店などを傘下に持つ、エイチ・ツー・オー リテイング株式会社(以下、H2O リテイリング)は、2014年6月、関西を中心に事業を展開している中堅スーパーの株式会社イズミヤを子会社化しました。

H2O リテイリングは、イズミヤの会員カードのシステムを統合することで、顧客データの分析や、ポイントの共通化を図り、関西での更なるサービスを強化しました。また、スーパーを傘下に置くことで多様な業種業態、取扱商品群を揃えた総合小売サービス業グループを構築することを目的として消費者のあらゆるニーズを汲み取る態勢を図るとしています。

株式会社三越伊勢丹ホールディングスによる株式会社ニッコウトラベルの買収

小売業界のM&A|事例10選

株式会社三越伊勢丹ホールディングスが、2017年2月13日から3月23日にかけてシニア向けのパッケージ海外旅行を催行する株式会社ニッコウトラベルにTOBを実施しました。

シニア層を中心に商品を販売しているニッコウトラベルは、富裕層を中心に商品を販売している三越伊勢丹グループの顧客網を活用し、顧客送客による新規顧客獲得の実現やニッコウトラベルのブランド価値の向上、戦略的な大型投資・大型提携の実現といったシナジー効果を得ることが目的です。

▷関連記事:譲渡企業側こそ意識しよう。企業選定で欠かせないポイント「シナジー効果」とは

ドラッグストア業界

2017年のドラックストア業界の販売額は6兆580億円でした。全体の店舗数が前年⽐5.0%の増加となり、店舗における食料品などの販売額が増えたため、前年より販売額が5.4%増加しました。

ウエルシアホールディングス株式会社による株式会社一本堂の完全子会社化

小売業界のM&A|事例10選

ウエルシアホールディングス株式会社は、2018年3月に東京都内を中心にドラッグストアを展開する、株式会社一本堂の全株式を取得し完全子会社しました。

ウエルシアは、関東を中心に東北から近畿地方において調剤併設型ドラッグストア事業を展開しています。一本堂は調剤併設型1店を含むドラッグストア42店を運営し、2017年9月期の売上高は約91億円でした。

ウエルシアは、一本堂をグループ傘下にすることで都市部の店舗網を強化し、事業基盤をより強固なものにするとともに、相互のノウハウを共有することで、より一層の経営の効率化を図る狙いがあります。ウエルシアの都心部における事業基盤をより強固なものとするとともに、相互のノウハウを共有することで、より一層の経営の効率化を図っていくと述べています。

家電量販店業界

2017年の家電大型専門店の販売額は、4兆3,115億円でした。パソコン・パソコン周辺機器などを含む「情報家電」などの売上が増加し、前年⽐3.1%の増加となりました。

株式会社ビックカメラによる株式会社コジマの買収

小売業界のM&A|事例10選

株式会社コジマが2012年6月に第三者割当増資を実施し、同社の株式を株式会社ビックカメラが譲り受けることで同社を子会社化しました。

ビックカメラは、首都圏を中心に店舗展開を行っており、一方コジマは、地域密着型の営業方針のもと、東日本を中心に全国において都市部とその周辺に展開しております。

両社が資本提携することにより、都市から近郊までの広範囲なマーケットをカバーし、スケールメリットの拡大やお客様満足の向上を目指す狙いです。ビックカメラは仕入れや商品開発面でも連携して規模のメリットを追求するほか、経営の効率化を図るための目的でした。

▷関連記事:M&Aの手法としても活用される「第三者割当増資」とは?メリット・デメリットや手順について細かく解説

その他の小売業界

株式会社ドン・キホーテホールディングスによるユニー株式会社の買収

小売業界のM&A|事例10選

株式会社ドン・キホーテホールディングスが、2018年10月にユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社の持つユニー株式の60%を取得することを発表しました。

ドン・キホーテは、それまでもユニー株式の40%を保有していましたが、今回残りの60%を取得するに至り、完全子会社化することとなりました。ドン・キホーテとしてはユニーとのM&Aを行うことにより、規模拡大や店舗運営の改善、仕入れの効率化を図ることが目的です。

これによりドンキホーテとユニーの合算した売上高は約1兆6,000億円となり、家電量販店最大手であるヤマダ電機の1兆5,630億円(17年3月期)を抜き、小売業界全体の中で、株式会社イオン、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、株式会社ファーストリテイリングに次ぐ4位に浮上しました。

AMAZON.COM社によるWHOLE FOODS MARKET社の買収

小売業界のM&A|事例10選

米ネット通販最大手のAmazon.com社(以下、Amazon)は2017年8月、米食品スーパーのWhole Foods Market社を137憶ドル(約1兆5300億円)で譲り受けました。

Whole Foods Marketは、Amazonのサイト経由でWhole Foods Marketの食品の宅配サービスをするなど、インターネット販売と実店舗の融合を図り、サービスの向上が狙いでした。Amazonは、Whole Foods Marketの店舗を450店から2000店まで拡大することを計画しており、これにより8000億ドル(約89兆円)規模の食料品小売業界でのシェアをさらに拡大する方針です。

このM&Aは、Amazonにとって過去最大規模となる譲受けでした。今後、同社がアメリカトップの食料品小売業者となる可能性もあります。

専門家からのコメント

今後小売業界では、今回紹介したようにスーパーがドラックストアを譲り受けたり、コンビニがスーパーを譲り受けたりと、小売業界内の再編や、別業界からの参入といった競争がさらに熾烈化していくと予想します。実際に、少子高齢化や人口減少を背景にM&Aによる経営統合が進み、業界内の再編が加速しています。
 
特に、各地域内において経営する地場のスーパーは、大手スーパーの出店攻勢やコンビニエンスストア、ドラックストアとの競争が激しさを増しています。また、少子高齢化や人口減少、後継者不在の問題などにより、各地域内のスーパー同士で合従連衡が進んでいます。実際に、廃業の選択や大手スーパーへの譲渡を余儀なくされるケースが後を絶ちません。そのため、昨今、地場のスーパーでは生き残りをかけた様々な取り組みが行われています。
 
その例のひとつが、秋田県にある地場食品スーパーを運営する株式会社伊徳ホールディングスと株式会社タカヤナギによる持株会社の設立です。これは、両社がこれまで進めてきた共同仕入れ機能を拡充して、仕入れコストを削減することを目的に行われました。伊徳ホールディングスが運営する「いとく」と、タカヤナギが運営する「グランマート」は、元々秋田県のスーパー業界で売上1位、2位を争う2社でしたが、全国展開する大手スーパーとの競合が激しくなる中、経営統合によるスケールメリットを活かして生き残りを図りました。
 
今後も業界内の再編が加速していくと予測される小売業界では、「いとく」と「タカヤナギ」の事例のように、同一地域の業界内での売上1位、2位の企業同士が合従連衡するケース、地域を超えた全国展開している大手小売店の経営統合等が増えていくと考えられます。

まとめ

少子高齢化や人口減少などによる市場の縮小により、小売業界にも変革が求められています。今後、小売業界の競争がさらに熾烈化していくと予想される中で、M&Aは、各社の経営戦略における選択肢の一つとなります。今回紹介したように、小売業界内での再編や異業種からの参入も活発に行われている状況で、企業が生き残り、さらなる成長を図るためにはM&Aを活用することが必要になっていくでしょう。

▷関連記事:成長戦略としてのM&Aとは?経営基盤を安定させる選択肢
▷関連記事一覧:M&Aの動向と業界別の事例
▷参考:成約事例

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