TOB メリット

近年、TOBに関するニュースを目にする機会が増えてきているかと思います。TOBは上場企業の経営方針に大きく関わる出来事であるため、メディアが取り上げ、多くの人が注目しています。事実として、昨年(2017年)は年間で40件以上のTOBが実施されています。

TOBは数あるM&Aの手法の中の1つにあたり、M&Aを検討している経営者の方にとっては他人事ではありません。特に上場企業に対するM&Aを検討している方は、この手法のメリット・デメリットを理解しておくことが必須です。

本記事では、TOBの概要や買付けを行う会社(以下、買主)や買付けの対象となる会社(対象会社)およびその対象会社の株主(以下、売主)にとってのメリット・デメリット、TOBが行われた際の株主の動きを解説します。特にTOBの実施を検討している経営企画およびM&A担当の方はしっかりと理解しておきましょう。

TOBとは

TOBとは、Take-Over Bidの略で「株式公開買付」のことです。これは買付け期間・価格・株式数を新聞などで公告した上で、売主の株式を証券取引所を通さずに大量に買い付けることを意味します。

目的としては「対象会社の経営権・株主総会における特別決議の否決権の取得」です。TOBにおける買付価格は、市場の取引株価よりも高く設定されることが一般的です。これは市場よりも高い株価でTOBすることで、対象会社株の保有者は市場で売るよりも得になります。そのため、売主が株式売却を判断する可能性が上がり、買主は一定の株式数を集められる確率が上がります。この上乗せ分は「プレミアム」と呼ばれています。

なお、TOBは「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類に分けられます。友好的TOBは買主・売主・対象会社の全員から合意がある状態の譲渡であり、敵対的TOBはその合意なく、買主が一方的に対象会社の経営権を得るために株式の大量保有を目指す場合を指します。

TOBのメリット・デメリット

買主にとってのメリットとデメリット

ここでは買主側にとって代表的な2つのメリットと1つのデメリットを挙げます。

まず1つ目のメリットとして、あらかじめ計画した期間・金額・株式数で、大量の株式を一度に買い取ることができる点があげられます。
通常、証券取引市場を通して株式の大量注文を行うと、自身の買い注文が原因で株価の急激な上昇が起こり、最終的に予想以上の費用で株式を買付けることになる可能性があり、株式の取得に要する費用が最後まで読めないという不確定要素がつきまといます。その点、TOBでは一定価格で株式を買付けるため、株式の取得に要する費用が最初からほぼ確定できることがメリットになります。

2つ目のメリットは、不必要なコストをかける必要がない点です。募集する株式数に上限・下限を設けることができます。例えば、51%の株式を集めたい場合には上限・下限を51%に設けることで募集した株式数を超えるもしくは満たない場合には取得しないことも可能です。そのため他の手法と比べて小さいリスクで株式を取得することが可能です。
ただし、全株式のうち2/3以上を上限とすることはできません。2/3以上を取得したい場合は100%取得する必要があります。(これを全部買付け義務といいます)。また、TOBを行う際には公開買付代理人業務を証券会社に依頼する必要があります。TOBが不成立でも報酬を支払う必要があるため、リスクが全くないわけではありません。

一方で、デメリットとしては対象会社や競合他社による買収防衛策によって買付けが失敗に終わる可能性があげられます。友好的TOBであっても競合他社による介入も起こり得ます。防衛策は複数の手法が存在し、防衛策によって買主が被る損失の内容は変化します(下記URL参照)。例えば、「ポイズンピル」という手法があります。これは新株を発行することで買主の株式保有割合を下げつつ、買付けのコストをつり上げる手法です。これが実行されると、買主が損失を避けるためにTOBを中止する可能性が出てきます。

参考URL:▷『TOB(株式公開買付)とは?友好的・敵対的TOBの意味や防衛策を具体的な事例を交えてわかりやすく解説』

対象会社にとってのデメリット

対象会社にとって、TOBはあまりメリット・デメリットはありません。しかし、TOBが実施される際には、買主の申請手続きに対して意見表明書を提出する義務があります。その分手続きに時間を割く必要があることは留意しておくべきでしょう。手続きの詳細は以下のURLにて解説しています。

▷参考URL:『TOBの手続きについて解説。公開買付けの実施方法と株主からの応募手順とは?』

TOBが実施された際の売主の動き

ここでは、TOBが実施された際の売主の動きについて解説します。なお、買主にとっても何を基準に売主が判断するかを理解しておくことは、TOBを実施する上で非常に重要なことです。

売主はTOBの発表を受けた際、以下の3つから選択することになります。

  • 「TOBに応じる」
  • 「TOBに応じずに取引市場で株式を売却する」
  • 「TOBに応じずに保有し続ける」

まず、「TOBに応じる」を選んだ場合には、プレミアムが付いた価格で株式を売却できる可能性があります。また、証券取引所を通して売却した際にかかる売買手数料がかかりません。このことから金銭面に関しては、売主にとっては非常に魅力的な取引となります。

ただし、買主が発行されている全株式のうち一部の株式だけの買付けを希望する(上限付きTOB)場合は、TOBに応募された対象会社の株式数がその上限を超えると、上限を超えた部分は買主に買い取られず抽選となるため、TOBに応じても売却できない可能性があります。そのため、売主は自分の保有する株式がTOBの対象になった際には必ず「全株式買付け」か「一部のみ買付け」かを確認しておくようにしましょう。

次に「TOBに応じずに取引市場で株式を売却する」を選んだ場合には、基本的に市場価格で株式を売却することになります。ただしTOB実施後、敵対的TOBや物言う株主(アクティビスト・ファンド)の参入により、価格が大きく変動する可能性があるため注意が必要です。基本的にはTOB発表後数日かけて、株価はTOB価格をやや下回る水準(TOB価格にサヤ寄せする)となります。

最後に「TOBに応じずに保有し続ける」を選んだ場合、売主は手続きをする必要はありません。しかし、以下の2点に気をつける必要があります。
1つめに、TOB後に対象会社が上場を維持する場合、プレミアム付きTOBを行うと、終了後に株価が低下します。多くの場合、元々の市場価格に近づく傾向にあります。
2つめに、TOB後に対象会社が上場廃止する場合、TOBに応じなくても強制的にTOBの価格で株式は売却されます(これをスクイーズアウトといいます)。この時、株式を購入した際の価格よりも安い価格が付く可能性があります。そのため、TOBが成立する可能性が高い場合には結果を待たずに株式を売却する方が良いでしょう。

まとめ

今回は、TOBについてのメリット・デメリットや、TOBが実施される場合の売主の動きについてまとめました。
計画通り株式の買付けがしやすいことと、原則として狙った株式数を取得できるように上限・下限を設定できることTOBの最大の特徴です。この記事で紹介したようなメリット・デメリットを理解した上でTOBの実施へ進みましょう。