M&Aは大手企業、中小企業双方にメリットがある

カテゴリ:M&Aの基礎知識

2017/10/13

1.業界再編が多くの業界で起きている

昨今、業界再編と呼ばれる動きが多くの業界で起きています。業界再編とは「企業の合併等により業界内の勢力図が変わり、競争環境も変化すること」を指します[1]。

再編が落ち着いた業界の代表例として、医薬卸業界があります。1992年には351社が存在していましたが、2009年には114社に減少しました。現在では、上位4社がシェアの90パーセント以上を占めています[2]。現在再編の真っただ中にある業界としては、調剤薬局業界が挙げられます。調剤薬局業界は今、大手による買収が頻繁に起こっています。たとえば、2016年には、業界最大手のアインホールディングスが、100店舗を超えるチェーン店を持つ企業を買収するという大型のM&Aを実行しました [3]。

業界全体では、約1000件のM&Aが行われたとされています[4]。現在、上位10社のシェアはいまだ14%ほどとなっているため、今後もM&Aによる業界再編は続いていくと考えられます。上記業界以外にも数多くの業界において頻繁なM&Aが行われ、業界再編が進んでいます。それでは、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

2.なぜ業界再編が進むのか

1つ目の要因が、市場の縮小です。市場が縮小に対応するために、M&Aによって規模を拡大し、経営を効率化させようとする企業が増えます。これが、業界再編を進めます。

特に、日本では今後人口減少により市場が縮小します。そして、地方ではすでに人口減少を起因とした再編が起きている業界があります。例えば、昨今地方銀行の統合が相次いで起きています。最近では、新潟の第四銀行と北越銀行が経営統合をしました。地方銀行の統合が起きている要因の1つに、地方の人口減少があります。地方では人口が減り、利益を上げることが難しくなっています。これにより、銀行が資金を貸し出す先が減っており、これが地方銀行の経営を難しくしています。そこで、経営の効率性を高めるために、地方銀行の統合が進んでいます。

2つ目の要因が、競争の激化です。規制の変化などにより、異業種の参入や価格競争が起きると、各社とも生き残りを図らなければなりません。そこで、競争力強化のためにM&Aによる統合が進み、業界再編が起こります。ドラッグストア業界がこの例として挙げられます。2009年の薬事法改正により、コンビニエンスストアやスーパーで、一部の薬品の販売が可能となりました。これにより、ドラッグストアとスーパーなどの提携が進み、再編が起きています。

3.中小企業の抱える先行き不安

再編が進んでいる業界の中小企業は、先行きに不安を抱えることになります。再編が進んでいる業界は、上記のように市場が縮小している、あるいは今後縮小しそうな業界の場合が多くあります。そのため、今は業績が良くても、今後自社だけで生き残ることが難しいのではないかと将来への不安を感じます。この不安をきっかけに、大手企業への事業売却を考える経営者は多くいます。

また、再編が進む中で、大手企業が勢力を拡大し、競争力を上げていきます。そのような大手企業に対して、中小企業が立ち向かうことは非常に厳しくなります。そこで、業界で淘汰される前に、大手に売却することで会社の生き残りを図るという選択肢があります。以上のような理由から、再編が進んでいる業界では、自社の売却を考える経営者が多くなります。

ここまで、業界再編が進む理由を挙げ、その中で大手企業と中小企業がどのように反応するのかを整理してきました。大手企業は統合を進めて競争力の強化を目指し、中小企業は大手の傘下に入ることで企業の生き残りを目指すというものでした。以下では、M&Aによって生じる買い手のメリットと売り手のメリットを整理します。

4.M&Aによる買い手側のメリット

買い手側のメリットには、時間の節約と拡大時のリスク低減が挙げられます。競争力強化の手段の1つに規模を拡大してコストを削減する方法があります。しかし、新たに店舗を建てることには多くの負担があります。まずは、土地を取得しなければなりません。さらに、取引先や従業員の確保、許認可の取得など数多くの障害があります。それらの障害を乗り越えたとしても、収益が上げられるかは不確実というリスクがあります。

M&Aで他社を買収することで、これらの問題を解決出来ます。既存の店舗を買収するので、当然土地の取得や許認可の申請などは必要ありません。また、従業員や取引先なども引き継ぐことが出来ます。収益に関しても、これまでの実績から判断することが出来ます。以上のように、規模を拡大しようとしている企業にとって、M&Aは非常にメリットの大きい手法になっています。

5.M&Aによる売り手側のメリット

M&Aは、売り手側にとってもメリットの大きいものになっています。特に、経営者様の不安を解消できることが大きなメリットになります。上述したように、再編が進んでいる業界の中小企業は今後の経営に関して不安を抱えています。その不安も、大手企業に売却して傘下に入ることで解消出来ます。大手企業に売却することで、自社の存続を図り、潤沢な資本の下で、これまでより安定した経営を行うことができます。

また、売却時には創業者利益を得ることもできます。この利益をもとに、アーリーリタイアや新たな事業への挑戦をすることもできるでしょう。M&Aは、売り手にとってもメリットの大きいものになっているのです。

6.売り時の見極めがポイント

これまでM&Aのメリットを解説してきました。最後に、売り手が売り時を見極めることの重要さを解説します。なぜならば、時期を間違えると満足できる値段で売却できない可能性や、そもそも買い手が見つからない可能性があるからです。

まずは、業界再編の進み具合を見極めることが重要です。会社のベストの売り時は、上位企業の業界シェアが10~50%の時期とされています[5]。この時期は、中小企業同士の統合や、大手企業による中小企業の買収が頻繁に起こります。いわば「売り手市場」となっています。一方で、業界再編が進み、上位のシェアが70%以上を占めると、大手同士の統合が中心になります。この時期には中小企業の買収はあまり行われなくなる「買い手市場」であり、あまり高値はつかないでしょう[6]。

また、自社の状況にも注意する必要があります。業績が悪化した状態では、買い手を見つけることは難しくなります。特に、負債を抱えている状況では、大きな強みが無ければ買い手を見つけることは難しいでしょう。とはいえ業績が良い状態の時に売却を考えることは躊躇してしまうと思います。しかし、売却によるメリットを得るには、好調な時に売却することが必要になります。売却にはタイミングが非常に大切です。タイミングについてはM&Aアドバイザーなどから積極的に話を聞き、パートナーを探すことで解決するでしょう。

今回の記事では、なぜM&Aによる業界再編が起きるのか、そしてM&Aによるメリットは何かということと、M&Aには買い手にも売り手にも利益があることを解説しました。また、売り時にはタイミングが重要だということも解説しました。今後、どの業界でも再編が起きる可能性は十分あります。その時にどのような対応をとるのかを、早いうちに考えておく必要があるでしょう。

■参照

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