中小企業 後継者問題 現状

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深刻な後継者不足問題

現在、ありとあらゆる業界において後継者不足問題が顕在化しています。帝国データバンクの調査によると、国内企業の65.2%が後継者不在であり、60歳以上の経営 者のうち50%超が将来的な廃業を予定しています。このうち「後継者不在」を理由とする廃業が全体の約3割を占めています。

一方で、経営者の平均年齢は年々上昇しており、2019年では59.7歳になっている一方、平均引退年齢は15年前から68歳で高止まりしています。従って、後継者が見つからなければ、数年のうちに廃業する企業は増加していくと見られます。

このような状況が生まれる背景には複数の社会的要因が絡み合っています。

人口減少による経営環境の悪化

マーケットの規模と人口は密接にリンクしています。ご存知の通り、日本では少子高齢化が進み、人口は減っていく一方で、2050年までには1億人を切るとされています。この流れの中で、中小企業が利益を上げていくことの難しさは容易に想像がつきます。

また、グローバル化の影響によりコスト面で大きなアドバンテージを持っているアジア系企業が日本に進出し、日系企業のみならず海外資本の企業にも競り勝っていかなければいけない状況となっています。

これまでの時代と比較するとビジネス環境は大幅に悪化していると言わざるをえません。上記のような時代の流れを見ていると、自社を継ぎたいと考える後継者は今後も減少していくことは必至です。オーナーの中には、経営難が予想されるこのご時勢で会社を子どもに引き継がせ、辛い思いをしてほしくないと考えているオーナーも少なくありません。

価値観の多様化

昔と比べて生活水準が上昇し暮らしが豊かになった事で、価値観の大幅な変化や生きていくうえでの選択肢が圧倒的に増えました。例えば、夫婦共働きで子供を生まない家庭もあれば、結婚せず意欲的に仕事をこなす女性もいます。

昔の当たり前が今の当たり前ではなくなった21世紀において、親の会社を子供が継ぐということも当たり前ではなくなってきています。ご子息には、自分が望んだ人生を歩んでほしいと考えるオーナーも増えており、事業承継を強制することが減る傾向にあります。

後継者問題が発生する理由(1)子供が継がない

後継者問題が生じる原因の1つが、社長の子供が会社を継がないというケースです。自分の会社を子供が継いでくれると期待していたが、子供には継ぐ意思がないというケースは多くあるようです。なぜ子供が後継者になろうとしないのでしょうか。

1つには、子供が企業に勤めている、あるいは医者や弁護士などの専門職に就いており、仕事を辞めたくないというパターンがあります。創業者には優秀な方が多く、また子供の教育にお金をかけている人も多いので、子供は一流大学を出ていてやりたい仕事をしているという場合が多い傾向が見られます。

また、子供が自身の経営者としての資質や能力が不足していると感じて継がないパターンもあります。昨今は、経営環境がますます悪化しています。経済停滞や地域の人口減少により、収益を悪化させている中小企業は数多くあります。さらには、技術革新やグローバル化で変化のスピードはますます速くなっています。このような環境の中で経営者になることへの不安を感じるのは仕方が無いと言えます。

後継者問題が発生する理由(2)子供に継がせたくない

子供が継がないというケースに加え、経営者自身が継がせたくないと考えている場合もあります。それは、自分の子供に経営者になる素質が無い場合です。いくら自分の子供とは言っても、経営の能力が無いまま継がせたら、子供だけでなく従業員も不幸なことになるでしょう。

また、先述したとおり、事業環境は厳しいものになってきています。このような状況では、素質が無い人を後継者にした場合にはたちまち経営難に陥ってしまうでしょう。そして、倒産ということになれば、子供に莫大な借金が残ってしまいます。このようなことを考えると、子供に継がせたくないと社長が考えてもおかしくはないでしょう。

実際、事業環境の厳しさを理由に事業承継を諦めた経営者は多いようです。中小企業庁の調査によると、事業承継を検討したが断念した理由の55%が「将来の業績悪化への懸念」となっています。子供への負担を考え、事業承継を諦めるケースは半数以上も占めているのです。

後継者問題が発生する理由(3)社内に継がせられる人材がいない

自分の子供に継いでもらうという選択肢が無理だった場合、社員に継がせるという選択をすることもできます。しかし、この場合にも多くの問題点があります。まずは、経営者にふさわしい人材がいない場合です。社員や役員として優秀であったとしても、経営者にふさわしいとは限りません。経営者になるには財務の知識や経営の知識、またリーダーシップなどといった人間性など様々な能力が要求されます。

その能力は優秀な社員が必ずしも持っているわけではなく、経営者としてはふさわしくないということも考えられます。また、仮に経営者の素質を持った社員がいたとしても、実際に継がせるには数多くのハードルを越えなければいけません。

まずは、株式に関する問題です。仮に、時価総額5億円の会社を譲渡するには、買い手には5億の資金が必要となります。継がせたい社員がいた場合、会社の株式を買えるだけの資金を持っていなければなりません。また、会社の負債を背負う必要もあります。会社の資産だけで担保が足りない場合は、社長が自らの資産を担保とすることが一般的です。

さらに、個人保証をする場合には、自己破産にいたる可能性もあります。以上のことを考えた場合、社員に継がせるには大きな負担をかけることになります。株式を買えるだけの資金や、担保出来るだけの資産を持っている必要があります。そして、そのような条件が揃い、社員に継ぐ意思があったとしても、その社員の家族が反対をするということも考えられます。社員への事業承継は難しいものなのです。

後継者不足の対処とは

オーナーが引退する際、会社の処遇に関する選択肢は4つあります。

  • 親族又は社員に承継
  • 株式公開
  • 廃業による清算
  • M&A

親族又は社員に承継

親族又は社員に承継は事業承継を考えた際に、真っ先に思い浮かぶ選択肢かと思います。まず親族への承継に関しては、ご子息に承継する気がないケースもあれば、経営難が予測されるこれからの時代、息子には荷が重過ぎる/経営者には向かないというオーナーから声も聞きます。

では、社員への承継はどうなのかというと、中小企業の場合、あまり現実的とは言えません。ネックとなる点としては大きく分けて2つあります。「会社を時価で買うだけの資金力があるか」という点と「個人保証をする覚悟があるか」という点です。

承継の際には会社を時価で譲渡する必要があり、創業年数にもよりますが30年~40年経っているとすると時価は数千万~数億円単位でしょう。これほどの資金を持ち合わせている社員はなかなかいません。また、金融機関から借入する際に会社の資産では担保が足りない場合、社長は自宅等の担保を提供し個人保証を結びます。

承継の際にはこの契約も移行する必要があるので、倒産の場合には個人資産の処分のみならず自己破産の可能性が付きまといます。会社を時価で購入できる資産を持ち、なおかつ、個人保証をする覚悟がある社員は少ないでしょう。以上の点が、親族や社員への承継を困難なものとしています。

株式公開

株式を公開することで資本と経営の分離ができます。一定数の株式を取得する必要はありますが、非公開時と比べると親族や社員への事業承継は格段に楽になります。しかし、株式公開し上場するためには形式条件として経常利益が最低でも5億円は必要です。この条件をみたして株式公開できる会社はとても少なく、そのうえ上場審査料や年間上場料などコストがかさむため、狭き門となっています。

廃業による清算

会社を廃業するのも選択肢の一つです。自分の作り上げた事業が消えてしまい、従業員が働き口をなくしてしまうというデメリットはありますが、創業者利潤を確保できるというメリットがあります。しかし金額は簿価上より遥かに少なく、場合によっては借金を抱えてしまう可能性もありますので注意が必要です。

清算すると会社の資産を処分、現金化し債務を返済の上残った金額を株主に分配することになります。そこにかかるコストは

  • 法手続きの費用
  • 設備の処分費用
  • 賃貸の場合は現状復帰費用
  • 用地の処分費用
  • 退職金

などがあります。また、解散決算をする際に資産を個人に配当するのに配当課税がかかり、そこに最大55パーセントの相続税が課せられます。また、その資産をご子息に引き継ぐ際には最大50パーセントの所得税がかかります。その結果として、決算を終えて清算してみたら手元にお金が残ってないことや、むしろ借金を抱えてしまうということは少なくありません。

M&A

最後の選択肢としてはM&Aがあります。こちらは企業同士の合併や事業・株式の譲渡を指します。M&Aによって会社を譲渡するので譲受企業から経営陣を迎え、これまでどおり会社を存続させる事ができます。後継者不足による跡取り問題に悩まされる必要がなくなり、なおかつ創業者利潤を清算時よりも得る事ができます。

近年では急激に高まっているM&Aのニーズに応えるために、金融機関のM&A部門が非常に充実してきました。独自のネットワーク、スキルを有した中小企業専門M&A仲介会社も増えており、満足のいくM&Aを行いやすい環境が整備されてきています。そのため、納得のいく企業とM&Aをし、理想の形でリタイアメントを迎えることが可能となっているのです。

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