M&A 譲渡制限株式

会社の株式を譲渡する場合には、きちんと会社法で定められたプロセスを踏まなければなりません。これは、100%株主のオーナーが譲渡する際でも必要なプロセスです。正しい承認フローを経なければ、譲渡した株式の権利を行使できず、事実上株式が無価値になってしまいます。この記事では株式譲渡に制限を設けるメリットと株式を譲渡するまでの流れを解説していきます。なお、株式譲渡はM&Aでもよく使われる手法です。M&Aの手段として株式譲渡を行う方も、しっかりと理解しておきましょう。

 

株式の譲渡制限とは何か

株式の譲渡制限とは定款に規定することにより、株式を譲渡する際に発行会社の承認を必要にすることを指します。株式の全部または一部に譲渡制限を設けている会社を「公開会社」、全ての株式に譲渡制限に関する規定がある会社を「非公開会社」といいます。なお、本記事では非公開会社を想定して解説していきます。

 

非公開会社には、公開会社に比べて以下のようなメリットがあります。

  1. 株式の分散を防止できる
  2. 株式の譲渡を承認制にする最大のメリットは、望まない人が株式を保有する=経営に参加することを防げる点です。議決権のうち1/3超を取得すると決議の拒否権を、過半数を取得すると経営権を与えられるため、経営に介入されたくなければこれを避けなければなりません。

  3. 取締役の任期の延長と資格の制限
  4. 原則として、本来の取締役の任期は2年ですが、非公開会社は約10年まで延長が可能です。任期延長のメリットとして、延長のために2年ごとに提出する重任登記にかかる費用と工数を削減することが出来ます。また、取締役・監査役の資格を株主に限定することが出来ます。

  5. 株式総会招集手続きの簡略化
  6. 株主総会の招集の開始は本来、開催日の2週間前までに行う必要がありますが、非公開会社は1週間前までに短縮することができます。さらに取締役会非設置会社の場合は1週間未満も可能になります。

 

非公開会社が株式譲渡を承認するまでの流れ

ここでは、譲渡制限のついた株式を譲渡するまでの具体的な流れについて、取締役会非設置会社を例にとって解説していきます。

  1. 株式譲渡承認の請求
  2. 株式の譲渡人もしくは譲受人が「株式譲渡承認請求書」を作成して、発行会社に提出する必要があります。この請求書には譲受人の名前(法人の場合は名称)・譲渡しようとする譲渡制限株式の数を記入します。

  3. 株主総会の開催・株主に対する招集通知
  4. 定時株主総会にて譲渡承認決議を行います。定時株主総会が直近で開催されない場合、臨時株主総会を開催する必要があります。その場合は、発行会社の取締役は臨時株主総会の開催日時を決定し、株主に対する招集通知を出します。原則として、通知は臨時株主総会の1週間前までに発する必要があります。

  5. 株主総会にて承認について決議
  6. 臨時株主総会にて株式譲渡を承認するか否かの決議がなされます。

  7. 契約の締結と対価の支払い
  8. 一般的には、株式譲渡を承認する旨の通知を受けた後、譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結します。なお、承認を実行条件とし、承認前に契約を締結することもあります。

  9. 株主名簿の書き換え
  10. 譲渡人と譲受人が共同で、発行会社に対して株主名簿を書き換えるように請求し、譲渡企業はその請求に応えて、株主名簿を書き換えます。

 

誰が株式の譲渡を承認するのか

取締役会非設置会社の場合は、株式譲渡を承認するか否かは株主総会にて行われます。承認を得るには株主が持つ議決権のうち過半数の賛成が必要となります。ここで決議された事項は、譲渡の請求を受けてから2週間以内に株主に通知します。もし通知を行わなければ、自動的に請求が承認されることになります。

※取締役会を設置している会社の場合

ここまで取締役会非設置会社を例にとって説明してきましたが、取締役会を設置している会社では、取締役会にて承認決議を行います。その場合、原則として、取締役の過半数が出席することが求められ、出席者の過半数が賛成しなければ、株式譲渡は承認されません。決議までの期間は株主総会と同じく2週間以内になります。

 

まとめ

以上のように、譲渡制限株式の譲渡を行う際には、会社法で定められた承認フローに沿って進める必要があります。正しいプロセスを踏まず、所有権が移ったことを証明できない等のトラブルを避けるためにも、譲渡制限の定義や発行会社から承認を得るためのフローについて正しく理解しておきましょう。