MBOとは、企業の経営陣が自社の株式を既存株主(主にオーナーや親会社)から取得し、オーナーになる行為を指します。多くの場合、上場企業が株主や投資家から株式を買い戻した上で上場廃止し、主に中期的な成長戦略を図ります。また他にも、中小企業においても事業承継のためにも行われます。

本記事ではMBOの基礎知識と経営資源や事業の集約、構造改革などを目的に実際にMBOを行った企業の事例を紹介します。

MBOとは?

MBOとはManagement BuyOut(マネジメント・バイアウト)の略です。自社株式や事業部門を譲受し、オーナーになって経営権を手にするM&Aの手法のひとつです。このとき、株式を買取るために多額の資金が必要となります。そのため、株式を買い取ることを目的とした特別目的会社(Specific Purpose Company,以下SPC)を設立し、SPC名義で金融機関や投資ファンドより調達した資金で株式譲渡を行うことが一般的です。

MBOの主なメリットとして、中核となる事業に経営資源を投下することによる経営の効率化が挙げられます。その一方で、経営陣と株主が株式の売却益に関して利益相反するため、対立するリスクもあります。そのため、本記事で取り上げた事例の中にはTOB(株式公開買い付け)という手法を用いて、市場価格にプレミアムを付与して株式を買い取ることで解決している例もあります。

本記事では「アデランス」「Francfranc(旧:バルス)」「U-NEXT」「すかいらーく」の事例について以下で詳しく解説します。

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市場競争に勝ち抜くためにMBOを行なった「株式会社アデランス」


引用:https://www.aderans.co.jp/corporate/

株式会社アデランスは、発毛・育毛や増毛・ウィッグ・かつらなど毛髪関連事業、ビューティ&ヘルス事業を手掛けています。アデランスの売上高は2008年までは安定していました。2008年にアメリカのヘッジファンド、スティールパートナーズが株を買い占めたことにより同ファンドがアデランスの大株主となります。それ以降、2009年から2012年まで売上高は減少を続け、当期純利益も2008年から2011年まで減少が続くなど、経営が混迷しました。

売上高の当期純利益は2012年には増加に転じますが、2014年2月期にあった36億円の営業利益は、2016年2月期には約1.25億円の赤字になり、一気に悪化しました。異業種大手の参入で市場競争が激化したこともあり、経営の立て直し・再建のためにMBOおよび上場廃止の実施を決定しました。このとき、投資ファンドであるインテグラル株式会社と共に再建を行っています。

MBOおよび上場廃止を選択した目的として、中長期的に事業構造の改革および経営基盤の強化を行うことを挙げています。具体的な施策には植毛やAGA治療薬などの医療市場への進出や、未開拓の海外地域への進出を掲げました。その実施のためには短期的な利益やキャッシュフローの悪化が起きる可能性があり、上場を維持したままでは株価に悪影響があるため上場廃止すると説明しています。

最終的にMBOの手法は、1株あたり620円で買い付けるTOB(株式公開買い付け)で、発表日前日の終値の480円に29%高い株価で購入することになりました。

抜本的な構造改革をするためにMBOを決意した「株式会社Francfranc(旧名:株式会社バルス)」


引用:https://www.francfranc.co.jp/

2011年、雑貨店「Francfranc」を展開していた旧株式会社バルスは、MBOを行うことを発表しました。

同社は2011年1月期まで2期連続の営業減益を記録している中、日本市場だけでなく、アジアを中心とした海外での店舗展開を計画していました。この状況において、上場を維持するより株式を非公開化し、経営資源の選択と集中といった事業構造の改革を行う方が賢明という判断を行い、MBOを実施しました。

具体的な手法としては、代表である高島郁夫氏が2社目として保有していたTMコーポレーションを活用しました。同社が1株10万円でバルスの全株式を公開買付することになりました(総額約157億円)。MBOにあたっては、バルスの取締役会の賛同が得られ、大株主の三菱商事などからも応募の確約を得ており、実現の見込みを立てた上での実施となりました。

企業価値を高める事業に注力するためにMBOを実施した「株式会社U-NEXT」


引用:https://unext.co.jp/

株式会社U-NEXTの事業内容は、映画やドラマなどの映像配信をはじめとしたコンテンツプラットフォーム事業と、格安SIM「U-mobile」などのモバイル通信事業などが挙げられます。元々は株式会社USENの映像配信部門でしたが、会社分割でUSENから独立して設立された会社です。当時はUSENが親会社、U-NEXTが子会社という関係にありました。

手法としては、U-NEXTが特別目的会社(SPC)を設立し、USENの株式を株式公開買付け(TOB)する形をとりました。その後、U-NEXTを存続会社としてUSENを吸収合併し、USEN-NEXT HOLDINGSに商号変更をしました。

経営を再統合するために、新会社を設立して重複している事業を集約しました。具体的には、U-NEXTの動画配信事業において、USENが培ってきた音楽業界を中心とした取引先に対して営業活動ができるようにするなど、統合によって事業管理体制の効率化やコスト削減が図れるという狙いがありました。さらに、U-NEXTの個人顧客販売網と映像・通信サービス、USENの法人販売網と音楽配信サービスの融合が成功すれば、新しいビジネス領域の開拓、新規サービスの提供などが可能になり、企業価値をさらに高めることも見込めると発表しています。

MBOで上場廃止となるも、再上場した「すかいらーくグループ」


引用:https://www.skylark.co.jp/

すかいらーくグループは、「ガスト」「バーミヤン」「夢庵」「ジョナサン」などのブランドを抱える一大フードサービス企業です。同社は2000年代に入ると、同じ外食産業のファストフードに押され、主幹事業であったファミリーレストランの業績が悪化しました。会社を抜本的に改革するため、2006年9月にMBOおよび上場廃止を実施しました。これは、多数の株主がいるとその意見に振り回され、業績が悪化する中で抜本的な改革が進められない、という理由が大きなものでした。

その後、同社は2011年に米投資ファンドのベインキャピタルの傘下に入り、経営を再建しました。不採算店の整理や人件費の削減、さらに日本経済のデフレ脱却の影響もあり客数が再び増加し、2009年より右肩上がりで利益を伸ばしました。

そして2014年8月、再度上場承認となり、実に8年ぶりに市場復帰となりました。同社は、それまでの再建から、新規出店やユーザーに合わせた店舗改装など、新戦略へとシフトしました。

まとめ

MBOは、経営陣が中期的な成長戦略を図ることを主な目的として自由に経営活動を行えるというメリットがあります。

本記事では4つの事例を紹介しました。今回挙げた事例においては、成長戦略の中でも会社再建や立て直し、経営資源の集約化、事業の集約、構造改革などを目的とする事例でした。MBOを成功させるためには、正しい知識を備え、不明点があれば専門家に相談することで、成功率をより高くすることができます。検討の際には、お早めにM&Aアドバイザーなどの専門家へご相談ください。