薬局 M&A

このところ、調剤薬局(以下、薬局といいます)業界ではM&A(Mergers&Acquisitions:企業の合併と買収)の動きが非常に活発になってきました。薬局業界のM&Aでは基本的に大手薬局会社が中小・個人経営の薬局を譲り受ける形になりますが、譲渡企業・譲受企業の双方に数多くのメリットがあるのです。

今回は薬局のM&Aの動向について解説していきます。ご自身の経営されている薬局の売却を検討している薬局オーナーの方はぜひ参考にしてみてください。

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薬局業界の現状

業界定義

本記事では薬局の定義を以下のように定めています。
「薬局とは医療機関発行の処方箋に基づき薬剤師が医薬品を調剤し、患者に販売または授与する保険薬局をいう。」(参照:業種別審査辞典)

医薬分業により爆発的に増加した調剤薬局

1980年代に日本において医薬分業が始まり、患者の診察と薬の処方を医師が行い、処方箋に基づいて調剤や薬暦管理、服役指導を経営的に独立した薬剤師が行う事が主流となりました。

処方と調剤が分離したことで医師と薬剤師が完全に分かれ、それ以降薬剤師として薬局を開業する動きが起こり、多くの方が開業しました。2018年現在、医薬分業率(外来で処方箋を受け取った患者さんのうち、院外の薬局で調剤を受けた割合)は70%を超しています。現在日本にある薬局の数は5万店舗以上あり、コンビニエンスストアの総数を上回っています。

調剤薬局業界の現状

薬局の業界は一見、大手薬局や大手調剤チェーンがシェアの多くを占めているように思えますが、大手薬局や大手調剤チェーン、大手ドラッグストアのシェアは、トップ企業でわずか3%、年間売上高の上位10社でも13%という割合になっています。売上の殆どが個人薬局で構成され、マーケット・リーダーと呼べる企業のいない低寡占市場です。それに加えて国の医療費削減政策に伴う診療報酬や薬価差益の縮小により、多くの薬局の収益が減少しています。

成長市場から成熟市場へ

では薬局業界の市場規模は一体どれほどでしょうか。厚生労働省の発表によると薬局の市場規模は2016年時点で7.8兆円、成長率は前年比で9.3%でした。この市場規模は他業界と比べると決して低くなく、成長率も悪くないように見えます。しかし平成26年以前を見ると、全体的な減少傾向があります。これは平成26年以前、薬局の売上が減少し、26年以降M&A件数が増加した結果です。調査したところ2011年にM&Aをされた薬局は48店舗でしたが、2016年には720店舗まで増加しています。したがって、2016年で市場の流れが大きく変わったことが読み取れます。

少なすぎる薬剤師

経済産業省の統計調査データによると、上記のように薬局一店舗あたりに薬剤師が平均で2人~3人という計算になりましたが、全国平均でこの数字なので地方の薬局では1人で経営されている方も少なくありません。調剤も事務も事業所運営も、全て1人でこなすとなると業務量は膨大です。さらに薬価は国によって値段が均一に決められており、年々価格が低下しているため、今後売上が減少し経営が厳しくなることは必至です。

M&Aが活発な理由

譲渡企業側

ではなぜ個人薬局のオーナーはM&Aをして薬局を譲渡したいと考えるのでしょうか。この理由には「自ら経営を続けていくことが困難である」という問題と「閉鎖はしたくない」という2つの問題が並立しています。経営が厳しくなってきていることは先述の通りです。また、経営において利潤の確保は欠かすことができませんが、そこに人材確保に関する問題が立ちはだかります。

薬剤師1人当たりの処方箋枚数は1日40枚までと決まっている中で、薬の価格が国によって制定されており近年価格が下がっており、それに伴い差益が減少し売上が落ちています。したがって、薬局の売上を伸ばしていくにはどうしても人員増加が必要です。

しかし、薬学部に6年制が導入されてから、「6年間もがんばって勉強して経験を積んできたのだから、地元の小さな薬局に行くより何店舗も経営しているような企業に入社したい」と考える学生が増えています。その結果、小さな町の薬局の経営者は人材確保に苦戦しています。さらには、少子高齢化の影響により後継者不足となり、頭を抱えているオーナーは増えています。利益を上げるのが難しく、人も思うように確保できない、後継者もいない。このような状況に直面したオーナーは自社をたたむことも考えます。しかし、簡単には閉鎖できない事情があります。

M&Aを検討される薬局のオーナーの方から聞く声として、「地域のことを考えると閉鎖なんてできない」「提携してる医師が高齢になってもまだ現役で頑張っているのをみると自分だけ閉鎖するわけにはいかない」という旨の意見が圧倒的に多いです。こうした事情により閉鎖はできない・したくないという思いが強くなっているのです。それに加えて閉鎖、倒産という選択肢には想像をはるかに上回るコストがかかります。

以上の理由から後継者がいなくても閉鎖することなく薬局を存続させることができるM&Aという選択肢が注目を集めています。

譲受企業側

なぜM&Aで薬局を譲り受けたいと考えている企業が増えているのでしょうか。簡潔に言うと、新規マーケット開拓の効率化と人員確保が主な理由です。実例を参考に考えてみましょう。

たとえば、関東圏内でシェアを拡大している大手薬局会社が東北地方に新たに店舗を出したいと考えているとします。新たに出店するとなったらまずリサーチが必要です。具体的にどの地域に進出するのか、薬局を利用する層は何歳ぐらいなのか、どのような薬を欲しているのか、どのような暮らしをしているのか。様々な点で調査が必要でしょう。新たに人員も必要なので、採用活動も行わなければいけません。

そのようなときにM&Aを用いて、東北地方で多くのシェアを占めている店舗を買収してしまえば上記の問題に効率的に対処することができます。もちろんM&Aの際には費用はかかりますが、新規開拓のための市場調査やそれに伴う費用の大部分を節約できます。

それに加えてM&Aにより手に入る将来的利益を考えると非常に有用な経営手段と言え、以上のような理由でM&Aが注目されているのです。

2018年にM&Aを決断すべき理由

M&Aの売り手側である個人薬局と買い手側である大手薬局会社の数には大きな差があります。
そのため、今後人材不足より経営難となった薬局の多くがM&Aを決断するとなると、いずれ売り手側の供給過多になるでしょう。

売り手の飽和状態になると、買い手側としては企業の選択肢が増えるので売り手側の競争が激化し、結果的に取引価格の低下を招くことが想定されます。そうなると本来の適正価値よりも安くなってしまう可能性があるので、薬局を売りたいと考えているオーナーの方は迅速な判断が必要です。現時点の会社の価値を無料で査定してくれるM&A仲介会社もありますから、まずは相談してみてはいかがでしょうか。

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