株式譲渡 議事録

日本の中小企業のM&Aでよく行われる手法の1つに株式譲渡があります。これは、株式を譲受企業に譲り渡すことで経営権を移転させる手法ですが、日本の中小企業は株式に譲渡制限がついている場合が多く、株主は企業の承諾なしに自由に株式を譲渡することはできません。

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譲渡制限がついている株式を譲渡する際は、取締役会非設置会社であれば株主総会での譲渡承認決議が必要となります。一方で、取締役会設置会社においては、原則として取締役会での譲渡承認決議が必要となります。また、株主総会や取締役会で株式譲渡を承認した際には、そのことを記載した株主総会議事録または取締役会議事録を作成します。

議事録には、株主総会や取締役会での決定事項や出席者、議事の経過などが記録されており、決議事項を記録として残すことができます。

株式譲渡でM&Aを行う際、通常譲受企業は譲渡企業の株主に対して、株主から譲受企業に対する株式譲渡を承認した株主総会または取締役会の議事録の提出を求めます。譲受企業は、株式譲渡の承認がなされていなければ自己の株主としての権利を主張できず、議事録により株式譲渡の承認がなされていることを確認する必要があるためです。

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今回は、株式に譲渡制限がついており、その株式の譲渡承認決議をする場合において、株主総会や取締役会で議事録を作成するにあたり知っておくべきことや、どのように作成すれば良いのかをご紹介します。

株式譲渡の承認手続き

株式譲渡の承認手続きについて、株主総会と取締役会の場合に分けてそれぞれ紹介します。まず、一般的な承認手続きは、大きく5段階に分けられます。

  1. 譲渡承認請求
    株式に譲渡制限がついてる譲渡企業の株主は、株式の数、譲受人の氏名(または譲受企業の名称)を明らかにして、譲渡承認請求書を会社に提出します。
    なお、譲受人も譲渡承認請求をすることができますが、原則として株主と共同で承認請求をしなければなりません。これは、譲り受けたと偽って株式の譲渡承認の請求がなされてしまうことを防ぐためです。
  2. 株主総会、取締役会での承認
    譲渡企業に譲渡承認の請求をしたら、譲渡企業側の承認手続きに移行します。これに対して承認するか否かの決議を譲渡企業が株主総会または取締役会において行います。譲渡企業は、この決議の内容を株主総会議事録または取締役会議事録に記載します。
  3. 決議内容の通知
    株主総会または取締役会が株式の譲渡承認請求に関する決議をした場合、原則として承認請求日から2週間以内に、決議の内容について通知を行います。仮に2週間以内に通知がなされなかった場合、自動的に譲渡を承認したものとみなされます。
  4. 株式譲渡契約
    通常、株式譲渡を承認する旨の通知を受けた後、譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を結びます。
  5. 株主名簿の書き換え
    株主名簿とは、株式を所有している者の氏名、名称および住所を記載した名簿です。譲渡代金の決済後、株主名簿の書き換え手続きを行います。株券不発行会社の場合は、株式の名簿上の株主と株式取得者が共同で株主名簿書換請求手続きを行います。

株主総会議事録とは?

株主総会議事録について紹介します。会社法において、株主総会が行われた際には、その記録、すなわち議事録の作成が義務付けられています。これは、株主総会での決定事項や議事の経過を記録してあるもので、決議事項を事実として残すことができます。

議事録の作成方法は、書面と電磁的記録(データ)の2つの方法があります。書面で作成する場合、押印に関しては、会社法上は株主総会の議事録に関しては義務付けられていません。しかし、定款で押印義務者を定めている場合は規定に従いましょう。

株主総会の議事録は、株主総会の日から10年間、その本店に備えて置かなければなりません。また、支店でも議事録の写しを5年間は備え置かなければなりません。

株主総会議事録の基本項目

株主総会議事録に記載する必要項目を紹介します。会社法で定められている、株主総会で作成する議事録に記載する基本項目は下記の通りです。

  • 株主総会が開催された日時及び場所
  • 株主総会における議事経過の要領及びその結果
  • 会社法の規定により、株主総会で認められている意見や求められている報告事項の概要
  • 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
  • 議長の名前
  • 議事録を作成した取締役の氏名

株式会社で作成する議事録には、開催された日時および場所や出席した人数やその氏名、株主総会の開会宣言から閉会宣言までの会議の要約とその経過、株式譲渡請求の審議結果を記します。また、出席者の発言の内容や、また企業が発行している株式総数などを記載します。

取締役会議事録とは?

ここでは、取締役会議事録に記載する必要項目を説明します。株主総会議事録と取締役会議事録には、2つの違いがあります。

1つ目は押印が必要であるということです。取締役会の議事録が書面で作成されている場合、出席した取締役および監査役は、これに署名、または記名押印をしなければならないと会社法で定められています。

2つ目は、議事録を備えて置く場所です。株主総会で作成された議事録は、株主総会の日から本店に10年間、支店に議事録の写しを5年間保存しなければならないと定められていますが、取締役会で作成された議事録は、支店に備えて置く必要はありません。

取締役会議事録の基本項目

会社法で定められている、取締役会議事録に記載する基本項目は下記の通りです。

  1. 取締役会が開催された日時及び場所
  2. 特別取締役による取締役会であるときは、その旨
  3. 取締役(または招集権者)以外の者の請求等により招集されたものであるときは、その旨
  4. 議事の経過の要領・結果
  5. 特別利害関係取締役がいるときは、その取締役の氏名
  6. 監査役、会計参与等が取締役会において述べた意見・発言があるときは、その意見・発言の内容の概要
  7. 出席した執行役、会計参与、会計監査人、株主の氏名・名称
  8. 議長がいるときは、議長の氏名

取締役会で作成する議事録には、取締役会が開催された日時および場所や出席した人数、開会宣言から閉会宣言までの会議の要約とその経過を記します。また、監査役、会計参与、会計監査人の意見や発言の概要、出席している役員の氏名、決議事項を記します。

取締役会議事録の注意点

取締役会で作成する議事録に関して、「みなし決議」について把握しておきましょう。定款に定めがある場合、全ての議決に加わることのできる取締役が、取締役会で決議する事項について賛成・同意する旨の意思表示を書面またはデータで行った場合で、かつ監査役が異議を述べなかった場合は、取締役会の決議を省略できるとされています。

つまり、取締役全員が取締役会で決議する事項について賛成、同意している場合には、取締役会を開催することなく決議を省略し、書面またはデータでのやり取りのみで取締役会決議があったとみなすことができる、というものです。取締役が集まることができない時、または集まることが負担になる時などに活用される制度で、この方法による取締役会決議を、みなし取締役会決議、あるいは取締役会のみなし決議といいます。議事録には、みなし決議の日程や、提案した取締役の氏名などを記載します。

まとめ

本記事では、株式の譲渡承認が決議された証拠として活用される議事録について紹介しました。議事録は、株主総会や取締役会で必ず作成しなければならないと定められているもので、M&Aにおいても重要な意味を持ちます。譲渡を検討している経営者は、必要項目や注意点をしっかりと把握しておくことが重要です。不安な点やわからないことがある場合には、M&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。